6.環境への配慮環境配慮基本方針四国東部農地防災事務所では、本事業の実施にあたり、以下の環境配慮基本方針を定めております。 はじめに徳島県北東部に位置する吉野川下流域は、讃岐(さぬき)山脈と四国山地に囲まれるとともに、中央部を流れる吉野川が地域に潤いを与え、県都徳島市を中心に豊かな自然環境が創出されており、この自然の恵みを活かし地域の振興・発展が図られてきました。育まれた自然環境では多種多様な動植物が生息・生育し、またこの地域で暮らす私たちにとっても、文化的で安らぎの場を多く提供しており、私たちの生活は自然環境との共生・共存の上に成りたっていると言えます。 この地域は古くから農村地帯として発展してきましたが、近年では農業以外で生計を立てる多くの方々が生活するようになり、都市と農村とが如何に共存していくかが今後の地域振興を考えていく上での重要な要素となっています。 現在、国営吉野川下流域農地防災事業は、吉野川水系と重要なつながりを有する同地域の都市化・混住化に起因した農業用水の水質悪化を改善するとともに、県下最大の農 業地域を維持・発展していくために必要な農業生産基盤の整備を進めてきています。 事業を実施していく中で、地域住民の方々の環境に関する意識が高まってきていることを受けて、この地域で進めている国営吉野川下流域農地防災事業がどのように「環境との調和への配慮」に取り組んでいくのか、今回、取組方針をとりまとめました。 環境配慮の基本的考え方(基本理念)自然環境は、健康で文化的な生活を送る上で欠くことのできないものです。そして、人の営みと多様な生物とが共生できるような豊かで美しい環境を実現し、広く地域住民がこの豊かな自然環境を享受するとともに、これを次世代へ継承することができるよう保全していく必要があります。 国営総合農地防災事業を実施している吉野川下流域地区には、吉野川の豊かな流れと自然環境の中で、発展してきた歴史的背景があります。 こうしたことを踏まえ、本事業における環境配慮に対する基本理念は、関連する県市町の環境の現状と課題・方針などを踏まえ、つぎのように定めます。 <基本理念> 未来に向けて自然に満ちた環境を! ~自然豊かな農村環境の保全を目指して~ 環境配慮の基本方針本事業の基本理念に基づき、基本方針をつぎのように定めます。 <基本方針> 豊かな自然環境づくり 快適な生活環境づくり 地球にやさしい環境づくり 住民参加の環境づくり (1)豊かな自然環境づくり 貴重な自然環境に対して、影響を与えないようにしながら、大切に守り育てなければなりません。このため、河川、湿地、海岸等の様々な自然環境に応じた様々な生物(特にレッドデータブックリストにある希少種の動物や植物)を保全し、多様な生態系の維持と地域を特徴付ける景観、身近に触れ合える緑や水辺を保全・創出するように努めます。 (2)快適な生活環境づくり 工事によって公共用水域を汚さないように努めます。また、事業による大気や土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭などを防止するなど、生活環境を保全します。 (3)地球にやさしい環境づくり 省資源タイプの設備の導入や間伐材を利用したフェンス等環境への負荷が少ない資材の活用、建設副産物のリサイクルの推進に努めます。 また、直営施工による環境整備や農業用水路の清掃活動等を通じ、地域とともに環境への負荷が少ない社会づくりに取り組みます。 (4)住民参加の環境づくり 本事業において、広く情報を発信するとともに地域住民の良好な環境を次世代に継承するため、環境保全活動や、環境教育・参加型環境学習(田んぼの学校等)によって自主的な環境保全活動を誘発するとともに、みどりの環境づくりを、住民の幅広い参加・連携を得ながら推進します。 事業における環境への対応策1.環境配慮対策のあり方 調査・計画から実施にかけ、環境の保全について適正な配慮を行います。 環境への影響の緩和手段であるミティゲーションの5原則(環境配慮の5原則)を基本として、本事業における環境との調和に配慮します。5原則の適用に当たっては、環境の保全、多様な生物の生息・生育環境の保全の他そのための費用、維持管理等の観点から、影響の回避が可能かどうかを検討し、回避が出来ない場合は、順次修正、最小化等を検討し、最も適切な方法を選定します。 【表】ミティゲーションの5原則 現在の環境を保全する 【回避】 保全すべき環境要素を、事業に伴う人為的影響からできるだけ遠ざける (例)水路や施設の建設予定地に貴重な生物が生息・生育する場合、路線を迂回させて環境影響を回避 ↓ 環境を回復し、創造する 【修正】 工法(素材、規模、時期等)の選定などにより、影響をできるだけ少なくする (例)生態系を保全する工法の採用 ↓ 【最小化】 事業の実施により、新たな生息・生育空間の創出やネットワーク化を推進する (例)既存水路ネットワークへの配慮(機能を残す復旧等) ↓ 【影響の軽減/消失】 工事実施に先立つ準備や仮設計画での工夫で影響を緩和する (例)工事実施中における濁水処理の対策 水生生物を保全するための水流の確保 ↓ 【代償】 既存の生息・生育空間を補償する代替地を確保する。 (例)植物の移植や、魚の救出・移動 (1)工事施工上の各過程における環境配慮の考え方 本事業では、地域の特性や県市町の環境計画等を踏まえ、環境に配慮した対策を行うこととしていますが、工事が完了するまでの各段階において、具体的にどのような事項に留意し、対策を検討・実施すべきであるか、統一的な考えの下で検討する必要があります また、環境配慮に対する認識・考え方は事業に携わる者が理解し、農家を含む住民に対しても説明できるものでなくてはなりません。 このため、事業実施上の各段階における環境配慮の考え方をつぎのとおり示すとともに、必要な対策の検討・実施上の手引きとなる「環境配慮指針(策定中)」を整備して、適正な環境配慮対策を実施して行くこととしています。 1.調査・計画段階 環境への配慮は、地域特性に応じて適切に行う必要があります。事業地区の自然環境及び社会環境の特性並びにそれらに適した路線等の計画を立案するよう努めます。また周辺環境に与える影響を事前に調査し、必要な配慮対策を行うことによって環境への影響を軽減した工事計画とするため、当該工事計画における環境配慮事項を整理します。 2.設計段階 調査・計画段階で整理した環境配慮事項に基づいて施設の構造・施工方法などを検討し、設計に反映するよう努めます。 3.施工段階 設計段階で計画された環境配慮対策に基づいて工事を行うとともに、工法の工夫や低公害の工事機械の使用、工事従業者への教育など工事実施に当たって細心の注意を払うことにより工事中の周辺環境への影響に配慮します。 4.施工後段階 日常の事業活動や施設の管理などにおいても周辺環境に配慮するとともに、必要に応じて環境影響モニタリングを行います。また、これらにより得られる知見は、逐次、環境配慮指針に反映させます。 (2)環境に配慮した土地利用計画 本地区では、都市的利用の拡大による混住化の進行等により、土地利用の虫食い化が進んでおり、優良農地が喪失するばかりでなく、自然のネットワークも失われつつあります。事業実施を契機として、優良農地の確保と自然保全地域の明確化を図り、広域的な自然生態の保全等、環境に配慮した土地利用が計画的に進められるよう、より適切に事業を推進します。 (3)環境に配慮した土地改良施設整備 事業の実施に当たっては、農業農村の持つ多面的機能にも十分に配慮します。土地改良施設の造成は、多少なりとも景観に影響を与えると考えられることから地域の歴史や風土と調和した環境配慮を行います。また、景観に配慮した資材の利用などの面での検討も行います。 (4)環境負荷軽減対策 工事実施時には、騒音・排気・振動等、様々な環境負荷要因が発生しますが、地域の自然環境及び社会環境の特性を十分把握し、地域住民の意向を踏まえ、効果的・効率的に対策を実施し軽減に努めます。 2.環境保全目標の設定 環境保全の基本方針を踏まえ、環境保全目標を以下のように設定します。 《方針1》:豊かな自然環境づくり (目標) 1.多様な生物が生息し生育する環境づくり 本地区は、都市や農村周辺の水路・河川・水田等において、魚類ではメダカ・ドジョウ、植物では、サデクサ、コイヌガラシ、昆虫では、ホンサナエ、コオイムシなど(レッドデータブック・希少種)多種多様な生物が生息・生育しているため、希少な生物の生息・生育地(ビオトープ等)の保全に配慮します。 2.自然景観の保全 地域がもたらす田園風景や水辺風景など自然景観と調和した環境づくりを推進します。また建築物や構造物は、周辺景観との調和を図り、周囲は緑化するなど景観配慮に努めます。 《方針2》:快適な生活環境づくり (目標) 1.水質の保全 工事実施に伴い、工事現場・建設設備等からの排水・濁水等による水質汚濁の防止に努め、河川・水路の下流側について生活用水等の利水管理上の影響がないよう生活環境を保全します。また動植物の生息・生育環境へ影響を生じさせないよう配慮します。 2.騒音・振動の防止 工事実施において発生する騒音・振動の防止など、周辺の地域住民の快適な生活環境を保全するため、騒音・振動の低減に配慮します。 《方針3》:地球にやさしい環境づくり (目標) 1.大気環境の保全 工事実施において発生する排ガスや粉じん等の発生量の低減など、地域レベルにおいても大気環境の保全に努めます。 2.省資源・省エネルギー化の促進 機械・建設資材等の使用及び電気設備などの設置に当たっては、省資源タイプの導入に努めるとともにエネルギーの節約・有効活用を図り、地球にやさしい環境づくりに努めます。 3.建設副産物の減量化とリサイクルの推進 工事における発生土、コンクリート塊、アスファルト塊、金属類等の建設副産物の発生量を把握し有効利用、再資源化を推進します。 《方針4》:住民参加の環境保全づくり (目標) 1.体験的環境学習の推進 河川や水路周辺地域の清掃活動、自然とのふれあい活動、田んぼの学校、こどもエコクラブの活動などの体験的環境学習活動を推進します。 2.環境教育の推進 環境教育・学習の実践の場、環境教育・学習指導者の育成・確保のため拠点の整備を図るとともに、地域住民一人ひとりが環境に関心を持ち、人間活動と環境との関わりについて理解し、生活環境の保全や自然保護等環境に配慮した行動がとれるよう、学校や地域、職場などにおいて環境教育・環境学習を推進します。 3.環境意識の啓発 環境への意識を高めるため、各種メディアへの広報、各種イベントの開催、普及啓発資料の作成・配布等、またインターネットなどを活用し、環境情報の共有化、様々な手法を活用した、幅広い普及・啓発活動を推進します。 |
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