スギヒラタケは食べないで!
スギヒラタケは食べないでください。
スギヒラタケは、キシメジ科スギヒラタケ属のきのこです。日本ではスギ、マツ等の針葉樹の切り株や倒木に主に8月から10月頃にかけて発生し、右下の写真のように、傘が2~6 cm程度の大きさの耳形又は扇形の白いきのこがいくつも重なり合って群れて生えるのが特徴です。
立ち枯れしたアカマツに
発生したスギヒラタケ
(写真:新潟県森林研究所提供)
かつては、スギヒラタケは食べられるきのこと考えられていました。そのため、日本では栽培されていないものの、東北、北陸、中部地方を中心に野生のものが広く食べられていました。しかし、平成16年以降、それらの地域でスギヒラタケを食べたことが原因と考えられる病気(急性脳症:意識障害やけいれんが主な症状)が多数報告されるようになりました。
当初は、腎臓の機能が低下している人がスギヒラタケを食べると、急性脳症が起きるのではないかと考えられました。しかし、その後、腎臓の機能に異常が認められない場合でも、スギヒラタケを食べた後に病気を発症して死亡した事例が確認されました。そのため、厚生労働省は、(原因が究明されるまでの間、念のため、)腎臓の機能が低下していない方も含めた一般の方に対し、スギヒラタケの摂取を見合わせるよう注意喚起をしています。
農林水産省からも、これまで、きのこ狩りのシーズンに合わせてスギヒラタケの摂取を見合わせるよう自治体や関係団体にお知らせし、スギヒラタケの特徴等に関してウェブサイト等を通じて広く情報提供してきました。
農林水産省や厚生労働省が原因究明のための調査研究を実施してきましたが、スギヒラタケが安全に食べられるきのこかどうかは現時点ではわかっていません。 農林水産省の委託研究では、スギヒラタケに天然に含まれる複数の成分が関係して、急性脳症が起きるのではないかと考えられる成果が得られています。
このようなことから、スギヒラタケはこれらからも引き続き食べないようにお願いします。
スギヒラタケは、地方によって違う名前で呼ばれている場合があります!
スギヒラタケとは知らずにスギヒラタケを食べている可能性があります。きのこには地方によって様々な呼び名があるので注意してください。
厚生労働省や各自治体、文献1, 2などの情報をまとめると、スギヒラタケは地方によっては以下のような名称で呼ばれることがあるようです。
スギカノカ | スギカノガ | スギカヌカ | スギカヌガ | カヌカ | カヌガ | カノカ | カノガ |
カヌガキノコ | カノカキノコ | スギモタセ | スギモダシ | スギボタシ | スギボダシ | スギボタ | スギダシ |
スギワカイ | スギワガイ | スギワカエ | スギワケ | スギワゲ | スギワケエ | スギワゲエ | スギワガイ |
スギワカオイ | スギオワケ | スギアオケ | スギワカレ | ワカイ | ワカイキノコ | ワガイ | オワケ |
シラフサ | シロワカエ | カタハ | カタヒラ | スギゴケ | コケ | スギキノコ | スギタケ |
スギタケモドキ | スギヒラ | スギシメジ | スギヒメジ | スギナバ | スギノキナバ | スギミミ | ミミゴケ |
ミミタケ | ミミシメジ | シロミミ | ユキタケ | ||||
※訛(なまり)によって「スギ」が「シギ」に、「キノコ」が「キノゴ」になることもあります。 |
上の枠内に示した名称は、地方によってはスギヒラタケとは別種のきのこの名称、俗称として使われている場合もあります。いずれにしても、スギヒラタケの可能性がある野生きのこは、食べたり、人に譲ったりしないでください。
スギヒラタケの特徴については、以下のウェブサイトも参考にしてください。
ヒラタケやウスヒラタケ、ブナハリタケは、スギヒラタケとは別種のきのこです。
スギヒラタケはキシメジ科に属しますが、ヒラタケやウスヒラタケはヒラタケ科に属します。名前や形が似ていますが、全く別種のきのこです。ヒラタケやウスヒラタケは人工的に栽培が可能で広く市販されている食用きのこです。
ブナハリタケ(別称:ブナカノカ)はスギヒラタケ(別称:スギカノカ)と似た特徴や同じ別称(略してカノカ、カヌガなどと呼ばれる)を持つ白いきのこですが、エゾハリタケ科に属しており、スギヒラタケとは別種の食用きのこです。 スギヒラタケが主にスギ、マツなどの針葉樹に生えるのに対して、ブナハリタケはブナなど広葉樹の枯れ木や切り株に群生します。 スギヒラタケには傘の裏側に白色のヒダがついていますが、ブナハリタケには傘の裏面にヒダが無く、白色の針状の突起がぶら下がっているのが特徴です。
野生きのこがヒラタケやウスヒラタケ、ブナハリタケなどの食べられるきのこかどうか見分けが付かない場合には、絶対に食べないようにしてください。
きのこの鑑定や特徴、食用の可否に関するご相談は、各都道府県の試験研究機関、衛生研究所等に問い合わせてください。
古い情報や誤った情報にご注意ください!
平成16年以前に出された書籍やウェブサイト上の古い情報では、スギヒラタケは「食用きのこ」として紹介されています。また、平成16年以降の情報でも、スギヒラタケは腎臓に障害がある人の場合のみ注意が必要であり、健康な人では食べても心配ないとの誤解を与えるようなものがあります。今でも、野生のスギヒラタケの採り方や食べ方などを紹介しているものもあります。
腎臓の機能に異常がない人でも、スギヒラタケを食べると健康被害が生じる可能性があります。そのため、年齢や健康状態に関わらず、スギヒラタケはどの地域で採られたものであっても、また、どのような調理法であっても食べないでください。
(解説) スギヒラタケと急性脳症
スギヒラタケの摂取との関連が疑われる急性脳症は、平成16年に初めて国内で報告され、約60名が発症し、そのうちの19名の死亡が確認されています。しかし、それ以前にも、スギヒラタケがよく食べられてきた地域では、同様の特徴を持つ脳症の発症事例が複数あったことが確認されており、スギヒラタケ摂取に関連する急性脳症は平成16年以前から風土病的に存在していた可能性が指摘されています3。
急性脳症は、死亡することや後遺症が残ることがある病気です。スギヒラタケを食べた直後に脳症と考えられる症状が出た患者の中には、それまで何度もスギヒラタケを食べた経験があった人や少量しか食べなかった人も含まれていました。現時点では、スギヒラタケが採れた地域や採れた年の違いによって安全性に違いがあるかどうか、安全な食べ方があるかどうかなどはわかっていません。
万が一、スギヒラタケやスギヒラタケの可能性がある野生きのこを食べてしまい、脱力感やふらつきなど体調に異常を感じた場合には、直ちに医療機関でスギヒラタケと疑われるきのこを食べたことを伝えて診察を受けてください。
スギヒラタケについて、さらに詳しい情報を知りたい方へ
農林水産省や厚生労働省が実施した、スギヒラタケと急性脳症の関連性に関する研究の状況について、より詳しい情報を知りたい方は「スギヒラタケの毒性に関する調査研究」を御覧ください。
参考文献
- 奥沢康正、きのこの語源・方言辞典, pp 408-409, 山と渓谷社(1999)
- 松本則行、スギヒラタケの生態と2004年の特異事象, 新潟県森林研究所研究報告 No.47 (2006)
- 小田温ら、県北に多発した急性脳症について, 新潟医学会雑誌 119(8) (2005)
お問合せ先
消費・安全局農産安全管理課
担当者:生産安全班
ダイヤルイン:03-3592-0306
FAX:03-3580-8592