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植物防疫所

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重要病害虫発生時対応基本指針


第1趣旨
 
国内にまん延した場合に有用な植物に重大な損害を与えるおそれがある重要病害虫が発生した場合には、国及び都道府県が連携し、植物防疫法(昭和25年法律第151号。以下「法」という。)に基づき、これを駆除し、及びそのまん延を防止するために必要な措置を迅速かつ的確に講ずることが必要である。

 この基本指針では、重要病害虫の防除に関する事前の準備、有害動植物の的確な調査・同定、重要病害虫リスク分析の迅速な実施及び科学的知見に基づく防除対策の決定等に関する標準的な手続並びに国及び都道府県の役割について定めるものとする。

 

第2定義
 
この基本指針で「重要病害虫」とは、新たに国内に侵入し、又は既に国内の一部に存在している有害動物又は有害植物(以下「有害動植物」という。)のうち、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

 なお、国内に存在していることの確認に当たっては、「日本植物病名目録」(日本植物病理学会編)及び「農林有害動物・昆虫名鑑」(日本応用動物昆虫学会編)等を参照するものとする。

(1)植物防疫法施行規則(昭和25年農林省令第73号。以下「規則」という。)別表1の2、別表2、別表2の2及び別表7に掲げる有害動植物

(2)規則別表1の第1の1及び第2の1に掲げる有害動植物であって、(1)に該当するもの以外のもの

(3)平成23年3月7日農林水産省告示第542号に掲げる有害動植物であって、国内に存在していることが確認されていないもの

(4)上記(1)から(3)までに該当するもののほか、まん延した場合に有用な植物に損害を与えるおそれがある有害動植物であって、農林水産省消費・安全局長が指定するもの

 

第3事前の準備
 
1連絡体制の構築等

(1)農林水産省は、重要病害虫の発見後、直ちに的確な行動をとることができるよう、平時から都道府県の病害虫防除所等の植物防疫担当部局(以下「都道府県」という。)及び大学・専門機関等の病害虫の専門家との連絡窓口を整理し、都道府県に周知する等連絡体制を構築するものとする。

(2)都道府県は、重要病害虫の発生後、直ちに発生状況等の調査や防除対策を講ずることができるよう、あらかじめ生産園地の場所、栽培植物の種類及びその生産量等の情報を収集するものとする。

 2要員及び資材の確保
(1)植物防疫所(那覇植物防疫事務所を含む。以下同じ。)及び都道府県は、重要病害虫の発見後、直ちに発生状況等の調査や防除が講じられるよう、対応可能な要員のリストアップを行うものとする。

(2)植物防疫所は、重要病害虫の発生に備え、調査や防除に必要なトラップ、誘引剤等の資材を確保するとともに、当該資材の確保のために必要な体制の整備に努めるものとする。

3情報の収集・共有
(1)国及び都道府県は、病害虫に関する学会等に参加する等により、大学・試験研究機関等の専門家と情報交換し、新たな有害動植物の発生等に関する情報を積極的に収集するものとする。

(2)国は、海外における有害動植物の発生状況等を把握するため、植物検疫の関係国際機関、政府機関及び学会等の報告並びに文献等の情報を収集し、必要な情報を都道府県と共有するものとする。

(3)国は、(1)及び(2)により収集した情報を整理し、重要病害虫の防除に関して有益と認められる情報を都道府県に周知するものとする。また、都道府県は、これらの情報について、農業者等が必要なものを整理して提供するものとする。

4同定・防除等の技術の向上
国は、有害動植物の同定や防除等に関する研修等を積極的に開催し、都道府県職員等の技術の向上を促すものとする。

5周知

国及び都道府県は、農業者等に対し、規則別表8に掲げる有害動植物と疑われる動物又は植物を発見した場合には、法第16条の8に基づき、植物防疫所又は都道府県に通報するよう周知するものとする。

第4重要病害虫の発見・報告
1侵入調査等の実施

(1)植物防疫所は、重要病害虫の発生を早期に把握するため、法第16条の7に規定する侵入調査事業による調査(以下「侵入調査」という。)を実施し、都道府県は、法第16条の7第2項に基づき侵入調査事業に協力し、侵入調査を実施するものとする。

(2)植物防疫所及び都道府県は、(1)により侵入調査を実施するほか、重要病害虫の発生を早期に把握するため、発生予察事業等の調査、農業者等からの通報並びに農業者等への周知及び防除指導を通じて、管轄する地域内に生息している有害動植物の種類やその被害状況等についての情報を収集するものとする。

(3)植物防疫所及び都道府県は、(1)及び(2)の調査等の結果、有害動植物の新たな発生の疑いがあると認めるときは、遅滞なくその情報を共有するものとし、植物防疫所は当該情報を別記様式1により速やかに農林水産省消費・安全局植物防疫課(以下「植物防疫課」という。)宛て報告するものとする。

2発見された有害動植物の同定

(1)植物防疫所及び都道府県は、1の調査等で発見された有害動植物の迅速な同定を行うものとする。

(2)都道府県は、1の調査等で発見された有害動植物の同定を自ら行うことが困難であると判断した場合、速やかに植物防疫所又は大学・試験研究機関等に同定を依頼するものとする。

なお、都道府県は、大学・試験研究機関等に同定を依頼した有害動植物が重要病害虫である可能性があるときは、遅滞なくその旨を農林水産省消費・安全局植物防疫課宛て報告するものとする。

(3)植物防疫所は、(2)により有害動植物の同定依頼があった場合は、可能な限り速やかに同定を行い、その結果を依頼があった都道府県に回報するものとする。

なお、植物防疫所は、依頼があった有害動植物の同定を自ら行うことが困難な場合には、大学・試験研究機関等に協力を要請するものとする。

3発見の報告
 
(1)都道府県は、2の同定の結果、当該有害動植物が重要病害虫に該当すると判明した場合又は該当することが疑われる場合には、速やかに、有害動植物の名称、発見した年月日、発見した場所、発見した植物名、被害状況等の情報を別記様式2により植物防疫課宛て報告するものとする。ただし、植物防疫法関係事務に係る処理基準(平成12年4月11日付け12農産第2652号農林水産事務次官依命通知。)による報告を行った場合は、本報告を省略することができる。

(2)植物防疫所は、自ら実施する侵入調査等において重要病害虫を発見した場合には、(1)と同様の報告を行うものとする。

 

第5初動対応
1発生状況等の調査
(1)植物防疫課は、第4の3の報告があった場合は、被害状況等に鑑み、植物防疫所に対し、当該重要病害虫の発生状況等の調査を速やかに行うよう指示するとともに、都道府県に対し、植物防疫所と連携して調査を実施するよう要請するものとする。

(2)都道府県は、植物防疫課から(1)の要請があった場合には、植物防疫所と連携して(1)の調査を実施するものとする。

(3)植物防疫所は、(1)により指示があった調査を実施し、その結果について、次の項目を速やかに植物防疫課宛て報告するものとする。

(ア)発見の経緯

(イ)発生・被害植物

(ウ)発生・被害状況(発生地域、発生・被害面積等)

(エ)発生地域及びその周辺地域における宿主(寄主)植物の栽培状況(分布状況)

(オ)発生の原因(発生・被害植物の由来等)

(カ)試料・標本の保存、管理状況

(キ)その他の必要事項

(4)植物防疫課は、(3)の報告を受けた結果、当該重要病害虫が第4の3の報告があった地域以外の地域にも発生しているおそれがある場合等、追加調査を実施する必要があると判断した場合には、植物防疫所に追加調査を実施するよう指示するものとする。

なお、追加調査の実施に当たっては、(1)から(3)までを準用するものとする。

2初動防除の実施
(1)植物防疫課は、第4の3により報告があった重要病害虫について、そのまん延を防止するため迅速な対応が必要であると判断した場合には、植物防疫所に対し、第6の2による防除対策の決定までの応急的な措置として農薬散布、当該重要病害虫が付着し、又は付着しているおそれがある植物の除去等の防除(以下「初動防除」という。)を実施するよう指示するとともに、都道府県に対し、植物防疫所と連携して初動防除を実施するよう要請を行うものとする。

(2)都道府県は、植物防疫課から(1)の要請があった場合には、植物防疫所と連携して初動防除を実施するものとする。

(3)植物防疫所は、(1)により植物防疫課から初動防除の指示があった場合には、初動防除を実施する園地等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)に対し、防除の概要及び必要性等を説明し、その了解を得て防除を実施するものとする。

3重要病害虫リスク分析
(1)植物防疫課は、植物防疫所に対し、第4の3により報告があった重要病害虫について、1の調査で得られた情報を踏まえ、必要に応じ、国内の有用な植物に対するリスクの分析又は再分析(以下「重要病害虫リスク分析」という。)を実施するよう指示するものとする。

(2)植物防疫所は、(1)により指示があった場合には、重要病害虫リスク分析を実施し、その結果を速やかに植物防疫課宛て報告するものとする。   

ただし、重要病害虫リスク分析の実施過程において、発生した重要病害虫による国内の有用な植物への被害が急速に拡大するおそれがあると判断した場合には、遅滞なく植物防疫課宛てその旨を報告するものとする。

(3)植物防疫所は、重要病害虫リスク分析の実施に当たり、必要に応じて大学・試験研究機関等の病害虫等の専門家から意見を聴取するものとする。

4初動防除の終了
 
植物防疫課は、重要病害虫リスク分析の結果等を踏まえ、発生した重要病害虫に対して法第17条第1項の規定に基づく防除等の特別な防除が必要でないと判断した場合は、必要に応じて植物防疫所、都道府県等の関係機関を招集し、検討した上で、植物防疫所に対し初動防除を取りやめるよう指示するとともに、都道府県に対して農業者等に対する防除指導を徹底するよう要請するものとする。

 

第6防除対策の決定・実施
1対策検討会議の開催
(1)農林水産省は、第5の調査、重要病害虫リスク分析等の結果を踏まえ、発生した重要病害虫に対して法第17条1項の規定に基づく防除等の特別な防除が必要となることが想定されると判断した場合には、その防除対策を検討するための会議(以下「対策検討会議」という。)を開催するものとする。

(2)対策検討会議には、発生した重要病害虫に関する学識経験者及び関係機関の担当者等を招集するものとする。

(3)対策検討会議では、発生した重要病害虫について、第5の調査、重要病害虫リスク分析等の情報を基に、次の項目のうち必要なものについて分析及び評価を行い、防除対策を検討する上で必要な基礎的情報を整理し、具体的な防除対策の案を取りまとめるものとする。

(ア)発生(被害)状況

(イ)宿主(寄主)植物の分布・生産・流通状況及び地理的環境条件

(ウ)調査・防除等に必要な技術の選択

(エ)調査・防除等に必要とされる費用及びその防除効果

(オ)潜在的まん延能力及びまん延の予想速度

(カ)まん延により予想される将来的な経済的損失(国内産農産物の輸出や関連産業への影響等を含む。)

(キ)必要な人員及び設備の確保

(ク)発生監視等の調査に必要な費用

(ケ)地域環境への影響

(コ)その他必要な事項

2防除対策の決定
農林水産省は、対策検討会議において取りまとめられた防除対策の案を踏まえ、次の防除措置の適用が必要であると判断した場合には、速やかに発生した重要病害虫の防除対策を決定するものとする。

(1)法第16条の2の規定に基づく移動の制限

(2)法第16条の3の規定に基づく移動の禁止

(3)法第17条の規定に基づく緊急防除

(4)法第30条の規定に基づく防除に関する勧告

(5)法第32条第6項の規定に基づく病害虫防除所の事務に関する指示

(6)(1)から(5)までに掲げる措置のほか、発生した重要病害虫の防除のために必要な措置

3防除の実施
(1)植物防疫課は、2で決定された防除対策について、植物防疫所に対して速やかに実施するよう指示するものとする。ただし、2の(4)又は(5)の防除措置の実施が決定された場合には、都道府県に対しても必要な措置を実施するよう指示するものとする。

(2)植物防疫課は、(1)により植物防疫所が防除を実施するに当たって都道府県の協力が必要であると判断した場合には、都道府県に対し、植物防疫所と連携して防除を実施するよう要請等を行うものとする。

(3)都道府県は、植物防疫課から(2)の要請があった場合には、植物防疫所と連携して防除を実施するものとする。

(4)植物防疫所及び都道府県は、防除の実施に当たり、所有者等に対して防除対策の概要及び必要性等を説明し、防除への協力等を求めるものとする。

(5)都道府県は、必要に応じ、農業者等に対し、発生した重要病害虫の防除等に関する情報を提供するものとする。

4防除対策の評価及び防除の見直し
(1)農林水産省は、3の(1)の防除の開始後、防除の対象とした重要病害虫の発生状況等に大きな変化があった場合には、必要に応じ、1の対策検討会議を開催し、講じている防除対策の評価を行うものとする。

(2)農林水産省は、(1)の評価の結果、防除対策の見直しを行う必要があると判断した場合には、2に準ずる手続により、改めて防除対策を決定するものとする。

(3)農林水産省は、(1)の評価に基づき、防除対策の継続が必要ないと判断した場合には、防除の終了を決定するものとする。

5発生の公表及び報告
(1)農林水産省及び都道府県は、重要病害虫の発生が認められ、法第17条第1項の規定に基づく緊急防除等の特別な防除が必要となることが想定されると判断される場合には、発生の事実及び被害状況や防除対策等の情報を遅くとも防除対策の決定までに公表するものとする。

(2)農林水産省は、重要病害虫の発生が認められたときは、必要に応じ、植物検疫措置に関する国際基準(以下「国際基準」という。)に基づき関係国の政府機関等に報告を行うものとする。

(3)農林水産省は、(2)により報告した重要病害虫に対する防除対策により、当該重要病害虫の根絶等を確認したときは、国際基準に基づき関係国の政府機関等に必要な報告を行うものとする。

第7その他
(1)農林水産省は、防除対策及び輸入検疫措置の見直し等を実施するために必要となる関係法令の制定又は改正を行うものとする。

(2)農林水産省は、重要病害虫の防除に当たり、関係機関が利用可能な予算の確保に努めるものとする。

(3)農林水産省は、重要病害虫の防除の終了後、当該重要病害虫への一連の対応を記録し、一定期間保存するものとする。

(4)植物防疫課は、特に国内農業に甚大な被害を与えることが明らかな重要病害虫について、平時及び発生時において講ずべき措置を定める防疫指針を策定するものとする。


別記様式1
別記様式2