大井川水系
大井川は白根間ノ岳に源を発し、急峻な河谷を刻んで南流し、駿河湾に流入する全長約
168km、流域面積約1,200km2の河川です。
大井川の源流部は赤石山脈(南アルプス)によって閉じられ、東側は白根山脈、西側は源流
部から連なる赤石山脈によって取り囲まれた地形となっています。徳川家康が架橋や舟運を
禁じたのも、この閉塞性により江戸防衛のための関所川として利用する為であったといわれ
ています。
また、大井川は、河床勾配が急で年間降水量も多いことから、上・中流域では電源開発が
進み、昭和30年代には巨大ダム群の建設が行われています。
大井川の河川流域では、古代より下流の沖積平野部(志太平野地域)に集落が形成され、
戦国期以降には、大井川の水を利用した水田開発が盛んに行われました。また、明治政府の
富国強兵策を支える基本施策として農業生産基盤整備が行われ、志太地区において「栃山川
沿岸用排水幹線改良事業」が行われる等、用排水路整備も進められてきました。戦時体制下
ではかんがい施設の維持管理も十分には行われず、施設機能が低下しましたが、終戦後の食糧増産の強い要求により安定した用水確保と新しい水利体系の確立が必要となり、大井川右岸の榛原地域も含めた土地改良運動が推進され、昭和22年に国営大井川農業水利事業が着工されました。
一方、志太平野に隣接する牧之原台地は、明治初頭に旧幕臣250人あまりが入植するまで、地元農民も寄りつかない灌木雑草に覆われた砂礫の荒廃地でしたが、夏の高温多湿の気候と小石の多い火山灰土壌が茶の生育に適していたため、茶の栽培が積極的に行われるようになりました。
しかし、用水に恵まれず、収穫が天候に左右される茶栽培では、発展性に限界があり、「牧之原に水を」という要望が強くありました。
こうした状況の中で、牧之原農業水利事業が昭和53年に着工されて、地元農民の要望が具体的な形となって結実しました。
栃山頭首工(大井川地区) 台地に広がる茶園(牧之原地区)
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