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北海道農政事務所

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「食の安全と家庭科の時間in札幌東高校」第2回

【とき】平成29年10月23,25日,11月1,6日
【ところ】北海道札幌東高等学校2階会議室(札幌市白石区)
【主催】農林水産省北海道農政事務所、北海道札幌東高等学校

  農林水産省北海道農政事務所では、生命を支える「食」と安心して暮らせる「環境」を未来の子ども達に継承していくことを使命としており、将来、日本の主要な食料消費を形成する若年層を対象に食品安全に関する勉強会を開催しています。北海道札幌東高等学校の1年生を対象に家庭科の時間を利用して行った勉強会の第2回は、北海道大学大学院農学研究院 食品加工工学研究室 准教授 小関 成樹 氏から「一緒に考えてみよう!食べること~世界、日本、現在、未来~食品添加物の正しい理解のために~」として情報提供を行いました。(受講者合計:312名)

   
   講師の小関 成樹 氏
   (講師の小関 成樹 氏)

   
   会場全体の様子
   (会場全体の様子)

1.情報提供概要

世界の食糧事情と日本の食品ロスについて

   全世界の人口は約74億人である。そのうち飢餓人口は約8億人と言われており、その大部分が経済力の弱い国に住んでいる。1979年の第20回FAO総会の決議に基づき、1981年から毎年10月16日は「世界食料デー」として、世界の食料問題を考える、世界共通の日として制定されている。そして、毎年10月を世界食料デー月間として、たくさんの人に飢餓や食料問題について知り、考え、行動してもらうために、NGO、NPO、国際機関などが協力して情報の発信、イベントの開催などを行っている。世界では人が食べるために生産された食料の3分の1が廃棄されている。日本では年間約1,700万トンの食品廃棄物が排出され、半分は家庭から排出されている。食品廃棄物のうち、本来食べられるのに廃棄されているもの、いわゆる「食品ロス」は、年間621万tと推計され、水稲の収穫量(約750万トン)の約83%に該当する。国連の食糧支援機関であるWFP(ワールドフードプログラム)が飢餓に苦しむ貧しい人々に対して、2014年(平成26年)には320万tの食料援助を行っているが、日本での「食品ロス」の量の方が上回っている状況にある。

日本の食を支える世界の食料

   天ぷらそばといえばいかにも和食を想像させるが、食材別に見ると輸入の割合が多く、そば粉は国産が約2~3割、エビは国産が約5%などである。納豆の原料である丸大豆は大部分がアメリカなどからの輸入に頼っており、遺伝子組換えではない大豆を輸入し使用している。しかし、アメリカでは大豆の約95%が遺伝子組換え品種である。遺伝子組換え農産物は加工原料や飼料などに使われていて、食べている実感がわかない方も多いが身近な存在になっている。私たちは、世界各地の農産物を食べていることを忘れないで欲しい。

「安全」な食品と「安心」な食品の違い

   例えば、高所恐怖症の人が高い構造物に登ると、「倒れるかもしれない」、「落ちるかもしれない」などの不安を感じるが、建物をつくるときには構造上の安全基準に基づいた設計が科学的になされており、倒れることや床が抜けることはない。これが安全であるということであり、誰が計算しても強度計算結果は同じである。科学的根拠に基づいて確認されていることを「安全」が確保されているという。しかし、科学的に安全であっても不安であるという人は一定の割合で存在する。頭では理解しても心の感じ方は人それぞれ違って、100人いれば100通りの感じ方となる。「安心」は各個人の感覚であり心の持ちようなので、違って当然である。このように「安全」と「安心」は違う用語であるにも関わらず「安全・安心」と一括りの用語が氾濫している現状は好ましくないので、「安全」と「安心」の違いを理解して使い分けて欲しい。

食品添加物

   食品添加物が誤解される一つの原因として、加工食品に使用された食品添加物は使用量に関係なくすべて記載することになっていることである。その食品添加物の使用量が記載されていないため、多くの種類の食品添加物を使用している食品の場合、いかにも多くの量を使用しているような誤解を生じさせてしまう。食品添加物の使用量は科学的根拠に基づき決められている。マウスなどの実験動物に様々な量の食品添加物を与えるなどの動物実験(急性毒性試験、慢性毒性試験など)を行い、毒性が現れる境目の摂取量(最大無毒性量)に100分の1を乗じた値をADI(Acceptable Daily Intake:一日許容摂取量)として決めている。食品製造業者が実際に食品添加物を使用する場合には、このADIよりかなり少ない量を使用しているので、健康に悪影響が生じる可能性は極めて低いことになる。ひとつひとつの食品添加物の使用量は極微量で、かつ、使用基準は科学的根拠に基づき決められている。食品添加物などによる健康への影響を考える上では、摂取量の概念が大切である。例えば、普通に摂取している砂糖、塩、ビタミンなども大量に摂取すれば健康に悪影響が生じ、場合によっては死に至ることもある。どんな食品も適切な量を摂取していれば問題はないが、過剰に摂取すると問題が生じる。わかりやすい例としては薬の場合であり、調剤薬局にいくと子どもの場合には必ず体重を聞かれる。これは体重に見合った量より多くの薬を処方すると毒になってしまう可能性があるためである。着色料を食品に用いる理由としては、原材料として用いる農畜水産物は天然のものであるため、色にバラツキがあり、そのような農畜水産物を原材料として使用し品質を一定以上に保った食品を大量生産するためには、着色料によって色のバラツキを修正する必要があるためである。例えば、小売店に陳列されている同一商品のジュースが個々に濃淡の色の差がある場合、どれを購入して良いか迷ってしまう。また、合成着色料を嫌って自然由来の着色料を求める消費者も多くいるが、コチニール色素は虫から抽出された自然由来の着色料である。さらに、保存料を使用しないことにより食品中の食中毒菌が増殖し、食中毒発生の可能性が高まる場合もある。

安心のためには信頼が重要

   信頼関係を築くためには相手とよく対話し相互理解を深め、嘘をつかず正直でなければならない。現在の食品流通は複雑化して消費者にとって不可視化された状況である。その中で不正をする人がいて、問題が起きると不信感が生じる。消費者が出来る限り生産者の顔が見える食品を求めるのは安心したいためである。安心には信頼関係が重要である。  

YOU ARE WHAT YOU EAT!

   あなたは、あなた自身が食べたもので、できています!(YOU ARE WHAT YOU EAT!)
人は体を作るための栄養素や体を動かすためのエネルギーは食べること以外に得ることは出来ない。
“食べること”を少し意識してみてください。

   授業の様子
   (授業の様子)

2.授業を受けての感想

   ご協力いただいたアンケートでは、「『正しく理解して、正しく恐れる』そういった力を身につけて、自分なりの安心を見つけていきたいです。」や「自分はこれまで安心と安全を混同してしまっていたのだと感じました。しかし、今回、高所恐怖症の人の例などもあり、自分の中で整理することができました。」などの感想をいただきました。


   生徒への質問の様子     
   (生徒への質問の様子)

 

お問合せ先

消費・安全部消費生活課

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