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農林水産省

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(1)農業分野における新技術の開発・普及


(研究開発の取組状況を「見える化」するロードマップの公表)

農林水産省では、農林水産研究基本計画(平成27(2015)年3月策定)において、10年程度を見据えた研究開発の重点目標や、それを実現するための推進施策を定めています。この計画に基づき、農林水産研究の重点目標と毎年度の研究開発予算との関連付けを明確化し、研究開発の取組状況等を俯瞰(ふかん)できるものとして、平成28(2016)年9月に研究開発ロードマップを公表しました(図表2-4-1)。

このロードマップは、農林水産分野の研究概要を「見える化」することにより、新たな産学官連携や他分野との連携を促進するものとしています。

図表2-4-1 研究開発ロードマップからの抜粋(加工・業務用野菜部分)

(新たな産学連携の仕組みづくり(「知」の集積と活用の場の構築))

農林水産省では、優れた技術をもつオランダのフードバレーの事例等を参考に、異なる分野の新しい発想や技術を取り込み、革新的な研究成果を生み出すとともに、これまでにないスピード感をもって、それらの研究成果を商品や事業に結びつける新たな産学連携研究の仕組み(「知」の集積と活用の場)づくりを推進しています。平成28(2016)年4月には、民間企業、農業者、大学、研究機関、非営利法人等の多様な関係者が集まり、「知」の集積と活用の場の中核となる産学官連携協議会が発足しました。この協議会の会員数は、平成29(2017)年3月時点で1,566となっています。

一定の研究領域に関する問題意識や課題を共有し、商品化・事業化に向けた研究戦略を策定し、マネジメントする場である研究開発プラットフォームは、同協議会において当面推進すべき6つの研究領域を中心に、平成29(2017)年3月時点で51設立されています(図表2-4-2)。各プラットフォームにおいては農林漁業者も議論に参加する形で新たな研究開発に向けた戦略づくりが行われており、これらの戦略に基づき研究コンソーシアムにおいて革新的な研究開発が進められています(図表2-4-3)。

図表2-4-2 生産・流通技術に関する主な研究開発プラットフォーム
図表2-4-3 「知」の集積と活用の場の全体構造(イメージ)

(経済界との連携による農業界への技術等の導入)

農業の競争力強化を図るためには、農業界と経済界が連携し、経済界の有する技術等を農業界に導入することが重要です。なかでも、カメラを用いて植物中の葉緑素含有量を計測し、農作物の生育状況を把握する技術(センシング技術)は、ビッグデータやAI技術と組み合わせることで、今後、高い生産性の実現が期待されている技術の一つです。

農林水産省では、カメラを用いたセンシング技術の実用化に向けた実証について支援を行っています。具体的には、カメラの製造・販売を行う企業や農業法人等で構成するコンソーシアムが、カメラやドローンを用いた水稲の生育評価と追肥作業の省力化の実証に取り組んでいます。今後、この技術が実用化され、広く農業界に普及されることで、稲作生産に取り組む農業者の生産コストの低減が期待されます。

(ゲノム情報を活用した新たな育種体系の確立)

農産物の多くは、味の良さや収穫量の多さを目指して、野生植物に品種改良を重ねて作られています。しかしながら、自然交配を繰り返す育種法では、優良個体の選抜に時間と手間がかかり、また、育種者の経験と勘を頼りにする交配が行われてきています。

農林水産省では、平成25(2013)年度から、麦・大豆・園芸作物のDNAマーカー(*1)の開発等を進め、既にDNA解析が進んでいる米も含めて新品種育成期間を現行の3分の1とすることを目標とした、「ゲノム情報を活用した農産物の次世代生産基盤技術の開発プロジェクト」を実施しています。

また、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が決定する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一つとして、平成26(2014)年度から次世代農林水産業創造技術についての研究が始まっています(図表2-4-4)。この研究においては、センシング技術やロボット技術を活用した生産システムの開発等とともに、農業の成長産業化を品種開発の面から支えるため、国産ゲノム編集技術の開発と知的財産化、民間への技術移転による育種期間の更なる短縮化や育種素材の開発についての研究が進められています。

*1 DNA塩基配列の品種間での違いを識別することで、 ゲノム上の目印としたもの。DNAマーカーにより、特定の遺伝子が親から子へ受け継がれたかどうか検定可能

図表2-4-4 SIPにおける国産ゲノム編集技術の研究

(国際的な農林水産業研究についての施策の方向性を示す戦略を策定)

農林水産研究基本計画においては、世界の人口増加や気候変動問題等、地球規模の様々な課題が深刻化する中で、重点目標の一つとして「気候変動等の地球規模課題への対応や開発途上地域の食料安定生産等に関する国際研究」を掲げています。

農林水産省では、これらの内容を更に具体化し、今後の国際農林水産業研究についての施策の方向性を示すため、平成28(2016)年7月、以下の4つの柱からなる国際農林水産業研究戦略を取りまとめました。

<1> 国際競争力のあるイノベーションの促進等を念頭においた国益に直結する国際農林水産業研究の推進

<2> 開発途上地域における技術開発の推進

<3> 地球規模での国際貢献の増大につながる国際農林水産業研究の推進

<4> 国際的なオープン・イノベーションの仕組み等に関する環境整備

このうち<1>の取組としては、農林水産省とイスラエル農業・農村開発省やロシア科学基金との間で、農業科学分野の研究実施のための研究に関する覚書を締結し、それぞれの国において、国際共同研究チームが行う農業科学の基礎研究と調査に対する支援を共同で実施していきます。

(研究成果を「見える化」し、農業者等が活用しやすくなる取組を推進)

研究開発の成果を生産現場に普及するに際しては、各都道府県の普及指導員が研究機関と農業者をつなぐ重要な役割を果たしています。農林水産省では、都道府県と協同し、普及指導員を全国に配置し、農業者に対する技術や経営の支援を行う協同農業普及事業を実施しています。

規模拡大や法人化が進む中で、近年、現場の担い手から、技術的問題の解決に向けて、最新の技術や研究成果について情報を得たいとの要望が寄せられていることから、農林水産省では、平成28(2016)年度から、ホームページ上に、全国の大学や国立研究開発法人、都道府県の公設研究機関の農業研究者をリスト化し、氏名、専門分野、連絡先等を公表する取組を始めました。リスト掲載人数は、平成29(2017)年3月時点で約3,400人となっています。さらに、平成29(2017)年度からは情報・研究成果情報を整理・分類し、ホームページ上で公表することを予定しており、これにより様々な技術や研究成果の情報を、農業者や普及指導員が得やすくなり、現場の課題解決や生産性の向上等に資することが期待されます(図表2-4-5)。

図表2-4-5 研究成果の活用イメージ

事例:注目される研究開発の成果

(1)シャインマスカットの長期貯蔵(全国)

山形県農業総合研究センター、地方独立行政法人青森県産業技術センター、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という。)は、ぶどうのシャインマスカットの穂軸(ほじく)からの水分補給による長期貯蔵技術を開発しました。シャインマスカットは農研機構果樹研究所(当時)が育成した品種で、食味に優れ、皮ごと食べられることから消費者の人気が高く、栽培面積も全国で拡大しています。他品種に比べ貯蔵性は高いものの、普通冷蔵による貯蔵では穂軸(ほじく)の褐変(かっぺん)や果実の品質劣化により2か月程度が限界です。この技術では、収穫後のシャインマスカットの穂軸(ほじく)に水道水を入れたプラスチック容器を装着し、冷蔵することで、4か月の貯蔵期間を経ても商品性の維持が可能となります。この技術を活用し、国産ぶどうが品薄となる10月以降から年明けにかけて、高品質なシャインマスカットの供給を実現するとともに、東アジア等で需要が高まる春節に向けての輸出も可能となることから、出荷時期をずらした有利販売や新たな需要の開拓が期待されます。

貯蔵4か月後のシャインマスカットの比較

(2)光で集めた天敵が害虫を駆除(全国)

農研機構は、国立大学法人筑波大学、株式会社シグレイとともに、アザミウマの天敵であるナミヒメハナカメムシが、日没前後の時間帯に波長405nmの紫色光へ強く誘引されることを明らかにし、本天敵を集めるための紫色LEDを内蔵した天敵誘引光源装置を開発しました。アザミウマは野菜や果物等の害虫ですが、近年、農薬抵抗性を獲得したものが広がっており、化学農薬による防除が困難となっていました。ナスの無農薬栽培で、ほ場周囲にナミヒメハナカメムシが生存できる植物を植えて生息環境を整え、ほ場内に光源装置を設置したところ、より多くのナミヒメハナカメムシが集まり、アザミウマを6割減らすことに成功しました。紫色光は、多くの害虫が好む波長と異なるため、ナミヒメハナカメムシを選択的に呼び寄せることができます。ナミヒメハナカメムシを集める光源装置の開発は、農薬抵抗性を持つアザミウマの駆除を可能にするほか、減農薬・無農薬栽培にも貢献するものとして期待されています。

紫色LEDによる害虫防除の効果


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