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農林水産政策研究所

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2. 独創的な農文化システムが維持されている地域を、文化、景観、生物多様性等の多角的な側面から総合的に評価する手法の開発とこれらの維持・保全等を推進するための方策に関する研究

日本における独創的な農文化システムの総合的な評価手法の開発に関する研究

研究総括者

国立大学法人 東京大学サステイナビリティ学連携研究機構 教授 武内 和彦

共同研究機関

国際連合大学

研究の背景と目的

  過疎化、高齢化などマイナスイメージが先行する中で、地域の活力を回復し、レジリエンス(システムが変化を吸収し、機能や構造を維持する能力)を高めるには、人と自然の共生、人々の絆やつながりの価値を国民が再認識するとともに、農村において先祖代々受け継がれてきた伝統的な農業・農法、これに関連する有形・無形の文化、技術・知識、生物多様性、美しい景観など地域の資源・資産、これらが一体となった独創的な農文化システムを環境の変化に適応しながら持続する、「生きており、進化するシステム」として学術的、実践的に再評価し、地域の人々の自信と誇りを取り戻すことが重要である。
  このため、農業・農村のレジリエンスを強化し、サステイナビリティを向上させる観点から、我が国における独創的な農文化システムの総合的な評価手法を開発する。

研究の内容

  農文化システムに期待されているレジリエンス機能に注目しつつ、世界農業遺産(GIAHS)に関するFAO等の先行研究、中国や韓国の先行事例等を踏まえた農文化システムの特性評価及び地域でのケーススタディに基づき、日本における独創的な農文化システムを定義するとともに、以下の研究を行う。

(1) 評価の枠組みの開発

  独創的な農文化システムがレジリエンス機能を発揮しつつ維持されるよう特性分類を踏まえた評価対象、評価主体、評価手続き、評価期間等を開発する。

(2) 評価項目の開発

  FAOによるGIAHSの認定基準(農業生産、生物多様性、伝統的知識・技術の継承、文化、景観等)に、レジリエンス、地域の主体性、トータルな6次産業化を加味する。

(3) 評価手法の開発

  定量評価、定性評価、重み付け、総合評価等を開発する。

期待される成果

(1) レジリエンスの概念を取り入れた、保全・活用すべき農文化システムの同定とインベントリ化につながる、国際的にも有用な、学術的な裏付けをもつ評価手法が提示される。

(2) 変化に対応できる持続可能な農林水産業のあり方に関しての政策提言が可能となるとともに、農林水産物のブランド化や観光振興など6次産業化の推進に資する農文化システムの再評価と再構築が可能となる。

(3) 地域住民自らが独創的な農文化システムを再発見し、地域に生きる自信と誇り、アイデンティティを取り戻し、地域の活性化を図ろうとする動きに結びついていく。


農文化システムの総合的評価ツールの開発と地域比較に関する研究

研究総括者

国立大学法人 島根大学プロジェクト研究推進機構 濱野 強

研究の背景と目的

  近年、農村の人口減少や高齢化の急速な進展に伴い、地域固有の農文化システムの消滅が危惧されている。したがって、「農文化システムを定量的に評価し、地域比較を通して地域の独創性・独自性を明らかにすること」が農村地域の維持・保全、ひいては活性化推進において有益である。
  そこで、本研究では、我が国の独創的な農文化システムの総合的な評価法を提案することを目的とする。

研究の内容

以下の5つの課題について検討を行う。

(1) 農文化システムの理論的検討

  農文化システムの理論的検討を行う。その際、農文化システムを循環型サイクルとして捉え、構成要素の位置づけや意義を整理することで地域固有の農文化システムの持続性を考慮する。

(2) 農文化システムの評価項目及び評価手法の検討

  農文化システムの評価を「性質や価値を決定すること」と定義し、評価手法においては定量化、地域比較、簡便性、費用、再現性、標準化の観点より検討する。

(3) 地域調査の実施

  研究総括者の所属機関の立地条件とネットワークを活用して、最適な調査対象地域を設定し、(2)で作成した評価ツール試案を活用した地域調査を実施する。

(4) 地域調査に基づく地域比較と有用性の検討

(5) 「農文化システム評価ツール」の確立

  農文化システムの性質や価値を伝統的農業・農法、歴史・風土・慣習、生物多様性、景観、人間関係等の多面的な側面より定量的に評価し、かつ地域比較が可能となる方法論を検討するとともに、地域での試行を通して「農文化システム評価ツール」を開発する。

期待される成果

(1) 農文化システムを定量的、かつ比較可能な形で明らかにすることで、各地域の「強み・弱み」が客観的に明らかとなり、中長期的なビジョンに基づく地域振興や活性方策の検討(=農村地域の持続可能な発展)が可能となる。

(2) 将来的には専門家のみならず地域住民の参画による評価体系の構築のための有用な「農文化システム評価ツール」となる。


日本に存在する独創的な“農文化システム”の類型化とインベントリ作成に関する実証的研究

研究総括者

一般財団法人 農村開発企画委員会 主任研究員 落合 基継

研究の背景と目的

  農山漁村地域の人々の暮らしや生業・自然環境・生物多様性・伝統文化などは、それぞれが独立して存在しているのではなく、それぞれの地域の地形や気候などをベースに、“農”を中心として相互に影響しあいながら「農文化システム」としてこれまで維持され持続して存在してきた。この「農文化システム」については、その構成・内容・組み合わせ等が多様であることから、これまで我が国ではその枠組みを提示することはできていない。本研究課題では、我が国の独創的な「農文化システム」を把握するために、「農文化システム」を類型化し、日本に存在する「農文化システム」をまとめたインベントリを作成することを目的とする。さらに、各地域の農文化システムの内容分析から、地域の持続性の評価を行う。

研究の内容

  日本に存在する独創的な農文化システム把握のために、農村地域の資源を対象とした表彰・顕彰等や土地利用方式論や農法論等の既存の研究等のレビュー等を通じて、日本の農文化システムを構成する要素(環境面(地形・気候、地域資源など)、社会面(コミュニティ、伝統文化など)、経済面(営農、交流など))及び要素同士の結びつき方(地域でのストーリー等)の整理をする。それらの成果を用いて、農文化システムの構成要素リストの作成及び農文化システムの類型化を行う。さらに、農文化システムの内容の確認のために構成要素リストや類型を活用して日本各地にて実証調査を行い、最終的には日本の農文化システムのインベントリの作成を行う。さらに、得られた各地の農文化システムの内容を分析することで、地域の持続性のためのポイントを明らかにする。

期待される成果

(1) 日本各地に存在する独創的な農文化システムを保全し、持続的に利活用するための基礎的情報の整理ができる。

(2) 全国的にどのような農文化システムが存在するのかが整理され、そのシステム自体の独創性が把握され、さらに地域の持続性が検討されることで、地域の活性化等方策の検討につなげることができる。


我が国の独創的な農文化システムの継承・進化に向けた制度構築と政策展開に関する研究

研究総括者

国立大学法人 九州大学大学院農学研究院 教授 矢部 光保

共同研究機関

法政大学生命科学部

研究の背景と目的

  伝統的な農村景観や多様な動植物、農村独特の文化、歴史的農業構築物、伝承技術など、これら有形・無形の農業遺産は、農業と生物多様性・生活・歴史が一体となった農文化システム(agri-cultural system)によって維持・継承されてきた。しかしながら、農業の近代化、農村人口の減少と高齢化、生活様式の多様化などによって、地域特有の農文化システムは弱体化し、喪失の危機に瀕しているが、我が国の既存制度は農文化システムを全体として継承させるに十分なものとは言えない。このようなおり、FAOが認定を行う世界農業遺産(GIAHS)が2002年にプロジェクトとして開始され、先進国ではじめて能登・佐渡地域がその認定を受けた。そこで、GIAHSへの登録・活用を視野に入れた政策展開に資することにより、我が国の農文化システムの継承・進化に貢献することを研究目的とする。

研究の内容

  有形・無形の農業遺産の継承・進化に資する政策展開にあたって、以下の視点から調査研究を実施する。

(1) 英国・イングランドの生物多様性、景観、歴史的構築物等を対象とした環境管理助成制度の調査研究から、有用な示唆を抽出し、我が国の独自性を考慮した農業遺産の保全に向けた方策の方向性を検討する。

(2) その場合、国内の農文化システムによって農業遺産が良好に保全されている地域をパイロットスタディ地域とし、そこでの課題を抽出する。また、想定される方向性の有効性を検証し、その結果をフィードバックして、農業遺産の保全に向けた提言に生かす。

(3) さらに、農業遺産の保全がもたらす地域経済や伝統文化への波及効果を経済的に評価する。

期待される成果

(1) 「農文化システム」の概念とその継承・進化のための農業遺産の保全に向けた方策の方向性を示すことは、我が国農業の多様な価値とその保全政策を国際的に主張する場において、重要な政策手法となり、我が国農業政策の国際交渉力の強化に資する。

(2) 我が国独自の農文化システムを考慮した農業遺産の保全に向けた方向性が提言されることで国内政策展開に貢献する。

(3) 地域レベルにおいて、人々の地元文化に対する誇りの醸成、歴史的農業構築物の維持・保全、グリーンツーリズムの拡大による地域経済への貢献など、多様な波及効果が期待できる。加えて、これまで意識的に保全されることが希であった農業遺産について、これを存続させること自体が目的化されるため、そのための活動が強化される。

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お問合せ先

農林水産政策科学研究委託事業推進事務局

ダイヤルイン:03-6737-9091,9046
FAX番号:03-6737-9098

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