このページの本文へ移動

北陸農政局

メニュー

せきかわ活動日誌「ICTモデル事業実証試験を実施中Vol.2」

当事業所では、揚水ポンプ及びほ場に設置されている末端給水栓を遠隔操作・自動化して、揚水ポンプの運転及び農作業の負担軽減や、限りある用水の有効活用を目的としたICTモデル事業の実証試験を行っています。

前回の記事はこちら、前回の記事を読んでいない方は先にご覧ください。

今年度のモデル事業では、昨年度の3つの取り組みから4を追加して試験を行っています。

  1. 揚水機場からの用水を各ブロックの面積に応じ、均等に排水するよう揚水ポンプの流量調整弁を自動制御。
  2. 第4、第5ブロックの面積において、ほ場の末端給水栓を自動制御。
  3. 揚水ポンプと流量調整弁及びほ場の末端給水栓を遠隔操作。
  4. 幹線用水路の始点部ゲートの遠隔操作・自動運転。

始点部ゲートの自動運転


以前の始点部ゲート

電子化した始点部ゲート



ゲートの遠隔・自動操作のためにこれまで手動操作だったゲート開閉器を電子化しています。
左の写真の手前は中江幹線用水路と始点部ゲートにつながる取水口です。

津有南部第1地区の水は中江幹線用水路の始点部ゲートから取水し、支線用水路である中江幹線第1用水路を通ってポンプ場まで到達します。
これまでは、ポンプ場運転時には始点部ゲートを開け、ポンプ停止時には閉め、水需要が多い時には全開にし、少ない時には水を無駄にしないように開度を絞るという作業をポンプ運転員さんが経験により手動で行っていました。
ポンプ場から始点部ゲートは直線距離で約1km離れており、運転員さんも四六時中ポンプ場やゲートを監視できるわけではないので、余計に取水して排水路に流してしまったり、ポンプに送る水が足りず運転が停止したりするということも度々発生していました。


中江幹線用水路とポンプ場の位置関係

始点部ゲートの遠隔監視や自動運転を導入したことにより、ほぼ家に居ながらポンプ運転ができるようになりました。
昨年は始点部ゲートを開閉しに現地に来なくてはいけないこともあり、そのついでに現場でポンプを操作することもありましたが今はほとんど現場に来ることはありません。
また、これまでポンプ運転管理記録を付けていた全てのデータは1分単位でクラウドサーバーに20年保管され、ダウンロード可能になりましたので、記録作業の負担も軽減してポンプ運転を行っています。


新しい画面(昨年から始点部ゲートやポンプの運転に必要な水位等のデータを追加)


グラフや表でゲート開度、幹線用水路やポンプ場の水位を把握

地区に配水する総流量やポンプ場調整池の水位を計測して始点部ゲートを自動調整する仕組みです。
運転労力の軽減だけでなく、無効放流の発生を抑えることで幹線用水路下流の地区にも水が到達しやすくなる効果も見込まれます。


これまでポンプ運転員さんが記録していたポンプ運転管理記録
(24時間運転の時は夜中の0時、3時も記録のためポンプ場へ来ていました。本当にお疲れ様でした。)

昨年の実証試験から見えてきたこと

昨年の実証試験では冒頭1~3の取組を行い、色々気づいた点もありましたので、簡単にご紹介します。

1の「各ブロックの面積に応じ、均等に配水するよう揚水ポンプの流量調整弁を自動制御」する取組は成功しました。
ただ、1つのブロック内で数多くの末端給水栓を開くと、やはり水が出にくくなる給水栓が出てくることがありました。
最近は、夏の渇水期に水道の蛇口をひねっても水が出ないということはあまり経験しなくなりましたが、水を大量に使用する農業用水では、上流で取水しすぎると下流の田に水がいかないことがあります。
ブロック内全ての給水栓をICT化すれば、グループに分けて一定時間毎に自動で末端給水栓を開閉することができ、水が出ない田んぼを無くすことが可能になります。
(残念ながら、昨年水が出なくなった田はICT給水栓を設置していないブロックでした。)

2の「ほ場の末端給水栓を自動制御」や3の「末端給水栓の遠隔操作」については、農家さんによって対応が分かれました。
ほ場に設置した水位計で計測した水位データにより、自動で末端給水栓を開閉する仕組みですが、ICT機器作業が不慣れで設定が難しかったり、今はまだ自分の目で見て田んぼに水を入れるかどうか判断したいという方もおられました。
ただ、末端給水栓の遠隔操作は、ほとんどの方が利用しています。
家に居てもボタン一つで給水栓を開閉できる機能は、非常に便利であると好評です。
農家さんに機能を使いこなしていただけるように、今年度も丁寧に説明しながら実施しています。

その他、実際に使用してみて、水位センサーが泥で埋まってしまった、カラスが太陽電池を汚してバッテリーの充電に支障が出た、ねずみが水位計のケーブルを嚙み切った、末端給水栓が大きくなり草刈りがしにくい等、色々な課題も出てきました。
これら課題については、導入する上での貴重なデータとして蓄積し、工夫や対策を講じながら対応していきます。

水位計の設置方法と泥で水位センサーの一部が埋まった状況
(多少埋まっても水位は計測できますが、場合によっては正しい水位が計測できなくなることがあります。
たまに土を取り除く必要がありますが、メーカーにて対策を検討し実地検証中です。)


                 

カラスが乗って汚れた太陽電池と農家の方が設置したカラスよけ
(農家の方はすぐにこのような工夫を自ら実施してくれるので恐れ入ります。)


草刈りの様子
(給水栓の形状をコンパクトにしたり、畦畔の形をICT給水栓用に変更したりするといった対策が考えられます。)

課題も色々ありますが、地元の方には非常に好評で、津有第1地区の代表者は、いずれ地区内全てのほ場にICT末端給水栓を導入していきたいと語っています。
手始めに地区自らメーカーさんと契約し、実証試験でICT給水栓を設置していなかったブロックにも、7月に15台追加設置しました。
ほかの農家の方の感想も聞いて好評なようであれば、地区を挙げて全ほ場へ末端給水栓の導入を進めていきたいとのことです。
また、ほ場整備を計画している地区からも問い合わせがあり、新潟県上越地域振興局とともに8月4日にICT末端給水栓の説明会を行っています。
コロナによる農村への関心の高まりや、DX(デジタルトランスフォーメーション)、スマート農業の推進の流れに乗って、農業用水管理のICT化が、今後急速に普及していくことが想定されます。
その時のニーズに応えられるよう、実証試験の結果をまとめていきたいと思います。

ほ場整備計画地区の農家の方への説明会

お問合せ先

関川用水土地改良建設事業所

〒943-0154 新潟県上越市稲田1-1-7
電話:025-521-6040(代表)
FAX:025-523-8822

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader