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北海道農政事務所

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「食の安全と家庭科の時間in札幌東高校」第1回

【とき】平成29年7月11~21日
【ところ】北海道札幌東高等学校2階会議室(札幌市白石区)
【主催】農林水産省北海道農政事務所、北海道札幌東高等学校

   農林水産省北海道農政事務所では、生命を支える「食」と安心して暮らせる「環境」を未来の子ども達に継承していくことを使命としており、将来、日本の主要な食料消費を形成する若年層を対象に食品安全に関する勉強会を開催しています。今回は、北海道札幌東高等学校の1年生を対象に家庭科の時間を利用して、農林水産省北海道農政事務所消費・安全部消費生活課 消費経済係長 高橋 誉志行から「食品安全の基礎知識」として情報提供を行いました。(受講者合計:308名)

   教室全体の様子
   (教室全体の様子)
  

1.情報提供概要

食品安全とは

   食品が安全であるとは、国際機関のコーデックス委員会において、「予期された方法や意図された方法で、作られたり食べられたりした場合に、その食品が食べた人に害を与えない保証」と定義されている。
   食品安全に係る危害要因(ハザード)とは、健康に悪影響をもたらす原因となる可能性のある食品中の物質または食品の状態で、危害要因には大きく分けると3つあり、生物学的危害要因、化学的危害要因、物理学的危害要因がある。
   食品安全に係るリスクとは、食品中に危害要因が存在する結果として生じる健康への悪影響が発生する確率と影響の程度となり、リスクの大きさは、危害要因の毒性とその摂取量で決まる。
   したがって、栄養素など必要な物質であっても、多量に摂ると健康に悪影響を及ぼす可能性があり、どんな物質や食品も毒になり得ることから、「安全な食品」と「危険な食品」を明確に区別することはできず、リスクがゼロという絶対安全はない。

ADI(一日許容摂取量)について

   化学物質の量と健康影響を調べるため、マウスやラットなどの実験動物への化学物質の投与量を増やしていくと、ある摂取量までは健康影響はないが、さらに摂取量を増やしていくと、長期的に体の機能に障害が生じるなどの症状が現れる。さらに摂取量を増やしていくと、短期間や1回の摂取で症状が現れる中毒症状が見られ、さらに増やすと死亡するという、摂取量と健康影響の関係性が得られる。健康影響が出ない最大摂取量が無毒性量であり、人と実験動物との差を「10」、人と人の間でも感受性の違いがあるので「10」、掛け合わせて「100」を安全係数として、無毒性量を割った値がADI(一日許容摂取量)となる。
   ADI(一日許容摂取量)は、人がある物質を一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康を害する可能性がないと推定される一日当たりの摂取量で、単位は、通常、mg/kg体重/日で表される。そして、私たちが実際に食品から摂取している量はADI(一日許容摂取量)と比べてかなり少ない量となる。また、1回食べただけで体調が悪くなる急性毒性の指標は、ARfD(急性参照量)であり、人がある物質を短期間に食べても、健康上の悪影響が出ないと推定される摂取量である。

食品の安全を守るしくみ

   食品安全委員会は食品中に含まれる危害要因物質などの健康影響を科学的な根拠に基づき「リスク評価」し、農林水産省や厚生労働省は食べても健康影響の可能性が低くなるよう基準や指針を定める「リスク管理」を担当する。そして、関係者との間で「リスクコミュニケーション」を行い相互理解や意見交換を行いリスク評価やリスク管理を決める際の参考としている。  

農薬の登録

   農薬を製造、輸入、販売、使用するためには、登録が必要となる。農薬に効果があること、使用方法、農薬が残留したときの健康影響への試験結果は農薬メーカーが登録の際にデータを提出する。
  農家が農薬の使用基準(使用量、希釈倍率、使用時期、使用回数など)を守れば、個別の農産物で残留基準値を超えず、全ての農産物からの農薬摂取量を合算してもADI(一日許容摂取量)を超えない。
  

ADI(一日許容摂取量)、ARfD(急性参照量)を用いての食品安全の判断

   食品衛生法の残留基準値を超えた食品の場合でも、その危害要因物質が含まれている量(ppm)とその危害要因物質ごとに評価されたADI(一日許容摂取量)、ARfD(急性参照量)を用いて計算することによって、健康影響の可能性が高いのか低いのかを判断することが可能である。 

授業の様子
     (授業の様子)


演習の様子 
     (計算演習の様子)
  

まとめとして

  •  食品のリスクの大きさは、ハザード(危害要因物質)の摂取量とその毒性で決まる。
  •  健康への影響を判断する指標として、「ADI(一日許容摂取量)」や「ARfD(急性参照量)」があり、農薬の残留基準値は、農家が農薬を使用基準に従って適正に使ったかどうかを確かめるための指標である。
  •  食品からのリスクを低減するためには、過度な偏食に注意し、バランスの良い食生活を心がけることが大切である。

2.授業を受けての感想

   ご協力いただいたアンケートでは、「リスクはハザードの毒性とその摂取量で決まるのは初めて知り、どんな食品、物質も毒になりうるのを知ったときは驚きました。」や「農薬が入っていても基準値を超えていなければ安全であり、もし超えていてもそれは単なる農家の指標なので、必ずしも危険ではないとわかって、食品に対する安心がより大きくなりました。」などの感想をいただきました。

   ○×クイズの様子
   (○×クイズの様子)

お問合せ先

消費・安全部消費生活課

ダイヤルイン:011-330-8813