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愛荘町のやまいも(愛荘町安孫子、東出、北八木)

異様な形にびっくり

    愛荘町(旧秦荘町)のやまいもは、まずその形に驚きます。黒くごつごつしていて、初めて見ると「これはなんだ?たべものか?」と誰もが思います。

    やまいもを栽培している愛荘町は、琵琶湖の西岸、県のほぼ中央にあり、町の東、東に秦川山を望み、そこから流れる宇曽川がほぼ町の中央を流れています。宇曽川の周りには、山から続く緩やかな傾斜があり、水田が広がっています。やまいもが栽培されている、我孫子、東出地区は、町のほぼ中央やや東側にあります。

地図

伊勢いもが起源?

 

    この地区のやまいもの起源は、今から300年ほど前の元禄時代に伊勢参りの際土産として持ち帰った、伊勢のやまいもがもとになったといわれています。長年改良が重ねられ、独特の形の秦荘のやまいもが生まれたそうです。現在の伊勢いもは、秦荘のやまいものような形のものは少なく、ほとんどが丸い形をしているそうです。

    やまいもの歴史は古く原産地は中国雲南地方といわれており、日本での栽培も縄文後期にさかのぼる作物の中でも最も古い作物の一つだといわれています。しかし、書物では山野に自生する自然薯との区別があいまいでほんとうのことはよくわかっていません。しかし、江戸時代には、現在のやまいもと同じものが栽培されていました。

    愛荘のやまいもの特徴はまずその色と形にあります、全体に黒く、一般にテコ状といわれていますが、鍾乳石のような房状のもの、平たいもの、先が広がったいちょう型のもの、またその先が割れたようなものなど様々な形をしています。黒く、表面にはでこぼこした凹凸があり、一つとして同じ形のものはありません。

愛荘町のやまいも

水田で栽培

 

    やまいもは、水田で作られています。連作を嫌うことから、3年間は稲を作った田んぼに作付けします。大きな種いもを植えなければ大きなやまいもがとれないことから、やまいもの栽培は、2年を必要とします。1年目は、種いもを作るために栽培します。秋に、秦荘のやまいもの特徴がよく出ている形の良さそうないもを残し、それを親いもにします。やまいも栽培では、良いいもは食べずに、次の世代に続けるための親いもにします。このいもを春に、3から4つくらいに切り、植え付け、一夏育てます。秋に掘り起こし、収穫したいもを次の年の種いもにします。春、そのいもをもう一度植え付け、秋になると、やっと2年越しで出荷できるやまいもの大きさになります。2年間栽培しますが、その年に植えたいもが大きくなるわけではありません。春に植えたいもは、しぼんでしまい、毎年新しいいもができます。

夏のやまいも

やまいもは宇曽川の恵み

 

    やまいもの栽培には、町を流れる宇曽川の砂が重要な役目をします。作業は、米の収穫後11月頃から始めます。秋11月頃、稲を作った後、そのまま一度も起こしていない田に、溝を掘り土をあげ、畝を作ります。畝作りは、昔は手作業で大変な労力だったそうですが、現在ではトレンチャーなどの機械で掘ります。翌年4月、桜の花の咲く頃、あぶらかすなどの基肥をやり、T字型の器具で植え穴をあけ、宇曽川の砂を入れます。今では、簡単には川砂をとることができませんが、この植え穴に砂を入れることが、秦荘のやまいも作りの特徴です。砂がいものまわりを囲むことからいもが大きくなりやすく、また、いもが田の土にあたらないためきれいな肌のいもができるそうです。砂は、宇曽川のものが一番よく、宇曽川の砂は地元では、「生きた砂」といわれ山芋栽培に適しています。宇曽川の砂はよく乾くにもかかわらず、栄養価にとみ、庭に入れたりすると苔がつきやすく、この砂が良いいもを作ります。

    植えた後の管理は、植えてから2か月近く後の、5月の末にやっと地上に芽を出します、その頃に乾燥を防ぐために、肩にわらをひきます。6月の末ごろになると、つるが伸びてくるので、支柱を立て、つるが伸びるに従って、つるをうまく支柱にからみつくよう何度かつる直しをおこないます。8月の暑い時期には、乾きすぎないように畝間に水を通します。

    収穫は、夏の間に十分に繁った葉が、気温が下がり、茶色く枯れ始めた10月中旬から11月上旬にかけて行います。 秦荘のいもは、曲がったものや先が広がったものなどいろいろな形をしているのが特徴です。また、思いもよらないところに大きないもがあったりします。掘り起こす作業は先が少しそった鋤で、周辺からていねいに掘り起こしていきます。傷がつくと商品価値が下がることから、注意深く起こします。

秋収穫前のやまいも
独特のすきで掘り起こす

土質が独特のやまいもを作り出す

 

    収穫したいもは洗わず、はけなどで砂を落とし、大きな根ははさみで切り、細かな根はガスバーナーなどで焼きます。土や根がきれいに落とされ、黒い地肌があらわれ、秦荘のやまいもができあがります。

    やまいもは、田の底土が粘土で、土も粘土質のところがよく、町内でもよいものができる地域は限られているとのことです。どこの特産品でもいわれていることですが、同じたねいもを使っても他の地域では決して同じものはできないそうです。

    やまいもは、一般の野菜のように、市場には出荷されていません。販売は、主に秦荘のやまいも振興会が中心に行っており、その他にも各農家が、それぞれ宅配などで直接販売しています。愛荘町では、旧秦荘町時代の昭和58年に「秦荘町ふるさと特産振興会」が設立され、やまいもなどの町内の特産品の宅配をはじめました。このこともあり、現在では、出荷先は近畿地方にとどまらず全国に広がり。やまいもは、進物やお歳暮等の贈答品としても利用されることから、送られた人からの問い合わせなどもあり、現在では沖縄や北海道にも発送しているそうです。

    人気があり、多くは年内に売り切れます。 やまいもの食べ方は、すりおろしてとろろ汁などにするのが最も一般的です。みそ汁などでのばしてとろろ汁にしたり、そのまましょうゆや梅肉で食べます。その他には、すりおろしたやまいもをみそ汁やすましに落としたり、煮付けとしてお正月に食べたりもします。最近では、すりおろしたものをお好み焼きに入れたり、海苔でまいて油であげたりもします。また、その品質の良さから高級和菓子の材料としても使われています。

起こしたて砂とひげにまみれている
きれいにする前のやまいも

味はきめ細かく濃く

 

    初めて、秦荘のやまいものとろろを食べたとき、普段食べている長いもを想像して食べたので、その違いとおいしさにびっくりしました。あくが少ないためか、すりおろしても白さは変わらず、はしでまとまるほどの粘があり、口に入れると、きめの細かいまろやかな舌触りがします。ほとんどあくを感じることなく、ながいもにはないまろやかで濃い味がします。しょうゆを少したらしただけで、それが料理をしていない単にすりおろしただけのやまいもとは思えないくらいのおいしさがあります。

    やまいもは昔から「やまうなぎ」と呼ばれるほど、食べると精がつくといわれています。昔は、相当高価だったようで、普段は食べず、薬として病後の体力回復や、滋養強壮にもちいられていました。現在でも、このいもが贈答や土産として使われるのもわかります。保存がきくうえに、見ると黒くごつごつした姿が印象的です。切ると外見とは違いまっ白で、すり下ろして食べてみると、とろとろでこれがまたおいしい。エネルギーあふれる個性的な姿とヌルヌルしたねばりは、見るからに、滋養があり元気がみなぎりそうな印象を受けます。このように秦荘のやまいもは、保存性や運搬性がよく、形、味とも独特で人目を引くなど商品としての魅力にあふれた滋賀県の特産品と言えます。

砂を落とし根を焼いたやまいも
出荷前のやまいも
(平成13年11月取材)

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