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佐治かぼちゃ(甲賀市甲賀町小佐治)

小佐治は腰までの湿田地帯

 

    佐治かぼちゃが伝えられている甲賀市甲賀町小佐治は、県の南西部、忍者発祥の地として有名な甲賀町の北部にあり、甲賀町から土山に続く途中の山あいの集落です。

    佐治かぼちゃは、小佐治の米作りと深く関わっています。小佐治では、集落のほとんどが昔湖であった古琵琶湖層群の粘土層の上にあり、現在のように、ほ場整備による排水設備ができる以前は、冬でもたんぼの水が抜けず、場所によっては腰まで沈む大変な湿田地帯でした。これを克服するため、寛政年間(約200年前)頃から、水田に土を入れるいわゆる客土を行ってきました。客土により、湿田の改善を図るとともに、客土に含まれる肥料成分を利用していました。その結果、小佐治地域は郡内屈指の米の産地となっていました。

甲賀市甲賀町小佐治

ぬりんこがかぼちゃを育てる

 

    客土用の土は、冬に田の近くの山林の表土をはぎ、下の土を掘り出します。このあたり一帯は山も昔の湖の底にたまった砕けやすい泥岩でできています。掘ると、大きな貝の化石なども出てきます。この掘り出した土のことを「ぬりんこ」とよびます。ぬりんこは、現在も利用されており、アルカリ性であることと肥料分に富むことから、土壌改良材として畑などで利用しています。

    やまから掘り出したぬりんこを田の畦に、高さ1m、長さ4mほどの小山に積み重ねます。積み上げるさいに夏に刈った刈草等を挟み込みます。この小山の土を「くまし」とよびます。これを一年間、田んぼの畦に積み上げておき、翌年の春に客土として田んぼに入れます。

    佐治かぼちゃは、このくましに植えます。くましは、小山に積んであるため、かぼちゃの葉が斜面に広がることになり、少ない面積でよく日が当たります。くましは、以前に農作物を作ったことのない土であることと、もともとが湖の底の肥えた土であることから、肥料がなくても農作物がよく育ちます。また、かぼちゃの葉が広がり、くましに雑草がはえることも防げます。くましの土手にかぼちゃをはわせて作ることから、佐治かぼちゃは「土手かぼちゃ」と呼ばれることもあります。かぼちゃを収穫したあとのくましには、日野菜、大根、そばなどをつくりもう一度利用した後、翌年、田に入れます。

ぬりんこと貝の化石

佐治かぼちゃは普通のかぼちゃの4倍

 

    佐治かぼちゃの特徴は、ひとつが6~7kgもあり、現在一般的な品種であるえびすかぼちゃの1.5kgに比べて大変大きいことです。味は、あっさりした味ながら甘みがあり、表皮が堅く貯蔵性があり、夏に収穫したかぼちゃは、12月、1月まで十分に保存することができました。

     このため、佐治かぼちゃは、昔は、この地域では米や麦に次ぐ食料として自給生活を支えていました。特に、終戦直後の食料不足の時期には米の代用食として、町の人たちに大変重宝がられ、大量に生産、出荷していました。各農家の軒下に佐治かぼちゃを200個、300個と積み上げ、土山の方から買い付けに来る卸売業者に売っていたそうです。そのころは、かぼちゃは米などの食糧と同じ扱いをうけ、かぼちゃを売ったために警察に捕まった人もおられたそうです。

今ではめずらしいくまし

ごはんと一緒に、みそ汁の具にも

 

    佐治かぼちゃは、そのまま煮物にしたり、ごはんと一緒に炊くと大変甘くておいしいそうです。また、佐治では、かぼちゃはみそ汁の具に欠かせないもので、かぼちゃのみそ汁はよく食べたそうです。夏にとったかぼちゃは、冬至をすぎた頃、甘みがまし特においしくなったと言います。

     かぼちゃは、最初になった実が一番おいしく、おいしいかぼちゃの見分け方は、かぼちゃの尻の部分、花が落ちた後の円形の部分がきゅっと詰まって小さいのが甘くておいしいとされています。種を取る際にはそのようなかぼちゃを選んで採種用に残します。

    しかし、このように佐治の生活を支えてきた佐治かぼちゃも、水田の基盤整備が進み、水田の排水施設が整備され、くましを作らなくなって激減しました。また、食糧不足の時は喜ばれた大きさも、時代と共に欠点となり、核家族化が進んだこともあり、大きなかぼちゃはまったく売れなくなりました。自家用に少量作っていた人も、佐治かぼちゃの味を知っている人の高齢化と共に、だんだん作らなくなってしまいました。今では数軒が作っている程度に減少してしまいました。

土手に植えられた佐治かぼちゃ
サルよけのネットをかけられた佐治かぼちゃ

消えつつある佐治かぼちゃ

 

    佐治かぼちゃは、くましで作らなければ本当の甘い佐治かぼちゃはできないといいます。また、今では西洋かぼちゃと混植することが多いため、交雑し佐治かぼちゃの特徴がなくなってきているといいます。また、それに、追い打ちをかけているのが猿害です。佐治は山あいにあるため、年々猿害が増えているそうです。佐治かぼちゃは、その大きさから、登熟期間が長く、その間に猿害にあってしまいます。長年、佐治かぼちゃを作っておられ、種を取り近所に分けておられた農家も、昨年、猿にやられて、今年は作付を見送られたそうです。ほそぼそと作られている佐治かぼちゃにとって猿害は深刻な問題です。

    佐治かぼちゃの話を聞くと、高齢の方はどの方も、「あのかぼちゃはおいしかった」「あまくて、それだけで炊いても、ごはんと炊いても、みそ汁にいれても本当にあまくておいしかった。」と言われます。あまり甘いもののなかった時代であったことを考えても、本当においしかったんだろうと思わせます。くましをつくらなくなり、自家採取のため西洋種との交雑が進み、今では、佐治の人が言う本当の佐治かぼちゃは手に入れることができません。しかし、地元の人の話を聞くと、自分の家では作っていないが、どこかで、いまも作っているだろうといわれます。佐治の人の気持ちの中では、どこにでもある、なくなることのない当たり前のかぼちゃです。

    最近、日本かぼちゃは、西洋かぼちゃに押され食べる機会が本当に少なくなりました。高齢の人に聞くと西洋かぼちゃと日本かぼちゃは香りが違うといいます。昔にもどれるものなら、佐治の人が話してくれる甘くておいしい本当の佐治かぼちゃを食べて見たいものです。

佐治かぼちゃ
佐治かぼちゃの煮物

(平成13年8月取材)

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