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農林水産省

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(2)農業の復興に向けた取組


(被災3県の農業経営体数は減少したものの、法人経営数は増加)

被災3県の農業経営体(*1)数についてみると、平成27(2015)年は13万9千経営体で、震災前の平成22(2010)年に比べ22.5%減少し、全国の減少率よりも4.5ポイント大きくなっています。一方、被災3県の法人経営数についてみると、平成27(2015)年は2,007経営体で、震災前の平成22(2010)年に比べて29.3%増加し、全国の増加率よりも4.0ポイント上回っています(表4-1-2)。

また、津波被害のあった沿海市区町村と内陸市区町村についてみると、沿海市区町村における農業経営体数が内陸市区町村に比べて大きく減少しています。


1 [用語の解説]を参照


(被災3県の1経営体当たりの経営耕地面積は増加)

被災3県の1経営体当たりの経営耕地面積についてみると、平成27(2015)年は全ての県で平成22(2010)年よりも増加しています(表4-1-3)。

また、津波被害のあった沿海市区町村と内陸市区町村についてみると、宮城県は両区分ともに大きく増加しているものの、岩手県及び福島県では内陸市区町村の増加が大きく、沿海市区町村は岩手県で0.2ha、福島県で0.1haの増加にとどまっています。



(被災3県の経営耕地面積は大規模層で増加)

被災3県の経営耕地面積規模別の農業経営体数について、平成22(2010)年から平成27(2015)年の増減率をみると、10ha未満層では岩手県の5ha未満層を除き全国平均を下回っている一方、10ha以上層では、福島県の50ha以上層を除き全国平均を上回っています(図4-1-3)。

県別にみると、岩手県及び宮城県は50ha以上層が最も増加し、福島県では30haから50ha未満層が最も増加しています。



(被災3県の農産物販売金額は一部を除き5,000万円以上層で増加)

被災3県の農産物販売金額規模別の農業経営体数について、平成22(2010)年から平成27(2015)年の増減率をみると、岩手県では5,000万円以上層で増加し、宮城県についても1億円以上層で大きく増加しているものの、福島県は全ての層で減少しています(図4-1-4)。



(被害を受けた農業経営体の農業所得は順調に回復)

津波被害を受けた農業経営体の経営の回復状況を継続的に把握するため、市町村を通じて協力を得られた経営再開の意志を有する326経営体を対象に、震災から数年間、定点調査を実施することとしており、調査対象経営体のうち平成26(2014)年12月末までに、8割以上の経営体が経営を再開しています(図4-1-5)。



経営を再開した経営体のうち、平成25(2013)年までの販売収入が震災前の水準に達しなかった経営体について、震災前の被災農業経営体の農業所得を100とした所得水準をみると、耕地の復旧が進んだこと等により、3県平均で平成25(2013)年の40から平成26(2014)年では49となっています(図4-1-6)。



また、経営を再開し平成25(2013)年までの販売収入が震災前の水準を上回った経営体を含めた農業所得の水準は、3県平均で震災直後の平成23(2011)年の23から平成26(2014)年では70になると試算されています(図4-1-7)。

経営を再開し、農業所得の回復を図るためには、集団化・大規模化等の新たな営農・流通システムの導入、新たな品目や高度な生産・管理技術の導入等を行うとともに、新たな販売先の開拓など販売面における課題等にも対応していくことが重要です。



事例:被災地の生産者と消費者をつなぐ食べ物付き情報誌

岩手県花巻市
東北食べる通信
東北食べる通信
東北開墾のメンバーの皆さん
東北開墾のメンバーの皆さん

岩手県花巻市(はなまきし)の特定非営利活動法人東北開墾は、平成25(2013)年7月から食べ物付き情報誌「東北食べる通信」を発行しています。

東北地方では、東日本大震災からの復興が進む一方で、地域に就職しようとする若者がいない、農業を継いでも食べられない、親も継がせようとしないなどの担い手不足の問題を抱えていました。

代表理事の高橋博之(たかはし ひろゆき)さんは、分断された生産者と消費者を情報でつなぐことが、一次産業再生のカギだと考え、「世なおしは、食なおし」を胸に、生産者の地位を高めるためにはどうしたらよいか考えました。そこで、ただ物を売るのではなく、価値を伝え、生産現場の裏側を知ってもらうことにより、愛着を持って食べてもらえるようになると考え、食べる通信を創刊しました。

また、同法人では、情報の発信だけではなく、生産者と消費者の継続的なつながりが持てるように、消費者を生産現場に招待する企画や、購読会員のみのSNS(*)を設置することによる地方と都市の新しい関係づくりの試みを進めています。

平成26(2014)年4月には、東北以外の、各地の個人・団体がそれぞれの地域で食べる通信を創刊できるよう、創刊サポートと全国の編集部の連携を行う「日本食べる通信リーグ」の運営を始めました。

さらに、平成27(2015)年には、独自に全国各地の農家・漁師が、生産現場から生の言葉を届けることができるウェブメディア「NIPPON TABERU TIMES」の運営を始めるなど、取組の幅を広げています。

今後も、全国で食べる通信を通じて生産者と消費者をつなげていき、都市から農村に実際に足を運んでもらう取組を進めていきたいとしています。

*Social Networking Serviceの略。登録された利用者同士が交流できるウェブサイトのサービス
 

(農業者への支援等)

図4-1-8 被災農家経営再開支援事業の取組市町村

農林水産省は、被災した農業経営体が、地域農業復興組合を設立し農地に堆積するごみや礫(れき)の除去等の経営再開に向けた復旧作業を共同で行う取組に対して、経営再開のための支援金を交付し、地域農業の再生と早期の経営再開に取り組んだところです。平成27(2015)年度においては、8市町村、15組合で取組が実施されました(図4-1-8)。また、被災した農業者の経営再開を支援するため、平成23(2011)年度から、被災農業者等が借り入れる株式会社日本政策金融公庫等の災害復旧・復興関係資金について、一定期間(最長18年間)実質無利子、実質無担保・無保証人での借入れ(*1)を可能とする等の措置を講じています。


1 担保や保証人を徴求する場合にあっては、融資対象物件担保や同一経営の範囲内の保証人のみ徴求


事例:地元農家と農業協同組合の連携による取組

宮城県仙台市
JA仙台農産物直売所「たなばたけ高砂店」
JA仙台農産物直売所
「たなばたけ高砂店」

宮城県仙台市(せんだいし)のJA仙台農産物直売所「たなばたけ高砂(たかさご)店」は、震災復興のシンボルとするため、仙台を代表する「七夕(たなばた)」と「畑(はたけ)」を組み合わせて名付けられ、平成23(2011)年10月にリニューアルオープンしました。

前身の直売所は、震災の2日後には再開し、農協の精米工場をフル稼働して精米をそろえ、また、被害がさほど大きくなかった山側の生産者は自らトラックで野菜等を直売所に届けるなど、産地と直結したJA直売所として震災時に住民への貴重な食料供給の場として活動しました。

新しくなった直売所は、もとの店舗の5倍の広さとなり、生産者からの出荷品のほか地元農産物を使っているスイーツ工房等が開設されており、平成28(2016)年3月には東北の玄関口であるJR仙台駅の駅ビルにスイーツ工房の2店舗目を出店しました。出荷登録者も当初の280人から平成28(2016)年2月には660人となり、年々増加しています。また他産地の農協と連携し、季節ごとの各地の新鮮な国産農産物を販売し、6次産業化(*)や農商工連携を推進する中で付加価値を付けた加工食品等の提供も行っています。

今後は、消費者と生産者が共生できる場、食育の場となる都市対応型の農産物直売所として、「たなばたけブランド」を育てていきたいとしています。

* [用語の解説]を参照
 

(「新しい東北」の創造に向けた取組)

東北地方では、震災前から人口減少、高齢化、産業の空洞化等、全国の地域が抱える課題が顕著に表れていました。このため、復興庁は、復旧・復興に取り組むに当たっては、単なる原状回復にとどめるのではなく、企業・大学・NPO(*1)等の民間の人材やノウハウの活用によりこれらの課題の解決を進めることで、我が国や世界のモデルとなる「新しい東北」を創造することとしています。

「新しい東北」の創造に向けた取組の推進に当たっては、企業・大学・NPO等の「民」のノウハウや新たな発想が十分にいかされるよう、官民が連携し、それぞれの強みを持ち寄って取組を進めていくことが重要です。

このような認識の下、復興庁では、先進的な取組の加速化とその横展開、情報共有・マッチングに向けた場づくり、民間の人材・ノウハウ・資金の活用等の取組を進めています。

まず、先進的な取組の加速化とその横展開については、被災地で既に芽生えている先導的な取組を加速し、「新しい東北」の創造に向けたノウハウを構築するため、東北産花きのブランド化等の先導モデル事業を実施しており、平成27(2015)年度は55事業を選定・支援しました。さらに、先導モデル事業で蓄積したノウハウ等の被災地での横展開に向けた施策として、平成27(2015)年2月に地方公共団体等をメンバーとする「地域づくりネットワーク」を立ち上げました。

また、情報共有・マッチングに向けた場づくりとして、平成25(2013)年12月に立ち上げた「新しい東北」官民連携推進協議会を活用して、被災地の事業・取組を支援する様々な情報や各種イベントの情報を集約したウェブサイトを運営しています。さらに、協議会会員等が対面で情報共有や意見交換を行うことができる場として「交流会」等を開催しており、各種支援と支援ニーズとのマッチング、様々な主体間の連携、先進的な取組の横展開等のきっかけづくりの場を提供しています。平成27(2015)年度は、「交流会」等を岩手県、宮城県及び福島県の3県のほか、東京都や兵庫県でも開催しました。

このほか、民間の人材・ノウハウ・資金の活用として、被災地での新たな資金供給の創出を目指す「復興金融ネットワーク」の取組や、被災地域の民間企業が産業復興の中核を担えるよう、地方公共団体、産業支援機関、商工会議所・商工会等の企業支援担当者、企業支援の専門家、民間復興支援団体・組織等が連携し、新たな事業の立ち上げへの支援、情報共有・協力関係を構築する「企業連携グループ」の取組を行っています。


1 [用語の解説]を参照


事例:新しい東北の創造に向けた取組

(1)世界にも通用する究極のお土産 ―「新しい東北」の挑戦―

品評会(最終審査会)の様子
品評会(最終審査会)の様子

復興庁では、民間企業・団体と共同で、「新しい東北」を始めとした東北での挑戦の成果を、被災地や復興に関心が高い国民だけでなく、広く全国に発信する「『新しい東北』官民共同PR事業」を行っています。

同事業の一環として、平成27(2015)年度には、東北のお土産に込められた挑戦のストーリーを全国に伝えることを目指した食品のコンテスト「世界にも通用する究極のお土産―「新しい東北」の挑戦―」が実施されました。同コンテストには東北6県から約500商品の応募があり、一次審査を通過した112商品について、最終審査会を行い、究極のお土産10商品と特別賞1商品が決定されました。

決定した10商品については、最終審査員の10社等による「究極のお土産」をテーマとした催事の開催、特集記事の掲載等のタイアップ企画が順次実施されており、東北での挑戦の成果を全国に伝えています。

 

(2)郡山市ブランド野菜の取組

福島県郡山市
郡山ブランド野菜ツアーの様子
郡山ブランド野菜ツアーの様子

福島県郡山市(こおりやまし)は、ミネラル豊富な土質、安積疏水(あさかそすい)の清らかな水、澄んだ空気等、農業に適した環境を有しながら、「土地を象徴するような野菜がない。ならば自分たちで創り上げよう。」そんな想いから、平成15(2003)年より農業の経験から培われた野菜の目利き力をいかし、数百種類の中から毎年1つだけ珠玉の野菜を選び抜き栽培する「郡山ブランド野菜」の取組を始めました。

この取組は、東日本大震災で被災した後も続けられ、復興庁の平成27(2015)年度「新しい東北」先導モデル事業として採択・支援されることとなりました。

先導モデル事業では、農業と観光を融合させた新たな6次産業化と関係団体によるネットワーク化の試行、販路拡大・品質安定化に向けた地域産品生産のモデルケース確立を目的とした取組を行っています。具体的には、農業と観光に関わる様々な担い手を集結し、「買う」、「食べる」、「体験する」をテーマとした情報と顧客を共有する枠組みを構築しています。平成27(2015)年11月には生産者、直売所、レストラン等が連携したツアーを開催し、畑を観光資源とした収穫体験やこだわりの料理教室等、ブランド野菜を丸ごと体感する機会を創出しました。

併せて、栄養成分分析や味覚センサーを活用した「おいしさの数値化」にも継続して取り組んできており、平成27(2015)年度には生産工程のデータベース化による基準を策定し、生産量の拡大と品質維持の両立を図っています。さらには、このような取組を販路拡大に結び付けるため、栄養価の高さと、各種数値化の成果を根拠とした販売手法への活用手法の確立を目指しています。

これらの農業を基軸とした体験型観光と担い手のネットワーク化、明確な数値を根拠とした販路拡大と新規就農者支援は、全国の6次産業化のモデルとなることが期待されています。

 

(産学官が連携した先端的技術の大規模実証研究)

東日本大震災の被災地を新たな食料生産地域としてより一層早期に復興させるため、農林水産省は、「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」により、これまで産学官が開発してきた多くの農林水産分野における先端技術を組み合わせ、最適化し体系化するための大規模実証研究を、岩手県、宮城県及び福島県の3県で37の研究課題について行うとともに、その成果の普及・実用化を推進しています。

農林水産省は、実証研究を通じて、東日本大震災による被害を受けた地域における農林水産業の復旧を加速化し、単なる復旧にとどめることなく、多様な環境に応じた新しい技術体系の確立を目指し、持続可能な営農のために必要な研究開発等を実施しています。


事例:乾田直播とICTを活用した低コスト営農の取組

宮城県名取市
佐藤克行さん
佐藤克行さん

宮城県名取市(なとりし)の有限会社耕谷(こうや)アグリサービスは、農地集積等による生産の効率化と高付加価値型農業による経営の安定化を目指す組織として、平成15(2003)年に地域の担い手農家4戸が役員となって設立されました。

平成27(2015)年度は、役員3人のほか、社員9人、パート4人を雇用し、水稲85haを中心にして、経営面積148haを耕作しています。

同社は、東日本大震災により、当時の経営面積76haのうち約9割が浸水したほか、トラクター等の農業機械も被害を受けましたが、被災後すぐにがれきの撤去や農地の除塩、農業機械の再整備等に着手しました。

自社農地の復旧を進めていたところ、排水機場の被害で水稲の作付けを行えなくなった近隣の農家から60haの大豆作付の依頼があり、それら全てを引き受けて営農を再開しました。

平成24(2012)年度からは、「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」による実証試験として、15haで水稲の直播(ちょくはん)栽培を行い、そのうち乾田直播(ちょくはん)を8haで実施しています。乾田直播(ちょくはん)では、2割程度の経費削減と播種(はしゅ)作業の前倒しによる作業分散が図られることから、低コスト化に向けて非常に手応えを感じています。

さらに、同事業でICT(*)を活用した気象データの蓄積を行っており、平成27(2015)年度までの4年間のデータを活用することで、出穂時期や刈取時期の予測精度が向上し、作業計画の策定等の効率化に役立っています。

社長の佐藤克行(さとう かつゆき)さんは、これからも地域の担い手と手を携えながら、地域に密着した農業を続けていくため様々な取組を進めていきたいとしています。

* Information and Communication Technologyの略。情報や通信に関する技術の総称
 

(復興に向けた新たな動き)

東日本大震災の復興期間は、「東日本大震災からの復興の基本方針」において、10年間とされ、また、当初の5年間を「集中復興期間」と位置付けました。

一方、これまでに講じてきた加速化措置等により、被災地における産業・生業(なりわい)の再生が着実に進展してきたため、平成28(2016)年度以降については、復興の新たなステージとして、「復興・創生期間」と位置付けられました。今後は、復興期間の総仕上げに向け、将来を見据え、自立につながるような被災地域の農林水産業の復興を実現することを目指すこととしています。



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