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平成15年11月5日 とうかい食の安全・安心フォーラム

平成15年11月5日
メルパルク名古屋2階「瑞雲西」
本年7月、国民の健康の確保を目的に「食品安全基本法」が施行され、食のリスク評価等を担う「食品安全委員会」の設置、食品のリスク分析手法の導入よる新たな食品行政がスタートし、厚生労働省、農林水産省においてもリスク管理機能等強化が図られてます。
このような中で、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、東海農政局及び農林水産消費技術センターは食の安全・安心の確保に向け、「とうかい食の安全・安心フォーラム」を開催しました。その一部について紹介します。

 

【開会あいさつ】

東海農政局長 西川孝一

近年、BSEの発生、食品の偽装表示、無登録農薬の使用などの問題が発生しました。これらを踏まえ、国民の健康保護を優先として、食品安全基本法が成立、7月には内閣府に食品安全委員会が設置されました。
農林水産省では、「食の安全・安心のための政策大綱」を6月に定め、消費者の視点に立った安全・安心な食料の安定供給、安全・安心のための政策づくりへの国民の参画など強化してきているところであります。
食品安全委員会は、食品添加物の健康影響評価を行うなどいわゆる「リスク評価」を行い、農林水産省、厚生労働省は、それに基づいて使用基準を定める等いわゆる「リスク管理」を行うとともにリスクコミュニケーションを実施しています。東海農政局においても、その一環として関係機関とも連携しつつ、消費者をはじめ多くの方々と様々な機会を捉え情報交換、意見交換を実施しています。
本日、内閣府食品安全委員会委員の小泉先生をお迎えしての基調講演とパネルディスカッションを企画しました。「食」についての理解を一層深めて頂く機会となれば幸いです。

【基 調 講 演】

−食品の安全性確保のための新たな仕組みについて−
内閣府食品安全委員会委員 小泉直子 氏

日本人の寿命は、食生活の改善、水道の普及、ワクチン接種、健康教育などにより、大きく伸び、男78歳、女85歳と、世界一の長寿国となっています。
一方、自給率をみると、カロリーベースで40%であり、米国125%、ドイツ96%という水準に比較すると非常に低く、また、輸入食品を含め、食品に含まれる色 々な問題、リスクが多様化し、複雑化してきています。
多様化、複雑化とは何かというと、ひとつは、まず、利便性です。これは、コンビニで多様な食品が手に入る一方、保存のための添加物などの必要性が増大するということ、また、二つ目は、今までにない新たな危害、例えば、異常化したプリオンの発生、三つ目は、分析技術の向上により検出感度が向上し、測定値ゼロがなくなる、ということなどです。
こうした中で、消費者の食の安全性に対する不安は、アンケートによると、添加物、遺伝子組換食品、残留農薬等の順となっており、また、食品生産過程において必要な改善としては、肥料、農薬、収穫時の管理等の生産段階が第一、次いで、製造・加工過程、自然環境、流通段階という意見となっています。
実際、食の安全で最も危険性の高いものは、年間約1,000件、患者数3万人前後が発生している食中毒で、これは、過去何十年間、同傾向となっていますが、発生場所のほとんどは、これまでの家庭から、飲食店へと移っています。その他、食品の危害要因としては、生物学的要因の他、抗生物質、遺伝子組替え、BSE、微生物など、色々と考えられます。このような食の安全性に対する不安、危険性の存在という状況の下で、食の安全性を確保し、消費者の健康保護を最優先しようという目的で、本年7月に設けられたのが「食品安全委員会」です。この委員会では、食品の健康への悪影響が生じる確率を科学的なデータに基づいて評価し、人間にとって、ここまでは大丈夫という基準を見極める「食品健康影響評価」を行います。
具体的には、動物実験による毒性試験、発ガン性試験、奇形が起きないかどうかの試験などにより、体重1kg当たりどれだけの量であれば 一生食べても大丈夫という「一日摂取許容量」を決め、さらに、動物と人間の違い、人間でも老人、幼児など色々な方がいることなどから、安全性を配慮し、この許容量の数値をさらに1/100としています。つまり「一日摂取許容量」が1,000mgであれば、その1/100の10mgまでしか許容できないという基準を設定するということです。
食品安全委員会では、7月の発足以降、これまで、厚生労働省や農林水産省から、カビ毒、動物医薬品、健康食品のアマメシバ、BSEのせき柱などについての評価の依頼を受け、食品健康影響評価を行い、厚生労働大臣や農林水産大臣に順次その結果を通知しています。
そして、この結果に基づいて、厚生労働省等は、使用基準や成分規格を具体的に設定するということになり、これをリスク管理といいます。
こうした、食品安全委員会の行う食品健康影響評価と厚生労働省などが行う規格の設定などのリスク管理の間で、非常に大切なものが、リスクコミュニケーションで、これは、消費者、生産者、流通業者などが双方で情報、意見を交換し、納得した上で、食品健康影響評価やリスク管理を進めていくということです。

【パネルディスカッション】

−食の安全・安心をめぐる現状と課題−

パネリスト
小泉直子 内閣府食品安全委員会委員
大橋美由紀 名古屋勤労市民生活協同組合理事
伊東佑文 キユーピー株式会社広報室長
吉川真治 愛知県経済農業協同組合連合会営農総合室長

コーディネーター
藤池 淳 東海農政局消費・安全部長

行 政
広瀬 誠 厚生労働省医薬食品局食品安全部企画情報課課長補佐
姫田 尚 農林水産省消費・安全局消費者情報官
(敬称略)

藤池 食の安全・安心については、何を信用して良いのか、誰を信用して良いのか、わからなくなったと消費者の方からお聞きしたことがありますが、食の安全・安心についての現状をどのように見ておられますか。

大橋 食は人間形成の基になるものだと認識しています。それで食の安全を求めて生協に加入しました。近年、食に関する様々な問題が目白押しで、BSE問題、O−157、ダイオキシン、乳業メーカーの事件。そして、偽装問題や残留農薬問題。消費者の不安をかき立てる問題が起きました。日本という豊かな食文化がある所でこういったことが起こることに、何とかならないのかと思ってきましたが、これからは受身形では済まないと認識しています。また、食品表示の偽装は、食品行政に不安を抱いているのが私自身の実感でありますが、関心が消費者の中から高まっているのではなく、高まざる得ない状況と思っています。

−食の安全・安心の取組について−

吉川 現在、県では「いいともあいち運動」と言う地産・地消を進めています。一方、JAグループ愛知ではJAに出荷する農産物は記帳して下さい、それを農協に提出して下さいとお願いしているところです。愛知県には、6万3千戸の販売農家があり、生産履歴となると100万件ほどのデータになると思われますが、やり遂げたいと思っています。
さらに、消費者の皆様から生産現場が見える、いわゆるトレーサビリティの「あいちそだち」という銘柄を作り上げました。ミニトマトなど8桁のナンバーで生産農家がわかるようになっています。
また、「いきいき愛知」の取組ですが、農薬の使用回数や肥料の化学性窒素の使用量を慣行の半分以下に減らした農産物の認証制度で、現在、専業農家1万戸のうち一割に当たる1千戸がこの制度に参加してしております。
このように活動を通して、今後も消費者の皆さんと一緒に歩いて、愛知県農業を発展させたいと思います。

伊東 「安全」と「安心」は、似たような言葉ですが、根本的に違いがあると思います。安全は「数値化」できる、論理的に共通の土俵が作りやすいと言うこと。安心は「心」で 、感情の問題で土俵が作りにくいと言うことです。
そこで、安全な食品づくりについては、一つは、良い原料を入手することが物づくりの基本ですから、まず原料供給者を訪問し、信頼できる人かどうかを見極め、次に規格を作り、納入されたら規格基準どおりかをチェックします。製造段階ではルールづくり、人づくり、環境作りがポイントです。これによって製造の技術水準を上げ、安全な食品作りにつなげています。人づくりでは平均レベルを上げるより、最低レベルの人をいかに引き上げるかが重要です。1000人中で一人でもミスをする人がいたら安全は確保できません。「安心できる食品」とは、私の勝手な定義ですが「信頼できる会社が提供する安全な食品」と思います。そこで、信頼していただくには、隠し事をせず、会社の透明性をあげることやお客様の目線に立って要望を素直に聞いていくことが大切と考えます。

藤池 BSE調査委員会報告では行政について種々の問題点が指摘されましたが、食品安全行政に対して何を期待されますか。

伊東 2つだけお願いしたいと思います。1点目は、的確な情報を流していただきたい。最初にBSEが発生したとき、テレビで足腰の立たないウシが繰り返し放映され影響が大きかった。何かあったら不安をあおる情報だけではなく、安心感を与える情報も交えて流し、消費者が正しい判断ができるようにして欲しい。2点目は、「食育」ということが言われていますが、実のあるものにしていただきたい。食育の最終の狙いは、健康寿命を長くすることであります。食品の安全性は当然でありますが、バランスよく多くの種類の食品を食べて、適度な運動をし、健康な体作りをすることが重要であることを教えていただきたい。

−行政の取組−

広瀬 今般、食品衛生法が改正されました。食品の安全性の確保と、国民の健康保護が目的規定に組み入れられています。そして、安全を達成するために国の責務、地方自治体の責務、そして原材料の安全確保といった事業者の責務、特に食品等事業者には記録保存の努力義務を定めています。それから、リスクコミュニケーションの取組については、国民・住民から定期的に意見を伺うということで、3省庁協力して設けているところであります。
消費者は、食品の安全について認識を深めていただき、意見交換の場に出て、1つでも2つでも自分の意見を言っていたたくことが非常に大事であります。

姫田 配布資料に「農林水産省は新しく生まれ変わりました。国民の皆様に信頼を得られるよう、消費者を重視した食品安全行政の展開・・・」と書いてありますように、生産重視だけではなく消費者の皆さんの意見を踏まえて、行政を進めています。
私の官職名も「消費者情報官」となっているのは、その現れです。消費者の皆様方に情報をお届けしたり、消費者ニーズを拾っていくかが仕事であり、リスクコミュニケーションと食育を担当しております。このように消費者に軸足をおいていくことがこれからの農林水産省の大きな仕事であると思います。
リスクコミュニケーションは情報の徹底した開示と同時に、施策決定前にご意見をお聞きすることと思っています。

小泉 リスクコミュニケーションの中で大事なことは、情報公開です。そして、意見交換をすることです。ところが、なかなか日本人特有で意見を言わない。今後はリスクコミュニケーションの取り方も検討すべきではないでしょうか。
消費者もこれからは単に批判するのではなく、同じ土俵で話し合う事が大切であり、消費者の方々からの指摘や意見によって、我々や行政がそれに対してできる限りのことをやることが信頼に繋がると思います。行政だけにリスク管理してもらうのではなく、消費者もリスク管理する時代と思います。

藤池 本日お集まり頂きました会場の皆様方とパネリストの方々との輪が、この東海地区で大きく広がる上で、今日のフォーラムが一里塚となることを祈念してディスカッションを終了いたします。

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