2. 事業導入の背景「水利施設の歴史ー4.近代(江戸時代~明治時代)」でも紹介したように、吉野川下流の左岸地域(旧吉野川流域)は、明治に入って吉野川の本流が変わってから、川の水が減ると海水が 遡上し、地下水まで塩水化するため大規模な塩害を受けてきました。このため、大正時代には第十樋門が造られ、吉野川本流から旧吉野川へと流れ込む水量が調節されるようになりました。 昭和10~20年代(1935~54)には 今切川(いまぎれがわ)、旧吉野川に海水の遡上を止める潮止樋門(ゲート)が造られ、さらに昭和49年(1974)、50年(1975)には、これらに代わる今切川河口堰、旧吉野川河口堰がそれぞれ完成しています。しかし、今切川河口堰、旧吉野川河口堰の完成からは、すでに30年以上が経過しました。現在までに本地区では以下のような問題が表面化しています。 農業用水の水質悪化吉野川下流の左岸地域では、吉野川、旧吉野川、今切川から水路を引き、農業を行っていますが、農業用の水路は、家庭雑排水などの受け皿にもなってきました。 しかし、近年は、都市化や宅地化の進展が著しく、排水が増加しているため、農業用水の水質悪化が顕著になっています。 平成2年度の調査では、地区内の農業用水路、取水口42カ所で水質を測定しましたが、基準よりも水質の悪かった施設がみられました。 【写真】ごみの混入した水路 【表】平成2年度 水質調査結果(中国四国農政局調査)
農業用水の塩水化旧吉野川、今切川の下流域では、地下水の過剰な汲み上げに伴う塩水化が進んでおり、干ばつ時には作物が塩分濃度の高い地下水を吸収し、生育障害が発生するなど被害も出ています。 【図】塩害発生の仕組み 【図】水路の塩素イオン濃度分布図 【写真】塩害による稲の生育障害状況 農業取水施設が分散・老朽化【図】吉野川下流左岸地域の取水施設と水路 画像をクリックすると拡大します 吉野川下流の左岸地域では、旧吉野川、 今切川の約100カ所の取水地点から、また、400か所を超える地下水井戸を利用して農業用水を確保しています。しかし、施設の老朽化や地下水の過剰な汲み上げに伴う地盤沈下による用水機能の低下などにより農業用水が安定的に確保しにくく、維持管理費も年々増えています。 用排兼用水路が散在吉野川下流の左岸地域の用水路は、用排兼用の開水路が多く、隣接の吉野川北岸地区に比べ、パイプライン化が遅れています。このため、生活排水などが農業用水路に流入し水質悪化を招いています。 【グラフ】下流域地区と北岸地区とのパイプライン施行率の比較 【写真】家庭雑排水が流れ込む用水路 |
お問合せ先
四国東部農地防災事務所
〒779-0105
徳島県板野郡板野町大寺字王子72-2
TEL:088-672-5252