クローズアップ北陸農政局長賞
平成29年度に北陸農政局長賞を受賞された方々の取組や現在の様子をご紹介します。 |
小島(おじま)環境保全向上対策協議会(富山県砺波市)
【表彰目的】農山漁村における「むらづくり」の優良事例を表彰し、その業績を広く紹介することを通じて、農山漁村におけるむらづくりの全国的な展開につなげていくことを目的としています。 |
1. 受賞概要
![]() 鳥達も羽を休めるビオトープ ![]() 100年以上続く伝統行事「ヨータカ」 |
富山県砺波市小島地域では、近年、農業者の高齢化や若者の農業離れ及び混住化等の進行に伴う集落機能の低下により、地域の共同活動により支えられていた農業・農村の多面的機能発揮に支障が生じつつありました。
そこで、平成19年から多面的機能の活動組織「小島環境保全向上対策協議会」を設立し、農地、水路等の地域資源の適切な保全管理、子供を中心とした環境学習・生態系の保全向上、地域住民が一体となったお祭りや伝統行事「やらやら」※1、「左義長(さぎちょう)」及び「ヨータカ」※2等を継承する取組を継続しています。構成員の積極的な参加により、老若男女の世代を超えたむらづくりが行われ、農業者と非農業者のコミュニティを醸成しています。
農業の健全な発展に加え、本地域の共有財産として屋敷林やビオトープ(水溜まり)の保全管理も行われており、お祭り等の伝統文化が継承され、地域の活性化につながっています。
※1 やらやら:神社・仏閣にお供え物(米俵・酒樽・長持ち等の行列)として奉納する行事
※2 ヨータカ:豊年万作を祈願して田楽行灯に火を灯し、集落全世帯を巡回する100年以上続く伝統行事
2.受賞に対する思いをお聞かせ下さい。
多面的機能を有する今の農村の状況は、高齢化が進み、また、就職のため都市部への移住等により若い人や子供達が減少し、このままでは後継者もなく地域内の活力がなくなってしまうのではないかと思っています。特に、都市(街)近郊では小さなほ場が多く、作業効率が悪いため、引き受けてくれる担い手もおらず、いずれ耕作放棄地になってしまうのではないかと思っています。
そうなると、都市近郊や平地の地域内であっても、地域が一体となって行う農地や水・環境を守る取組が少なくなり、農村や農地が持つ多面的機能が失われてしまい、地域が衰退していくのではないかと心配しています。このため、私達の取組が平地での一つの事例となり、地域活性化のお役に立てればと思っています。
3. 取組のきっかけなどを教えて下さい。
![]() 地域のシンボル、ビオトープ「ほたる池」 |
本地域の取組のきっかけは、富山県の担当者から地域活動や農業が持つ多面的機能の維持を図るため、平成12年に「富山県農村環境改善基金事業」に取り組んでみないかとのアドバイスがあったからです。
当初は、何をすればよいか分からず、まずは、小島地域をイメージするため、「私達が子供の頃に遊んだ懐かしい風景は何だったのかを思い出そう」と地域内を散策しました。本地域は1級河川の庄川水系であり、水が豊富で池や川が多く、魚釣りや水遊び等をやっていたことに気付き、それらを基に地域内のふるさとマップを作成しました。昔は所々にあった池を思い出して、地域内の住民総出で、女性達からの炊き出しの応援も受け、平成14年にビオトープ(水溜まり)を造成しました。そこにフナやメダカを放し、景観をよくするため、樫や柳の木を植樹しました。
これらの取組が農地・水・環境の整備として、近隣から注目を浴びるようになり、外部からも見学に訪れるようになりました。ビオトープは業者に造成してもらうことも考えましたが、地域住民が協力し合い、直営施工することによって、より思い入れも強くなったのではないかと思っています。また、これまで集落営農でまとまっていたこともあり、非農家の方も含めて「地域一帯となって何かをやろう」という意識が他の地域より強かったのではないかと思っています。こうしたことが、世代が変わっても続いている地域の輪(和)や共同作業の礎になっているのではないかと思っています。
4. 現在の状況や今後の目標をお聞かせ下さい。
![]() 砺波市の花「チューリップ」による景観造り |
昨年から新たな取組として、地域内の景観向上のため主要道路の沿道1.5キロメートルに砺波市の花であるチューリップを植栽したプランターを160個並べました。これが砺波市長から好評を得て、継続した取組にしてほしいとの要請を受けました。
また、小島神社の祭事の雅楽奏者、毎年奉納する獅子舞や踊り、しめ縄作りなども、神社を中心とした重要な行事として現在も取り組んでいます。さらに、ビオトープの環境整備、100年以上続くヨータカ祭り、左義長等の継続により、地域が一体となったコミュニケーションを図っています。
今後、高齢化や若い人達が減少していく中で、これまで継承してきた取組をどのように継続してむら(地域)を維持していくか、また先頭に立つリーダーの育成や新興住宅地の皆さん(非農家)を取り込む工夫等が課題と考えています。これからも、地域住民による色々な発想や創意工夫を取り入れて、地域活動の更なる発展を目指していきたいと思っています。
お問合せ先
富山県拠点〒930-0856 富山市牛島新町11-7 富山地方合同庁舎
ダイヤルイン:076-441-9305
FAX:076-441-9325