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近畿農政局

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~あなたの食育応援します!~「近畿地域食育実践者等の交流会」概要

  • 日時等:平成25年2月28日(木曜日)13時15分~16時45分
  • 場所等:山西福祉記念会館(大阪市北区神山町11の12)

近畿の各地域で体験型の食育を実践している方々が一堂に会し、平成24年度の一年間に行った活動について事例報告と情報交換をする場として開催し、約140名の皆様にご参加いただきました。

以下に交流会の概要をご紹介します。

開会挨拶 

小栗 邦夫(近畿農政局長)

小栗局長
  • 食育は農林水産省に限らず政府を挙げて取り組むということで、厚生労働省、文部科学省など多くの省庁が関係しているが、中でも私ども農林水産省が先頭に立って一所懸命取り組んでいるものと自負をしている。
  • 農林水産省は「食料・農業・農村基本計画」に基づいて、施策を展開しているが、「農業」よりも先に「食料」、食料政策が第一に出ている。国民に食料を安定的に供給するという基本的な施策に加え、食生活の改善を通じて国民生活の質を向上していく、それが結果的に農業政策、農村地域政策にも良い影響を与えるということで、食育に一所懸命取り組んでいる。
  • 私ども近畿農政局の戦略的取組の中でも「未来につなぐ食育プロジェクト」として、小学校教育における食育、将来食育を担っていただく大学の栄養学科等の分野の学生、さらには学食とか社食の分野で重点的に食育の推進に取り組んでいる。
  • 本日は食育実践者の交流会で、この一年間のみなさまの取組をそれぞれ発表していただき、みなさま方共通の思い、あるいはこうしたら良いのではないかということ、新たな知見をいただきながら今後とも益々食育活動が盛んになっていくことを祈念する。
  • 近畿管内の団体の方との意見交換会では、今の学生は携帯とかスマホにはお金をかけるけども、労力のかかるものには手を抜いてしまう傾向があるというようなご意見をいただいた。やはり、人間の生活の中で、食べることが一番基本であり、長い人生を豊かで実りあるものにするためにも、関心をもって自分で判断をしていくという食育の実践が非常に大事ではないかと思っている。みなさま方には、今後、そういったことの推進にご尽力をいただくようお願いしたい。

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小学校と大学が連携した取組事例 

竹本 絢美 氏(同志社女子大学公衆栄養学研究室)

大学のサポートによる小学校での食育活動が児童に及ぼす影響

同志社女子大学
  • 食育基本法制定後、様々な食育活動の取り組みが行われており、小学校では学校田を活用した食育活動が行われている。大学は食情報や食のスキル、マンパワーの提供など小学校での食育をサポートすることが望まれているが、大学との連携による小学校での食育活動の広がりについての報告はほとんどない。
  • 私たちは、小学校が主体となっている食育活動に大学がサポートすることによる児童の食育活動に及ぼす影響を調査した。対象は、京都市の小学校2校で、1校が上高野小学校。調査内容は、各学校の5年生にお便りを配布し、アンケート調査をサポートの事前と事後に実施した。
  • 学校田群のみ、米づくり体験、調理実習を行った。お便りは、季節にあったテーマで、保護者と一緒に読めるような内容とし、豆知識やクイズ、テーマにあったレシピなどを記載した。(お便りの配布のみを行った学校は連携群)
  • 米づくり体験は、地域の田んぼの先生から方法を学びながら田植えや稲刈りを行った。また、大学生が主体となって実施した調理実習は、児童が学内の畑で育てて収穫したさつまいもを用いて簡単に作れるおやつを3品作った。さつまいもの豆知識についてのミニ講義を行い、家に帰ってからも作れるようにレシピを配布した。
  • アンケートは、直筆回答を含む生活習慣、食生活、嗜好に関する約30項目として1項目ずつ児童と一緒に回答した。
  • 両群における基礎データ(身長、体重、家族構成等)で有意な差は見られなかった。
  • 事前調査における食べ物の好き嫌いの有無については、連携群が学校田群よりも有意に好き嫌いがあるとの結果が得られた。魚の嗜好、食の残食についての項目では共に連携群が有意に魚が好きではない、食べ物をよく残すと回答した。おやつの量や時間については、決めていると回答したのは連携群が多く、食事について注意を受けるかという項目では連携群が有意に「ある」と回答した。
  • 学校田群の事前・事後調査における変化では、6つの項目で有意差が見られた。体型認識についての項目では、自分の体型について「わからない」との回答が減少した。食品の産地を考えるかとういう項目では、「よくある」「まあまあある」の回答が有意に増加した。食事において注意を受けるか、という項目では「よくある」「まあまあある」との回答が有意に増加した。
  • 学校田群の事後調査の結果より、学校田の取り組み、大学からのお便りの評価の項目では、「よかった」という回答が大半を占めた。自由記載欄には、「米づくり体験や調理実習が楽しかった」、「お便りが面白かった」などの記載があった。
  • 連携群の事後調査では「お便りがよかった」、「米づくりをしてみたい」という回答が多く見られた。
  • 事後調査における群間比較では4つの項目で有意差が見られた。食の残食の項目では、学校田群が有意に「あまり残さない」「残さない」と回答した。産地への関心、野菜の栽培意欲の項目では、共に学校田群が有意に関心がある、野菜を栽培してみたいと回答した。

弓場上 真奈 氏(同志社女子大学公衆栄養学研究室)

弓場上真奈氏
  • 考察として、学校田群の事前・事後の変化では体型認識について「わからない」との回答が減少した。これにより児童の体型への認識が高まった可能性が考えられる。今後正しい体型認識ができているかの調査や、正しい認識を促す栄養教育を行う必要性が示唆された。
  • 食事において注意を受けるかの項目では「ある」の回答が有意に増加した。一見よくない結果のように思われるが、保護者の関心が高まっている可能性が考えられる。
  • 食べ物の産地への関心については、関心があるとの回答が有意に増加した。これは米づくり体験やお便りなどを通じて児童が食べ物が口に入るまでの一連の流れを学び、その結果、食への興味や関心が高まった可能性が示唆された。
  • 小学校が主体となって行っている食育活動を大学がサポートすることで、児童の食全体への関心に影響をもたらし、食事、生活習慣がよくなることが示唆された。
  • 学校田群では、米づくり体験や調理実習を行ったことが要因となって野菜などの栽培意欲や調理への関心を高めることができたと考えられる。
  • 連携群においては、今回の調査では大きな意識の変化は見られなかったが、「お便りがよかった」、「学校田で米づくりをしてみたい」という回答が多く見られたことから、児童が食に関心を持つきっかけとしてお便りが有効である可能性が示唆された。
  • それぞれの学校でできる体験的な食育とお便りの配布を組み合わせることで、児童の食への興味、関心を高めることができると考えられる。
  • 課題として、保護者にもアンケートを実施することがよいと考えられる。
  • 本研究では、学校田群(学校田+お便り)、連携群(お便り)の2群を対象としたが今後、対象群(介入なし)を加えた3群間で比較を行うことにより、米づくりの体験やお便りなどが児童に及ぼす影響を正しく検討することができるものと考えられる。
  • 公衆栄養活動としてインターネット上にお便りを掲示し誰でも閲覧や利用ができるようにするなど、より広域に食の情報提供を行っていきたい。

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増田 悦子 氏(京都市立上高野小学校) 

学校田での米づくりと同志社女子大学の方とのコラボレーションの食育活動について

増田悦子氏
  • 上高野小学校では、低学年から学校田を利用し、土に親しんでいる。また、地域のお年寄りの皆さんが田んぼの先生という名前で一年間指導していただいている。
  • 24年度の稲刈りや脱穀では、天候に左右されて予定どおりできないことを子どもたちは学んだ。
  • 2年生は実ったお米の収穫祭ということで、おにぎりをつくるお米ランドを生活科のまとめで行う。学校の田んぼでできたお米を使って、おにぎりを一人一人大事につくり、1年生や見に来てくれたお家の人にご馳走するほか、お米づくりにちなんだゲームなど、田んぼで得た物を使ったりしながら皆に楽しんでもらう会を開く。
  • 5年生は、地域の方に手伝ってもらって菜の花畑で摘んだ菜の花の漬け物を作る。塩加減などを教えてもらい、すごい量を作るのでとてもやりきった感のある活動となっている。これを全校生徒に持ち帰ってもらう。子どもたちは毎年、家庭に上高野の味を持ち帰る。5年生はこのように皆のために活動するということが食育の中でスタートする。
  • 米づくりの学習をスタートとして、クラスを一つにまとめるため5年生では予定していなかった(通常は低学年)泥田遊びを活用しようと考えた。泥田遊びをするためのアイデアを出し合い、「皆でやると楽しい」、「田んぼの感触は気持ち悪いと思っていたが、友達と一緒にするといい気持ち」と思うことができることが大事な勉強である。
  • 田植えが終わった後で、社会科の勉強で米づくりの学習が始まり、食料生産の勉強をする。農作業の体験により、何も考えず食べるのではなく感謝して食べようとか、人に有り難さを感じるとか、味わって食べるとか、ご飯になるところまでの努力を気付ける人が増えるのでないかと子どもたちは感じている。
  • 稲刈り後、子どもたちは稲木干しを手伝い、脱穀も昔ながらの機械で行った。農作業の力仕事で、腰や手や色々痛いんだと実感して、さらに感謝できるようになったのではないかと思われる。
  • 藁を使ったしめ縄づくりでは、材料として使う藁を掃除する大変さ、汚い藁は使えないということでやり直しを繰り返し、一つの作品を作るのには大変な時間がかかっていた。米作りの過程で出来た藁も最後まで大事に使って、生活の中に活かすのだということも学んだのでないかと思う。
  • 自分たちで苗から育てたさつまいも、大きいものはみんなで奪い合う、という感じであったが、小さいものは誰も見向きもしなかった。その「ちびいも」を集め、どのように料理したらおいしくなるか、というのを考えて下さったのが同志社女子大学の皆さんだった。
  • おいしくなるようレシピを考えてもらい、子どもたちは作って喜んで食べていた。レシピもいただいたので、家でまた作れる。“無駄にしない”、いらないと思っていたものがこんなにおいしいものになるんだという勉強も、同志社女子大学の先生と一緒にさせていただいた。
  • 学級便りとして家庭に持ち帰り、体験の話をしてもらうことで、家庭にも命に感謝して大事に食べるということが少しずつ届いて行くのでないかと思う。
  • 田んぼの先生、目に見えない人、さつまいもの苗を届けてくれた人、土づくりに精を出してくれた人、姿が見えない人にも感謝できる。人と人とを繋ぐというのが食育ではないかと思っている。
  • いただきます、ごちそうさま以外のような、協力するとか感謝するとか生きていく上で大事なことが学べる1年間になった。

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給食事業者の取組事例 

名阪食品株式会社奈良事業部管理チーム 内田 昌宏 氏、萩野 智恵子 氏

社食・学食で食育実践-スゴイぞ!日本型食生活-

名阪食品株式会社
  • 私どもの会社は近畿を中心として東は関東、西は九州までのエリアでオフィス、工場、病院、福祉施設、学校での集団給食やケータリングを行っている。
  • 食育プロジェクトとしては集団給食の中でも学校や保育園ではなく社会人を対象とした社食で実施した。生活様式の多様化、飽食からくる脂質の過剰摂取等の栄養バランスの偏りで生活習慣病が増えてきているが、今回は日々の自身の食生活を振り返る機会をつくると共に、ご飯を中心とした栄養バランスに優れた日本型食生活を広く認知実践してもらうことが目的である。奈良地域センター、奈良市保健所、奈良佐保短期大学、名阪食品株式会社の4者協力のもと実施した。
  • 実施場所は、奈良市役所地下1階の職員食堂で、奈良市職員だけでなく来庁者の方々も利用されており、一日平均250食程度提供している。構成は、年齢層で20代から80代と幅広く、職員のほとんどは事務職で、利用者のうち90%が男性となっている。
  • 以前からの取り組みとしては、地産地消の推進と奈良市が取り組んでいる奈良市21健康づくり応援団への登録を行っている。
  • 年間を通じてのテーマ、夏冬それぞれに1回特別改善月間としてテーマを設定し、取り組んだ。通年テーマは、「スゴイぞ!日本型食生活」、夏(6月)は「野菜で健康とキレイGet!」、冬(11月)は「食事バランスde笑顔満点」とテーマづけてイベントを実施した。
  • 通年の取り組みでは、食事バランスガイドと食生活改善にかかるパネル及びポスターの掲示、パンフレットの提供、ヘルシーメニュー、スペシャルメニューへの食事バランスガイドサービング表示、卓上メモによる情報提供を実施した。
  • 6月の特別改善月間では奈良地域センターから提供された食事バランスガイド、野菜に関するパネル等の展示、パンフレットによる情報提供を食堂内に掲示した。また、奈良地域センターと保健所が作成した野菜の摂取に関する卓上メモを設置した。6月25日から29日までの5日間には、スペシャルメニューとしてセットメニューを提供した。梅雨時期ということで、食欲増進、防腐、殺菌、消臭作用を意識して薬味野菜を多めに使用した。使用する野菜は、地場産の季節の野菜の使用を心がけた。米はヒノヒカリを使用した。
  • 11月は、奈良佐保短期大学の協力のもと、多くの栄養指導ツールを作成し活用した。立体的な暖かみのある啓発ツールを栄養相談コーナーに設置したことにより、多くの人にコーナーに足を運んでもらい食生活に関する課題のきっかけとなった。特別食の週間メニューのチラシを作成することにより特別食のほうから完売するという傾向になっていた。
  • 以前に比べて食堂利用者の意識がかなり変わってきたように思われる。以前は弁当やセットものを含む定食形式で食事を摂られる人は全体の3分の1程度だった。24年度は、弁当やセットものを含む定食形式で食事を摂られる人は、アラカルトメニューを取られる人の比率と比べて2対3ぐらいになっている。
  • 継続して食生活改善に関する意識づけを行ってきたことで、多くの人の食に対する意識が変わってきた。

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食育仕事人の活動事例 

豊田 裕章 氏(豊田歯科医院院長)

広がる弁当の日 弁当力で家庭、学校、地域を活性化しよう

豊田裕章氏
  • 米の消費の減少が止まらない。50年前までと比べてほぼ半減している。「粗食のすすめ」で有名な幕内秀夫さんの主催する「学校給食と子どもの健康を考える会」に賛同し完全米飯給食を目指そう、それが大事だということで活動してきた。
  • 食の活動の仲間を中心に「食と健康の学習会 おむすびの会」をつくり、1999年から今年で14年目、累計で100回以上の勉強会を開催してきた。個人的には、歯科医という職業柄何ができるかというと、例えば待合室などに自分で作った資料を掲示したり、小冊子を並べたり、本も短時間で読めるようなものを置いている。また、イベントのポスターを掲示したり、患者さんとの個人個人の対応を含めて啓発活動、啓蒙活動を行っており、発信をしていこうということで、ホームページを作った。
  • 活動方針は、地産地消ではなく土産土法。地産地消では駄目だ、方法を言わないから。食べるというのは、何を食べるかとどのように食べるかがセットになるものである。私達に合ったものを私達に合ったやり方で食べるというのが伝統を大切にしたやり方である。地産地消は悪い言葉ではない、でも足りない言葉だ。
  • 平たく言うと朝はご飯とみそ汁を食べようと。今の日本の現状で朝ご飯とみそ汁以外のものを食べていたら何もならない。いくらセミナーなどで勉強しても、そこが変わらないと、まず大人が、家庭が変わらないと駄目だ。
  • 家庭での食生活が崩れた中では、給食は逆に、私たちが本来守るべき、大切にするべきものを中心にする時代になっているのではないか。時代を読もうではないかということを主張している。近くのものと季節のもの、近くのものは地産地消。もう一つは、土産土法。気候風土、あるいは体質にあった食べ方で食べよう。この方法を抜きにして語ってはいけないと思っている。
  • 例えば学校で昼パンが出たら、朝パンを食べている家庭の子は朝も昼もパンである。ドイツ人やフランス人が朝も昼もご飯とみそ汁を食べていたらどう思われる。科学的にどうこうではなくおかしい。特に教育の現場では、子ども達は昼の食事を選べない。そうすると朝の食事の変化というのはものすごく影響が大きい。
  • 私は浪速区の歯科医師会の会報に「広がる弁当の日 弁当力で家庭、学校、地域を活性化しよう」ということをずっと書いている。日本人の食卓から手づくりのご飯、みそ汁、魚料理、お茶などが減り続けている。伝統を大切にした生き方、食べ方が私たちの健康と地域の環境を守ってくれるとういうことを決して忘れてはならない。日本人の望ましい生き方、食べ方を取り戻すために、すぐに実行できる大きな成果が期待できる方法が弁当の日である。
  • 弁当の日の取り組みとはどういうものか。2001年、香川県滝宮小学校で竹下和男校長先生が5、6年生を対象に子供が自分でつくる弁当の日を始めた。献立、買出し、調理、弁当箱詰め、後片付けまでのすべてを子ども達だけで行う、というものである。
  • 年に数回の実施でも、弁当の日を通して子ども達は成長し、食べ残しが減り、弁当の日をやった結果子ども達が「好き嫌いは変わらなくても食べ残せなくなった」と感じている。ここに弁当の日のすごさがある。これが、体験学習のすごいところで、現実を変えるのに体験学習が有効だと思われる。
  • 2012年末の現在で実践校は1,100校を超えている。実践を通して子ども達がどんどん変わり始めている。大事なことは、スタートを切ることで、スタートを行えば、子ども達が自分で勝手に成長して上を目指して行ってくれる。
  • 料理ができる親を育てていかないといけないと思う。弁当の日の実践が大きな原動力になることは、これまでの弁当の日の12年の歴史が残した実績が見事に証明している。
  • 英語とか数学というのは非常に大切なもので、受験の必修科目だと思うが、料理そして弁当づくりというのは人生の必修科目である。このことを大切にしてこれからも活動を続けて行きたい。

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山下 陽子 氏(神戸大学大学院農学研究科・一般社団法人食育研究会-食のVenus代表理事) 

土からの栄養学と健康を焦点にした食育活動

山下陽子氏
  • 私たちは基本的に食べなければ生命を維持し、活動できない。その食べものは、土に埋まっていて、その植物、作物、野菜たちはどこから栄養を吸収しているかというと、土から、根っこから栄養を吸収している。この土の中が十分に適切な栄養が満たされなければ健康が維持できないのだという講義を、神戸女子大学在学中に非常勤講師として来られた保田茂先生から受けた時に大きな衝撃を受けた。
  • 当時の私たちは土の中の栄養素には視点が向いていなかった。しかしながら生命の維持に必要な必須ミネラルは、ほとんどのものが土の中に含まれている。
  • 食品成分表を開いて見たところ、昭和57年ではカルシウムは100グラム当たりに55ミリグラム含まれていたものが、平成12年には49ミリグラムに減っている。他の成分に関してもほとんど減少している。
  • 理由としては、安定して早く形のいいものを求めた作物の育て方が土の栄養状態を乱し、野菜の栄養価の減少につながっている。この実態を見る中で、作物そのものの免疫力も低下してきていると考えられる。食のVenusの活動を通して土の栄養が大事だと学んだ。
  • 環境に住む微生物の働きも、大事な一つ。私たちの体の中で免疫を担っているのは、主に腸の中に住んでいる乳酸菌やビフィズス菌を代表とする微生物たちである。これらが栄養を吸収する最終段階で最も多く存在しており、食べものの中にはばい菌もあるが、それが体の中に入ってしまっても血液を流れて全身を巡ってしまわないように、最終段階のところに寄生して免疫を司って、病気から体を守っている。
  • 農業の分野では人には害を与えないという程度の化学成分が土の中には施用されている。技術の向上により、危険でないものが多くなってはきているが、化学成分を土に施用して育てると、固体の小さなもの達は死滅してしまう。同時にそういう育て方をしたものを食べた私達の腸の中に住む、よい微生物達もやられている可能性が高い。ということは、土の成分、そして土の中に住む微生物が大事ではないか。今の土は健康なのか、微生物は元気なのか、ということがとても不安になった。そこで、食のVenusで、微生物や土の健康に着目した食育プログラム「おやこ食育アカデミー」を実施することとなった。
  • 私たちは作物のことは専門外なので、神戸市西区のおしべ青年部に力添えをもらい、小学生の親子を対象として、年5回のプログラムを実施している。内容は、畑での体験であったり、調理加工するような実習をしたり、健康な食べ方や暮らし方を学ぶ座学をしている。
  • 私たちが参加者に伝えたいこと、目標は6つで、これは兵庫県の学校における食教育の目標としても定めている項目である。1つ目は豊かな人間性を育む、2つ目に生活能力を高める、3つ目、食文化を継承する、4つ目、健康に生きる知恵を学ぶ、5つ目、環境の大切を学ぶ、6つ目、食料自給率を高める、この6つを網羅することを目的としている。
  • 大豆を育てて、選別し味噌づくりや納豆づくりに挑戦した。環境に住む微生物の働きが大事なんだということを教えたくて、土の中の話はおしべ青年部の先生たちに、体の中の話に関しては食のVenusのメンバーが子どもたちに伝えた。
  • このプログラムでは五感を刺激する、目で見たり触ったり、嗅いだり味わったりしながら感じ取って、考えるということをしっかり刺激してあげることによって目標を達成するとともに洞察力、思考力、判断力、実践力、表現力を鍛えたい。それと同時に、思いやりの心を養いたいと考えている。
  • 正しい知識を伝えることで、皆が正しい意識をまず持つようになる。それがやがて行動へとつながり、それが豊かな未来をつくると考えている。
  • 行政、学校、各団体、そして家庭と様々な場面で食育に取り組まれているが、それらが十分に繋がっていないように感じる。皆さんと共通の目的でもって、根拠を明確にしながら、力を合わせてこれからの未来にも、今の食文化や健康な暮らしにつながるような食育の活動をしていきたいと考えている。

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取組展示及び会員間の交流 

未来につなぐ食育プロジェクトに取り組む保育園、小学校、大学、事業者等が一年間の活動をまとめたパネルの展示、会員団体が取り組んでいる食育を紹介するパネル、パンフレットなどの展示を行い、参加者同士で交流を深めました。

展示1

展示2

展示3

各取組成果について(総評) 

 高木 章 氏(尼崎市立浦風小学校校長)

高木 章氏
  • 本日発表されました発表をお聞きして、第二次食育推進計画で述べられている「周知」から「実践」に着実に向かっていると実感した。
  • 私は一小学校の校長という立場から、教育に農業活動を各教科や道徳教育と連携しながら位置づける取り組みを実施してきた。
  • 学校教育に実践的な食育を根付かせるのは大変な労力なのでなかなか賛同者が現れないのが現状である。学校教育目標の「命の教育」を実施するひとつの方策が、日本の農作の知恵に学ぶ取り組みです。そのことが、日本の将来を担う子どもたちに、日本の農業を見直す目を養い、日本の農業再生につながると考えている。
  • 参加されている先生にお願いしたいのは、各教科や総合的な学習・道徳教育との連携を考えて活動を実践していただきたいということ。子どもたちの学びと活動がどのように繋がっているのか目標や評価、指導案を作成していただきたい。体験的な実践は、カリキュラム化しないと子どもたちに学び方を育てることができない。
  • イベント的な一回の体験では「楽しかったね」で終わってしまう。大切なのは継続した取り組みであり、子どもたちの中に楔として定着させることである。
  • 小学校の先生が子どもたちの活動を「学級通信」として書かれていた。大学の学生さんもお便りを出されていた。どちらもその活動を指導者の視点から継続していただきたい。文字にしながら子どもの活動を振り返って「学びの価値」を広げていくことが大切である。その価値をもう一度子どもの「学びの姿」から振り返ってみる。その繰り返しを続けると「体験」が子どもたちの納得した本音の部分の「経験化」にまで育てることができる。
  • 歯科医の先生の立場から発表をいただいたが、日本の子どもや農業の将来を考えると、パンよりご飯を食べることが重要である。勉強されている方は、みなさんわかっておられる。本日参加されている人々も知識は持っておられる。しかし、知識を持っていることと、自分の生活を振り返って行動をかえるまで高めることはとても難しいことである。それは、教育しかありません。体験を積むことで、今まで目に見えなかったものを子ども自ら発見させ、その感動や喜びを内省化させる学びを実現することである。そのような学びが続くことで子どもの心が変わって行動に結びつくのである。
  • 各団体や学校単位の点の活動を面にして、私たち大人が関わっていかなくては、日本の食の未来は危ういと危惧する。食育を通して自然の良さや人の良さ仲間の良さ、そして、私たち自身が行動することに良さを感じて、自信を持ってこれから取り組んでいただきたい。私たちが今自分の生き方(行動)を変えていくことが子どもたちに繋がっていく。今回の発表の輪が広がり、近畿から全国各地に大きな波紋となり波及することを願って講評とさせていただく。

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岩佐 美紀子 氏(大阪ガス(株))

岩佐美紀子氏
  • 食農体験に取り組まれていることが多く、特に、つくるだけ、食べるだけというのではなく、それを全部つなげて取り組んでおられる。
  • 今まで実践者として、それぞれの地域、もしくは企業、団体、会社の中で取り組まれていたことを交流会の場でそれぞれまとめられて発表、そして情報交換されているといったところが、価値判断の基準になるのではないかと思われる。
  • 例えばその地区内でのコラボの取り組みを連携して行っていたものが、この交流会を元に市、県にまたがってさらに広がっていくことで食育の活動が広がっていくのは非常にすばらしいのではないかと感じた。
  • それぞれの土地、団体、企業の中で取り組まれていることをどう広げていくかが課題と思われている方がいると思うが、例えば同志社女子大学と京都市立上高野小学校とはコラボされて進めておられたし、食品会社は地元の短大とコラボされていた。このように他のプロ、専門の方の手を借りるというのも一つの手法ではないかと思った。
  • 食育仕事人の豊田院長先生の話の中で、キーワードがあった。埃だらけの台所のお話をされていたが、安全な台所に変えていけるかは大人が取り組んでいかなければならい。
  • 日本の食を支える文化、例えば入れる器とか、つくるためのエネルギー、伝えていきたい伝統料理、伝えていけるような取り組みを私ども全体で考えていきたいと思っている。

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閉会挨拶 

和田 務(近畿農政局消費・安全部長)

  • 食農体験、調理体験、いろいろな意味での体験が非常に重要であるということ、そしてそれの継続が非常に重要であるということ、そうした中でいろいろなつながりがまた重要である。
  • つながりというもの、自然と人間のつながり、土と食べもののつながり、見えない人たちと自分たちとのつながり、そういったものも含め、また、我々実践者同士のつながりということの重要性を感じた。
  • 3回目になったが私どものこうした集まりが皆様の火をつなげていくことの一つのお役に立てたとすれば幸いだと思っている。
  • 私どもはこれからも皆様方の交流の場、そして情報提供の場をつくりながら、皆様の支援をさせていただけたらと思うところであり、これからの食育の推進を皆で頑張っていきたいのでよろしくお願いしたい。

お問合せ先

消費・安全部消費生活課
担当者:食育班
ダイヤルイン:075-414-9771
FAX:075-414-9910