ホーム > 基本政策 > 各種懇談会概要 > 地域リーダー・有識者との意見交換会 > 平成18年度第8回地域リーダー・有識者との意見交換会の概要
平成18年12月22日(木曜日)16時00分~17時30分
さいたま新都心合同庁舎2号館5F共用大会議室501
(埼玉県さいたま市中央区新都心2-1)
(1)講師:信州「せいしゅん村」代表むらおさ小林一郎氏(長野県上田市)
(2)関東農政局局長、局次長ほか局職員
(3)その他都県、市町村ほか
「田舎暮らし体験でふるさと回帰」
1.信州「せいしゅん村」設立の経緯と目的
長野県の農村活性化のモデル農村として、また日本の農村農業の活性化のモデル農村を目指した活動をするために設立し、8年経過しました。
この”農村”という言葉、現在中学校の社会科の教科書に、たったの一カ所しか載っていないのをご存知ですか?このことからわかるように、都市農村交流がわからない。今の若い人は農村という言葉の意味がわからなくなってきているのです。
いつのまにか”農村”は見向きもされなくなり、へんぴな、知らなくても良い所という位置づけになってしまったのです。
しかし我々は、農村があることの意義を、都会の人にもっとわかってもらいたいという考えから、平成10年に「のうのうの会(農KNOW)」を立ち上げました。農村農業の情報を交換することによって”現状を知る会”という意味で、農村の同志が集まってありとあらゆる情報交換をする場として今日まで活動してきている。
この会では主に、今の日本の農村が、これから50年後、100年後にどういう姿になっていくのか?について語り合いました。こうした中我々は「行政に頼らず、自分たちで考え、できることを積極的にやっていこう!」ということになりました。
私たちの旧武石村というところは、中山間地域で、担い手に農地を集約できるところではありません。過疎地域が半分以上占める日本において、こういった農村がどうやったら生き残っていけるのか?現状は大変厳しいと思う。50年後の農村がどう進んでいくか、みんなで真剣に考えていかなくてはならない。
農村の魅力は農業だけなのか?農村には、市場出荷が成り立つ農村とそうでないところがある。私たちの農村のように市場出荷では成り立たない農村について、これからの方向性を考えていく中、「のうのうの会」では「サービス提供型の農村」を目指そうという考えにたどり着きました。お客さんにたくさん来ていただき、その中でサービスを提供し、農産物を買っていただいたり、提供したサービスの料金をいただいたりすることです。これには、従来の発想を変え、行政や農協に頼るような他力本願はやめて、他人に頼らず、自分たちで出来ることをどんどんやっていくことが必要でした。
事業を進める中では、評価の上の反省に立って取り組んでいくことが一番大切なことだと思います。私たちの会では、新たに何かをやるときには常に評価と反省の上で取り組んでいます。
「のうのうの会」には、これまで延べ160人くらいが参加しましたが、現在残ったのは10人前後です。自分たちの取組を推進するためには、それが逆によかったと思っています。ここに残った10人は個性的なリーダータイプの方ばかりだからです。
何かものごとを決めていく際に、より多くの地域・人から広く意見を聞きながら決めていくのが行政の手法であると思います。しかし、なにかこれまでにやったことのない新しいことをはじめるには、単に羊100名の人を集めて話を聞くよりも、リーダータイプの虎やライオンの様な個性的な人たち10人が集まって議論したほうがよい結果となるのです。そして、こうした人たちがしっかりと周りに活動を伝えていけば、新しい活動の輪が広がっていくのです。私たちはそう確信しています。
そして、私たちの取組の目標として、地域住民の半分の人に評価してもらえばよいと考えました。100人いれば100通りの考えがあり、判断基準の違う人達に理解していただき、共に活動に取り込むことは難しいからです。判断基準の合う人たちに引き続き支援して頂き、今後の活動にも取り組んでいこうと思っております。
2.活動及び活動具体化にあたっての障害と成果
(1)新しいことを始めるにあたっての障害
苦しいこともたくさんあります。印象に残ることとしては、何か新しいことを始めようとすると、「前例がない」ということで、なかなか周囲の理解が得られないという点です。特に民間がやる村おこし・地域おこしは、収益を伴うなどの理由から、行政などの支援・後援を得にくい状況にありました。
最近ではNPO法人の活動の必要性や価値などが認められてきて、後援などの支援がスムーズに進むようになってきています。
(2)大切なのは自然から何を学ぶかである。
牧場で放牧された牛の乳脂肪分は2.65%くらい。これは、牛乳の基準をはるかに下回っています。しかしこれが、牛の本来の姿なのです。畜舎で飼われている牛は乳脂肪分3.9%くらいあるようです。ただ、これらの牛は3年くらいしかもたないで廃牛となるようです。牧場の牛は寿命が8年と言われており、10年~12年生きる牛もたくさんいます。
そして、乳脂肪分の高い牛乳を人間が求める結果、牛を3年でダメにし、そして、その乳脂肪の濃い牛乳をとりすぎる人は、生活習慣病の原因の一つにもなっています。
要するに大事なのは、自然から何を学ぶかです。また、これからはますます自然にやさしい生き方が必要になってくるので、どういう農業をしていくか。アメリカなどでは、除草剤に強い遺伝子組み換え大豆を導入して、効率的な大量生産型の農業が行われています。
食料の安定確保のためには、こうした遺伝子組み換え作物の栽培も否定はしませんが、私たちの取り組んでいる農業のように、自然にやさしい農業の価値をもっと認めてもらいたいと思っています。
(3)信州「せいしゅん村」の日帰り農村体験「ほっとステイ」とは?その魅力は?
信州「せいしゅん村」の「ほっとステイ」は、農家に日中滞在して、農家の普段のありのままの生活を体験してもらうもので、受け入れ単位は、1軒あたり6人程度で、時間は6時間。平成18年度の実績で年間約7,500人を受け入れました。
19年度は1万人程度の入村が予定されています。今では信州「せいしゅん村」だけでは受けきれなくなり、他地域にも取組を広げています。同様な取組内容で現在5地域に広がっています。
なぜ利用者が増えるのか?それは、このふれあい体験が単なる農作業体験や自然体験、レジャー体験と云ったヤラセ体験ではなく、人と人とのふれあいを商品として提供しているからだと思います。
今、農村体験を利用する人が700万人とも言われています。これらの方たちは、人と人とのふれあいの部分を求めて農村にやってくるのではないでしょうか。農村には、都会で失われつつある人と人とのふれあいの部分がまだ多く残っており、人と人とが支え合って生きています。こうしたことを体験し、学ぶためにみんな参加してくるのだと思います。
(4)農村の「ほっとステイ」が伝えたいこと
このサービス提供型の農村の「ほっとステイ」が目指している事は、祖父母世代から孫世代へという、世代を越えて伝えるべき大事な歴史・風俗・習慣や、年月を積み上げた沢山の人生経験・体験を話す事であります。
しかしながら今の子供たちは、共働きや核家族化などで地域社会とふれあうことなく、自分たちの世代や子供社会の中だけで育っている。そのため、人の苦しみや痛みがわからない子たちが多い。だから重大な事件を引き起こす。
こうした社会の一般常識を、人と人とのふれあいの中で伝えたいと思っている。そういったことから、信州「せいしゅん村」では、社会の一般常識「入村心得26箇条」を設けています。
そして、来た子供たちには100点満点で、全員を評価する通知表を出しています。評価をしていると、生活環境の違いによって点数の差などの傾向が現れてきます。ちなみに1番点数が低いのは高額所得者の住む地域の子供たち。最高点は自然豊かな農村にある学校。なかには旧武石村よりすばらしい自然であふれているところからも来ます。先生に尋ねてみると、そのような農村地域でも世代間のふれあいが不足していて、そのきっかけ作りをするために来たようです。実際、その学校の生徒は旧武石村に来てよかったと多くの子供たちが感想を述べ、書いています。
学校教育の現場では「総合学習」の時間を設け、生きる力を育むための取組を始めているようですが、私たちの取組を通じて、今の子供たちに一番足りないものは自然体験と生活体験だと感じています。
この総合学習で行っている自然体験などは、インストラクターが指示したとおりに動くだけのものが多く、それでは学校の授業の延長と変わらないと思います。
そうではなく、子供たちに必要なのは、自らが考え、自分自身でやり、肌で感じることです。「ほっとステイ」には農業体験や自然体験の技術指導者はいません。いろいろな体験を行いますが、家庭のみなさんは見ているだけで、子供たちが自ら考え、進んで行動するのが基本です。
自然の中で生きるのが農村の原点。ありのままの農村を提供し、農村についての理解を深めてもらいたいです。都市の人が求めているものだけを提供していては、本当の意味での農村への理解が深まっていかないです。
6時間あまりの交流ですが、「ウルルン滞在記」のような光景はよく目にしま す。交流が人を動かす。交流の中から学ぶきっかけがあるといつも思っています。
(Q1)「ほっとステイ」にやってくる都会の子供たちには、大変農村の良さがわかり、変わっていったのがよくわかったが、一方、地元の旧武石村の子供たちについてはどうか。また、取組を続けていくためには後継者は重要だと思うが、そういった後継者たちはどういった視点で見ているか。
また、106軒もの協力者のモチベーションはどうか?これだけ数が多いと、もてなしなどに差が出てこないか?
(A)旧武石村の子供たちについて心配する声が村人からあり、武石の子供に対しても同様のことをできないか考え、4回ほど学校にも足を運んだ。直ぐに実施とはならなかったが、ようやく18年度から実施できるようになった。
この取組によって経験した子供たちは、各家庭でお年寄りを拒否しなくなった。また、受け入れ家庭のお年寄りたちも子供たちからエネルギーをもらっているかのように、目が輝いてきている。これを見ている若い後継者世代がこの取組に共感して、将来自分もやってみたいと考えていただければいいと思う。そして結果として、この取組が次の世代につながっていけばよいといつも思っている。
現在旧武石村には1,300軒の家庭がある。このうち1割弱の106戸が協力しているが、受け入れ農家に指示しているのは、(ア)快く子供たちを受け入れてください、(イ)入村心得にしたがって、対応してください、(ウ)最後に子供たちの活動を評価してくださいの3点以外は一切指示していないが、参加している方々はみんなこの取組の趣旨を理解してよくやってくれている。
そして、この取組のコンセプトとして持っているのが「不揃いは当たり前」だという認識。学校教育は不揃いを歓迎しないようだが、自然の姿を見たときに不揃いが当たり前。学校ではなかなか学べない”不揃い”を子供たちに実感してもらいたい。36班あれば、36通りの体験があり(受け入れ農家は1軒につき、6人程度で1班)内容はすべて違う。例えばその36通りを学校に帰ってから、学習会などで発表してくれれば、みんなが36通りの学習ができることになる。
善意をどういう風に受け止めるか、世の中の不揃いをどう受け止めるのか?例えば受け入れ農家によっては、きちんときれいに整理整頓されている家もあれば、そうでない家もある。こうした様々な不揃いを、子供たち自身がどう感じるかが大事だと思う。
(Q2)食育の原点は農村農業体験であり、それが一番大切であると考えている。本取組では、6時間程度のショートステイを基本としているが、1泊とかあるいは1週間程度農村に入り込んで、じっくりと農村生活の実態を学んでいただくような取組は考えていないか?
(A)農家民泊については、村が主体となり2年間やったが、3年目は姿を消してしまった。当時240名の学校を受け入れるのに、最初手を挙げた農家はたったの3軒。無理を言って何とかその他の農家にも協力を依頼し、2年間はなんとかこなしたが、3年目は受け入れ農家が難色を示して、続かなかった。
その理由としては、一般に農家は広いと思われがちだが、宿泊に使える広い部屋はほとんど空いてないのが現状。そして10軒足らずの専業農家は農作業に追われており、一方兼業農家は日中、若い世代が働きに出て高齢者が家にいるところが多く、一日を通じて交流する時間がとれない問題がある。昼に高齢者が相手をして、夜は若い世代がというようなバトンタッチ交流がうまくいかないというのが現状だった。 こうした1軒1軒の家の事情を考えると民泊というのは、欧米と違って我が国の農村では幻想に近いものであると思う。やはり専門の施設に泊まっていただき、昼間に「ほっとステイ」を利用していただくのがベストであり、長続きすることだとわかった。また、宿泊施設と業務提携もでき、お互いがプラスに作用している。民泊は今後の課題として捉えている。
(Q3)旧武石村は上田市と合併したが、これによって自治体との関係に変化はあったか?
(A)新生上田市からは、観光ビジョン策定委員への依頼があった。
また、旧武石村の村長は、村の活性化は信州「せいしゅん村」に任せていると合併協議会で言っている。 市長をはじめ上田市の方には、私たちの活動を聞いてもらう機会が増えた。農村を観光資源として活かして、上田市を活性化していこうと思っているようである。
(Q4)「ほっとステイ」の料金設定(3,150円/人)についての思惑、基準などがあれば?
(A)算出根拠はある。農家が一日働いたらいくらになるかを算出根拠にした。1時間1,500円で6時間相手をするので、農家1人の所得が9,000円になるように計算した。運営経費(送迎バス、農産物のプレゼント、資材材料費)を差し引いて、農家一人に9,000円出すとすると、料金設定が3,150円になった。
普通の暮らしの中で受け入れて、生活体験を提供するのがこの取組なので、高い料金設定はできないし、旅行代理店の担当者からは、料金は変えないで欲しいとも言われている。ちなみに、年間の売り上げは、全体で2,300万円ほど。
以上。