掲載日:平成29年7月11日
クローズアップ北陸農政局長賞
平成28年度に北陸農政局長賞を受賞された方々の取組や現在の様子をご紹介します。 |
永野 千太郎さん(福井県大飯郡高浜町)
【表彰目的】北陸農政局では、管内において農畜産業の発展に功績のあった個人又は団体に対し、北陸農政局長賞を授与しています。 |
1.受賞概要

「地元愛は誰よりも強い」と話す永野千太郎さん
永野千太郎さんは、稲作中心の高浜町青葉山麓の中山間地域において、昭和40年から地域で最初にぶどう栽培を始め、効率よく種なしぶどうを生産する技術やぶどうの色合いが良くなり糖度が向上する栽培方法をいち早く導入することで、省力化や高品質化に取り組んできました。また、ぶどう栽培に加え、農閑期となる冬~春に出荷できる花木(ボケ、サンザシ等)を導入することにより年間労働と収益の平準化に成功し、地域の経営モデルとなりました。ぶどうと花木の複合経営を推進するとともに、技術指導を行い、高浜町の園芸振興に大きく寄与されています。
現在、ぶどう15a(ハウス)、花木40a、きゅうり・だいこん(漬物用)50aを耕作しており、経営は長男の和夫さんにすべて任せていますが、日々、ハウスや田畑で作業を行い、後進の指導に当たられています。
農業以外では、指導林業士として県内外で幅広く活躍し、平成20年からは高浜町竹竹クラブの一員(平成27年から会長)として、地域の放置竹林の整備等にも取り組まれています。また、竹製獣害防止柵の設置、イノシシ等の捕獲等、獣害対策にも貢献されています。
2.受賞されたことへの思いや、影響のあったことなどを教えて下さい。

自慢のぶどうハウスで長男の和夫さんとツーショット
自分自身は、受賞することについて、まわりの方が評価してくれたというのが今回の受賞だと思っており、光栄です。また、自分だけの力ではなく、普及員をはじめ多くの方々の協力や家族の支えがあったからこそと、感謝しています。
ただ、「功績者表彰」ということは、それなりの年月が必要なのかもしれませんが、自分たちの世代ではなく、若い人達が頑張れるように若い人達にウェイトをおいてほしいと思っています。
3. 取組に当たり工夫したことや苦労したことは。問題点はどのように解決しているかを教えて下さい。

8月の収穫が待ち遠しい紅富士(べにふじ)
(撮影:平成29年6月)

次の出番を待っています。(撮影:平成29年6月)
一番の悩みは、息子が後を継いでくれるかでした。
自分自身が、20歳そこそこで親から経営を任されましたが、米の生産調整対策が既に始まっており、米だけでは経営が成り立たないと考え、ぶどうと花木なら多少の傾斜地(中山間地)でもやっていけるという思いで頑張った結果、経営は安定してきました。ところが、花木を生産しているほ場で区画を大型化する土地改良事業の話が持ち上がり、せっかく生産が安定してきたところでしたが、耕耘機やトラクターが使えない小さなほ場に将来性はないと考え、花木の生産をゼロから再スタートすることを決断し、事業に参加しました。
親から引き継いだこの(高浜町)鎌倉の地で生き残っていくためには「どうしたら、どうしたら、なんで」を繰り返し、経営が成り立つまで、山仕事で生計を立てながら、県外へも研修や研究に出かけ、その積み重ねの中で技術を培い、ものを作る「おもしろさ」を感じてきました。一方で、ものを作るもどかしさに、もがき続けてきました。このもどかしさがある農業を、息子が引き継いでくれるかが心配でした。
息子には、「あーせい。こーせい。」とは言いませんでしたが、この土地の有効活用を考えた時に、これからは「バイオテクノロジー」が必要と考え、その勉強をさせてきました。バイオ技術の研究室を造ったり、ぶどうハウスもこれまでの経験を踏まえ、設計からオーダーしたものです。
代替わりや転機の度に、何が必要か、何をするか、先代のやってきたことにこだわらずに、時代を先取りすることを考えて、生き延びてきました。
4. 今後の活動計画や展開方向などをお聞かせ下さい。


永野農園パンフレット
これまで研究してきたものを、レベルアップして仕上げたいと思っています。
それは、ぶどうの2期穫りです。
通常、ぶどうは1本の蔓で1年に1回(8月~9月)の収穫ですが、2期穫りは、10月にもう1回収穫します。今、ハウス内の木は、長男が20年前に手がけたバイオ技術の一つである生長点培養によるもので、樹勢が強くここ3~4年試験していますが、1回目と2回目で品質の差はなく、ほぼいけると感じています。
紅富士(べにふじ)という品種で、果肉は柔らかく味が良いことが特長ですが、脱粒しやすく、割れやすいので、栽培するのは難しいです。 しかし、大産地ではできない、誰も真似できないものをとの考えで、自慢のぶどうを作っています。
これからも、ひと粒にこだわり、日本一のぶどうを作っていきたいと思っています。
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