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農林水産省

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重点テーマ 地方創生の動き


人口減少や高齢化が進行する中、農業・農村の価値が再認識され「田園回帰」の流れが生まれつつある。このような中、農村が有する地域資源を活用し住民自らが様々な取組を行い、地域活性化を目指す動きが見られる。

農村は、農業の持続的な発展の基礎として国民に食料を安定供給するとともに、国土の保全や水源の涵養(かんよう)等多面的な機能の発揮の場となっています。しかし、農村では都市部に先駆けて高齢化や人口減少が進行し、地域によっては、集落機能や地域資源の維持にも影響が生じることも懸念されています。

一方で、近年、都市に住む若者を中心に農村の魅力の再発見が進み、都市と農村を人々が行き交う「田園回帰」ともいうべき流れが生まれるなど、農業・農村の価値が再認識され、農村の活性化につながる動きも見られています。

このような中、これからも農村が魅力ある存在であり続けるためには、農村の直面する課題を農村の住民のみならず、都市住民も含めた国民全体の課題として認識することが必要です。


(地方創生と農村の活性化)

平成20(2008)年をピークに我が国の人口は減少傾向が続いていますが、特に農村地域における人口減少及び高齢化の進行が顕著です(図3-1)。さらに総農家数が減少する一方で、土地持ち非農家(*1)数が増加しており、農村における農地等の資源やコミュニティの維持が困難になる可能性があります(図3-2)。また、多くの市町村において、事務事業の見直しや組織の合理化等による職員数、特に農林水産部局の職員数が減少している中、市町村財政の農林水産業費も大きく減少しており、将来にわたって地方における農政の推進体制の確保が必要となっています(図3-3、図3-4)。


1 [用語の解説]を参照

図3-1 農村における人口・高齢化の推移と見通し
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図3-2 総農家数と土地持ち非農家数の推移
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しかしながら、農村を活性化させ、魅力ある存在とするためには、そこに人が住んでいなければならず、そのためには「田園回帰」の対話型社会を実現し、若者も高齢者も全ての住民が安心して生きいきと暮らしていける環境を作り出すことが重要です。このように農村をめぐる状況が大きく変化している中、平成26(2014)年11月に、まち・ひと・しごと創生法が制定され、関係府省の連携により政府全体で地方創生の深化を推進していくこととしています。

また、新たな食料・農業・農村基本計画(平成27(2015)年3月閣議決定)では、まち・ひと・しごと創生総合戦略等を踏まえ、関係府省の連携の下、農村の振興に向けた取組を総合的に推進することとしており、農林水産省においても、食料・農業・農村基本計画と併せて「魅力ある農山漁村づくりに向けて」(農山漁村活性化ビジョン)を策定し、<1>農山漁村にしごとをつくる、<2>集落間の結び付きを強める、<3>都市住民とのつながりを強めるという3点を基本的な視点とした農村の活性化に向けた方策の推進と地域の実践活動を後押しすることとしています(図3-5)。

このような観点から、農村の活性化に向けた地域コミュニティ機能の発揮等による農地等の地域資源の維持・継承や住みやすい生活環境の実現、都市と農村の交流や都市住民の移住・定住の促進、インバウンド需要(*2)にも対応した農村における雇用の確保と所得の向上等の取組が行われています。


2 訪日外国人旅行者による様々な需要

図3-3 市町村における部門別職員数の比較(平成14(2002)年=100)
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図3-4 市町村における部門別普通会計決算額の比較(平成14(2002)年度=100)
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図3-5 農山漁村活性化ビジョン(イメージ)

事例:地域資源を活用した地域活性化の取組

島根県浜田市
黒米と黒大豆を加工した焼酎と豆腐
黒米と黒大豆を加工した
焼酎と豆腐

人口減少や高齢化が進んだ島根県浜田市金城町美又(はまだしかなぎちょうみまた)地区では、地域の資源である食材等を活用した地域活性化の取組を展開しています。

平成23(2011)年に地域住民等で設立された美又湯気の里づくり委員会は、地域特産の古代米、黒米に着目して、栽培、加工・商品化することを検討し、地域全戸を対象としたワークショップ等で商品名やパッケージデザイン等を決定しました。委員会は地域に特定非営利活動法人(*)美又ゆめエイトを設立、黒米を加工した焼酎の商品化に成功するとともに、同じく地域特産の黒大豆を加工した豆腐と併せ、黒食材と称して地元の美又温泉で販売しています。ブランド化の推進により、黒米や黒大豆を栽培する農業者の所得が3倍に増加する効果も出ており、地域資源を活用して「地域まるごと6次産業化」を実践しています。(第2回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区)

* [用語の解説]を参照
 

(地域コミュニティ機能の維持・発揮)

高齢化や人口減少の進行が著しい中山間地域等においては、多くの集落において集落規模の縮小等により、地域コミュニティ機能の維持が困難になりつつあります。このような状況では、これまで地域の共同活動により維持されてきた農地等の地域資源の継承や地域の特性に応じた付加価値の高い農産物の生産・加工・販売等の活動の展開が困難となることも懸念されます。

このような中、地域全体でのコミュニティ機能の維持・発揮を図るため、地域の実情を踏まえつつ、小学校区など、複数の集落が集まる地域において、生活サービス機能等を基幹集落に集約・確保した「小さな拠点」と周辺集落をネットワークで結ぶ取組を関係府省の連携により推進することとしています。

そのためには、住民自らが主体となって話し合い、地域の将来像の合意形成とその実現に向けた取組を進めていくことが重要です。具体的には、地域住民からなる組織を中心として庭先集荷等の生活サポート等地域の暮らしを支える取組や、複数集落の連携による地域資源の維持や農産物の高付加価値化等を展開することが考えられます。その際には、市町村担当者や専門知識を有したファシリテーター(*1)等、地域内外の多様な人材が参画したワークショップ等を実施することが効果的です。

このような取組を通じて、住民が主体となり日常生活に必要なサービスを確保・提供し、集落間の結び付きを強めていくことが重要であり、関係府省が連携し、その推進を図っているところです。


1 会議等において進行役として中立の立場でプロセスに関わり合いながら、会議の目的に沿って進むよう支援していく者

事例:集落間の連携による生活支援も含めた農業振興の取組

新潟県上越市
庭先集荷の様子
庭先集荷の様子

新潟県上越市櫛池(じょうえつしくしいけ)地区は、櫛池川の両岸に散在する11集落からなり、肥沃な農地による稲作を主産業とした自然豊かな地域です。他方、標高100mから450mの中山間地域に位置し、冬期の積雪が2mから3mにまで及ぶなど、農業生産条件や居住条件が厳しく、集落人口の減少や高齢化の進行に伴い、農業生産や居住が困難となることが懸念されていました。

そこで、平成17(2005)年度から始まった中山間地域等直接支払の第2期対策をきっかけとし、地区全体で集落や農地等の地域資源の維持管理等を行う櫛池農業振興会を設立しました。

櫛池農業振興会は、農業上の共同活動にとどまらず、農産物の加工・販売や農産物の出荷手段に乏しい生産者への庭先集荷サービス、都市との交流活動の受入体制構築による地域の活性化を推進しています。また、小規模・高齢者集落間の生活支援も含めた取組を行い、安心した地域居住の実現を目指しています。

 

(多様な人材の都市部から農村への移住・定住)

都市と農村の交流は、それぞれの住民による相互理解を深めつつ、農村の価値を再評価することで、農村に人を呼び込み、新たな経済活動を創出する契機となることが期待されています。このような中、都市と農村との交流を一過性の取組に終わらせることなく、都市との交流人口を増加させ、農村への移住・定住へと発展させている事例が全国各地で展開されています。平成26(2014)年に東京在住者を対象とした移住に関する意向調査によると、今後地方へ移住する予定又は移住を検討したいと回答した人は全体の4割、関東圏以外の出身者においては5割となっており、移住を検討している住民が一定程度存在する結果となりました(図3-6)。


図3-6 東京在住者の今後の移住の希望の有無
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地方への移住希望者の面談やセミナーの開催、電話での問合せに応じている特定非営利活動法人ふるさと回帰支援センターによると、移住を検討している都市住民から相談等を受ける件数は年々増加傾向にあります(図3-7)。また、移住を検討している住民の年齢構成では、若年層の割合が増加しており、移住に関心を示す年齢層に変化が生じつつあります(図3-8)。


図3-7 移住相談者数の推移
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図3-8 移住相談者等の年代別割合
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しかしながら、これら移住を希望する者にとっては、地方での仕事の確保、生活施設や交通手段の利便性等、解決すべき課題が多数存在しています(図3-9)。このことから、都市と農村の交流から移住・定住への発展を戦略的に進めるためには、移住・定住希望者が「お試し」的に居住できる仕組みづくりや複数地域に生活・就業拠点を有する二地域居住の促進、移住前後のきめ細かな相談体制の整備を図ることが重要です。また、農村での就業に結び付けるためには、空き家、廃校等を活用した就農研修施設等の整備や、就農と住居をパッケージ化した総合的支援プランの策定等の取組を推進することも重要です。


図3-9 都市住民が農山漁村地域に定住する際の問題点
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さらに、農林水産省では、このような取組と併せて、地域の活性化を担う人材の育成に取り組む集落等を支援するため、平成20(2008)年度から「田舎で働き隊」事業により、農村に関心を持つ都市住民等を農村に派遣しています。本事業により派遣された者の中には、事業終了後も地域に定着し、地域のコーディネーター等として活躍している例も見られます。このような多様な人材が、地域住民では気付かない未利用資源を利活用することによって、地域活性化に取り組んでいます。

なお、本事業は平成27(2015)年度から総務省が実施する「地域おこし協力隊」と名称を統一するとともに、合同説明会や合同研修の実施、全国サミットを通じた隊員間の交流促進等の一体的な運用を行い、地域の人材育成や定住に向けた取組を強化しています。


事例:中山間地域の空き家を活用した地域活性化の取組

岐阜県神河町
空き家再生講習会の様子
空き家再生講習会の様子

兵庫県のほぼ中央部に位置する神河町(かみかわちょう)は、人口約1万2千人、町の面積の8割を山林が占める中山間地域です。

同町は他の中山間地域同様に高齢化・人口減少が進んでおり、集落に点在する空き家の利活用が地域の大きな課題となっていたため、都市住民の移住受入れを進めて町の活性化を目指すこととしました。平成22(2010)年には、建築業者、地域住民代表等で構成する、かみかわ田舎暮らし推進協会が設立され、同町が実施する「空き家バンク・空き土地運営」と連携して、田舎暮らし体験イベント、空き家見学ツアーや空き家再生等に取り組むことにより都市住民の移住を推進しています。

このうち、空き家再生の取組では、空き家再生講習会を開催し、都市部からのボランティアが地元の技術職人から空き家の改修・修繕技術を学んでいます。

これらの取組みの結果、平成26(2014)年度までに、改修を施した空き家等に140人が移住し、移住者自らがオーナーとなった店もオープンしています。また、空き家を活用した田舎暮らし体験施設を2件、空き家・空き店舗を利活用した店を11件(うち交流施設6件)開業するなどした結果、神河町(かみかわちょう)全体の交流人口は年間約70万人となり、移住者の増加と併せて地域の活性化に結び付いています。(第13回オーライ!ニッポン大賞審査委員会長賞受賞事例)

 

事例:田舎で働き隊をきっかけとした移住と都市農村交流活動への従事

長野県飯山市
海外からの旅行者
海外からの旅行者

旅行会社においてインバウンド業務等に従事していた柴田(しばた)さほりさんは、平成22(2010)年に「田舎で働き隊(*1)」として長野県飯山市(いいやまし)に赴き、グリーン・ツーリズム拠点施設で都市農村交流に係る取組を行っていました。任期満了後は現地に移住し、現在は、一般社団法人信州いいやま観光局の職員として、着地型旅行商品(*2)の開発や営業等の業務に従事しています。

旅行商品として、飯山の伝統工芸である仏壇に関係した体験商品や酒蔵巡りツアーを開発し、わら細工づくり体験メニュー開発に関しては地域の高齢者に指導役として協力してもらうなど、移住者の視点で地域の魅力や価値を発信することを心がけています。また、地域に多数存在する古民家を後世に残したいと考え、古民家で映画を上映する映画祭を開催するなどユニークな取組も行いました。

これらの活動により国内のみならず海外からの旅行者も増えつつあり、柴田さんは今後も地域の人とのふれあいを通じて飯山の自然、文化、人の魅力を発信し、地域と都市・海外の交流、地域の活性化につなげたいと考えています。(第12回オーライ!ニッポン大賞ライフスタイル賞受賞事例)

*1 現在の名称は「地域おこし協力隊」
*2 旅行者を受け入れる地域が企画する、その地域の観光資源を利用した旅行商品
 

事例:農家民宿、定住化促進を通じた農村の維持・活性化

山形県飯豊町
農家民宿オーナー
農家民宿オーナー
移住者宅
移住者宅

山形県南部に位置する飯豊町中津川(いいでまちなかつがわ)地区は、123世帯、305人、10集落で構成された山村集落です。

当地区では昭和49(1974)年、将来の人口減少等に危機感を持ち、中津川むらづくり協議会を立ち上げ、「地域と自然共生」や「住みよい中津川」等を目指し、農家民宿や移住・定住支援に取り組んでいます。

このうち、農家民宿には、平成26(2014)年度に1,165人が宿泊し、うち157人は台湾からの宿泊者でした。この農家民宿の取組により、都市と農村の交流が活発となり、高齢者の活動の場が広がりました。

また、移住・定住支援の取組では、農業や暮らし・雇用など専門分野ごとの支援員制度を設け、移住を希望する人をサポートしています。この取組により、平成23(2011)年度以降、7世帯15人が同地区へ移住し、農業のほかカフェの経営や草木染めなど様々な分野に就業しています。地区では、移住者が新たな移住・定住希望者の相談相手となっており、自主的に独自のホームページを開設し、SNS(*)等を活用した都市住民への情報発信に努めるなど、都市と農村の交流を通じ、地域の活性化が期待されています。(第12回オーライ!ニッポン大賞受賞事例)

*Social Networking Serviceの略。登録された利用者同士が交流できるウェブサイトのサービス
 

(インバウンド需要への農村における取組)

図3-10 訪日外国人旅行者数の推移
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食をテーマに開催された2015年ミラノ国際博覧会における日本館の盛況を始めとして、諸外国における我が国への関心は高くなっており、近年の円安方向への推移、新たな世界遺産の登録、短期滞在ビザの免除や緩和等もあいまって、訪日外国人旅行者数は、平成27(2015)年には約1,974万人と過去最高になりました(図3-10)。訪日外国人旅行者はその旅行において、我が国における食事に大きな期待を持っており、旅行中の飲食費として約6,400億円の消費をもたらしています(図3-11、図3-12)。

 
図3-11 訪日前に最も期待していたこと(全国籍・地域、単一回答)
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図3-12 訪日外国人旅行者消費額(平成27(2015)年)
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訪日外国人旅行者の多くは東京や大阪等の大都市を中心に訪問していることから、今後はこれら旅行者を地方へ呼び込むことが重要です。このため、農林水産省では、地域の食とそれに不可欠な食材を生産する農林水産業や特徴ある歴史、文化、景観等の地域の観光資源を一体的に海外に発信するための仕組みとして「食と農の景勝地」を創設し、観光庁等の関係府省庁のインバウンド促進施策と連携して情報発信していくこととしています。また、農林水産省と観光庁は、平成27(2015)年5月に外国人旅行者の農山漁村への訪問・滞在を促進し、農山漁村地域の活性化を図ることを目的として「Japan.Farm Stay」シンボルマークを制定し、訪日外国人旅行者の受入に意欲を有する農林漁業体験民宿のブランド化を推進しています(図3-13)。

図3-13 Japan. Farm Stayシンボルマーク

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、今後更に増加が見込まれる外国人旅行者を地方へ呼び込み、農村における交流人口の拡大や農林水産業の成長産業化を進めることで、雇用の確保と所得の向上に結び付くことが期待されています。

 

事例:外国の旅行会社を招いての農業・農村体験ツアーの実施

岩手県遠野市、住田町
稲の収穫体験
稲の収穫体験

平成27(2015)年9月、岩手県遠野市(とおのし)と住田町(すみたちょう)の遠野・住田ふるさと体験協議会は、欧米を含む諸外国の旅行会社社員を対象として農家民宿への宿泊体験や農業体験ツアー(*)を受け入れ、我が国の農業・農村地域の魅力をアピールしました。

この体験ツアーには3泊4日の日程で、13の国や地域から30人が参加しました。体験ツアーでは、「Japan.Farm Stay」に認定されている農家民宿での食事や宿泊、農作物の収穫体験等が行われ、参加者からは「農業や漁業、ホームステイ等の田舎の生活の体験を通して、日本の田舎暮らしを深く知ることができた」等の感想がありました。

参加した旅行会社社員はこの体験ツアーを通じて、日本の農業・農村地域を対象としたツアーの商品開発を進めたいとしており、これらニーズを踏まえた訪日外国人旅行者の受入体制を早急に構築することが必要です。(第2回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区)

* VISIT JAPAN トラベルマート2015(日本政府観光局(JNTO)主催)の一環で行われたもの

日本のグリーン・ツーリズムのセールスポイント
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