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水口のかんぴょう(甲賀市水口町)

広重も描いた水口のかんぴょう

 

    甲賀市水口町は、県の南西部に位置し東海道を鈴鹿山脈から湖に向かって降りてきたところ、古くから東海道五十番目の宿、水口の宿として栄えた町です。かんぴょうは、町の中心である水口城にほど近い、水田や畑と住宅地が入り交じった八坂地域などで作られています。 水口町のかんぴょうは、桃山時代の城主、長束正家が農家に作らせたのが始まりで、その後、江戸時代の城主が加藤嘉矩になってから、かんぴょうを細長く線状にする製法を農家に教え、改良を重ね現在のようなかんぴょうになったといわれています。 また、錦絵の安藤広重が東海道五三次の水口の宿に、かんぴょうを干す女達がえがかれ、水口のかんぴょうは全国に知れ渡りました。

    また、現在では、かんぴょうの生産では栃木県が全国一の生産量を誇っていますが、その始まりは、江戸時代に水口の城主であった鳥居忠英が下野国壬生城に封ぜられてから、生産されるようにといわれており、滋賀県のかんぴょうに起源を発していると伝えられています。

甲賀市水口町

水口のかんぴょうは柔らかく煮えやすい

    水口のかんぴょうの一番の特徴は、柔らかく煮えやすいことです。すぐにもどり、厚さもあり、しかも大変柔らかく、だしや炊き合わせる野菜の味をよくしみこませます。水口のかんぴょうは、もどす手間もすくなく、柔らかく、煮えやすいことから多くの料理に利用することができます。

    かんぴょうは、ゆうがおの実を細長く切り乾燥させたものです。かんぴょうの生産は、ゆうがおの栽培から始まります。水口では、ゆうがおのことをシャクと呼びます。

    水口で栽培されているゆうがおには特定の品種はなく、ほとんどが昔からこの地域に伝えられている品種を毎年自家採取し利用しています。かんぴょう用のゆうがおの品種には、動力皮むき機用に丸形に改良された「しもつけしろ」や「しもつけあお」等がありますが、水口のものは、球形ではなくだるま型をしています。くびれをもう少しつければヒョウタン型になり、ゆうがおがひょうたんと同じ種であることが納得させられます。

畑のゆうがお
水口のゆうがおは、だるま型

かんぴょうには土用の晴天と夕立が必要

 

    ゆうがおは、畑で作ります。ゆうがおは、排水の良いところを好み、水田などの粘土質の土壌では良いものができないそうです。3月下旬に種を播き苗づくりを始めます。5月上旬に4mほどの幅の畝を作り定植します。つるがのびるのと合わせて摘心を行い、乾燥防止と実の保護のため敷きわらをして育てます。6月の下旬頃から花が咲き始めます。ゆうがおの花は、名前のとおり夕方から夜にかけて開花します。通常受粉は、夜に飛ぶ蛾などによって行われますが、6月の下旬頃は梅雨の中頃でまだまだそれらの虫が少ないため、人の手によって受粉を行います。授粉は、夕方花が咲いた頃雄花を摘み取り、雌花につけていきます。人工受粉作業は、梅雨が明け虫が飛び始めてからも、天候が不順なときは行います。

    収穫は、7月下旬から8月一杯まで、実についた細かい毛が落ち、つやが出て、実に爪で軽く傷がつく頃を目安として収穫します。かんぴょうの生産には、天候が最も大切です。品質のよいかんぴょうを作るには、実をむき、夏の強い日差しを利用して短期間に干しあげなければなりません。天候の悪い日は、乾燥作業ができないことから、収穫は行いません。天気が悪く収穫できない日が続き、収穫の適期が遅れると、成熟が進み実の表面が堅くなりかんぴょうにはできません。また、収穫後時間が経ち、加工が遅れても、皮が固くなり、果肉の弾力性もなくなり、良い品質のかんぴょうはできません。

    かんぴょうの生産には、天気が良いことが重要ですが、一方で実が大きくなるには水分が必要です。乾燥すると実の太りが悪く良いものができません。夏の夕立の雨も品質のよいかんぴょうを作るには重要な要素です。晴天とともに夕立などで適度の水分が補給されなければよいものがでません。

動力皮むき機で実を回転させながら帯状にしていく

夏の日差しで素早く干し上げる

 

 

    かんぴょうは、夏の強い日差しで1日半で干しあげるのが最もよいといわれています。1日の天気を見定め、天気の良い日だけ作業を行います。早朝に収穫した夕顔の実を8時頃までに皮をむき、干します。皮むきは、電動の機械を使います。始めに、固定したゆうがおの実をモーターで回し、皮をむきます。白い果肉の部分を、幅3.5ミリ厚さ2.3ミリ程度の帯状にむいていきます。ひとつのゆうがおの実が帯状になるのに、30秒もかかりません。

    次に、むいたものを竹竿に架け干します。干すときに2.5mぐらいに長さをそろえていきます。昔は、そのまま天日で干していましたが、最近は突然の雨にも対応できるようにビニールハウスを利用しています。風通しが良いように前と後ろのビニールがないビニールハウスの中で干します。

    ハウスの中は、ほこりが立たないように地面にわらが敷き詰めてあり、竹竿には、滑り止めと、乾いたかんぴょうが竹竿にくっついてしまわないように上半分にわらがつけてあります。その竹に、すだれのようにかんぴょうを干します。その光景を見たよその土地の人が、「そうめんを作っているのですか」と間違われたこともあるそうです。 晴れていれば、朝干したかんぴょうは一日で、からからに乾いてしまいます。しかし、十分に乾いた状態で取り入れるために、次の日もう一度、お昼すぎまで干し、十分に乾燥したところを取り入れ、かんぴょうができあがります。夜や雨の時は干しているかんぴょうが湿らないよう竿ごと小屋に取り入れます。かんぴょうは、切らずにそのままの長さで束にして出荷されます。

ハウスで干す。地面にわらが敷かれている
つかないように竹にわらが巻かれている

煮物にしておいしい水口のかんぴょう

 

 

    水口では、かんぴょうをさまざなま料理に利用します。かんぴょうと青とうがらしの煮物は水口のお盆の定番料理です。種を取った青とうがらしを炒めて味つけした後、今年採れた新しいかんぴょうと炊き合わせます。柔らかく煮えたかんぴょうがだしをよく吸い大変おいしい煮物です。できたての新鮮なかんぴょうは、われわれが普段食べているかんぴょうとは違い、ふんわりと柔らかく、煮物のだしを良く含み、かんぴょうの味もしっかりあり大変おいしいものです。かんぴょうはできたての8月が最もおいしい時期です。地元では、かぼちゃや、里芋などとの炊き合わせやみそ汁の具としても利用します。

    その他に、かんぴょうを使った郷土料理では、水口の宇川の春祭りで食べられる宇川ずしが有名です。宇川寿司は重箱などの木箱に竹の皮をひき、酢飯とかんぴょうや椎茸、ぶりなどの具を敷き詰め、さらに竹の皮を敷き、重石をして一晩おいてたべるお寿司です。具の色合いや竹の皮の筋目が美しく、食べるときは、8センチぐらいに四角く切って食べます。 水口では、かんぴょうはお中元などにもよく利用します。

干し上がったかんぴょう

水口かんぴょうまつりで全国にPR

 

    最近では、巻きずしを家で作らなくなったことや、戻す手間がわずらわしいことから、家庭でかんぴょうを食べる機会が少なくなっています。しかし、かんぴょうには、繊維質が比較的多く、腸ガンを防ぎ、肥満防止や糖尿病にも良いことがわかってきており、成人病防止のための食品として見直されています。かんぴょうは、保存がきく野菜です。いろんな野菜の煮物とも合わせることができることや、酢の物や和え物、サラダなど利用範囲も広く、もっと利用したい食品のひとつです。

    また、水口町では、毎年11月に、「水口かんぴょうまつり」をひらき、地元商店街の活性化と水口かんぴょうのPR等を行っています。祭りでは、水口のかんぴょうを使った長さ60mの巻きずしをつくるイベントが行われるなど、水口のかんぴょうを全国にPRしています。 炎天下の中、農家の庭先に、白いすだれのように干されるかんぴょうの天日干しは、美しく水口の夏の風物詩にもなっています。夏の強い日差しの中で育ち、また、その日差しでからからに乾かされたかんぴょうは、 夏の日差しのたまものです。

袋に詰められたかんぴょう
かんぴょうと青とうがらしの煮物

 

(平成13年8月取材)

近畿農政局案内

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