豊かな地域資源と外部人材「よそ者」で山郷を活性化
福井市上味見地域「伊自良の里」
|
地域資源に恵まれた伊自良の里
福井市上味見地域は通称「伊自良の里」とも呼ばれ、鎌倉時代から江戸時代末までこの辺りを治めていた伊自良氏という豪族の名に由来し、6集落人口約300人の山あいの地域です。平成8年に設置された温泉施設「伊自良温泉」、福井のおいしい水100選にも選ばれた「こしょうずの湧き水」、県の重要文化財に指定された阿弥陀如来像が安置されている樺八幡神社などの文化財、700年以上の昔から続く「じじぐれ祭り」、焼き畑農法で知られる伝統野菜の「河内赤かぶら」、寒暖の差や足羽川源流域のきれいな水を利用したコシヒカリや酒米の生産など地域資源に恵まれています。
活性化の拠点を地元の住民自らの手で運営
「伊自良の里」活性化の推進母体は、「伊自良の里・食と農推進協議会」。その中核をなすのが、地域住民で組織する「(一社)伊自良の里振興協会」で、地域住民の拠点となっている伊自良温泉と旧伊自良資料館も運営しています。自然体験を企画するNPO法人、生産組合、女性グループ、上味見青年団等が構成メンバーに加わっています。
同協議会は、いやしの郷づくりをコンセプトに、地域の活性化とコミュニティ再生を目指し、自然や食を活用し、都市との交流の推進に取り組んでいます。その取組が評価され、令和3年度には豊かなむらづくり全国表彰事業において農林水産大臣賞を受賞しました。
自然体験活動を通じた交流の広がり
上味見地域では、過疎化の波を受け廃校となった旧上味見小学校を、自然体験を企画するNPO法人が子どもを対象としたキャンプなどの自然体験活動拠点として活用し、地域外からの交流を受け入れるようになりました。東日本大震災をきっかけとした福島の子どもたちの受け入れ、グリーンツーリズム大会分科会の誘致・開催などを通じて、交流による関係人口が増え、地域に都市農村交流の機運が広がりました。地域の中には、農家民宿が3軒経営されており、一般受け入れのほか、中高生の教育旅行の受け入れも行われています。
これらをきっかけに、自然体験を企画するNPO法人のボランティアであった兵庫県出身の若者が移住・定住し地域活性化の活動が開始されたことや、NPO法人のスタッフや大学との連携の中で学生が移住するなど10年間で27人が移住しています。
外部人材(よそ者)、若者の活躍で活性化
こうしたことで地域住民との緩やかな連携が生まれ、上味見を第二のふるさとと思う地域外の若者を中心に上味見青年団が結成されました。彼らの協力で、古くから伝わる5月の「じじぐれ祭り」や10月の伊自良祭りなどを大いに盛り上げています。(ただ、この3年間はコロナ禍の影響を受け、祭りも休止状態となっています。)
また、伝統野菜の河内赤かぶらや稲刈りなどの農作業応援が行われたり、大学生との連携による、「上味見の魅力に取りつかれた」若者による上味見地域のPRリーフレット制作、小水力発電の試作、農作業のお手伝いなど地域の活動が維持・継承されています。
農と食を守り繋げていく
~ 地元の食文化を守る上味みママーズ ~
旧伊自良資料館にある屋敷復元施設を利用した山村レストラン「いじら・やきはた食堂」では、地元に住む女性グループ「上味みママーズ」が、わらびや河内赤かぶらなど地元でとれた野菜を使って山郷料理を提供しています。河内赤かぶらは、赤かぶら生産者の指導を得ながら、上味みママーズとして生産も行っています。また、農産物の6次産業化として、赤かぶらの酢漬けや赤かぶパウンドケーキなどを製造・販売しています。今後、山郷料理をレシピ化して、地元の食文化を次の世代に繋げていくことを計画しています。
~今後を見据えた農事組合法人上味見みらいファーム~
令和2年に酒米生産に取り組んでいた担い手農家の人たちが農事組合法人上味見みらいファームを設立しました。福井市内の酒造会社と酒米栽培の契約を結んでいます。同法人は、共同で機械利用や乾燥調製を手掛けており、今後を見据え、地域の農作業の受け皿になることや、共同販売などにも取り組んでいくこととしています。
~今後はコンシェルジュ活動や動画PRを展開~
こうした活動が行われている中でも、やはり高齢化、担い手不足が課題となっています。今後、農泊など地域での滞在や体験活動をアレンジする山郷(やまざと)コンシェルジュの活動や、「いじら・いやしの郷」をPRする動画の作成による情報発信などに取り組み、地域内外の若者・よそ者の知恵や熱意を借りながら、伊自良の里の活性化を進めていきます。
お問合せ先
企画調整室
ダイヤルイン:076-232-4206