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農林水産政策研究所

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主要国の農業戦略と世界食料需給の横断的・総合的研究(プロジェクト研究)

1. 研究目的

  世界の政治・経済において、ブラジル、インド、中国等の新興国の発言力が増し、WTOドーハ・ラウンド交渉はこれら諸国と先進国の対立で停滞が続き、一層の貿易自由化を目指す動きはEPAに中心を移している。米国やEUはウルグアイ・ラウンド農業合意における「農業支持のデカップル化」の先を見据えながら農業政策の枠組を定期的に改定しており、中国やインドのように巨大な人口への食料供給確保を重要課題とする国では食料生産・供給の拡大に向けて農業支持の拡大が進むなど、WTO体制の下での農政の枠組に影響を及ぼすような動きも出てきている。

  また、世界の食料需給動向を見ると、新興国をはじめとする開発途上国の経済発展に伴う急激な需要増加に対して南米や旧ソ連諸国による供給が増加するという構造的な変化が生じており、長期的には気候変動による影響等も懸念されている。

  こうした潮流の中で新たな動きも見られる。2017年1月に発足した米国のトランプ政権は、対外政策において米国の利益を最優先する方針を打ち出し、早々にTPPからの離脱やNAFTAの再交渉などを決定した。国内政策においても、今次農業法の実施期間は2014~2018年とされており、今後同政権下で次期農業法の検討が進められる。またEUでは、2021年からの次期CAPに向け、今次(2014~2020年)CAPの評価と見直しを進める段階に入っており、英国のEU離脱という新たな状況下での政策の見直しとなる。

  農林水産政策研究所では、これまでも我が国の農業政策立案や食料需給の観点から重要な国・地域を対象として、農業政策とその背後にある戦略や食料需給動向の把握・分析を行ってきたところであり、米国、EUの新たな動きやこれが関係国に及ぼす影響の把握にも留意しつつ、主要国・地域の情勢把握・分析を継続する。

  さらに、多くの国々が相互の関係を深め、共通あるいは関連する課題を抱えるようになっている現状に鑑み、各国単独での分析に加えて、地域や課題のまとまりを捉えて、関係国相互の関係や立場の違いの横断的な把握に取り組む。また、主要国・地域の分析と世界食料需給見通しとの連携の強化を通じて、一層的確な需給見通しの策定に努める。

2. 研究内容

(1)主要国農業戦略研究

  我が国の農業政策立案や食料需給の観点から重要な主要国・地域を対象として、これを大きく(1)政策を把握する必要性が高い国・地域(米国、EU、韓国等)、(2)農産物輸出国(タイ、ベトナム、ブラジル、ロシア、オーストラリア等)、(3)農産物消費国(中国、インド、インドネシア等)、(4)その他重要地域(中南米、アフリカ)に分けて、農業や農産物貿易に関する政策、主要農産物の需給動向等について最新の動向を継続的に把握する。米国やEUの新たな動きに注目しつつ、各国・地域の情勢把握の中でも、必要に応じて米国の対外政策見直しや英国のEU離脱の影響等の把握に努める。

  また、各国の農業政策や農業・食品産業を巡る動きについて、共通のテーマを取り上げて、各国横断的あるいは地域的な分析を試みる。具体的には、平成28(2016)年度に引き続き以下のテーマを取り上げる。

1)価格・所得等政策を中心とする農業支持政策

  主要穀物(小麦、トウモロコシ、コメ、大豆)等を対象として、価格・所得政策だけでなく、需給調整政策、生産財の購入費用助成等の関連政策を含めて仕組まれている政策のセットについて、現行の仕組みの意図、背景、効果や課題を、これまでに至るそれら制度の変遷やその背景等も踏まえて、主要国・地域で横断的に把握し、それぞれの違いとその背景を把握する。対象としては、EU、米国、韓国、台湾、タイ、ロシア、豪州、中国、インド、メキシコ等。平成28(2016)年度は現状把握が中心だったことから平成29(2017)年度は歴史的経緯の把握などにも取り組む。

  EUのCAPや米国の農業法の見直しに向けた動きについても、主にこの中で取り上げる。EUや米国の動向については、行政部局等との随時の情報交換も検討する。

2)東アジア地域のフードシステム

  東アジア地域(日本、中国、韓国、台湾、ASEAN等)のフードシステムの現状を、主として貿易構造の変動と農業・食品関連産業における企業行動に着目して解明する。

  貿易構造変動の分析では、国際貿易統計を用いた各種貿易指数の計測とその分析を深める。特に需要の多様化等を反映していると考えられる産業内貿易の動向を整理し、その背景を把握する。また、各国が直面している貿易上の依存関係や拘束関係をネットワーク分析の手法も適用して分析し、農産物貿易における我が国の国際的地位やその変化を明らかにする。農業・食品連産業における企業行動の分析では、我が国の企業との競争・協調関係も想定される韓国企業の活動を中心にその実態を把握する。

3) その他農業に関連する基本的な法制度

  例えば、移行経済国(ロシア、中国、ベトナム等)における土地(農地)制度改革の経過、現状と課題、外国人土地所有に関する規制等を把握する。

(2)世界食料需給見通し

  プロジェクト研究「世界の食料需給の中長期的な見通しに関する研究」(平成20~22年度)において開発した「世界食料需給モデル」を更新するとともに、主要国農業戦略研究を通じて得られた各国の農業・農政に関する知見も活用して、10年後の世界の食料需給見通しを引き続き実施する。また、行政部局等の要請を踏まえつつ、シナリオ分析等の実施を検討する。さらに、将来の気候変動が食料需給や農産物価格の変動に与える影響を分析する。

3. 研究成果の活用方法

(1)農業分野の国際対応に有益な情報・知見の提供。

(2)国内農業政策の企画・立案に有益な情報・知見の提供。

お問合せ先

企画広報室広報資料課

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