第5節 都市農業の振興
都市とその周辺の農地やそこで営まれる農業は、多様な役割を発揮しています。
以下では、都市農業が有する多様な役割や都市農地の状況、都市農業の持続的な発展について記述します。
(都市農業が有する多様な役割)
都市農業(一般に市街化区域(*1)内農地とその周辺で営まれる農業をいう。)は、消費地に近いという利点を活かし、個人への直売や直売所等を通じて新鮮な農産物を供給しているほか、農業体験・交流活動の場の提供、都市住民の農業への理解の醸成等、多様な役割を果たしています(図3-5-1)。
また、都市農地は、建築物が密集する都市において、災害発生時の避難場所や火災の延焼防止等の防災機能を発揮する貴重な空間にもなっています(図3-5-2)。
このような防災機能の十分な発揮のため、農業者や農協、地方公共団体の間で都市農地を防災協力農地として位置付け、農地を緊急時に避難場所として利用すること、復旧用の資材置場等として利用すること等を内容とした協定を結ぶ取組もみられます。
(都市農業の持続的な発展)
都市農地の状況についてみると、市街化区域内の農地は、宅地等への転用需要が大きく、面積が減少している一方、そのうち17%については、都市計画で生産緑地地区(*1)に指定され、おおむね保全が図られています(図3-5-3)。
また、健康増進や生きがいづくり、住民相互のふれあい等を目的として、都市においても農業体験へのニーズが増加しています。このような中、都市住民がレクリエーション等を目的として農作業を行う市民農園の開設数は、都市的地域(*2)を中心に増加しています(図3-5-4)。また、各地で学童農園・福祉農園の開設等、様々な取組が展開しています。
市民農園には、小面積に区分けされた農地を借り受けて農作業を行うもののほか、農地を借り受けずに植付けから収穫までの一連の農作業を体験するものがあります。これらの農園は、初心者から経験者まで様々な人が利用しており、都市住民や消費者の農業への理解を広げるための貴重な場となっています。
今後、人口減少や高齢化の進行に伴い、都市の開発需要も減少することが見込まれます。このような状況の下、農業が多様な役割を発揮し、住宅と農地が共生するまちづくりを推進することが重要となっています。
事例:都市農業の持続的な発展に向けた取組
(1)農外からの新規就農者の増加
青年層の農業への関心が高まっている中、大都市である東京都においても農外からの新規就農者が増加しており、平成21(2009)年から平成26(2014)年までの実績は39人となっています。
これらの新規就農者は、有志により「東京NEO-FARMERS!」というグループを組織し、東京都農業会議や民間企業等も交え、定期的に情報交換を行っています。
その結果、都内の大手スーパーに、「東京NEO-FARMERS!」としての常設売り場を確保するなど、販路開拓に具体的な成果が出ています。また、農業体験や古民家体験を共同で事業化するメンバーが現れるなど、新たなビジネスへの挑戦も広がっています。
(2)都市の空閑地を活用した福祉農園
近年、障害者の就労の場としての農業に注目が集まっており、都市においても福祉農園が増加しています。
大阪府大阪市(おおさかし)の社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会は、農地の少ない都心部において、残された貴重な空間である高架下を活用した福祉農園を開設しました。
農園は、東大阪市(ひがしおおさかし)のJRおおさか東線JR俊徳道(しゅんとくみち)駅とJR長瀬(ながせ)駅の間にあり、日照の問題は、人工光を使った栽培施設とすることで解決しています。
農園では、障害者の就労訓練を目的として、サンチュ、レタス、ベビーリーフ等の水耕栽培が行われ、販売先は、地域住民を始め、ホテルやレストランへも広がりを見せています。
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