このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(2)先端技術の活用等による生産・流通システムの革新


(スマート農業の実現に向けた取組)

生産現場では担い手の高齢化や労働力不足が進む中、女性や高齢者等でも快適に作業ができるよう、農作業における省力・軽労化を進めることや、新規就農者等への栽培技術の継承等が重要な課題となっています。農林水産省では、ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業であるスマート農業の実現に向け、研究開発や現場での実証を進めています(図2-4-3)。


図2-4-3 スマート農業の実現に向けた取組

ロボット技術については、「ロボット新戦略」(平成27(2015)年2月日本経済再生本部決定)において、ロボットの活用を推進すべき重点分野として、<1>GPS自動走行システム等を活用した作業の自動化、<2>人手に頼っている重労働の機械化・自動化、<3>ロボットと高度なセンシング技術の連動による省力・高品質生産を位置付けました。平成28(2016)年3月には、「未来投資に向けた官民対話」(*1)において、安倍内閣総理大臣から、<1>平成30(2018)年までにほ場内での農機の自動走行システムを市販化し、<2>平成32(2020)年までには遠隔監視で無人システムを実現できるよう、制度整備等を行うとの目標が示されました。

農林水産省では、農業機械の走行アシストや、荷物の持ち上げや中腰姿勢での作業を支援するアシストスーツ等の現場実証を行うとともに、ほうれんそう等の軟弱野菜やトマト等の自動収穫ロボット、搾乳ロボットを用いた精密飼養管理システム、弁当盛り付けロボット等の研究開発を行っています。このほか、経済界等の協力を得て立ち上げた研究会において、技術開発や導入を進めるべき重点分野について検討を行うとともに、今後実用化を進めていく上で不可欠な課題であるロボット農機(*2)の安全性確保に関するガイドラインの検討を行っています。

ICTの活用については、これまで篤農家がそれぞれ培ってきた栽培技術をデータ化し、可視化することで、新規就農者等への栽培技術の継承等に役立て、生産性の向上や高品質な農産物の生産に結び付けていくこと等を目指しています。現在、ICTを使った営農管理や施設栽培における環境制御システムが実用化され始めていますが、データの相互運用性・可搬性が進んでいないために、異なるシステム間でデータを共有・比較することができないなどの課題があります。このため、農業分野におけるICT市場の規模拡大が進まず、農業ICTシステムやセンサー等の低価格化の阻害要因ともなっています。

農林水産省では、内閣官房等の関係府省と連携し、安価で使いやすいシステムの開発や農業関連情報の相互運用性・可搬性の確保に向けた標準化の取組を進めています。具体的には、温湿度等のほ場環境や農産物の生育状況等の情報を蓄積・分析するセンサー、センサーで取得した情報と市況情報等の関連情報を集約・提供する情報基盤、さらには、情報基盤上のデータを利用したほ場・営農管理や消費者等との情報共有システム等のウェブサービスの開発を進めています。また、農業関連情報の標準化については、農業ICTシステムで用いる農作業の名称や環境情報のデータ項目に関するガイドラインを平成28(2016)年3月に策定しました。今後順次、農薬や肥料等に係る情報の標準化に向けた検討を進めていきます。さらに、ICTの活用により蓄積された農業関連データの適切な活用や保護を進めるため、内閣官房が関係府省と連携し、「農業ITサービス標準利用規約ガイド」を平成28(2016)年3月に策定しました。

新たな農業分野での利用が期待されるドローン等の小型無人航空機
新たな農業分野での利用が期待される
ドローン等の小型無人航空機

近年、産業用無人ヘリコプターに比べて小型で安価なドローン等の小型無人航空機の農業分野における活用が期待されています。病害虫防除の分野では、これまで、空中散布等を適正に実施するための利用技術指導指針(ガイドライン)に基づき、産業用無人ヘリコプターによる農薬散布等が実施されてきましたが、ドローン等の小型無人航空機を使った農薬散布作業に対する関心の高まりを踏まえ、ドローン等の小型無人航空機を利用した安全かつ適正な農薬散布等を推進していくための新たなガイドラインを平成28(2016)年3月に策定しました。

 

1 日本経済再生本部の下、「「日本再興戦略」改訂2015」(平成27(2015)年6月30日閣議決定)に基づき、政府として取り組むべき環境整備の在り方と民間投資の目指すべき方向性を共有するため、関係閣僚、産業界で活動する者及び有識者を構成員として実施する対話
*2 ロボット技術を組み込んで自律的に走行又は作業を行う車両系の農業機械

(次世代施設園芸の推進)

野菜を始めとする園芸作物は貯蔵性が低いため、年間を通じて計画的な生産が可能となる施設園芸は野菜等の周年安定供給において重要な役割を果たしています。周年安定供給の実現のためには、施設内の温度等の環境を作物の生育に最適なものに調節する栽培技術や設備等が重要です。現在、全国には約4万6千ha(*1)の園芸用施設がありますが、温度等の環境を自動的に制御できる環境制御装置を有する施設はまだ少ないことや、冬季に加温が必要な品目が多く、燃油価格の変動に影響を受けやすいこと等の課題があることから、収益性の高い施設園芸の確立に向けて、更なる生産性の向上と安定化、低コスト化を図る必要があります。このため、農林水産省では、収益性の高い施設園芸の確立に向けて、全国10か所(*2)で次世代施設園芸拠点の整備を進め、平成27(2015)年12月現在で北海道、富山県、兵庫県、宮崎県の次世代施設園芸拠点において生産が開始されています。これらの拠点では、木質バイオマス等の地域資源を活用するためのエネルギー供給施設、種苗生産施設、高度な環境制御が可能な大規模温室、出荷調製施設等の一連の施設を集積することにより、生産から調製・出荷にかかるコストの削減や高品質な農産物の周年安定供給を実現するとともに、所得の向上と地域の雇用創出等が期待されています。

今後、次世代施設園芸の全国への展開を進めるため、拠点で得られる栽培技術や地域資源エネルギーの活用の方法、販路の確保に向けた取組等の知見を活用し、セミナー等の情報発信、次世代施設園芸拠点における実践的な研修等の人材育成、大規模園芸施設の整備等を推進していくこととしています。


1 農林水産省調べ
*2 北海道、宮城県、埼玉県、静岡県、富山県、愛知県、兵庫県、高知県、大分県、宮崎県

事例:次世代施設園芸の取組

富山県富山市
移動式センサー
移動式センサー

富山県富山市(とやまし)にある株式会社富山環境整備は、元々、廃棄物処理等を手がけていましたが、平成26(2014)年に富山県等と「富山スマートアグリ次世代施設園芸拠点整備協議会」を立ち上げ、平成27(2015)年から大規模園芸施設において、フルーツトマトやトルコギキョウなどの生産を始めました。約4haの大規模温室、種苗供給施設、出荷調製施設を集約して整備し、隣接する廃棄物処理施設から発生する電力や熱を温室に供給して、生産性の向上と安定化に取り組んでいます。

また、ICTを活用して、自動的に温室内の温度や湿度等の環境データや生育状況を測定し、タブレット端末でデータを確認できる仕組みを導入したことで、新規就農者でも効率的に栽培管理が行えるようになりました。フルーツトマトは安定した品質と高い糖度が好評で、高付加価値商品として国内での販売にとどまらず、香港やシンガポールにも輸出されています。

さらに、トマト加工品の生産にも取り組み始めたほか、今後は、障害者の雇用に取り組むことを予定しており、水田単作地帯である同地域に新たな産業と雇用を創出することを目指すこととしています。

 

(青果物流通の効率化・合理化)

加工・業務用青果物の需要が高まる中(*1)、国産青果物の競争力を高めるためには、低コスト生産の実現とともに、流通システムの効率化・合理化を推進する必要があります(図2-4-4)。

生産については、播種(はしゅ)から収穫までの機械化一貫体系や加工・業務用に適した品種の導入、定規格で安定した一定量のロットサイズの確保に向けた取組等を進めています。

流通については、現状、輸送の大宗がトラックによるものとなっていますが、トラックドライバーの不足等による輸送費の上昇に伴い、遠隔産地からのトラック輸送が課題となっています。このため、新たな輸送システムの導入に向け、異業種の荷主とのマッチングにより、帰り荷を確保し積載率を向上させるツーウェイ輸送や、大容量の輸送に適した鉄道や船舶への切替え等の取組を支援しています。また、これらの新たな輸送システムに対応するため、積込みや荷下ろしの効率化を図る大型鉄コンテナや多品目の混載を可能にする多段階温度管理技術の導入等を推進しています。

貯蔵・加工については、週末や祝日の輸送量が少ない時期を活用した輸送を可能とする長期保存技術等の実証を行っています。さらに、流通拠点について、産地における既存の集出荷施設を再編した広域一括集出荷貯蔵施設、消費地における実需者の需要に即し集荷分配を効率的に行うための集出荷・貯蔵・加工機能を備えた多機能物流拠点の整備を進めています。



図2-4-4 青果物流通システムの効率化・合理化に向けた取組

(生産資材費の削減に向けた取組)

我が国は肥料原料の大半を輸入に依存しており、肥料の製造コストの約6割を原材料費が占めていることから、国内肥料価格は肥料原料の国際価格の影響を大きく受けます。農林水産省では、農業者の所得の向上を支援するため、生産者、関係業界及び研究機関等が連携した生産資材コストの低減を進めています。家畜ふん尿等の未利用資源の肥料化、フレキシブルコンテナを利用した肥料の輸送による低コスト化・省力化、施肥量やコストを低減する施肥法等の確立を支援しています。

農業機械については、近年、農家数の減少に伴い、国内向け農業機械の出荷台数は減少傾向にあります。価格については、近年の鋼材の高騰や高機能化等によりわずかに上昇したのみですが、農業機械は単価が高く、その価格変動は生産費に大きく影響します。これまで、レンタル・リース方式での導入、機能を限定した海外向け低価格モデル農業機械の国内への普及、部品の削減や共通化によるコスト低減の取組を進めてきました。これらの取組を一層推進するとともに、更なるコスト低減に向け、農業機械メーカーのアジア諸国への国際展開を促進することによる国内供給コストの低減、電動化等のコスト低減に資する技術開発等、農業者の求める機能に対応した農業機械の開発・改良を推進していきます。



ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526