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農林水産省

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(10)畜産物


(農家戸数が減少し大規模化が進展)

主要畜種の飼養戸数は、担い手の高齢化や後継者不足に伴う離農の増加等により、全ての畜種において減少が続いています(表2-3-1)。一方、1戸当たりの飼養頭羽数は増加しており、大規模な経営体に生産の集積が進んでいます。

しかしながら、各生産者の飼養頭羽数は、施設、機械、労働力等の面から一定の制約があり、担い手の確保や担い手をサポートする体制の強化が喫緊の課題となっています。



(平成27(2015)年度の生乳生産量は前年度より増加したものの長期的には減少傾向)

生乳生産量は、長期的に減少傾向にあり、平成26(2014)年度は、飼養頭数の減少等により733万tまで減少しましたが、平成27(2015)年度(平成28(2016)年2月まで)は、例年よりも夏季の高い気温が続かなかったこと等により、前年度の同期間より1.1%増加しました(図2-3-19)。

しかしながら、酪農経営は設備投資負担や担い手不足等により、長期にわたって一貫して飼養戸数と飼養頭数が減少しており、生乳生産量は長期的に減少してきています。

 

(バターの安定供給に向けた取組)

平成26(2014)年度は、バターの生産量が減少したことから、バターの国家貿易としてカレントアクセス(*1)に加えて追加輸入を実施しましたが、供給不安を背景として、家庭用バターの購入量が増加したことから、小売店のバターが品薄となりました。

これを踏まえ、平成27(2015)年度は、生乳生産基盤を強化する対策を着実に進めました。また、生産者団体はバター等向けの生乳への配分を増加させ、乳業者は年末の需要期に家庭用バター等の供給計画を定め、これを上回る供給を実施しました。国家貿易については、(1)関係者が予見できるよう輸入決定時期を1月、5月、9月に明確化し、(2)洋菓子店等で直接利用できるよう小物バター(*2)の輸入等の運用改善を行った上で、需給動向を踏まえカレントアクセスに加えて追加輸入を実施しました(表2-3-2)。さらに、乳業者や生産者団体、行政等での緊密な情報共有と消費者への情報発信を行いました。

独立行政法人農畜産業振興機構のバター店頭調査によれば、平成27(2015)年10月第1週から第4週には87%から89%、第5週には77%、11月には90%以上、さらに、バターの最需要期である12月には、ほぼ全ての調査対象店舗でバターの陳列があったところです。

引き続き、バターの生産量と需給見通しについて、小売店、洋菓子店等も含めて情報の共有を図りつつ、小売店でのバターの販売状況や価格動向等を注視し、必要な場合には追加輸入等機動的に対応することが重要です。

また、我が国の生乳生産は、猛暑等の天候の変動等の影響を受け不安定化し、国内生産量が減少し供給が不足してきていることから、牛乳・乳製品の安定供給を図るため、担い手の育成や労働負担の軽減、畜産クラスター事業を推進し、弱体化が懸念されている生産基盤を強化していくことが重要です。


1 表2-3-2の注1)*1を参照
*2 表2-3-2の注1)*3を参照


(牛肉生産量は近年横ばい)

平成26(2014)年度の牛肉の生産量は、前年度並となっており、近年50万t程度で推移しています(図2-3-20)。肉用牛経営では、肥育経営で一定の規模拡大が進んでいるものの、小規模な繁殖経営を中心に高齢化や後継者不足による経営離脱が続いていることから、総飼養頭数が減少しています。

 

(肉用子牛の取引価格が上昇)

肥育もと牛となる肉用子牛の取引価格は、平成13(2001)年度のBSE(*1)発生の影響により大きく低下し、その後回復傾向で推移した後、平成19(2007)年度以降、景気の低迷等による牛枝肉価格の低迷の影響等により再度低下しました。平成22(2010)年度以降は、生産者の高齢化に伴う飼養戸数の減少や平成22(2010)年4月に宮崎県で発生した口蹄疫(*2)の影響等により、子取り用めす牛が減少し子牛の出生頭数が減少したこと等から肉用子牛の価格が上昇しています(図2-3-21)。さらに、近年の高齢化した農業者の繁殖部門からの離脱等を背景に、肉用牛の飼養頭数は減少し、平成26(2014)年度には黒毛和種の子牛価格が50万円を超え、肥育経営への悪影響を回避することが課題となっています。

このため、平成27(2015)年3月に策定された「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」に沿って、個々の経営の規模拡大に取り組むほか、キャトル・ブリーディング・ステーション(CBS)(*3)への預託等を通じた地域全体での増頭や、性判別技術と受精卵移植技術の活用による計画的な乳用後継牛の確保と和子牛生産の拡大を推進するなど、肉用牛の生産基盤を強化することが必要です。


1、2 [用語の解説]を参照
*3 多くの時間を費やす繁殖雌牛の分娩・種付けや子牛の哺育・育成を集約的に行う組織

図2-3-21 肉用子牛及び初生牛の取引価格の推移
データ(エクセル1:142KB2:142KB / CSV1:1KB2:1KB

(酪農・肉用牛における担い手の育成と労働負担の軽減に向けた取組)

家畜の飼養・衛生管理は、毎日の飼料給与・ふん尿処理や急病対応が必要であるなど、生き物を対象とするため休みが取れず、飼料の生産・調製等、多岐にわたる作業で、重い労働負担があります。また、新規就農に際しては、飼料生産のための農地の取得や飼養管理施設の整備、家畜導入等に多額の投資負担が生じ、さらには、飼養・経営管理に係る技術・知識の習得と向上が必要です。このようなことから、後継者や新規就農の確保が困難となり高齢化に伴う経営離脱とともに、飼養戸数の減少と総飼養頭数の減少を招いています。

このため、労働負担の軽減と担い手の育成を図っていくことが重要です。

労働負担を軽減するため、外部支援組織の活用による分業化、飼料の生産・給与や排せつ物処理等において省力化が期待できる放牧及び搾乳ロボットや哺乳ロボット等の省力化機械の導入を推進していくこととしています。外部支援組織としては、コントラクター(*1)やTMRセンター(*2)等が近年増加しており、今後も引き続き、更なる設立や処理能力・利便性の向上を図ることが必要です(表2-3-3)。また、畜産農家の休日の確保や傷病時の経営継続等のために労働力を提供するヘルパーについては、育成・確保、技能向上が必要です。さらに、後継者や新規就農者の負担を軽減するため、経営離脱で利用されない農場といった既存施設の情報を地域の関係機関が新規就農者向けに提供し、農場賃貸のマッチングを支援することとしています。また、長年生産に携わってきた熟練高齢者等の知識・経験の継承を、新規就農研修等を通じて推進することが必要です。


1 飼料作物の収穫作業等の農作業を請け負う組織
*2 粗飼料や濃厚飼料等を混合し、牛が必要としている全ての栄養素をバランス良く含んだTMR(Total Mixed Rations:完全混合飼料)を農家に供給する施設。TMRは栄養的に均一なため家畜が選び食いができないという特徴がある。

コントラクターが大型機械で効率的に飼料収穫
コントラクターが大型機械で
効率的に飼料収穫
 

(畜産クラスター事業の推進)

図2-3-22 畜産クラスター協議会の対象畜種
データ(エクセル:97KB / CSV:1KB

酪農・畜産の生産基盤の強化を図るためには、畜産農家だけでなく、流通・加工業者、市町村、農業協同組合等の地域の関係者が連携・協力して、地域全体で畜産の収益性を向上させる畜産クラスター(*1)事業を推進することが重要です。

また、平成27(2015)年11月に策定された「総合的なTPP関連政策大綱」において、酪農・畜産の国際競争力を図るため、省力化機械の整備等による生産コストの削減や品質向上等の収益力・生産基盤を強化することとされ、畜産クラスター事業を拡充することとされました。

平成26(2014)年より開始された畜産クラスター事業は、酪農、繁殖経営等を中心に拡大しており、平成27(2015)年には、全国で566(*2)の畜産クラスター協議会が設立されています(図2-3-22)。

今後、畜産クラスター事業の推進を通じ、地域の関係者の連携、それに対する国の支援を進めることにより、飼養頭数の拡大等の生産基盤の強化やコスト削減等による体質強化を図っていくことが重要です。


1 畜産農家と地域の畜産関係者(コントラクター等の支援組織、流通加工業者、農業団体、行政等)が、ぶどうの房(クラスター)のように一体的に結集することで、地域全体で畜産の収益向上を図る取組

2 農林水産省調べ

事例:草地改善により粗飼料自給率と乳量・乳質の向上を図る畜産クラスター事業の取組

北海道滝川市

秋田県由利本荘市平根(ゆりほんじょうしひらね)地区の農地は、従来、地下水位が高く排水が良好ではない状態で、畑作物の栽培には不向きな地域でした。そこで同地区では、基盤整備事業を導入し、農業法人への農地の集積を図るとともに、地域特産物である鳥海(ちょうかい)りんどう、小ぎく等を導入し、複合経営(*)による産地づくりを促進することとしました。

北海道紋別郡滝上町(もんべつぐんたきのうえちょう)は畜産が地域の主要産業の一つであり、26戸で構成される滝上町酪農組合は、高い乳量と優れた乳質を実現してきた組合です。

同町では牧草地管理を効率化するため、平成14(2002)年に、飼料の播種(はしゅ)・収穫作業を担うコントラクターとして有限会社滝上町農業振興公社を立ち上げました。飼料生産に他人の目が入ることにより、牧草地内の雑草は農家が思っている以上に多いこと、ほ場により雑草割合に差があることが明らかとなってきました。このため、平成22(2010)年から、草地の実態調査に着手し、JAオホーツクはまなす、ホクレン農業協同組合連合会、農業改良普及センター等からほぼ手弁当で支援を得ながら、雑草調査や対策研修会等を行ってきました。

滝上町農業振興推進協議会による畜産クラスター事業の取組

この支援関係を連携・協力関係として明確にし、滝上町農業振興推進協議会を設立し、草地植生改善による粗飼料自給率の3年後の目標値を掲げ、平成26(2014)年度からは畜産クラスター事業として取り組んでいます。

畜産クラスター事業の成果として、夏は暑く秋は多雨の同町の気候風土に沿った「草地植生改善マニュアル」を平成27(2015)年2月に作成しました。飼料や雑草の種類に応じてパターン分けし、改善方法を年間スケジュールで示すことで、草地改善の適切な判断・収益性向上に資することとしています。

今後、目標とした粗飼料自給率の向上による飼料費削減、粗飼料の良質化による乳量・乳質の向上を図り、農家の更なる収益向上を地域全体で図ることとしています。


 [用語の解説]を参照

(鶏肉の生産量は増加、豚肉と鶏卵は横ばい)

平成26(2014)年度の豚肉の生産量は125万tとなっており、近年横ばいで推移しています(図2-3-23)。国産豚肉の安定的な需要を確保していくためには、消費者の多様なニーズに対応した特色のある豚肉生産や輸入品との差別化等を図っていく必要があります。また、生産基盤の強化のため、悪臭等の環境問題による経営存続の危機に適切に対処し、生産基盤の維持等を図る必要があります。

平成26(2014)年度の鶏肉の生産量は、消費者の低価格志向や健康志向等を背景に消費が好調なことから、増加傾向で推移し過去最高の149万tとなりました。引き続き、国産鶏肉の安定的な需要を確保するため、加工・業務用を始めとした国産鶏肉の利用拡大を図る必要があります。

また、平成26(2014)年度の鶏卵の生産量は前年並みの250万tとなっており、安定的に推移しています。国産鶏卵を安定的に供給していくためには、需給バランスを踏まえた生産により養鶏経営の安定を図っていくことが重要となっています。

 

(自給飼料の利用拡大を推進)

家畜の飼料は、大きく分けて牛等の草食家畜に給与される粗飼料(*1)と、牛のほか、豚や鶏に利用される濃厚飼料(*2)があります。平成26(2014)年度の供給量は、粗飼料が2割、濃厚飼料が8割となっており、粗飼料の自給率は78%、濃厚飼料の自給率は14%となっています(図2-3-24)。濃厚飼料はとうもろこし等の穀物が主な原料で、そのほとんどを海外からの輸入に依存しているため、その価格は穀物相場や海上運賃、為替等の影響を大きく受けます。濃厚飼料を主な原料とする配合飼料価格は、平成27(2015)年1月以降は世界的な需給緩和等から下落傾向にあるものの、平成28(2016)年1月時点では、10年前と比べると1.5倍となっています(図2-3-25)。

このため、輸入飼料に過度に依存しない畜産経営の確立を図るため、飼料作物の作付面積の拡大、飼料の調製・保管施設の整備や食品残さ等の飼料利用拡大等への支援を行うとともに、経営の継続・発展に取り組めるよう畜種ごとの特性に応じた経営安定対策や振興対策を実施することとしています。

また、粗飼料については、優良品種を用いた草地改良を進め、青刈りとうもろこし等の高栄養作物やWCS用稲(稲発酵粗飼料用稲)(*3)等の良質な国産粗飼料の生産・利用の拡大を図り、濃厚飼料については、飼料用米の生産・利用の拡大等を図ることによって、平成37(2025)年度までに飼料自給率を40%へ向上させていくこととしています。


1 乾草やサイレージ(飼料作物を乳酸発酵させ、保存性・し好性を高めた飼料)、稲等

2 とうもろこしを中心とする穀類、ぬか類、かす類等
*3 [用語の解説]を参照




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