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「食育フォーラム」
~子どもの食育をどう進めるか~

日時

平成18年6月30日(金曜日)14時0分~16時30分

場所

さいたま新都心合同庁舎2号館共用大会議室501

参加者

300人

講演

「子どもの食育をどう進めるか」

講師

女子栄養大学教授石田裕美氏

 

 

 

1 講師紹介

女子栄養大学教授給食・栄養管理研究室
JOC女性スポーツ委員会委員
農林水産省独立行政法人評価委員会農業分科会専門委員
薬事・食品衛生審議会臨時委員
(主な専門分野)
栄養管理、食事計画、給食経営管理

2 講演(要旨)

(1)なぜ今、食育か

ここ2~3年食育という言葉は良く耳にし、私も学校で子どもや保護者に食育の講演を頼まれる、そこでは、「現状はこうですよ」ということ話してきた。なぜ食育が必要なのかについては、皆さん十分ご存じのように、高齢化の問題、医療費や介護費の問題、あるいは自給率の低下、食の安全・安心の問題が背景にある。食品の生産、流通、加工技術が変わってきているために、食べるものそのものも変わってきている。不足の時代から摂り過ぎて、体の方にもいろんな問題が出てきている。子どもには、一体どんな問題があるかということである。
今、子どもの問題を指摘することはできるが、ではそれを解決をするためにどうしたらいいかという答えは、私としてもなかなか結論をお示しすることはできない。食育が大切なのは、どなたもわかっていることだと思う。ただし、その時に何ができるか、何をしたらよいのか、どうやってしたらよいのかは、よくわからないところがあり、専門家として呼ばれていると思うが、その時に私もそもそも食育って何だろうということを考える。

(2)給食を残す理由

私は仕事上学校給食に携わっているが、その中の問題点として、子どもが給食を多く食べ残すということがある。
給食を残す理由について、子どもに話を聞いてみると、食べ方がわからない、給食の料理を食べたことがないから食べられない、という答えが返って来る。これは食経験が不足しているということ。ところが、学校の先生方が保護者の方に、入学前にお子さんの嫌いなものとか食べられないものがありますかと聞くと、多くはうちの子どもは何でも食べられますという答えが返ってくると言う。
ということは、家庭の中で食べるものが、非常に狭まってきていると考えられる。それから「食べるのが面倒くさい」という理由がある。子どもの生活そのものが、私たち大人が子どものころに経験したものとは、すっかり変わってしまっている。また、食べ物そのものも変わってしまっているので、私たちが考えもしない経験しない「面倒くさい」という感覚が生まれてきているのかもしれない。経験してないから私たち大人とは全然違う価値観が子どもの中には生まれてきており、それが食べ物を残す行動につながっているのではないか。

(3)普遍的な価値観

食育基本法にも示されているように、食生活のあり方は個人の価値観や考え方に負うところが大きく、その自由な判断と選択にゆだねられるべきであり、食育は何らかの強制を伴うものでないが、それを踏まえた上で、私は食育として大切にしたい普遍的な価値観があるのではないかと思う。何でもかんでも自由だというのではなく、やはり守るべき、あるいは伝えるべき価値観があるのではないか。
例えば、普遍的な価値観とは、食に関する感謝の念と理解である。食は命の源であって、食がなければ命自体が成り立たない。食の大切さ、そういったものを普遍的な価値観として、子どもたちに伝えていくということが大切だと思う。
そうした中で食育を進めるに当たっては、やはり体験を通してやるのがよいのではないか。子どもはいろんな体験ができなくなった。当たり前のようにしなくても済むようになっているので、あえて体験させなくてはいけないことが幾つかあるのではないか。体験を通して自然に、普遍的な価値を子どもが理解して生きていけるようにしていく。そういった施策が求められていると理解している。

(4)ゆきちゃんの事例

ここで小学5年生のゆきちゃんの事例を紹介する。ゆきちゃんは総合学習の時間の中で、お米について、生産地、品種、歴史等についてよく調べ、立派なリポートにまとめてを学校の新聞に発表した。ところが、実際に私がゆきちゃんに会って、自分はどこで作られた米を食べているのか聞いたところ、知らないという答えだった。
ゆきちゃんは、三世帯同居の大家族で、食べ物を残してはならないと厳しくしつけられている。お米は親戚の田舎のおじさんが作ったものを食べているが、ゆきちゃんはそのことを知らなかった。そこでゆきちゃんは夏休みに田舎の親戚の家に行って実際の稲の様子、生育の環境、減反の様子について観察したり親戚のおじさんや役場の人に話を聞いて、自分が1年間に食べるお米を収穫するのにどれくらいの面積の田圃が必要かということを自由研究としてまとめた。
その結果、ゆきちゃんは、お米作りの大変さと農家の高齢化を知り、このままでは農家が減って自給率も下がってしまう、このままでは、外国の人に頼らなくてはいけない、もっと多くの人がお米を作り自給率を上げなくてはいけないと考えた。そしてそれ以来、お米を多く食べるようになった気がすると感じていてパンとご飯ならご飯を選ぶようになったと言っている。

(5)食育の推進

ゆきちゃんの事例から考えると、今、食に関連した学習の機会は多くなっているが、そうした学習から得た知識を自分の生活の中で確認してみるところまでを行うことは少ないようである。そのための機会をもう一歩進んでつくるようにすることが大事だと思う。
もう一つ大事なことが、生活の中で確認したり、体験したときの気持ちを誰かと共有すること、思ったことや感想を誰かに話し、特に大人と共有することで、次の興味がわいてきたりするのではないか。
食育体験等を楽しいイベントと一回限りで終わらせずに、毎日繰り返される食事の場をもっと大事にして、食卓で有効に生かしていけるような手立てを考えていくことが大事だと思う。
食育は、育てたい力をはっきり持って進めることが大事。それからきちんとした目標を持って育てたい力を明確にして、取り組んでいくことが大事。漠然と食育に取組むのではなく、食育を通してどういう力を子どもたちに育てていくのかということを明確にすることが大切。
そうした中で、大切にしたい普遍的な価値観を繰り返し示していくことが、理解を促すことにもつながる。あるいは体験的にわかっていくことにつながるのではないかと思っている。

 

 

  

3パネルディスカッション

(1)コーディネイター

石田裕美氏(女子栄養大学教授)

(2)パネリスト

・小川擁子氏(栃木県食生活改善推進団体連絡協議会会長)
事例発表:栃木県食生活改善推進員の活動
・亀田康好氏(シンボライズファーム亀田牧場代表、食育推進会議専門委員)
事例発表:いのちをふれあう生きるをふれあう~わくわくモーモースクール~
・佐藤久子氏(ファーム・インさぎ山副代表)
事例発表:「食」「農」の豊かさをもとめて~ファーム・インさぎ山10年間の歩み~
・吉川直美氏(食育向上委員会代表)
事例発表:子どもの食育をどう進めるか~スーパーマーケットでの展開~

石田氏:
子どもの生活が変わってきてしまった。そうした中であえて体験する場を提供していくことが大事である。その体験を単なるイベントで終わらせないために、皆さん非常にいろんな工夫をされていると思う。
それを継続させるための秘訣があるだろうか。1回だけでなく繰り返しやり続けるための秘訣はどんなところにあるのか、伺いたい。
小川氏:
やっていて楽しかったな、という仲間をふやすことが一番。それからやっていたことで、子どもが喜んでくれる顔を見ること。町で行き会ったとき、今までは知らなかった子が、そういう体験を通して、言葉をかけてくれる喜び。そういうことがこれからやっていく上での力になる。
亀田氏:
事業をやっていく上で、私はすべて酪農教育ファームにしても、わくわくモーモースクールにしても、自分自身が飽きないように、毎年新しいネタをふやすことにしている。
私は「わくわくモーモースクール」はある程度PRと考えているので、マスコミが飛びついてくれるネタを提供することが必要と思っている。
それと参加している農家さんが一生懸命ついてきてくれるのは、子どもたちがすごく感動している表情等が大きい。我々にとってすごいエネルギーになる。手伝ってもらっている酪農家や乳業の皆さんは、そのことで、また行きたいと逆にエネルギーをもらって続いている。
佐藤氏:
うちは10年間来ている方がいる。その方は、土を触っていると、心が和むと言う。
それは子どもも大人も同じだと思う。一緒にやっている私たちも同じ。私たちの力というよりも、大地の力だと思っている。
吉川氏:
一つは、お説教をしないこと。それから否定をしてはいけないこと。現在、食育コンシェルジェというのを育てたいと思って、計画を立てている。食育は伝えることが大事なので、誰かしら今の暮らしに合った、生活に合った情報発信ができる人材が必要なのではないかと考えている。
石田氏:
共通しているのは、やはり私たちがやりたい、子どものためにやってあげたいという思いがある。皆さんそれぞれその強い思いを継続していくための仲間づくりをしている。それを共感してもらえる仲間が一緒にいるということが一つ。
あとは自分も飽きないために新しいアイデアをどんどん出していく。恐らくそれはいろいろな人とやっていくうちに、自分以外のところからも多分アイデアをもらえるのではないか。
それから最も大事なのは、やはり子どもの力。子どもがこのことで、目が輝くとか喜びを表すとか子どもから力をもらって、またやろうというふうに思える、よい循環だと思った。
その中でもう一つ、コミュニケーションというのもキーワードだったように思う。
一方的ではなく、相手の思いをくんだり、あるいはほかの人の意見を聞いて新しいプログラムを行ったりという中で、コミュニケーションをうまくするための秘訣は何だろうか。
吉川氏:
毎日どんな暮らしをしているかということを聞き出すとか、子どもだったら、子どもが興味のあるような話をきっかけにするとか。
佐藤氏:
毎年メンバーが変わる。変わらない方もいるが、新しい人の顔と名前を早く覚えること。それから子どもにとにかく早く声をかける。そうすると、今度はお父さんお母さんが声をかけてくれる。
亀田氏:
私は、長年幼稚園児と、コミュニケーションを行ってきた。子どもの目線で物事を考えないと、子どもは全然聞いてくれない。大人の目線で物事をしゃべると、子どもはすぐ飽きる。その辺は、やはり子どもと同じ目線で、物事を見てしゃべらないとだめ。
小川氏:
今の人たちを私たちが否定してしまってはだめ。あなたたちは間違っているからこうしなきゃだめだよと言う言い方はしてはいけない。
石田氏:
やはり子どもの視点に立つこと。そこから出てきたものをちゃんと聞いてあげるということ。継続してやっていくためには、仲間をふやし、子どもの視点に立って、子どもからもアイデアをもらって、次から次へと新しい手を打って、この思いをつなげていくことが大事だ。子どもの食育を進めていくために大事なことと思う。
もう一つ、子どもの目線に立って、子どもの価値観をある程度理解しながらということも大事で、大人の価値観を押しつけてはいけないが、やはり伝えなくてはいけないものがあると思う。それぞれまた、これだけは大人の価値観かもしれないけれども伝えたい、大事と思うことを、一言ずつずばり言っていただくとどんなことになるのか。
亀田氏:
私は命を受け継いでいくことを子どもたちに伝えたい。命の大切さ、命を受け継いでいくこと、これから次の命を育てることの大切さを伝えていきたい。
佐藤氏:
食べているものはみんな命あったもの。これはみんな生きていたんだ、それをいただいているということを体験で理解させたいと思う。
吉川氏:
「いただきます」と「ごちそうさま」という言葉の意味自体もわからなくなっている人が多かったりとか、お母さんから子どもへ、それが伝えられなかったりしている。それは本当に大変なことなので、伝えたいと思っている。
小川氏:
私は、食育というのは、人間形成だと思っている。人間形成というよりは、よい日本人をつくるための教育ととらえている。子どもたちにもう一度、日本というものを考え直す機会が、食育と考えている。
石田氏:
農の力といったようなものから、発信できるものは非常にたくさんあると思うが、これから皆さんが考えられていることがあれば教えていただきたい。
それから、広い意味での農業が持っているものをどう伝えていきたいと思っていらっしゃるか、最後にまとめ的に一言お願いしたい。
佐藤氏:
農業体験、農業を知らないサラリーマンの家の子どもが、母親父親になり、またサラリーマンになる。だから畑を触ったことのない、田んぼへ行ったことのない方が多い。そんな子どもを今相手にしているのだが、土を触るとおもしろいということを教え続けている。
それから消費者として、食事の手を抜くと、20年後、30年後、40年後、50年後に出てくるのだということを忘れないでほしい。
亀田氏:
農業者の私とすると、食育の中の農業の果たす役割は大変大きいが、食育の中の農業、農業者自身がまだ食育でどんなことをやったらよいのかということが十分理解されていない。農業が消費者や子どもたちと遠ざかった責任の一つは、やはり農業者にあると思う。これから農業生産者は、皆さんが食育に、何かしら関わりを持てるようにしなければならない。学校等に農業体験の場を提供したり、またサポートをしてあげたりということは、大事なことと思う。
小川氏:
私は本当に農に頑張ってもらいたいと思う。やはり日本を支えるのは農ではないかなと思う。本当にわずかな土地でも、土と触れ合える、そういう機会をどんどん作っていってもらいたい。それから触れ合っているときに心が安らぐ、そういう人間を育てていけたらなと考える。
石田氏:
子どもたちに、自分一人で生きているわけではなく、生かされている私たちというか、それを実感してもらえるような場として、農の中での体験というのは、非常に貴重なのだろうということを改めて思った。
そういった機会作りをみんながし続ける努力は、やはりしていかないといけない。継続させるためには、コミュニケーションも大事だし、子どもの視点に立つことも大事だし、それをやり続けたいという思いを私たちが持ち続けることも大事。今後もこのような機会を何回か経て、みんなで話し合って、よい知恵を出していく。
例えばバランスガイドのような新しい普及媒体、ツールを考え出してみんなでやっていこうという仕掛けをつくっていくのがすごく大事なことと思う。

4質疑応答

参加者:
萩原ファームさんには、去年何度も行かせていただいている。農業は大切が、今の農業政策では、みんな農業はつぶれてしまうというのが私の実感。私は全国へ行って、今は大型化、集約化して、農業生産だけを上げるという方向になっていて、これでは全部農業がつぶれると実感している。
その中で、食育は地域のボランティア活動でしましょうみたいなことを言っているが、実際は私もあちこちで食育をやっている。しかし、ボランティアだけをやっていると、なかなか続かない。
皆さんはその辺の経済的なことをどういう仕組みでやっておられるのか。いろいろ助成金があったりして申請したりもするが、それはなかなか続かなかったり、県で予算が組んであったりするが、それもよく理解されないままに違うところに使われているとか、いろんなことがある。皆さんはそういう経済的な活動はどういう形でしていらっしゃるのか。
それから、どういうような地域の体制が必要と思っておられるのか。
亀田氏:
わくわくモーモースクールは、補助事業でやっているので、学校には費用がかからない。我々も費用等が払われるのでそれらはそういった事業費でやっている。
ただ酪農教育ファームの大半がボランティアでやっている。その中でも、やはりフランスの教育ファームをモデルにしていて、将来的には全部の牧場で料金システムをつくっていこうと、既に半分近くの牧場では料金システムを提示して、料金をもらって活動している。
地域の教育は無償という、教育界の考え方があり、なかなか地域の教育に料金を取るというのは難しいが、食育というのは、子どもたちを育てるという意味で大変貴重な場なので、わずかながらでも料金を取っていくべきだろうと考える。
フランスの教育ファームのように、国が支援するシステムをつくっていきたい。
参加者:
食事バランスガイドはよく見るが、子どもの目線で書いていない。カロリーが2200キロカロリーと書いてあって、さて子どもには何皿食べればいいんだろう、どのくらいということがわからない。どのぐらい食べさせればよいのか。
石田氏:
子ども版の食事バランスガイドというものができ上がった。まず大人からだったが、子ども向けにも、主食が幾つというのが示されている。今日配っていただいたものの中にも入っている。大人から子どもと妊婦さんという形で、少し違った形でできている。是非ごらんになっていただきたいが、多分それを子ども自身がわかるようにするには、もう一歩、使うときに工夫をしなければいけない。
参加者:
私は、県立の総合教育センターというところで、学校の教職員等に研修を行っている。学校や教師に対して、ご要望とか、こういうことをしてほしいということがあれば、聞かせて欲しい。研修の場で生かしたいと思う。
小川氏:
大人や教育者はどうしても常に上から物を見ているような気がする。ボランティアの私たちに対しても指導者的立場で関わりをもっている。50歳になろうが、60歳になろうが子ども達から教えられることもたくさんあると思う。新鮮な目をもって子ども目線を持ち続けることは大切なことと思う。
特に、食育に関しては先生が指導するだけではなく、生徒と大人とが一緒になって考えてみる機会を多く作って欲しい。
亀田氏:
私は、わくわくモーモースクールで先生方とのおつき合いが結構多い。わくわくモーモースクールは、酪農の体験学習で先生も子どもと同じ体験を共有してもらっている。先生も初めての体験なので、本当に目をきらきらと輝かせて喜んでくれる。わくわくモーモースクールをやってみて、一番この事業に感動しているのは先生。子どもと同じように先生方も体験を一生懸命やっていただくのがよいかなと思う。





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