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第9回地域リーダー・有識者との意見交換会の議事概要

1   開催日時

平成17年1月17日(月曜日)13時30分~15時15分

2   開催場所

さいたま新都心合同庁舎2号館5階共用大研修室5A
(埼玉県さいたま市中央区新都心2-1)

3   出席者

(1)講師シンボライズファーム亀田牧場代表   亀田 康好 氏
(2)関東農政局局長、局次長ほか局職員

4   テーマ

「酪農経営を通じた食育」

5   講師の紹介

昭和48年に就農。酪農経営の傍ら、平成9年筑波大学附属坂戸高等学校非常勤講師、平成12年地域交流牧場全国連絡会理事、酪農教育ファーム推進委員会審査委員などを歴任され、現在は、農林物資規格調査会部会委員。

6   意見交換会の概要

シンボライズファーム亀田牧場代表亀田康好氏は、埼玉県坂戸市で乳牛66頭で酪農を営む。25年前から地元の幼稚園の園児と牛との触れ合いを通じた食育を行ってきており、近年では酪農教育ファーム推進委員会((社)中央酪農会議)のメンバーとして、東京都内の小学校へ乳牛をつれていき子供たちの搾乳体験等を通して、毎日給食で飲んでいる牛乳について理解を深めてもらう等の活動を積極的に行っている。
今回は、亀田康好氏から、酪農経営の現状と酪農経営を通じた地域活動や食育などについてご講演いただき、意見交換を行った。

7   講演概要

○経営の経過(乳牛の改良と登録、自給飼料生産、地域活動)

乳牛の改良を志して、酪農経営の本来あるべき姿を求めながら牛飼い人生を過ごしたいという思いでやってきた。これまで、様々な活動を通じてきたことにより現在の自分があると考えるが、そのことを最初にお話したい。
現在、牛群では乳量は10400キロ程度であるが、その大本は昭和40年代後半から50年代に導入した牛が基礎となっている。これは自家育成によって6代7代と代を重ねて改良してきた結果だと思っている。酪農経営は継続することが大切。
乳牛の改良と一言でいうと簡単であるが、やはり乳牛のことを理解しないとできないこと。観察する目、それは経験が養うもであるが、牛は物を言わないので異常に気が付かなければならない。
また、改良の記録を残しておくことも大切。当時から登録したり乳牛の検定を受けてきたので、牛の末代まで記録が残っているが、そのことが時々の励みとして継続する力となっている。
振り返ると1万キロを搾るのに四苦八苦した時代もあったが、本来の遺伝能力以上のものを引き出させていた時期は、牛たちが体を張って訴えていたようだ。今は、牛たちに無理をかけない飼養管理を行うことで高乳量を維持しているが、これは、まさに遺伝能力又は記録の積み重ねだと考えている。
現在、国内の牛群検定の加入率は、全国平均では40%、北海道では60%であるが、首都圏になると20%台に落ちてしまう。特に埼玉県は、全国ワースト1である。牛群検定が酪農家の間に普及・定着しなかったことは、牛乳は大切に扱うがそれを生産する乳牛への思いが希薄になってしまったことが原因である。そのことに気付いて欲しいという思いもあり、現在、家畜改良事業団の機関紙に投稿して、牛群検定・登録の大切さや牛飼いの面白さなどを訴えている。
酪農は循環型農業の模範的なものであるが、北海道で学んできたことは、土作り、草作り、牛作りである。酪農に取り組もうとした頃は、輸入の乾草が順調に出回るようになったため、周囲では草作りをやめて、安易に手に入る輸入飼料にたよる楽な牛飼いをする風潮が強くなったが、牛は土地の産物であり、自分で生産した草を食べさせたいとの考えから自給飼料生産に取り組んできた。また、糞尿の処理も畑でリサイクルできるというメリットもある。現在は10haの畑でデントコーンサイレージ、イタリアンライブラスとルーサン(アルファルファ)を栽培しているが、これで35,6頭の経産牛に必要な粗飼料は、ほぼ賄っている。
自分で作った餌でいい牛を作り、いい牛乳を生産することが目標であり、適切な肥培管理をした餌を与えると大変喜んで食べてくれる。とくに、アルファルファはコストを考えると合わないが、豆科の牧草の女王様といわれるくらい栄養価が高いことから、牛が一番安心して喜んで食べてくれる。
酪農家として、又社会の一員として、地域との触れ合い大切にしたいとの思いか ら、坂戸市の公民館非常勤職員制度というものを通じて、24年間地域活動に参画 してきたが、このことがこれまでの自分の活動の原点となっている。

○酪農教育ファーム(地域交流牧場全国連絡会、わくわくモーモースクール)

平成10年、中央酪農会議がフランスやイギリスで行われている「酪農教育ファーム」を日本に取入れたいということで、学者、酪農家、教育関係者からなる酪農教育ファーム推進委員会を立ち上げて、酪農教育ファームの認証牧場を作るための検討が始まった。
平成12年、牧場を開放し子供や消費者に酪農をもっと知ってもらいたいということで、地域交流牧場全国連絡会(現在の会員は230牧場)が発足した。また、その翌年には、酪農教育ファームの認証牧場も誕生した。この地域交流牧場や酪農教育ファームは、小学校や教育関係者に徐々に認知され、平成16年には25万人余りの消費者や子供達が牧場体験した。

自分が消費者に酪農のことをもっと知ってもらいたいと感じたのは、昭和53年から始まった牛乳の計画生産がきっかけである。その当時、父が市の教育委員をやっていたこともあり、幼稚園に牛を連れて行くことを始めた。
牛を幼稚園に連れて行くなり、園児が窓から「牛さんだ牛さんだ」と大騒ぎであった。こんなに牛が人気者であることに気付いたのはそのときが始めてであったが、園児たちに牛の話しをしても全く通用しないということも思い知らされた。翌年からは、どう園児に話をしたら分かってもらえるか、聞いてもらえるかなど基本的なこと勉強した。例えば、しっぽの役割など・・・。
何も分からない園児に専門的な話しをしても何も伝わらないということ。園児の目線で考えて分かりやすいように話さないとダメ。園児の目線は低いので、「どうして牛さんは大きいの」という質問が毎年一番多く出されるが答えるのは大変難しい。牛のことを本当によく知り、それを噛み砕いて答えないと理解してもらえない。
当時流行した成分濃度の高い濃厚飼料を多給することによって、1頭当たりの乳量を引き上げることができたが、翌年から病気になったり、種付けが悪くなったりした。給餌計算もしているのにどうしてだろうと悩んだが原因がわからなかった。そんな時に園児に「牛さんの好物は草なんだよ」と話している自分に気づき、これは園児に教えられたなぁと感じた。それまでは、配合飼料の水準を上げることばかり考えていたが、やはり草を与えないと、いいものを与えてもダメだということを教えられた。
東京の小学校に牛を連れて行く取組みを始めるとき、周囲からは、「我々の活動は消費者に牧場に来てもらって体験してもらうこと」と反対もあったが、酪農教育ファームなどの活動を理解してもらうためには待ちの姿勢ではダメと、平成13年に第1回わくわくモーモースクールを開催した。そのときのことが、立松和平著の「酪農家族4牛が学校にやってきた。」のモデルになった。わくわくモーモースクールはこれまでに5回開催してきたが、今年は企業にも参加してもらい搾乳体験や牛乳の製造過程など酪農全般についての学習ができるようになった。
わくわくモーモースクールの翌日は、学校給食で牛乳の飲み残しがなくなるなどその効果が端的に現れるようである。
当初は、東京23区内の小学校に限定してやろうということであったが、各県の酪農家も参加していることから、来年度は関東ブロックに広げて行きたいと考えている。
食育を考えた場合、その原点は、生産現場と生産に携わる農家の思いが加わってこそ、食に対する感謝、食の大切さ、命の大切さというものが伝わるのではないか。農業分野における今後の食育の方向は、こうした体験活動を行っていくことが必要と考える。
現在、埼玉県ではチャレンジ事業として中学生を対象とした職場体験授業がある。当牧場でも10名ほど受け入れているが、出来るだけ牧場の作業を体験してもらったり、その牛に対する思いも伝えることで、酪農の仕事の大変さや牛たちも努力して乳を作っているということを実感してくれる。また、お産に立ち会ったときは、命というものの大切さを学んでくれている。

○食育における農業の役割(表示と規格の理解を進める、農業理解を得るには)

こうした活動を進めていくことが、農業に従事するものに科せられた役割と考えるが、農業全般からすると、まだまだ酪農教育ファーム的な農業体験ができる受け皿は少ないのではないか。一生懸命に有機野菜を作ったとしても、消費者に生産者の思いが伝えられなければ、その価値が分かってもらえないということに気が付いていない。その体制作りが遅れているということは大変残念である。
消費者の目はまさに今、「食」に向いていることから、食品の表示を消費者に理解してもらうには良いチャンスではないか。食品の表示は食品の種類によって異なっており分かりやすいものとなっていない。消費者に理解してもらうためには、体験を通じて知ってもらうことも必要ではないか。生産に携わるものが、直接消費者に伝えていくことが、一番安心してもらえることではないか。今の表示は、生産者・事業者向けの表示であって、消費者の側からみて分かりやすい表示とはなっていないところがあり、消費者向けの分かりやすい表示を行っていくことが必要である。
有機農産物等が普及しないのは、消費者に対する伝え方が十分でないことが原因ではないか。現在、検討されている有機畜産も理解してもらうには難しいところがある。その意味で有機を心掛けるものが、有機を理解してもらうために体験活動や情報発信をすべきであり、さらには、地域レベルで有機に取り組んでいければ、より理解されやすいのではないか。
農業全般を理解してもらうためには、農業者自身やJAなどが体験活動などを積極的に推進していくことが必要である。

8意見交換の概要

Q日本の土壌は酸性であるが、酸性土壌で作った粗飼料を食べさせると牛の体液が酸性となり種付けが難しくなることから、土地の改良を進めることが必要と聞いたことがあるが。
A土作りで大切なことは堆肥と石灰を十分に入れることである。それで作った牧草は牛が喜んで食べてくれる。

Q「何故、牛さんは大きいの」という質問にはどう答えたか。
A「牛さんは草を食べて牛乳を出してくれるが、たくさん草を食べてたくさん牛乳を出せるように胃袋が大きいんだよ。だから身体も大きいんだよ」というような話をするが、子供たちの目線にたって質問に答えるのは本当に難しい。

Q自給飼料は、健康な牛作りの決め手ということであるが、そうした中で、コストを考えると輸入飼料になると思うが、トータルな経営にとって、自給飼料や水田の飼料用稲がこれから展望はあるか。
A飼料用稲を長い間やってきた。飼料用稲は輸入チモシー乾草並の栄養価を持っており、嗜好性もそれほど悪くなく、大変いいエサであるが、全て飼料用稲というわけにはいかない。問題は農家が水はけのいい田んぼに作付してくれないこと。また、昨年の10月のようにあれだけ雨が降ってしまうと、いい田んぼでも田んぼに入れず収穫に困るときがあったということ。しかしながら、飼料用稲は流通に乗せやすい。これまで、酪農家がどうして自給飼料に目を向けなくなったかというと、行政がコストや内外価格差を言い続けたことによって、農家は労働力軽減のため手軽に手に入る輸入飼料を使用するようになった。米国やヨーロッパでは、飼料生産があって安定した経営基盤を確保しているが、日本は輸入依存型の中で大規模化を図ってきた。デントコーンのロールパックサイレージは転作作物として有効であり、配合メーカーや商社が流通面で貢献していくことによって、自給飼料の増産が可能となるのではないか。

Q経営規模と今後の展望について
A経営していくためにはバランスが大事(頭数、飼料作付面積、地域活動など)。そのバランスを崩してまで規模の拡大を図っていく考えはない。

Q畜産農林の記事に「有機畜産は無理としても」 と書いているが、有機畜産JASはそんなに高いハードルなのか。
A酪農家の心こそ有機と考えている。その思いは捨てたくない。有機畜産JASの認証牧場になるためには、現在の経営の姿からするとそこに仕向ける労働力を確保出来るか分からない。

Q裁断型ロールベーラーを高評価しているが、稲のホールクロップサイレージよりデントコーンを作るべきか。
A糞尿処理を含めてデントコーンをもっと見直すべきである。品質が安定しており流通にも乗せやすい。耕種農家にとっても転作作物としてデントコーンの方が実入りがいいので普及していきたい。

 

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