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農林水産省

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第2節 鳥獣被害への対応


シカやイノシシ、サル等の野生鳥獣による農業被害や自然生態系への影響が深刻化、その被害範囲も広域化しており、我が国全域的な課題となっています。また、これらの被害は、営農意欲の減退や耕作放棄地(*1)の増加要因となっています。一方で、捕獲の担い手である狩猟者は減少・高齢化傾向にあります。

以下では、鳥獣被害の現状や鳥獣被害対策の具体的な取組について記述します。


1 [用語の解説]を参照

(鳥獣被害の現状)

図3-2-1 野生鳥獣による農作物被害額の推移
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図3-2-2 狩猟免許所持者数及び60歳以上の割合
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野生鳥獣による農作物被害額は、近年200億円前後で推移しており、その被害額が大きい都道府県は北海道、福岡県、長野県等となっています。野生鳥獣による被害額のうち、全体の約7割がシカ、イノシシ、サルによるもので、特に、シカによる被害額が依然として高く推移しています(図3-2-1)。これら野生鳥獣による被害は、営農意欲の減退や離農の増加、耕作放棄地の増加等をもたらしており、被害額として数字に現れる以上に農山漁村に深刻な影響を及ぼしています。野生鳥獣被害が深刻化している要因としては、近年の少雪傾向等にも起因した鳥獣の生息域の拡大、狩猟者の減少・高齢化に起因する捕獲圧の低下、耕作放棄地の増加、過疎化・高齢化等に伴う人間活動の低下等複数の要因が複合的に関係しているものと考えられます。特に、これら野生鳥獣の捕獲の担い手である狩猟免許所持者数は減少傾向であるとともに高齢化が進んでおり、平成25(2013)年度における60歳以上の割合は66.5%となっています(図3-2-2)。

 

(鳥獣被害対策の推進)

表3-2-1 被害防止計画の作成及び鳥獣被害対策実施隊の設置状況
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農林水産省では、市町村が鳥獣被害防止特別措置法(*1)に基づく被害防止計画を作成し、鳥獣被害対策実施隊(以下「実施隊」という。)による捕獲や追払い等の地域ぐるみの被害防止活動、侵入防止柵の設置、地域リーダーの育成、野生鳥獣肉(ジビエ)の利活用等を図る人材育成の取組等を推進しています。

鳥獣被害防止特別措置法に基づいて被害防止計画を策定した市町村は平成27(2015)年10月末時点で1,432まで増加しています。また、実施隊を設置している市町村は1,012まで増加しています(表3-2-1)。引き続き、被害防止対策の担い手である実施隊の設置の促進と体制の強化が重要です。

さらに、環境省では、平成27(2015)年5月に改正された「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(*2)」に基づき、都道府県等が主体となって行う鳥獣の捕獲等事業や安全かつ効果的に捕獲等を行う事業者の認定制度等の鳥獣管理のための施策を推進しています。このように、鳥獣被害対策は複数の省庁が関係していることから、農林水産省では関係省庁と連携しながら対策を進めています。


1 正式名称は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」
*2 環境省所管


事例:農業者が主体となった鳥獣被害対策の取組

長崎県雲仙市
実施隊に任命された若手農業者
実施隊に任命された若手農業者

長崎県雲仙市(うんぜんし)ではイノシシによる地域の農作物被害が深刻な状況であったことから、平成23(2011)年、市職員5人で雲仙市鳥獣被害対策実施隊(以下「実施隊」という。)を結成しました。当初は市職員による実施隊が中心となって出前講座や研修会等を開催していました。その後、平成25(2013)年にイノシシ被害に悩む地域の20歳代から30歳代の若手農業者を実施隊に追加任命し、行政や地域住民と問題意識を共有しつつ被害対策の計画立案を行い、農業者の視点を取り入れた侵入防止柵の設置や緩衝帯整備、捕獲等総合的な対策を実施しています。また、実施隊はこれら活動の成果を検証することにより、効果的な対策を今後の活動へフィードバックするなど、地域ぐるみで対策に取り組む環境が醸成されつつあります。

現在は、イノシシによる被害額がピーク時の約6千万円(平成18(2006)年)から700万円まで減少するなど取組の成果が顕著に現れています。加えて、狩猟免許所持者の高齢化が進んでいる中、若手農業者自らも狩猟免許を取得し捕獲にも従事するなど、被害対策を効果的に推進する実施隊の全国モデルとして注目されています。

 

(野生鳥獣の食肉(ジビエ)利用)

現在、捕獲鳥獣の多くは埋設、焼却処分によって処理されていますが、近年では野生鳥獣肉(ジビエ)として利活用し、レストランやスーパーに販売する動きが進展しています。平成24(2012)年度に厚生労働省が実施したアンケートによると、7割近くが日本産の野生鳥獣食肉に関して「今後機会があれば食べる」、「積極的に食べたい」と回答しており、今後野生鳥獣肉(ジビエ)消費量が増えることが想定されます(図3-2-3)。


図3-2-3 日本産野生鳥獣食肉の食への意向調査
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平成26(2014)年11月には「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)(*1)」が策定され、捕獲・狩猟から消費に至るまでの各工程における安全性を確保する動きが広がっています。地域においては捕獲した鳥獣をジビエとして有効活用し、ブランド化を図る取組もみられます。

捕獲した野生鳥獣の食肉利用のためには捕獲場所の近隣に処理加工施設が必要となりますが、これらの処理加工施設の整備も全国で増加傾向にあり、平成20(2008)年12月の42か所から平成27(2015)年6月末時点では172か所まで増加しています(*2)。


1 厚生労働省策定
*2 農林水産省が都道府県に行った聞き取り調査


事例:ブランド化されたジビエ

北海道釧路市

平成26(2014)年度の北海道における野生鳥獣の被害額約49億円のうち約44億円がエゾシカにより引き起こされており、地域農業に与える影響は深刻となっています。

このような中、北海道釧路市阿寒町(くしろしあかんちょう)の有限会社阿寒グリーンファームでは、狩猟等により捕獲されたエゾシカを食肉として加工・販売し地域産業・経済に貢献する地産地消(*1)の取組を行っています。同社は、平成17(2005)年に、衛生・品質管理が徹底された食肉処理加工施設を整備し、HACCP(*2)認証を取得しました。また、捕獲に加え、冬期(1月から3月)に囲いわな等で生体捕獲されたエゾシカを「養鹿牧場」で一時養鹿し、冬期間に痩せた個体を回復させ、安定供給を確保することにより、年間約1,500頭の食肉処理加工を行っています。同施設で処理加工されたエゾシカ肉はブランド化され、また併せて同社ではエゾシカ肉の缶詰やスープカレー等の商品開発も行い、養鹿から食肉加工、販売までを一貫して実施できる体制を構築しています。

生体捕獲(囲いわな)
生体捕獲(囲いわな)
ブランド化されたエゾシカ肉
ブランド化されたエゾシカ肉

さらに、トレーサビリティ(*3)が可能な状態で生協等を通じて道内の消費者や道内外の飲食店等にも提供されており、エゾシカ肉は新たな地域資源としての地位を確立しています。

*1~3 [用語の解説]を参照
 


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