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農林水産省

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第4節 多様な分野との連携による都市農村交流


都市と農村の交流は都市住民の農業や農村に対する理解と関心を深めるとともに、農村で暮らす人々にとっても、地域の魅力の再発見を促す機会となる取組です。

以下では、教育や福祉等多様な分野と連携した都市農村交流の取組について記述します。


(都市農村交流の意義)

図3-4-1 農山漁村の魅力(主なもの2つまで回答)
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農村は、その地域における農業生産活動を通じた、生物多様性の保全、良好な景観の形成、文化の継承等、様々な役割を担っており、地域住民や農村を訪れる都市住民にゆとりや安らぎをもたらします。消費者を対象に行った調査では、農山漁村について「地元の新鮮な食材」、「豊かな自然環境」の2点に魅力を感じるとする割合が高く、また、若い世代ほど農林漁業体験に強い興味を寄せるなど農業・農村に対する関心の高さがうかがえます(図3-4-1、図3-4-2)。

 
図3-4-2 年代別農山漁村における余暇で過ごしてみたいこと
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(グリーン・ツーリズムの取組)

農村において、自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型余暇活動であるグリーン・ツーリズムは、都市住民の農業・農村への関心を高め、地域の活性化に大きな役割を果たしています。滞在の期間は、日帰りから宿泊を伴う長期的なもの、定期的・反復的なもの等様々で、全国各地で多様な地域資源を活用した農家民宿や観光農園等の取組が展開されており、平成26(2014)年度の農家民宿等のグリーン・ツーリズム施設への宿泊者数は、1,027万人(*1)となっています。また、国内外の消費者のニーズの多様性を踏まえ、旅行会社の中には農家民宿や農業体験等を新しい旅行商品として販売する動きもみられるなど、地域の活性化等に大きく貢献しています。


1 農林水産省調べ


(世界農業遺産認定地域の活用)

国連食糧農業機関(FAO(*1))は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形づくられてきた伝統的な農林水産業とそれに関わって育まれた文化、ランドスケープ(*2)、生物多様性等が一体となった世界的に重要な農林水産業システムを世界農業遺産(*3)に認定しています。

我が国では、平成25(2013)年までに認定された5地域に加え、平成27(2015)年12月に開催されたFAO会合において、岐阜県長良川(ながらがわ)上中流域の「清流長良川の鮎(あゆ)~里川における人と鮎のつながり~」、和歌山県みなべ・田辺(たなべ)地域の「みなべ・田辺の梅システム」、宮崎県高千穂郷(たかちほごう)・椎葉山(しいばやま)地域の「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」の3地域が新たに認定されました(表3-4-1)。

認定が地域の人々に誇りと自信をもたらすとともに、農産物のブランド化や旅行者誘致を通じた地域経済の活性化が図られています。


1 Food and Agriculture Organization of the United Nationsの略
*2 世界農業遺産においては、「土地の上に農林水産業の営みを展開し、それが呈する一つの地域的まとまり」と定義
*3 GIAHS「Globally Important Agricultural Heritage Systems」。FAOにより平成14(2002)年から始められた取組

表3-4-1 新たに認定された我が国の世界農業遺産地域

コラム:デザインによる課題解決

近年、課題解決の手段としてのデザインに着目した取組が多くみられます。デザインは、いわゆる見た目の工夫だけでなく、利用する人に商品や取組の背景を伝わりやすくしたり、人と人をつなぐ場を作り出すなど、物事をよりよくする仕組みのひとつとみることができます。

農村には多数の地域資源がありますが、人口減少等様々な課題を抱えていることがあります。そこに新しい視点を加えることで、これまでなかった商品の開発や観光資源の発掘につながることがあります。農業分野でも、生産施設、農業機械や作業着等にデザインを取り入れ、従来よりも使いやすく、見た目にもこだわったものが出てきており、選択肢が広がっています。

公益財団法人日本デザイン振興会の主催するグッドデザイン賞の受賞作品の中にも、食料・農業・農村分野の取組が多くみられるようになってきました。グッドデザイン賞では、有形無形を問わず、様々な物事を応募対象として受け付けており、応募作品の裏側にあるプロセスや意義等多様な面を総合的に判断し審査が行われています。平成27(2015)年には、観光資源となる牛舎等の生産施設、農家の民家を改修することによるコミュニティの創出等、多くの取組が受賞しました。いずれの作品も、デザインを通じて、課題に対して新たな視点で解決を図った取組となっています。

生産者と消費者のコミュニケーションの道具としてもデザインは重要であり、地域を深く理解するデザイナーを活用する事例も多く出てきています。今後も、デザインを活用した課題解決を図る取組が増えることが期待されます。


資料:公益財団法人日本デザイン振興会ホームページより農林水産省作成

(教育分野との連携)

子供が農業を体験することや農村地域の人々との交流を深めることは、将来の農業・農村に対する国民の理解を高める上で重要です。農林水産省、文部科学省及び総務省では、「子ども農山漁村交流プロジェクト」により、子供の農山漁村における宿泊体験を推進しており、農林水産省では宿泊・体験施設の整備や受入体制づくり、体験活動を支援する人材の育成等を支援しています。

このプロジェクトでは、子供が農林漁家に宿泊するなどして、地域の人々との交流を行いながら、豊かな自然や伝統・文化に触れるなど、農山漁村の生活や農林漁業等を実際に体験します。体験を通じて食の大切さや農山漁村・農林漁業への理解を深めるとともに、子供の豊かな人間性や社会性を育むなどの教育効果、地域や集落の活性化、女性や高齢者の活躍の場の提供としても期待されています。


事例:体験型教育旅行を通じた交流

山口県周防大島町
みかん収穫体験
みかん収穫体験

山口県周防大島町(すおうおおしまちょう)は山口県東南部の瀬戸内海に位置し、みかんの生産が盛んな町です。同町では、高齢者の生きがいづくりや町内の活性化等につながることを期待して、平成20(2008)年から体験型教育旅行の受入れを始めました。

受入窓口となる周防大島町体験交流型観光推進協議会は、農漁家への民泊を行いながら地域特産のみかんの収穫を行う農業体験や、収穫したみかんの加工を行う缶詰づくり体験、手作りジャムの専門店を起業した方との意見交換等を体験メニューとして開発し、平成27(2015)年度は3,674人の児童生徒が来訪しています。

みかん収穫体験等を経験した児童生徒からは、「深い思い出になった」、「周りの人とのつながりや家族をもっと大事にしたい」等の感想が民泊先に寄せられるなど、交流を通じ、豊かな人間性や社会性が醸成できたと派遣元の学校では評価しています。受入先の農漁家も、「児童生徒の来訪により活気が出た」、「普段は気づかない生活の知恵や地域の財産などに改めて気づいた」等と評価しています。

 

(福祉分野との連携)

近年、農業法人等が、障害者を個々の障害特性に応じて雇用する取組、高齢者が働きやすい環境を整備して、高齢者の健康や生きがいの向上に結び付ける取組等、農業と福祉が連携した取組(以下「農福連携」という。)が展開されています。特に、これまで農業分野は専門外であった企業が農業分野に進出する事例が増えており、障害者就労支援事業所へのアンケート調査によると23.7%は過去4年以内に農業活動を始めています(図3-4-3)。

農林水産省と厚生労働省では農福連携の認知度向上に向け、平成25(2013)年10月に農林水産省で障害者就労支援施設が作る焼き菓子やジャム等の商品即売会を開催しました。さらに、平成27(2015)年6月には、両省の大臣が出席して農林水産省で農福連携マルシェを開催し、全国各地の障害者就労支援施設が生産した農産物や農産加工品等の販売が行われ、来場者の関心を集めました。


図3-4-3 障害者就労支援事業所の農業活動への取組状況
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事例:福祉分野との連携による地域活性化

(1)高齢者等が活躍する地域活性化の取組

岩手県花巻市
農産物加工作業の様子
農産物加工作業の様子

岩手県花巻市(はなまきし)の高松第三行政区ふるさと地域協議会は、地域住民全員を構成員として、少子高齢化等多くの課題を抱える地元を活性化する目的で、平成20(2008)年度に設立されました。

同協議会は、貸し農園や神楽の伝承と後継者の教育、地域の名勝・旧跡の保全整備に取り組むとともに、地域のデイサービスや障害者施設と共同で高松福祉農園を運営しています。この農園では、山の果実(ガマズミ)、野菜等を栽培し、収穫された農産物や加工品は「ふるさと宅配便」として地元を離れた同地域の出身者等に届けられています。

現在、同協議会では農園で生産された農作物の加工を通じた新商品の開発を進めており、収益の向上が見込まれるようになれば、活動している高齢者への還元も含め検討しているところです。また、今後の取組として、共同管理している農園の拡張や高齢者生活支援と農産物の加工ができる複合施設の建設等を進めるとともに、農福連携による地域づくりを進めるための法人の設立も検討しています。

これらの活動を開始した後にUターン等の移住世帯の流入があり、世帯数が増加した同地域では高齢者等の活動の場が確保されるなど、農福連携を通じ、地域の活力が高まりつつあります。

 

(2)障害者が活躍する農業活動

山口県萩市
農作業に取り組む皆さん
農作業に取り組む皆さん

山口県萩市(はぎし)の社会福祉法人E.G.Fでは、メロン、いちご、野菜の苗作りから収穫、加工まで、障害者の能力に応じ各工程に障害者が関わる農業事業を展開しています。

下請け的な作業ではなく、本物づくりを目指して、12粒2,500円で販売する有機栽培いちご、高い需要の国産手むき栗等を生産し、営業にも力を入れ、農作物や農産物加工品を販売しており、ほ場での障害者の活動をみた地域住民や農地所有者からの農地の管理依頼も増加しています。

このような活動により、これまで働く場所が少なかった障害者が、農業に生きいきと携わることで、地域の中での存在感が増しています。(第2回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定地区)

 


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