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農林水産省

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(1)戦略的な研究開発と新たな産学連携研究の取組


(研究開発の戦略的な推進と技術移転の加速化)

農林水産省では、「農林水産研究基本計画」(平成27(2015)年3月策定)において、今後10年程度を見据えた研究開発の重点目標や、それを実現するための推進施策を定めています。本基本計画に基づき、重点課題として、生産現場等が直面する課題を速やかに解決するための研究開発及び地球温暖化や少子・高齢化への対応等の中長期的戦略の下で着実に取り組むべき研究開発を進めています。研究開発の進捗状況の検証・評価を適切に行うとともに、研究課題間や異分野との連携を促進することとしています。

生産現場で役に立つ研究開発の実施に向けては、研究者、普及指導員、農業者間の意見・情報交換が不可欠であることから、農業者や普及指導員等の研究開発への参画を進め、現場の課題や必要とされている技術の把握に取り組んでいます。

また、研究成果の技術移転を加速化させるためには、技術や品種等の知的財産を戦略的に管理、活用する必要があります。このため、農林水産省では、商品化・事業化に有効な知的財産戦略を研究開発の企画・立案段階から描き、また、研究成果の活用に当たっては、権利化等の多様な選択肢を視野に入れ、最も適切な方法を採用するなどの考え方により、知的財産マネジメントが実施されるよう、研究機関を指導していくこととしています。

さらに、農林水産省では、食品安全や動植物防疫等の行政施策が科学的根拠に基づき的確に実施されるよう、これを支援するレギュラトリーサイエンス(*1)を推進してきました。レギュラトリーサイエンスとは、科学的知見と、規制等の行政施策・措置との間を橋渡しする科学のことであり、行政施策・措置の検討に利用できる科学的知見を得るための研究と科学的知見に基づいて施策・措置を決定する行政の両方が含まれます(図2-4-1)。

農林水産省では、この充実・強化に向け、平成27(2015)年6月に「レギュラトリーサイエンス研究推進計画」を策定し、有害化学物質の汚染低減に係る知見の取得や動物疾病の検査法の確立等、行政が必要とする研究の内容や課題等を明確化しました。また、関係者への情報提供や研究機関との意見交換を積極的に行い、研究者の理解の醸成やレギュラトリーサイエンスに属する研究の拡大等に取り組んでいます。

このような取組の成果の一例として、アクリルアミドへの対応が挙げられます。現場で導入可能なアクリルアミドの低減技術等に関する研究結果を活用し、事業者向けの指針を作成し、製造業者の自主的な取組を支援しています。また、アクリルアミドを低減させる調理方法に関する研究結果を活用し、消費者向け冊子「安全で健やかな食生活を送るために~アクリルアミドを減らすために家庭でできること~」を作成し、普及に努めています。


1 [用語の解説]を参照

図2-4-1 レギュラトリーサイエンスの概念

(新たな産学連携による研究開発の推進)

これまでの産学連携研究においては、食品企業との連携により、パン・中華麺用途向け小麦品種「ゆめちから」のブレンド粉を用いた高品質国産小麦食品を開発するなど、一定の成果が得られてきました。また、医学、工学、理学等との異分野融合共同研究についても進展してきました。

農林水産・食品分野における外部の組織や異分野と連携した研究開発の取組は徐々に増えていますが、全体としてみると、異分野との連携の動きは一部にとどまっています。このため、農林水産省では、異なる分野の新しい発想や技術を取り込み、革新的な研究成果を生み出すとともに、これまでにないスピード感をもって、それらの研究成果を商品や事業に結び付ける新たな産学連携研究の仕組み(「知」の集積と活用の場)づくりを行うこととしています。「知」の集積と活用の場は、<1>関係者のネットワーク化等を図る産学官連携協議会、<2>研究開発全体を管理する研究開発プラットフォーム、<3>研究開発を実施する研究開発コンソーシアムの3層構造とし、革新的な成果が継続的に生み出される仕組みとすることを提案しています(図2-4-2)。平成27(2015)年12月に、民間企業、大学、研究機関等から参加者を募集し、産学官連携協議会の準備会を設立したほか、会員向けのセミナー等を開催するなど、協議会の設立に向けた意見交換や研究成果等の情報交換を行い、平成28(2016)年度からの本格実施に向けた準備を進めています。


図2-4-2 「知」の集積と活用の場を動かす3層構造

(強みのある農林水産物や生産性の飛躍的向上に向けた研究開発)

技術革新による農林水産業の成長産業化を実現するため、消費者や実需者の需要を踏まえた品質やブランド力等の強みのある農林水産物の創出、生産性の飛躍的向上による生産現場の強化に向けた研究開発を行っています。

強みのある農林水産物の創出に向けては、実需者や産地と連携し、新品種の開発を行うとともに、栽培マニュアルの作成等を通じた産地への円滑な導入を進めています。また、新たな特色を持つ新品種を短期間で創出するために必要なゲノム編集技術(*1)の開発を行っています。これらの新技術を社会に還元し、国民生活の向上に役立てていくためには、国民とのコミュニケーションにより、期待や不安、懸念等の声を真摯に受け止め、研究開発や実用化の過程でいかしていくことが重要です。農林水産省では、各地域農業研究センター等での一般向けシンポジウムの開催、学校教育や市民講座への研究者の派遣等による情報発信に取り組んでいます。

生産性の飛躍的向上による生産現場の強化に向けては、農業経営の収益の増大を目指し、コスト低減や省力化、品質の向上等に資する研究を行い、現場での技術の検証・改良を通じて速やかに研究成果の実用化を図っています。具体的には、水稲、野菜、畜産等各分野において、新品種や省力栽培技術、可変施肥技術、機械化一貫体系、ICT等の新技術を組み合わせた革新的な技術体系の確立に向けた実証研究等を進めています。


1 人工制限酵素により、特定の遺伝子(DNA)上の塩基配列部位を精度良く切断するなどして、ゲノム上の狙った部位に任意に変異(塩基の欠損や置換、挿入)を誘導する技術


事例:注目される研究開発の成果

(1)コメ粒を巨大化させる遺伝子を発見 -超多収イネ品種の開発への期待-

日本晴にカサラスのGW6a遺伝子を導入したイネ
日本晴にカサラスのGW6a遺伝子
を導入したイネ
1株当たりの収量

国立大学法人名古屋大学を中心とする研究チームは、インディカイネ品種「カサラス」の遺伝子(GW6a:Grain Weight 6a)がコメ粒の大きさを決める遺伝子であることを発見しました。このGW6a遺伝子はイネの12本ある染色体のうち第6染色体にあり、この働きが強まるとコメ粒が大きくなり、弱まると逆に小さくなります。このため、GW6a遺伝子をジャポニカイネ品種「日本晴」に導入すると、コメ粒が約15%大きくなりました。また、葉や茎等の植物体自体も大きくなることが明らかになりました。

大きさを制御するGW6a遺伝子が特定されたことにより、これまでに明らかになった籾(もみ)の数を増加させる遺伝子等と一緒に育種に用いることで、効率的に超多収性イネの品種開発を行うことが可能になり、生産コスト低減や人口増加に伴う食料不足の解決に向けた多収品種の開発が期待されます。また、コメと同じくイネ科に属すトウモロコシ、コムギ等の育種への応用も可能です。

 

(2)いちごのパック詰めロボットを開発 -軟弱な果実を傷付けずにハンドリング-

いちごパック詰めロボットの構成要素と選果ラインへの組込み例

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター(*)とヤンマーグリーンシステム株式会社は、いちごのパック詰めロボットを開発しました。

いちごは軟弱で取扱いが難しいことから、手作業でパック詰めされており、長時間作業による重い労働負担と作業能率の低さが課題となっていました。開発されたロボットは、いちごに傷を付けることなく、1回に最大で6個の果実を同時にパックに入れることができるため、人が行うのに比べて40%程度作業時間が短縮されます。

本ロボットを選果施設に導入することで、いちごの処理能力の拡大による出荷量の増加、生産者の選果にかかる労働時間の削減が可能となります。生産者は、選果に要していた時間を栽培管理や経営管理等に充てることができるため、高付加価値化や規模拡大等、競争力の強化に向けた取組の進展が期待されます。なお、本ロボットは平成27(2015)年に市販化されたところです。

* 平成28(2016)年4月1日、名称を国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構農業技術革新工学研究センターに変更
 

(研究開発と一体となった技術の普及)

研究成果の速やかな普及を進めるに当たっては、直接農業者に接して技術の普及指導等を行う普及指導員が大きな役割を果たしています。農林水産省では、普及指導員を全国に配置して農業者の農業技術・経営支援を行う協同農業普及事業を都道府県と協同して実施しています。

生産現場のニーズに直結した研究開発を進めるため、普及指導員等は、研究開発の企画段階から参画し、研究機関に対して現場の課題や技術の改善点等を伝えるとともに、その成果をいかして農業現場における技術革新を推進することにより、農政課題・地域課題の解決を図っています。さらに、高度化・多様化するニーズに応えるため、普及指導員を始め、研究機関や先進農業者、民間企業等の多様な関係機関が連携し、それぞれの得意分野をいかした総合力の発揮により、農業者に対する支援の充実・強化を図ることとしています。



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