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第12回青森食育推進協議会 講演

高血圧と活性酸素

~食べものによる予防と改善の試み~

青森県立保健大学 大学院健康科学研究科
生活健康科学分野准教授 佐藤伸氏








  高血圧になるのは、食塩の取りすぎやストレス等様々な要因があるが、近年体内での活性酸素の過剰増加が高血圧に関連していることがわかった。
  16~18世紀、イギリスは大航海時代であったが、乗組員は「壊血病」に罹り多くの乗組員がこの病気で死亡していた。原因がわからないため、なすすべがなかった。イギリス海軍医ジェームス・リンドが、乗組員がオレンジやレモンなどの柑橘類を食べることで、この病気を予防できることを発見した。
  ビタミンCの発見(ハンガリーのセント・ジェルジによって分離された)は1932年頃で、この時代から185年後であり、リンドはビタミンCが不足しているということは知らなかったと思うが、何かのキッカケで、経験的に発見したものと思う。
  昨年ある機会があって、イギリス(スコットランド)へ研究・調査する機会があった。休日地域内を散歩したとき、近くに肥満に注意のポスターが張ってあった。チップスの3割はクッキングオイルと表示されてあり、クッキングオイルをガブ飲みしているショッキングな写真で注意を呼びかけていた。
  スコットランドにおいても、がん、冠動脈疾患、脳卒中は、ビック3 キラーとよばれ深刻な状況にある。青森県の死亡原因についても、1位はがん、2位が心臓病、そして3位は脳卒中が多い。
  心血管系疾患を招く遺伝的要因と環境的要因との間の相互作用について、環境的要因では、食事のバランス、喫煙、ストレスなどがある。そのリスク要因としては、高血圧、糖尿病、肥満、加齢、遺伝的背景などがあり、これが動脈硬化につながり、心筋梗塞、脳梗塞、末梢血管障害、慢性腎症を引き起こすことになる。
  高血圧の予防と改善には、抗酸化物質による降圧と高血圧による臓器保護作用の探索を試みて見ると、高血圧状態で見られる過剰の活性酸素を除去することは、高血圧の予防と改善の1つの有効な手立てとなると思われる。
  活性酸素はどのように生成されるのか。酸素分子は安定しているときは良いが、電子のやり取りを通じて種々の活性酸素が出来、最終的に水になる。その過程で出来るスーパーオキシドが、高血圧、糖尿病、高脂血症等の生活習慣病をはじめ、老化などに悪い影響を与える。
  血圧の調節でレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系という内分泌系が血圧調整にもっとも深く関係している。腎臓に入る血液量が減ると、腎臓はレニンという酵素を分泌し、アンジオテンシンB.という強力な血圧を上げる物質をつくって血液を増やそうする。腎臓は、血液をろ過して必要な物質を再吸収する一方、不要な水分や塩分を尿として排泄し、体液のバランスを保っている。
  血管はどんな構造になっているか。血管は、内膜、中膜、外膜の3層からなっており、動脈の壁は拍動性の血流と血圧に耐えられるよう厚く弾力があり、内部の圧が減っても丸い形が保てるようになっている。静脈の壁は薄く柔らかである。
  高血圧と活性酸素の関係は、NAD(P)Hオキダーゼという酵素により、スーパーオキシドが生産され、それが、血管内皮機能異常、炎症細胞の活性化、肥大、血栓などを招き、次いで動脈硬化の発症へと進む。
  高血圧と活性酸素の関係では、“NO"は、YES!。相反するようなことばあるが、NOは「いいえ」ではなく、一酸化窒素(NO)のことで、血管の拡張作用、抗血栓作用などをもつ。
  もし、抗酸化物質でスーパーオキシドを除去することが出来れば、血圧上昇を抑制出来るのではないかと考えた。
  小豆は日本人には昔から馴染みの食べもので、健康によいと言われてきた。ポリフェノールを含み、体内に発生した活性酸素を除去する働きがある。
  小豆のポリフェノールは、血圧上昇を抑制するかどうかについては、遺伝的に高血圧となるラット(自然発症高血圧ラット)と健常ラット(血圧正常ラット)を用いて、小豆から抽出した飼料(ポリフェノールを多く含む小豆抽出物)を含んだ飼料を与えると、小豆抽出物を与えた高血圧ラットで血圧上昇の抑制が見られた。
  小豆を食べたラットの血圧は、長期間投与した試験結果では、19週目から高血圧状態になったが、小豆抽出物を与えたところ血圧降下が見られた。
  どうして、血圧は下がったのかといえば、高血圧ラットの体内でNOが増加しているかを調べる必要があり、24時間尿中のNO代謝物の量を測定して見たところ、高血圧ラットでは体内でNO量が増加していた。また、腎臓中のスーパーオキシド量も低減していた。
  ラットの血圧が下がったのはいいけど、ヒトへの対応の場合では、あずき茶(ポリフェノール105mgを含む)を飲んでいただいた。被験者の血圧の変動では、飲用前の収縮期血圧が140mmHg以上の被験者4人に1日、朝、昼、夕、就寝前と4缶を12週間飲んでいただいた。その結果、飲用前の血圧値は、飲用前に比べてやや低下していた。
  活性酸素を除去する食べ物には、ブロッコリー、レタス、タマネギ等があり、リンゴ等に含まれるケルセチン、ケンフェロールという成分は、いろいろな効果があり有効な成分として知られている。
  「ほとんどすべての病気は、かかった後で治すより、かかる前に予防する方が容易なのです。」(ジェームス・リンドのことば)この言葉の意味は当たり前のようだが、実行することは容易ではない。
  「すべての物が毒であり、毒とならない物はない。毒でなくするものは、ただ量だけである」(スイスの医師パラケルススの言葉)体に良いからと言って、それだけ食べるというのはどうかと思う。前に農政事務所の会議の時にも話したことがあるが、パラケルススのことばで言われるように、体に良いからと言って多く食べれば良いというものではない。バランス良く食べることが大切と言える。
  栄養素の「3つの作用」とは、栄養素の摂取量と栄養素作用、薬理作用、中毒作用の量であり反応関係については、表でもわかるように一定程度を超えると中毒作用を表す。これでもわかるように食べ過ぎもよくないが、まったく食べないのもよくない。バランス良く摂ることが大切。

まとめとして、

  1. ほとんどすべての病気は、かかった後で治すより、かかる前に予防する方が容易である。
  2. 活性酸素は、高血圧に関係する。
  3. ポリフェノールなどの抗酸化物質は、スーパーオキシドなどを除去して高血圧の予防・改善に役立つ。しかし、もっと研究が必要。
  4. すべての物が毒であり、毒とならない物はない。毒でなくするものは、ただ量だけである。(パラケルスのことば)

(参考)

  1. 壊血病とは、
    ビタミンCが不足することにより、体内の血管がボロボロになり出血性の障害が各器官に起こる病気です。
  2. ビタミンC
    ビタミンC(アスコルビン酸)は、ハンガリーのセント・ジェルジによって分離された。興味深いことに、彼は柑橘からではなくトウガラシの仲間パプリカからビタミンCを分離した。柑橘類の果実などでは量が少なくなかなか抽出できなかったのが、偶然調べてみたパプリカに大量に含まれていることがわかったそうである。偶然か、必然か、それはわからないが、彼はその功績によりノーベル医学賞を受賞した。
  3. パラケルスス
    スイスのアインジーデルンで生まれ、医師であった父・ウィルヘルムから自然哲学を教わりながら育つ。1515年にイタリアのフェラーラ大学医学部を卒業した後、医療を施しつつ旅を重ね、やがて自身の医学が、当時の医学界で支配的な地位を占めていたガレノスを超えたと考えるようになる。そして「古代ローマの高名な医者・ケルススを凌ぐ」という意味を込めてパラケルススを自称するようになる。

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