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近畿農政局

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平成30年度地産地消等優良活動表彰近畿農政局長賞授与式及び「地産地消等推進フォーラム」概要


近畿農政局は、平成31年2月15日(金曜日)、メルパルク京都において、「地産地消等推進フォーラム」を開催しました。 本フォーラムでは、平成30年度地産地消等優良活動表彰の近畿農政局長賞授与式の後、基調講演、受賞団体及び農林水産大臣賞の事例発表を行い、管内の農業関係者、食品事業者、行政関係者の方など約90名の方々にご参加いただきました。


 以下にフォーラムの概要をご紹介します。

平成30年度地産地消等優良活動近畿農政局長賞授与式


基調講演
「学校給食における地場産物の活用について」   
  京都府立大学 京都和食文化研究センター 客員教授 田中 延子 氏

 
事例発表
  ・  せせらぎの郷    代表 堀  彰男 氏
  ・  有限会社こやま園    代表取締役社長 小山 伸洋 氏
  ・  株式会社プラス       代表取締役社長 野田 正史 氏
  ・  REICAFE(レイカフェ)  オーナーシェフ 木村 貴行 氏
  ・  加東市学校給食センター    栄養教諭  浅田 恵美 氏
  ・  社会福祉法人志心福祉会はなぶさ保育園    理事長 谷口 久仁子 氏


特別講演
「世界にはばたく青森の黒にんにく」
 協同組合青森県黒にんにく協会 代表理事 柏崎 進一 氏

平成30年度地産地消等優良活動表彰 近畿農政局長賞授与式

近畿農政局長賞

農林水産省では、全国各地でそれぞれの立地条件を活かした、創意工夫のある様々な地産地消の取組及び国産農林水産物・食品の消費拡大を推進する取組を募集し、その成果や持続性、地域への寄与等について優れた取組を表彰しています。
近畿管内において平成30年度に地産地消活動を行う優良な活動団体に対して、近畿農政局長賞を授与しました。
 

☆地産地消等優良活動表彰近畿農政局長賞

  ・  せせらぎの郷    代表 堀  彰男 氏
  ・  有限会社こやま園    代表取締役社長 小山 伸洋 氏
  ・  株式会社プラス       代表取締役社長 野田 正史 氏
  ・  REICAFE(レイカフェ)  オーナーシェフ 木村 貴行 氏
  ・  加東市学校給食センター    栄養教諭  浅田 恵美 氏
  ・  社会福祉法人志心福祉会はなぶさ保育園    理事長 谷口 久仁子 氏

       地産地消等優良活動表彰近畿農政局長賞受賞者
 

基調講演

   京都府立大学 京都和食文化研究センター 客員教授 田中 延子 氏

「学校給食における地場産物の活用について」  

 

学校給食における地場農産物の活用について、制度的なことと具体的な実践方法についてお話していきたい。

平成20年3月に告示された学習指導要領の総則に初めて「食育の推進」が載せられ、学校の教育活動全体で行うことが明記された。

また、学習指導要領の解説では、体育や家庭科、特別活動(学校給食)などと関連させながら、学校教育活動全体で食育に取り組むことが大切であるとされている。食育を進めるにあたっては、栄養教諭の専門性を生かし、先生方と連携をしながら地域の産物を学校給食に使用するなど、色々な工夫をして取り組むことが重要だとされている。

学校給食法においても、栄養教諭の行う食に関する指導は児童生徒が健全な食生活を営むことが出来る知識及び態度を養うために、地域の産物を学校給食に活用するなどして、地域の食文化、食に係る産業又は自然環境の恵沢に対する児童生徒の理解を図るよう努めることとされている。

       京都府立大学 京都和食文化研究センター 客員教授 田中 延子 氏による基調講演の様子

学校給食に地場産物を活用する目的は、「地域の自然、食文化、産業についての理解を深める」「食料の生産・流通に携わる人々の努力、苦労を理解し、感謝の心をもつ」「流通に要する経費等についての関心を高めて環境保護に貢献する態度を培う」「日本や世界をとりまく、食料に関する知識・理解を高める」などで、地域の理解だけではなく、もっと広く世界をとりまく食料事情についても関心を寄せる心を育み教育に生かすことが大切である。

そして学校給食に地場産物を活用することによって、生産者の生産意欲の向上や学校給食に対する理解、地域経済の活性化につなげることもできる。

次に地場産物の活用推進方法について、私の実践を通してと、活用の手順をお話ししていきたい。
私は30年ほど前、北海道の十勝、帯広市で、学校栄養職員として勤務しており、地場産物の活用に取り組んだ。地場産物を活用するに当たっては、推進組織を設置することが重要と考えている。

手順としては、行政や学校、生産者団体、有識者、保護者などで推進組織を設置し、現状把握、活用率の目標設定、地場産物の調達方法、献立や加工食品のための研究開発など活用方法を検討する。次に食育だよりや、イベントを行って市民へ啓発する。

文部科学省は一昨年、「栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育」という冊子を作成し、食育を行う際は、計画をたてて、実践し、そして評価して改善するという、PDCAサイクルをしっかりと回していくことを指導している。

私の実践では、教育委員会がトップになり、農政部局、学校関係者、食材を納入する農協、給食センターなどで推進組織を作り、目的や情報を共有した。役割分担を明確にして、計画を作り、実施して、評価して、評価が悪かったら計画に戻って修正してPDCAサイクルを回しながら推進していった。

現状把握、目標の設定では、例えば、子供たちが地場産物を知らないのなら、児童生徒、市民の地場産物に対する理解を促して愛用してもらうことを目標として、現在の活用率、食材数ベース26%を40%に、重量ベース50%を70%に上げていくことを目標にする。

私の場合、取組の目的としては、農産物輸入自由化への対策、低農薬・有機栽培農産物の推進と生産者の育成、地場産物への児童生徒・市民への理解、地場産物の愛用促進、眠っている郷土料理の発掘などであった。農政部では、郷土料理のレシピと共に指導者を派遣する「帯広の味銀行」を作った。

予算措置や生産者の育成などは農政部が担当しJAがコーディネートした。有機栽培、低農薬栽培を行うと、最初、収量が落ち、生産物が一定のサイズにならない。そこで5年間くらいは収量減に対する価格保障をするとともに、ふぞろいな野菜でも学校給食センターで全量引き受け、市価と比較してマイナスになる部分を農政部が補填した。5年たって収量も安定し、普通の業者と同じレベルで納入できるようになったら自立してもらい、次の新しい生産者を育成することとした。

市民に周知したり、生産者の意識を高めたりするために、ふるさと給食週間、収穫体験学習と交流給食、学校給食週間時に姉妹都市の産物を用いた給食など、食育に関するイベントを実施し、マスコミに広く広報した。

ふるさと給食週間は11月に毎年実施し、一週間を通じ、北海道全体の産物のみを用いた給食を実施した。いくら丼、十勝牛のステーキ、ちゃんちゃん焼き、かにを使った鉄砲汁、ポテトグラタン等というようなメニューを提供した。食材のことや献立の由来に関する教師用の指導資料を作り、学級担任すべてに配った。市長と児童の交流給食を実施し、広く報道してもらうとともに、給食センターで市民の試食会も行い、給食に対する理解を図った。

収穫体験学習では、アスパラ取りやごぼう堀り体験をし、それらを給食に使用し、生産者との交流給食をした。ゴボウは生産者の方が少し抜きやすくしておくなど、手間のかかることではあったが、協力していただいた。また、バス代は農政部が措置した。

学校給食週間には、大分市、徳島市、静岡の松崎町などの姉妹都市の産物を用いた給食を実施し、地域の農産物を知るだけでなく、遠く離れた姉妹都市の産物を知り比較することで子供たちの中によりインプットさせることとした。北海道では竹が珍しいので、徳島市の竹ちくわを食べたあと、竹を笛にしたり工作に使ったり、子どもたちが楽しめるよう企画した。

子供たちへの食育の集大成として、バイキング給食を実施した。黄、赤、緑の食品、汁物、デザートの中から決められた数を取るというルールで、たとえば緑の食品で、ほうれん草のごま和え、きんぴらごぼうがあったら、どちらか1品選択するように、好き嫌いで選べないシステムにしていた。また、後で取る人のことを考えてきれいに取る。おかわりをする時、友だちのことを考えて一度に何個も取らないという、思いやりの気持ちの醸成もバイキング給食の狙いとした。

地場産物を活用した親子料理教室も行った。自分の体を自分自身の力で養っていける能力を身につけさせることは、学習指導要領がめざす生きる力につながる究極の食育だと考える。料理を作ることを覚えると、食事の重要性とか、作ってくれる人たちへの感謝の気持ち、社会性、ともに食べることの楽しさ、心身の健康、食文化、食品を選ぶ力、そして、思いやりの気持ちが育つ。

食育の評価について、文部科学省が作成した「栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育」においては、活動指標と成果指標の両方を評価することを求めている。地場産物活用の評価として、活動指標では、たとえば献立を活用して食文化や食品の産地等を計画的に指導できたか、家庭や地域、生産者等と連携して給食を提供出来たか、計画的に地場産物の活用が出来たかというようなことを5段階評価する。成果指標としては子供たちがどう変容していったか、給食を残さず食べた児童の割合、地場産物に関心があると回答した児童の割合、保護者の変容ならば、地場産物・国産食材の使用割合、地場産物を意図的に使用する割合等で評価してはどうか。
 
文部科学省が実施している「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」の愛媛県の報告では、その町の食材を知らない子供たちが、29年に19%いたのが30年に6%に減り、地産地消の推進を知らない人たちが取組を進める前に28%だったのが8%に減っている。青森県田子町では児童の変容として、副菜の残食率がある。食育が進むと子供たちは感謝して食べるようになったり、栄養のバランスを考えて食べるようになったりするので、27年度とくらべて29年度は残食率が減っている。保護者の変容では、食事に地元産の食材を使用すること、伝統的な食文化や行事食を学ぶというのが増えている。このように評価をしていきたい。

地場産物を使用した学校給食を活用して、教育(食育)に生かすことが、重要なのであって、ただ単に食べさせれば良いと言うものではない。産物がこの地域で生産されている背景を学び、児童生徒が生産体験をすることによって生産者の思いや苦労を学び、感謝の心を育む。社会科や家庭科、総合的な学習の時間を通して食文化を学び、食品を選択する能力を身につける。

私は、「郷土を愛する気持ち」を育むことが「地場産物を使用した学校給食を活用した食育」のゴールだと思っている。私の住んでいる地域にはこんな素敵な食品があって、それはこのような気候風土があったから、私たちの先祖がこんな食品をもってきてくれたから、私はこんな素敵な美味しい物が採れるところに住んでいて幸せだというように感じてほしい。郷土を愛する気持ちがあれば、次に県を愛する気持ちになり、もっと拡大すると日本を愛する気持ちになる。そしてもっともっと拡大すれば地球規模で愛することができる人になる。そういうことが、地場産物を活用した食育の目指すものではないかと考える。

そして、自分の地域以外で作られているものを危険と思うのではなく、地域外にも安全なものもあることを理解した上で地域の物を愛して食べる人に育って欲しいと考えている。 

 

事例発表

地産地消等優良活動表彰近畿農政局長賞受賞団体

せせらぎの郷  代表 堀  彰男 氏


我々の活動する野洲市は滋賀県の南部で田んぼが琵琶湖に向かっている。
昔は畦一本で田んぼと川が区切られていて、魚は田んぼで産卵をして琵琶湖に帰って行ったが、昭和50年頃から生産性向上のための整備事業が行われ、琵琶湖と田んぼの繋がりはなくなり産卵する場所もなくなった。

我々は水路に魚道を設置し、「魚のゆりかご水田」に取り組み、魚が産卵して生育できる環境作りをしている。せき止めることによって上水しか流れず、濁水防止にも繋がっている。

魚のゆりかご水田を多くの方に知っていただくため、水田のオーナー制を導入して一般公募した方に農作業を体験し、できたお米を食べていただいている。生き物観察では200人以上の方に参加いただいている。

酒米を使わずにここで作ったコシヒカリだけで酒作りもしている。野洲市の学校給食センターにお米を納めて、小学校で我々の取組、お米の作り方等々の出前講座を毎年している。

       せせらぎの郷  代表 堀  彰男 氏の事例発表の様子
 

情報発信して交流に結びつけていくため、東京で「魚のゆりかご水田米の収穫祭」をしたり、伝統の継承にむけ地域でとれた魚を食べるイベントを実施した。2年前から守山の近くでマルシェをしていて、ゆりかご水田の米粉で作ったお菓子を今月から販売している。2年に一回の世界湖沼会議が昨年は筑波で行われ、発表させていただいた。平成27年から大学生の皆さんに協力いただき無農薬無化学肥料での米栽培をしている。

世界農業遺産の認定を目指して、ゆりかご水田の取組をアピールしていて、今日、認定申請が承認された。また、農水省の「ディスカバー農産漁村の宝」第二回目で優良事例に選定された。

持続させるためには経済が大切で、皆さんには是非「魚のゆりかご水田米」を食べていただきたい。魅力ある農業、生き物と共生した農業をいかに皆さんに情報発信していくかが一番大事だと思っている。国連が定めている持続可能な開発目標SDGsについて、我々の取組は17項目あるうちの7項目をすでにクリアしている。17項目クリアに向かってさらに進んでいきたい。

 


有限会社こやま園 代表取締役社長 小山 伸洋 氏

 

こやま園では2000年になた豆茶の栽培と販売をし始めた。その後、兵庫県認証食品、有機JASの認証を取得、ジャパンビューティーアワードのインナービュー部門で優秀賞を受賞。メディアにも数々の取材を受けた。大学との協同研究で高血圧ラットを使った実験や、5年分のアンケートを集計して効果を実証した。

2016年にはサミットにあわせて開催されるG7神戸保健大臣会合でなた豆茶を提供し、昨年は総理大臣の官邸内で6次産業化の推進に取り組んでいる優良事例ということでプロデュース賞をいただいた。

現在は49名の農家で活動し、品質向上に向けた勉強会を年に2回開催して、優良な方には表彰を行っている。またベトナムや香港他、海外からのバイヤー視察を受け入れている。

       有限会社こやま園 代表取締役社長 小山 伸洋 氏の事例発表の様子
 

なた豆茶は丹波市でミシュランガイドに載ったジビエ料理店や道の駅、市内カフェなどで活用いただいている。関東エリアでは松屋銀座、紀ノ国屋スーパー、新丸の内ビルの飲食店、郊外の露店やビーガン、マクロビを中心としたカフェで利用されている。近畿エリアではロート製薬の薬膳店、ホテルシェラトンなどで、また全国エリアでは成城石井やスパなどで使っていただいている。

2013年から海外への輸出をはじめ、香港では、そごう、YATA、セレクトショップなどで、現在ではシティスーパー・サンワグループを中心に定番で販売し、年に数回特設会場を設けて知名度を上げている。またベトナムにおいても販売を行っており、苦労して自分たちで輸出や会社設立したノウハウがあるので、ベトナムに事務所を設置して、日本の企業でベトナムに出たいという方の応援もしている。

畑では黒豆狩りなどのイベントも行い、地産地消で作るだけでなく、いかにして商品を魅力的なものにするかを考えて活動している。

 

 

株式会社プラス 代表取締役社長 野田 正史 氏

私どもは、産直市場「よってって」という農水産物直売所を今から17年前にスタートさせた。

最初は農家の物も出していただけない、お客様もどんな店なのかわからないということで苦労したが、そのうちに特定の農家にファンが付きだして徐々にお客様に支持をいただいていった。

和歌山県南部はみかんがおいしくて、北部は桃や柿が有名なので、交流して販売したら地元にないものが食べられるとお客様が喜んでくれ、農家の方も複数店舗での販売で収入が倍になったと喜んでくれた。

会社の方針として、生産者、お客様、地域社会、会社で働いているスタッフに喜んでもらえる四方良しの経営を目指している。現在25店舗を和歌山県、大阪府、奈良県で運営し、登録生産者数は平成30年で7598名になっている。

       株式会社プラス 代表取締役社長 野田 正史 氏の事例発表の様子
 

頑張る原動力になっているのは生産者の収入を増やしていることで平成15年は55名くらいが100万円以上の販売の生産者だったのが、現在は1400名が年間100万円以上、130名くらいの方が1000万円以上の販売額を上げている。店舗を出すことによって、たくさんの方に出荷をしていただいた結果、地域の生産者の収入を増やすことができた。

別の取組で、農業に貢献するために財団を設立し、新規就農の方に支援と優秀な方への表彰等を2年ほど前からスタートした。昨年度は20名の方に応募いただき選ばせていただいて支援している。平均年齢は35.5歳と若い方が農業は厳しいと言われる中でも頑張っている。

和歌山県田辺市の「よってって」いなり本館では、3年ほど前に農業だけでなくて漁業も今非常に厳しいということで、魚にも漁師の名前を貼って出荷する産直を始めた。行政から依頼されて道の駅に出店したり、大阪市が公園の活性化というので開発した天王寺公園の中にも出店をしている。

消費者・お客様に声かけをして収穫体験等も行っている。生産者と消費者の橋渡しをということで、これからも地域の活性化、農業の活性化に取り組んでいきたい。

 



REICAFE(レイカフェ) オーナーシェフ 木村 貴行 氏

REICAFEは、人との繋がりである「縁」を変換し、数字の0(REI)より名付け、地産地消をコンセプトにした個人経営の飲食店である。

主な活動の一つとして、地域の農産物・水産物を使い加工品に仕上げて販売しており、和歌山県特産品の苺「まりひめ」と和歌山県産の「牛乳」と「塩」を使用したジェラートが代表的な商品である。この商品は、和歌山県の優良県産品、「プレミア和歌山」に認定され、海南市ではふるさと納税の返礼品や地域の「海南こだわりブランド」に認定されたご当地品となっている。
現在では、ミカンの花の「蜂蜜」を使ったジェラートや「マグロ」を使ったピザなどもある。

       REICAFE(レイカフェ) オーナーシェフ 木村 貴行 氏の事例発表の様子
 

食文化、教育分野等においては、海南市の有志団体「お菓子グループ」としても活動している。
歴史あるお菓子を祀る神社「橘本神社」が海南市に在る事の理解を深めたいと考え、絵本冊子を作り、史実に基づく演劇を行うなど、小中学生、未就学児、又その保護者を対象に、地域の歴史の理解を深めて行くことに尽力している。

また、飲食店ならではの取組として、定休日を利用し、カフェ体験をやってみたいという主婦のニーズに合わせたシェアキッチンを行い、その中で食材の調理指導や地産地消に繋がる生産者の紹介などをしている。高校生の職業体験も受け入れ、地域特産品の紹介、廃棄物の問題提起、調理方法による好き嫌い改善相談による、体験だけではない地産地消に繋がるきっかけ作りも行っている。

町の歴史、情報を知る機会を設け、現在と後にも地産地消に繋がる活動に尽力している。

 

加東市学校給食センター 栄養教諭  浅田 恵美 氏

加東市学校給食センターは、小学校9校、中学校3校、幼稚園2園の併せて約3,200人分の給食を調理し、職員27名体制で一食あたり幼稚園・小学校210円、中学校240円で提供している。
加東市では、平成25年度より「加東の教育~かとう夢プラン~」を重点的に取り組むべき事業として位置づけ、毎年度工夫しながら取り組んでいる。

加東市学校給食センターでは、その取組として「楽しみのある学校給食特別メニュー」を月に一回提供している。なお、地産地消にかかる費用は市が補助している。

子どもたちに栄養バランスのとれた食事内容や食の大切さについて学ばせるとともに、見る、食べるといった行為を通じて、食への興味・関心を高めるように献立内容を工夫している。また、地産地消を推進し食育に繋げるとともに、郷土食、行事食を取り入れた季節感のある内容にしている。

       加東市学校給食センター 栄養教諭  浅田 恵美 氏の事例発表の様子
 

「かとうのももゼリー」は、地元の特産品「やしろの桃」(白鳳)を、給食センターで調理員が果肉だけにしたあと食品メーカーで加工してもらった。そして、地産地消給食への関心を高めてもらうために、子どもたちがデザインしたももゼリーのパッケージにした。また、「滝野なすのミートグラタン」は、特産品の「滝野なす」を具材とした調理方法が子どもに受け、なすが苦手な子も食べられるようになっている。その他、「加東市産いちごジャム」、加東市産じゃがいも(男爵)とタマネギを使った「加東市産コロッケ」や、加東市産のぶどうを使った「かとうのぶどうゼリー」も給食に提供している。

地産地消を目的とした食育・食農活動では、生産農家に野菜を作る大変さや工夫されていることをインタビューして、地元においしい野菜や果物があることを子どもたちに伝えている。農家の顔が見えることで安心で安全な食材であることを学び、地元の良さや食べることに興味・関心を持ち感謝して食べることの大切さを学んでいる。生産農家との給食交流会を行うと共に、「加東市産の野菜と給食」と題したDVDを作成して幼稚園、小・中学校で食育の授業に教材として活用している。

「かとうのももゼリー」などの給食への提供は、学校、地域、食品メーカー及び給食センターの連携と協力がなければ成功させることはできなかった。地産地消の推進では、食材の確保が困難なものもあったが、その中で工夫し、楽しみにしてもらえる献立を考え、提供することは給食センター職員のやりがいに繋がっている。

これからも子どもたちが、笑顔で口いっぱいに頬張って食べる姿を思い浮かべ、初心を忘れず魅力あるおいしい給食を提供できるよう頑張っていきたい。

 

社会福祉法人志心福祉会はなぶさ保育園 理事長 谷口 久仁子 氏


はなぶさ保育園は京都市の地下鉄石田駅から徒歩5分のところにあり、0歳児から5歳児まで現在187名の園児が在園し、敷地内に18歳まで利用できる児童館も運営している。

地域の様々な世代との交流を大切に、本物と出会う体験を通して豊かな人間性の基礎を育むことを願い、日々実践している。

京都の野菜をできるだけ給食に使用し、子供たちに旬のおいしさを知ってもらい、プランターでの米作りや野菜作り体験を通して農家の方の苦労を知り、動植物の命をいただく感謝の心、自然の恵みとして食材や食の循環・環境への意識、調理する人への感謝の気持ちが育つようにしている。

       社会福祉法人志心福祉会はなぶさ保育園 理事長 谷口 久仁子 氏の事例発表の様子
 

お米作りでは、もみを牛乳パックに一人3粒ずつ植え、育てた苗を土作りしたプランターに植えていく。園庭で毎日観察していろんな虫が来て稲の花が咲くのを見た。稲刈りは農政局の方と大学生も一緒にし、一人一握りずつだが自分のお米が収穫できた。ペットボトルに切れ目を入れてシュっと引いて脱穀し、すり鉢を使ってもみすりした。お米は生きてるよと伝え、透明なガラスの容器でお米を炊くところを見て頂いた。わらでしめ縄作りをし、お正月に正面玄関に飾った。

春は、山に「よもぎ」を摘みに行き、地域、消防署の人などいろんな人を招いて「よもぎもち」つきをした。丹波の小豆を炊いて、全部自分たちで作ってそれぞれが丸めてきなこをかけていただく。

にんじん栽培では、小さな種が発芽して、たくさん育ち、今までなんとなく食べていたにんじんが、3回も間引きをするということを知った。間引いた菜を天ぷらにしたり、湯がいて醤油をかけたりして頂いた。収穫では、ちょっと曲がったにんじんもあった。和食文化を大切にと、だし汁で炊いた物とにんじんご飯を作ってみんなにお裾分けをした。

農家と契約してお米をとっており、そちらの農園で芋掘りをして焼き芋パーティーをした。

園庭で火を炊いてアツアツ鍋パーティーを行った。じゃがいもの皮剥きや、たまねぎの皮を剥いたり、しめじほぐしをしたり年齢に応じて食材に関わり、初めて味噌も作り、とてもおいしかった。

食に関わるイベントとして、地域の商業施設で京野菜の展示などを華頂大学の学生、教授の方と連携して行った。民生委員さんをはじめ、保育園、児童館、他の機関の協力をいただき、食に関わる様々なコーナーを設け、一緒に基幹ステーションとして開催し、たくさんの方に興味を持っていただくいい機会になった。

商業施設での啓発は効果的だったので、保育園児、保護者だけでなく、大学生や教授、食育指導員など様々な方が幅広く活動できる場をこれからも創っていきたい。

  

特別講演

協同組合青森県黒にんにく協会 代表理事 柏崎 進一氏

「世界にはばたく青森の黒にんにく」


私は青森県のおいらせ町の農家で、平成3年に農業生産法人を設立し、平成5年に加工部門をはじめ、端材を最後まで加工して商品化し、展示会、商談会に投入して販路を拡大してきた。

黒にんにくは、弘前大学の研究でがんに効くとわかって一気に知名度があがり、勉強会に集まった仲間で平成20年に協同組合青森県黒にんにく協会を発足した。みんな独自の機械で作っているライバルの集まりである。

協会として第三者機関による認定制度を開始し、当初メンバー以外の津軽方面の2社もいれて平成27年に青森県全部で地域団体商標登録を取った。

       協同組合青森県黒にんにく協会 代表理事 柏崎 進一氏の特別講演の様子
 

飛びこみ営業や見本市・展示会で海外にも販路を広げ、現在、世界25ヶ国以上にジャパニーズ青森のブランド名で販売している。平成26年に6次産業化優良事例食料産業局長賞、平成27年にはフード・アクション・ニッポンアワード2015でインバウンド賞を受賞した。

平成28年2月29日に全国黒にんにくサミットを開催し、全国28都道府県から300名が参加した。同じ年の9月6日を黒にんにくの日に記念日登録して、世界サミットを開催し、研究発表や料理グランプリなどをして500人集まった。平成29年の第2回世界サミットはイタリア、イギリス、オーストラリアなど、展示会等で顔なじみになった海外の方が多数参加した。協会では成分を分析して成分規格をつくり、この大会で「黒にんにく国際会議推奨商品認定制度」を開始した。

青森県産にんにくの産出額は、黒にんにくなどの加工で付加価値がついて2012年に78億円だったのが2017年は190億円になり、農家の所得も向上した。

普及のために黒にんにく認定飲食店制度をつくり、平成30年第3回世界黒にんにくサミットで黒にんにくを使った料理を提供する店を認定した。世界サミットは全国だけでなく海外でもニュースで紹介された。平成30年には8市町村に黒にんにくを経産省のふるさと名物として応援宣言してもらった。みんなで勉強してHACCPにも取り組み、6社が厚労省HACCPチャレンジ事業に登録した。

平成30年にNPO法人黒にんにく国際会議を設立した。黒にんにくに関する食品安全プライベート認証スキームをつくり、食品安全専門部会を開催し、食品安全認証制度の規格を決定した。特定の加工食品を対象とした認証制度の創設は日本では初めてで、国際的な認証制度にすることをめざしている。

協会として大学の先生と黒にんにくの共同研究をしており、今年のサミットの時にはある程度結果を発表する。サミットを通じながら世界を仲間にしていき、日本の農産物を海外に広めるのが私の夢である。 

*HACCPとは
原材料の受入れから最終製品までの各⼯程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などの危害要因を分析(HA)した上で、危害の防止につながる特に重要な⼯程(CCP)を継続的に監視・記録する工程管理システム
 

お問合せ先

経営・事業支援部地域食品・連携課

担当者:奥、藤澤
代表:075-451-9161(内線2764)
ダイヤルイン:075-414-9025
FAX番号:075-414-7345