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農林水産省

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(2)小麦


(収量・品質の安定・向上が課題)

平成26(2014)年産の生産状況は、作付面積が前年産に比べ2,400ha増加したことに加え、全国的に天候に恵まれ生育がおおむね良好であったことから、10アール当たり収量が前年産に比べ4%上回ったため、収穫量は前年産に比べ4万1千t(5%)増加し85万2千tとなっています(図2-4-2)。

小麦の作付面積は、平成14(2002)年産で約21万haとなって以来、ほぼ同水準で推移していますが、10アール当たり収量は、天候不順の影響により大きく変動しています。

国内における小麦栽培は、収穫期が梅雨の時期と重なるため、赤かび病等の病害や穂発芽が発生しやすく、また、都府県では田での作付けが多く湿害を受けやすいこと等から、作柄や品質が不安定となっており、製粉業者や製パン・製麺業者等の実需者からは安定的な供給が望まれています。

今後、国産小麦の利用拡大を図っていくためには、暗渠(きょ)の施工等による排水対策の徹底、土壌診断(*1)や葉色診断に基づいた適期・適量の施肥管理、病害や穂発芽に強い品種の導入等により収量・品質の安定・向上を図っていく必要があります。


*1 [用語の解説]を参照


(実需と結び付いた生産が重要)

小麦の種類・銘柄は、小麦粉の種類・用途に応じて異なっており、小麦粉の種類は、たんぱく質の含有量によって、強力粉(主にパン用)、準強力粉(主に中華麺用)、中力粉(主にうどん用)、薄力粉(主に菓子用)に分類されます(図2-4-3)。

我が国では、従来、各地域の気候・風土に適した小麦として、主にうどん向け小麦粉の原料となる日本麺用品種が多く生産されており、うどん等の日本麺用途に占める国産小麦の使用割合も高い状況となっています。一方、パンや中華麺への国産小麦の使用割合は、我が国の気候等に適した良質なパン・中華麺用品種が少なかったこともあり低くとどまっていました。近年、加工適性や栽培適性に優れたパン・中華麺用品種の開発・導入の進展に併せて、国産小麦の使用を訴求したパンや中華麺の商品開発も増加しています。

また、生産者、製粉業者や製パン・製麺事業者等の実需者、行政等の地域の関係者が一体となって、地域の食文化と結び付いた新品種の導入や新商品の開発といった産地形成やブランド化の取組も各地で見られており、このような取組によって需要喚起していくとともに実需者ニーズに対応した品種の作付けや安定した収量・品質で供給を図っていくことが、国産小麦の生産を拡大していく上で重要です。


図2-4-3 小麦の種類・銘柄と小麦粉の種類・用途

事例:十勝産小麦の普及拡大と付加価値向上の取組

北海道帯広市
バスツアーで生産者から説明を受ける実需者等
バスツアーで生産者から説明を
受ける実需者等

北海道十勝(とかち)地方(以下「十勝」という。)は、国産小麦の4分の1を生産する一大産地ですが、生産された小麦の大半は道外へ移出され、道内で作るパンに利用される小麦のほとんどは外国産という状況です。十勝では日本麺用の「きたほなみ」のほかに、「春よ恋」、「ゆめちから」等のパン用品種も生産されていますが、十勝産小麦に対する実需者・消費者の理解度は決して高くはありませんでした。

国産小麦は、外国産小麦に比べたんぱく質の含有量が低く、製パン業界では、おいしいパンを作ることは難しいと見られてきました。一方、パンの国内市場規模は1.4兆円ともいわれ、家計調査でのパン食の支出が伸びてきており、パン用小麦の国産割合を拡大させることは重要な課題です。このため、生産者、加工業者、研究機関等が連携してパン用の新品種を開発し導入を進めています。

このような状況の中、平成21(2009)年、国産小麦の認知拡大等のため、帯広市(おびひろし)が中心となって、「十勝ベーカリーキャンプ」を立ち上げ、十勝を巡るバスツアーや有名シェフによる十勝産小麦を使用したパンづくり講習会等を実施してきました。

また、地域の実需者・消費者の理解促進のため、平成26(2014)年には、名称を「十勝小麦キャンプ」に改称し、パンづくりのみならず製菓やうどん等にも広げ、この取組を地産地消(*)にもつなげるため、新たに地元の消費者等数百人で1,000枚のピザを作り上げる「1,000人ピザ」や、十勝産小麦使用のパンの即売会も実施しました。

十勝では、野菜、肉、乳製品も生産されており、十勝産農畜産物だけでピザやパスタも作ることができます。小麦を中心として十勝産農畜産物をPRするとともに、地元でしか味わえない生産現場ならではの体験を提供することを通じて、今後も、十勝産小麦の普及・拡大、ブランド化を推進していくこととしています。


* [用語の解説]を参照


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