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農林水産省

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第3節 再生可能エネルギーの推進


太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(*1)等の再生可能エネルギー源は、永続的な利用が可能であるとともに、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2))をほとんど排出しないという優れた特徴を有しており、我が国の農山漁村において豊富に存在する資源です。

以下では、これらのエネルギー資源の有効活用による農山漁村の活性化について記述します。


*1 [用語の解説]を参照

(再生可能エネルギーの現状)

我が国の総発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合は1割程度ですが、その大部分は大規模水力発電によるものです。

平成24(2012)年7月に、固定価格買取制度(*1)が開始され、水力を除く太陽光や風力、バイオマス等の再生可能エネルギー電気の割合は増加していますが、いまだ2.2%にとどまります(図3-3-1)。

平成26(2014)年4月には、第四次エネルギー基本計画が閣議決定され、その中で再生可能エネルギーについては、平成25(2013)年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していくこととされました。また、農山漁村再生可能エネルギー法(*2)等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を推進すること等が盛り込まれました。

このような中、平成26(2014)年9月以降、複数の電力会社が、管内で電力の安定供給に支障が生じるおそれがあることを理由として、再生可能エネルギー発電設備に対する接続申込みの回答を一時的に保留する状況となりました。

このため、経済産業省において専門家による作業部会を設置し、各電力会社への受入可能量について、第三者の立場で、厳しく検証を進めるとともに、受入可能量の拡大方策についても検討が行われました。この結果等を踏まえ、平成27(2015)年1月、固定価格買取制度の運用見直し等が実施され、新たな出力制御(*3)ルールの導入、太陽光発電に適用される調達価格の適正化、接続枠の空押さえの防止等の措置が実施されました。この中で、水力発電や地熱発電は出力制御の対象外にされるとともに、地域に賦存する資源を有効活用するバイオマス発電については、対応困難な場合には出力制御の対象外とされた上で、電力会社に受け入れられることとなりました。


*1 再生可能エネルギー源を活用して発電された電気を、国が定める一定期間・一定価格で電気事業者が買い取ることを義務付ける制度
*2 正式名称は「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」(平成25(2013)年11月公布、平成26(2014)年5月施行)
*3 電気は常に需要と供給を一致させていなければならず、需要に対して供給が多すぎても、停電の発生等、電気の安定供給に支障を来すおそれがある。このため、電力会社は、需要に対して供給が多すぎる場合、火力発電の発電量を必要最低限に抑えるなど、供給を絞り込み、それでもなお電気の供給が需要に対して多くなりすぎると見込まれれば、再生可能エネルギーの発電量も抑える。

(再生可能エネルギーによる地域の活性化)

農山漁村は、エネルギーの地域外への依存度が高い現状にありますが、農山漁村に存在する豊富な再生可能エネルギー源を地域主導で活用することで、農山漁村に新たな価値を創出し、地域内経済の循環を図るとともに、そこで発生する利益を農林漁業の発展につなげることにより、農山漁村の活性化を図ることが重要です(図3-3-2、図3-3-3)。


図3-3-2 再生可能エネルギーによる利益の地域への還元

図3-3-3 再生可能エネルギーを活用した農山漁村活性化の目指すイメージ

近年、農林漁業者が主体となって、再生可能エネルギー発電による利益を地域の農林漁業の活性化のために活用する取組が各地でみられるようになっており、今後、農山漁村再生可能エネルギー法も活用しながら、このような取組が広がることが期待されます(表3-3-1)。


表3-3-1 農林漁業者が主体となった再生可能エネルギー発電の取組事例

また、農林水産省では、地域主導で進められる取組の更なる加速化を図るため、「今後の農山漁村における再生可能エネルギー導入のあり方に関する検討会」を開催し、平成27(2015)年3月に報告書を取りまとめたところです。この中で、<1>地域の農林漁業者等が自ら出資及び意思決定を行い、利益の大部分を得ることができる取組の拡大、<2>外部事業者のみで行われようとする事業について、計画段階から地域が関わり、農山漁村の活性化に資する取組への誘導が重要であることと、それを実現するための対応策等が提言されました。


(農山漁村における再生可能エネルギーの活用)

水力発電には、太陽光発電や風力発電と比較すると天候による発電量の変動が少ないという利点があります。また、農業用水を貯留・流下させる農業用ダムや農業用水路等には、落差等による水力エネルギーが存在しており、これら農業水利施設(*1)と一体的に小水力発電(*2)施設の整備を図ることで、そのエネルギーを有効に活用することが可能です(図3-3-4)。

図3-3-4 農業水利施設を活用した小水力発電

平成26(2014)年10月現在、農業農村整備事業等により37地区で小水力発電施設が整備され、年間約1億2,000万kWhの電力量(約3万5千世帯の年間消費電力量に相当)が発電可能となっており、土地改良区等が管理する農業水利施設の維持管理費の軽減に寄与しています。また、小水力発電の導入を推進するため、発電施設の設置・運営に係る技術力向上のための支援等を行っているほか、水利権許可手続等の簡素化・迅速化も図られています。

一方、揚水機場の屋根やファームポンドの敷地内、農業用排水路の法面(のりめん)等に太陽光パネルを設置し、当該施設の電力として利用するなど、太陽光発電への取組も各地で進められており、平成26(2014)年10月現在、農業農村整備事業等により67地区で太陽光発電施設が整備されています。

近年、農地に支柱を立てて営農を継続しながら上部空間に太陽光パネルを設置する発電設備等の技術開発が進められていますが、下部の農地で農業生産が継続されるとともに、周辺農地の効率的な利用や農業水利施設の機能等に支障を及ぼすことがないよう、適切に取り組むことで、農家の所得向上につなげることが重要です。


*1 [用語の解説]を参照
*2 数十kWから数千kW程度の比較的小規模な水力発電の総称で、農業水利施設を活用した水力発電の多くはこの範囲に含まれる。

(バイオマスの活用による新たな産業の創出と地域づくり)

バイオマスとは、木質、食品廃棄物、家畜排せつ物、下水汚泥等の動植物に由来する有機性資源であり、発電、熱、燃料、素材等幅広い用途に活用できる、地域に密着した身近な資源です。また、大気中のCO2)を増加させないカーボンニュートラル(*1)と呼ばれる特性により、その活用は地球温暖化対策に有効であるとともに、天候に左右される太陽光、風力に比べて安定的なエネルギー源です。

これらのバイオマスを活用することにより、地域の産業・雇用創出、エネルギー供給の強化、循環型社会の形成に貢献するため、関係7府省(内閣府、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省)が連携し、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とする、環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指すバイオマス産業都市の構築を推進しています。

平成26(2014)年度までに22地域がバイオマス産業都市に選定されています。


*1 バイオマスは生物が光合成によって生成した有機物であり、バイオマスを燃焼すること等により放出されるCO2は、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収したCO2であることから、バイオマスはライフサイクルの中では大気中の二酸化炭素を増加させない。

事例:バイオマス産業都市の構築

北海道鹿追町
鹿追町環境保全センター全景
鹿追町環境保全センター全景
ハウス栽培(マンゴー)
ハウス栽培(マンゴー)

北海道鹿追町(しかおいちょう)(十勝(とかち)地域)は、十勝地域に位置する畑作、酪農及び畜産を主産業とした純農村地域です。特に酪農が盛んであり、約1万8千頭の乳牛から毎年約10万tの牛乳を生産する一方、家畜排せつ物の適切処理や市街地周辺の環境改善が課題となっていました。

このため、町では、国内最大規模の資源循環型バイオガスプラントや堆肥化施設を備えた「鹿追町環境保全センター」を整備し、平成19(2007)年10月から稼働しています。

このバイオガスプラントでは、周辺の農家から原料である家畜排せつ物を収集し、これを発酵してバイオガスを生産しています。生産したバイオガスは発電に利用しており、電気は施設内での利用のほか、余剰分は売電しています。また、バイオガスを暖房や車両の燃料として直接利用する調査・研究も行っています。

この取組により、大量に発生する家畜排せつ物が適正に処理されるとともに、エネルギー生産や温室効果ガス(*)排出削減にも貢献しています。また、発酵した後の消化液は悪臭が大幅に軽減された良質な有機質肥料として農家のほ場に還元され、市街地周辺の環境を改善するとともに町の生産基盤を支えています。

さらに、平成26(2014)年には、発電時に発生する余剰熱の利活用施設を整備し、農業用ハウス(マンゴー栽培等)や高級食材であるキャビアを採卵できるチョウザメの養殖等に活用するなど、新たな産業の創出に向けた取組を開始しました。

今後もこれらの取組を続けるとともに、町内において他のバイオガスプラントの整備も進めており、地域全体でバイオマスの更なる有効活用を目指しています。


* [用語の解説]を参照
 


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