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近畿農政局

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近畿の食と農インバウンド推進に向けて

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平成28年3月18日
近畿の食と農インバウンド企画委員会

1 増加する訪日外国人旅行者

我が国への訪日外国人旅行者数は近年増加の一途であり、平成27年は1,974万人に達し、過去最高だった平成26年(1,341万人)を大きく上回った。
また、近畿地域においても、長い歴史・文化を伴う我が国を代表する観光資源を有することなど、訪日外国人旅行者の増加の恩恵を受けており、関西国際空港を利用する国際線外国人旅客数も平成27年は1,001万人と暦年として過去最高となっている。
しかし、これら訪日外国人旅行者は京都、大阪、神戸などの観光スポット、いわゆるゴールデンルート上に集まっており、近畿地域でもインバウンド消費の恩恵が一部地域に止まっていると考えられる。

2 訪日外国人旅行者の近畿地域の食と農に関するニーズ

(1)農山漁村の日常体験に期待

近畿農政局で実施した留学生等に対するアンケートによると、来日後、観光に訪れた場所としては、「自然・景勝地観光ができるところ」が65%と最も多く、次いで、「神社・仏閣」、「自然体験、農漁村体験、伝統文化体験ができるところ」、「おいしい日本食が食べられるところ」、「ショッピング」となっており、日本の魅力や代表的な観光地を堪能したことがうかがえる。
一方で、同じ選択項目で今後行きたいところを聞いたところ、「自然・景勝地観光ができるところ」、「神社・仏閣」、「おいしい日本食が食べられるところ」、「ショッピング」などの回答が減っているのに対し、「自然体験、農漁村体験、伝統文化体験ができるところ」が最も多くなるとともに、「日本の日常生活体験ができるところ」の回答が増加している。訪日により新たな日本の魅力に触れ、次回は農山漁村を訪れ、新たな体験をしてみたいとの望みが出たものと考えられ、こうしたニーズに応えることが、農山漁村に訪日外国人旅行者を呼び込む可能性を広げるものと考えられる。

(2)農山漁村の日常の食に期待

また、留学生等に好きな日本料理を聞いたところ、身近で食べることができる「寿司」、「ラーメン」、「天ぷら」、「刺身」が上位を占めた。一方、今後食べてみたい日本料理としては、好きな料理では下位の回答であった「田舎料理」、「おばんざい」、「農家料理」、「精進料理」など、普段は食べる機会は多くないものの、農山漁村を訪れ、その土地でしか味わえない「食」への関心がうかがえる。

(3)訪日外国人旅行者リピーターの農山漁村への呼込み

以上のような留学生等の意向を踏まえると、農山漁村に訪日外国人旅行者を呼び込むには、時間的余裕が生まれやすい2回目以降の訪日外国人旅行者をターゲットとする視点が必要と考える。リピーターとして訪れた訪日外国人旅行者は、広く知られる観光パンフレットにはない、「その地域ならでは」の日常の日本を体感したいと考えているものと思われる。

3 アンケート等から読み取れる訪日外国人旅行者受入れに当たって留意する主な事項

(1)訪日外国人旅行者の受入れ意識の共有

訪日外国人旅行者受入れ側の農林漁業体験民宿や協議会構成員へのアンケートによると、管内の農山漁村で、訪日外国人旅行者の受入れ体制を整え、恒常的に受け入れている取組は多くはなく、まだ、途についたばかりである。
しかし、訪日外国人旅行者の農山漁村への受入れは、その需要が農林漁業の安定生産、地域内住民の新たな連携、雇用の創出や、訪日外国人旅行者の農山漁村での食体験により地域の農林水産物の評価が高まり、帰国後に産品を購入して輸出が拡大するという好循環を通じて、農山漁村の活性化にもつながる可能性を有している。このことを農山漁村の住民や関係者、行政が理解し、その活用の検討、さらには取組を重ねることにより知識・経験を蓄積すべきと考える。
なお今般、近畿地域で訪日外国人旅行者向けの取組を行う関係者のご協力をいただき、先駆的取組として、64の事例を整理した。今後、訪日外国人旅行者に着目し始めているこれら農山漁村の取組の横展開が期待されるところである。

(2)日常の農山漁村の魅力を提供

アンケートによると、すでに、訪日外国人旅行者の受入れを行っているところでは、提供するサービス自体は日本人と同じとするところが多い。留学生等へのアンケート調査においても、「自然体験、農漁村体験、伝統文化体験ができるところ」、「日本の日常生活体験ができるところ」との回答が増加している。これは、農林水産業活動、料理などの生活体験、食文化との関わりの深い祭り等伝統文化体験や地域住民とのコミュニケーションといった、我々日本人にとっては「日常」であっても、訪日外国人旅行者にとって今まで体験したことのない「非日常」を体感できるという期待に応えるものとなっている。
なお、訪日外国人旅行者を現在受け入れている農業法人や行政機関等では、今後農林水産物加工品の提供等を手がけたいとの意向がうかがえる。その際、「訪日外国人旅行者が魅力を感じる商品」というニーズを踏まえつつ、訪問先で消費するのか、みやげ用か、輸出も念頭に置くのか等商品のターゲットを生産段階から明確にした上で、「地域の農林水産物を活かした商品」の開発を行う必要がある。先駆的事例においても、これまでの日本人を対象とした商品とは別に、今後訪日外国人旅行者向けの商品を開発し、新たな食の提案をしたいと考える事業体や訪日外国人旅行者の市場調査を行う必要性を課題に挙げる事業体が出ているところである。

(3)訪日外国人旅行者受入れに当たっての工夫

先駆的事例によれば、訪日外国人旅行者との円滑なコミュニケーションを行うために、

  1. 外国語のパンフレット、ホームページ、メニュー等の準備
  2. 外国語で会話のできる職員の配置
  3. 農家民泊を行う農家に日常会話ガイドの配布

等外国語に関する事項に多くの事業体が既に取り組んでいる。また、現在外国語に関する対応を行っていない事業体でも、多くの事業体で今後取り組む必要性を感じているとともに、さらに、現在取り組んでいる事業体でも、パンフレット等の多言語化や予約電話の外国語対応等さらなるサービスの向上を目指す事業体もみられる。
また、企画委員会で視察を行った和束未来づくり工房では、煎茶の入れ方と味を体験した後、「和束おもてなし煎茶師」として認定(認定証の発行)しているが、このような訪れた方に感動を与える地域ならではの手間をかけた「おもてなし」を地域の中から再発見することが必要である。
このように、訪日外国人旅行者へのサービスの提供に当たり、より良い時間を過ごしてもらうための対応として、施設内の案内や料理メニューの外国語対応、生活習慣等の伝達、宗教上の食制限への対応、地域ならではのおもてなし等既に始められている工夫は、訪日外国人旅行者に安心感と満足感を与えることから適切なことと考える。
なお、外国語対応に関しては、会話ができなければ訪日外国人旅行者の受入れができないわけではなく、例えば、企画委員会の大阪市黒門市場の視察において、商店主は「訪日外国人旅行者とのやりとりは全て日本語でやっている。身振り、手振りや必要なことを紙で示すことで何とかなっている。」との発言、また、黒門市場商店街振興組合では、店先の実際の対応にのみ特化した英会話の研修を行うなど、工夫次第で言葉の問題は解決する糸口があるものと考える。

(4)受入れ環境の整備と人材育成

協議会構成員へのアンケートの中では、今後取組を進める必要がある事項として、多言語案内、Wi-Fi環境、免税手続きの導入等受入れ環境の整備が挙げられている。
先駆的事例においても、同様に、外国語による案内表示、Wi-Fi環境の整備、免税対応等の受け入れ環境の整備に加え、

  1. 需要増に対応して農家民泊に協力いただく農家の確保
  2. 駐車場、宿泊施設、店舗の拡張、洋式公衆トイレ等ハード面での受入れ体制整備

等多くの課題が挙げられている。
これら環境整備には、中には一事業者で対応できないこともあることから、関係者、行政等地域全体で協議しながら、計画的・効果的な整備を進める必要がある。
また、職員の外国語習得や受入れノウハウ習得のための研修の必要性が挙げられており、まだ、訪日外国人旅行者受入れの経験が少ない現段階では、人材育成による底上げを図る必要がある。

(5)訪日外国人旅行者に向けた情報発信

アンケートによると、訪日外国人旅行者への食と農に関する情報発信は、まだ特にしていないとの回答が多かった。先駆的事例においても一部では外国語に対応したホームページの作成等の取組を進めている事例があるものの、これから取り組む必要性を感じている事業者も多く存在している。訪日外国人旅行者の多くが訪日前にはホームページから多くの情報を得ていることから、観光地から農山漁村に訪日外国人旅行者を呼び込むためには、事前の情報提供が非常に重要である。
また、来日後もスマートフォン等から情報を得ている場合が多く、留学生等へのアンケートでも、農山漁村に訪問した時に生じた不都合として、言葉のほか、交通の不便さ、情報不足が挙げられている。
今後は、日常の食、食文化、農山漁村体験、伝統文化体験等農山漁村の魅力をPRすることとあわせて、訪日外国人旅行者の利便性を考慮して、例えば、交通アクセスや宿泊等の基本的な情報についても提供することが農山漁村へ訪日外国人旅行者を呼び込むためには必要と考える。

(6)地域資源「食」の安定供給体制の構築

農山漁村に訪日外国人旅行者が訪れた際のおもてなしとして、地域の食材を活用した料理や加工品を「売り」にしているところであるが、先駆的事例によると、農山漁村の高齢化の進展等に伴い、将来にわたり食材や原材料が安定的に供給されるかどうか懸念する声が挙げられた。また、訪日外国人旅行者が高い興味を示す有機農産物についても、その生産性向上と生産規模の維持が必要との声が挙げられた。継続して訪日外国人旅行者を地域に受け入れていく場合、これら農林水産物の安定的確保は重要な点である。

(7)地域の関係者が連携した取組

農山漁村に継続的に訪日外国人旅行者を受け入れていく場合、農林水産物の安定生産、加工、調理、販売までの一連の取組、訪日外国人旅行者のニーズの把握、受入れ体制の整備、効果的なPR等広範囲の取組が必要になるものと考える。
これらの広範囲にわたる取組には、関係者の連携が不可欠であり、先駆的事例においても、農林漁業者、受入れ事業者、関係業界(飲食業界、観光業界、運輸業界、情報業界、経済界等)、行政等地域の関係者が協議会等の体制を整備することにより地域全体で訪日外国人旅行者を受け入れているケースが出てきている。
さらに、当該体制が、観光地経営の視点を持った観光地づくりの核として、訪日外国人旅行者のマーケティング、地域資源のブランディング、プロモーション、関係者の調整、資金の確保等の活動を行うDMO(Destination Management/Marketing Organization)に発展することにより、より安定的な運営が可能となるものと考える。

4 近畿地域における訪日外国人旅行者の受入れの推進に向けて

(1)農山漁村への受入れ可能性が充分備わる近畿地域

近畿地域は幸いにも、京都、大阪、神戸といった我が国を代表する観光地を抱えるとともに、訪日外国人旅行者が多く利用する関西国際空港が存在することから、訪日外国人旅行者を農山漁村へ呼び込む環境は他地域に比べても極めて優位な状況であるものと考える。
また、近畿各県には、伝統野菜、ブランド農畜産物、多種・多様な果実、3つの海域等からの水産物等多彩な食材と伝統ある郷土料理が存在することから、訪日外国人旅行者は、これからもこれら地域の食に魅力を感じる可能性を充分有しているものと考える。
この点は、いわば近畿地域の特長ともいえることであり、今後さらに、訪日外国人旅行者を呼び込み、農山漁村の活性化に結びつけるためには、海外目線で魅力ある地域を「食と農の景勝地」と称して紹介するなど、訪日外国人旅行者がゴールデンルートを訪れた際に、そのごく身近に魅力的な歴史や景観、食、食文化等を持つ農山漁村が存在していることをPRすることが最も重要と考える。
またその表裏の関係として、農山漁村への受入れ事業者各々の努力と創意工夫とともに、農林漁業者、受入れ事業者、関係業界、行政等関係者が連携して受入れ体制の整備と多種・多様な受入れメニューを提示することも重要である。加えて、近隣市町村等複数地域で柔軟に適応できる環境を確保しつつ連携して、それぞれの地域の魅力や地域の食文化等の一体的なPRや関係者が受入れメニューをバトンタッチしながら連結させることにより、近畿全体の魅力の多様化及び向上につながり、訪日外国人旅行者受入れ機運が向上するものと考える。
さらに、訪日外国人旅行者は、国籍の違いのほか、個人・団体旅行、教育旅行等目的や形態が様々であり、そのニーズに応じて受入れメニューの工夫を行うことが望ましい。
訪日外国人旅行者が離日前最後に買い物をする関西国際空港の免税店を企画委員会で視察した際、訪日外国人旅行者に人気のあるみやげ商品には、近畿地域ゆかりの商品が含まれていなかった。将来、近畿地域で生産された食材とそれを活かした商品がその一画を占めることとなることを切望してやまない。

(2)訪日外国人旅行者の受入れの推進に向け期待される関係者の取組

以上を踏まえ、現在の関係者の取組や課題から、近畿地域のインバウンドに関わる関係者が訪日外国人旅行者の受入れの推進に向け期待される取組は次のとおりと考える。

ア 訪日外国人旅行者受入れの農山漁村の取組

  1. 農林漁業者、受入れ事業者、関係業界、行政等の連携体制(協議の場)を整備するとともに、地域全体で訪日外国人旅行者受入れに向けた情報共有、意識の醸成を図りつつ、地域の魅力の再発見とそれを活かした地域づくりを通じて、訪日外国人旅行者の受入れと、訪日外国人旅行者受入れで生じる諸課題を組織的に解決する。
  2. 訪日外国人旅行者にとっては、食、食文化、伝統文化体験、農山漁村体験等の日常の農山漁村の生活体験と地域住民とのコミュニケーションが「日本らしさ」、「非日常」の体感に通じ、価値を見いだしている。訪日外国人旅行者の受入れに当たっては、このことを念頭に、訪日外国人旅行者に感動を与える地域の魅力を再発見し、それを活用した地域オリジナルの「おもてなし」として訪日外国人旅行者を迎える。
    また、地域の魅力をPRするため、観光協会等と連携し、地域の日常の食、食文化、農作業体験、伝統文化体験等をパッケージにしたツアー等の企画も効果的と考える。
  3. 地域の紹介や地域の農林水産物、日常の食、食文化等のPR、農作業体験を行う場合には、地域で行われている農林水産業活動を取り巻く歴史や背景、生き物や環境の保全活動、環境に配慮した栽培等ストーリー性をもたせてアピールすることも効果的である。
  4. 生産現場では、伝統文化に育まれ受け継がれてきた茶、花き、伝統野菜や、気候・風土を活かした果樹等の基幹作物について、受入れ事業者や飲食業界と連携して、地理的表示保護制度の活用によるブランド化、訪日外国人旅行者のニーズを踏まえた新たな需要を創出するとともに、その安定的生産を図る。
    また、訪日外国人旅行者が、地域の農畜産物を購入し、円滑に動植物検疫を経て持ち帰ることができるモデル的な取組を通じて、お土産販売の促進を図る。
  5. ホームページ、スマートフォン等を活用した農山漁村のPRに当たっては、訪日外国人旅行者が農山漁村を訪れ、滞在(宿泊)する際に必要な基本的情報の発信にも取り組む。
    言語、表記等への外国語対応を行うことが訪日外国人旅行者に安心感を与える上で望ましい。その場合、まずは留学生や地域ボランティアの活用やスマートフォンの翻訳アプリの利用、想定される会話のみ事前に準備するなど、最低限取り組める範囲内で検討してみる。
    また、食事の内容や生産地に係る情報提供、宗教上の食制限への対応、免税対応等その他受入れ環境の整備を行う。
    さらに、受入れ経験を通じて、必要となる関係者の人材育成に努める。
  • イ 関係機関、関係業界の取組

    農林漁業者、受入れ事業者や行政等と連携しながら、訪日外国人旅行者の地方への呼び込みに資する各々の事業・サービスを提供する。

    ウ 行政の取組

    地域の関係者の連携体制(協議の場)に参画するとともに、協議結果に応じて、

    1. 外国語表記の案内板、パンフレット、無料化も考慮したWi-Fi等の環境整備

    2. 訪日外国人旅行者に向けた日常の地域の食、食文化等の特長、伝統文化、景観等の地域の魅力や訪問に必要な情報の発信

    3. 他地域と連携した広域的な農山漁村の魅力や食、食文化等の一体的なPRや訪日外国人旅行者受入れ体制の構築

  • 等地域としての訪日外国人旅行者受入れの支援を行う。

    エ 近畿の食と農インバウンド推進協議会の取組

    推進協議会を構成する受入れ事業体、関係業界、関係団体、行政機関等が連携しつつ、農山漁村の活性化のために、近畿地域の農山漁村に訪日外国人旅行者の受入れ体制や複数地域が連携した広域的な訪日外国人旅行者を受け入れる取組の拡大を目指して、

    1. 推進協議会構成員を対象とした先駆的取組の現地ツアーと現地関係者との意見交換
    2. 先駆的事例について、英訳版を作成し、WEBサイトで外国人にも発信するとともに、随時、先駆的事例を追加し、推進協議会構成員間で共有
    3. 推進協議会構成員間の情報交換を図るために、協議会等を開催するとともに、有識者等に係るセミナーの実施
    4. 関係業界、関係団体が訪日外国人旅行者向けに実施する事業、サービスや国、地方の行政機関が実施する施策等を推進協議会構成員間で共有
    5. 近畿の食と農を活用した訪日外国人旅行者受入れ体制の整備等を行う優良な取組について表彰し、広く紹介

    等を行う。

お問合せ先

企画調整室
代表:075-451-9161(内線2130)
ダイヤルイン:075-414-9036
FAX:075-414-9060

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