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農林水産省

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令和元年度第1回議事録

1.日時及び場所

日時:令和元年6月24日(月曜日)14時59分~17時10分
場所:農林水産省本館4階  第2特別会議室

2.議事

(1)農業農村整備の新たなフロンティア
(2)報告事項
   ・農業用ため池の管理及び保全に関する法律について

3.議事内容

議事録(PDF : 333KB)

 

石井計画調整室長
  定刻より少し早いのですが、皆様おそろいですので、ただいまから令和元年度第1回食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会を開催いたします。
  本日はご多忙の中、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
  なお、浅野委員、小谷委員、平松委員におかれましては、所要により、本日ご欠席とご連絡をいただいております。
  それでは、開会に先立ちまして、太田農村振興局次長よりご挨拶を申し上げます。

太田農村振興局次長
  皆さん、こんにちは。農村振興局次長の太田でございます。
  今日は、令和元年度第1回目の農業農村振興整備部会ということで、ご多用中にも関わらず委員の皆様方におかれましては、ご出席をいただきまして大変ありがとうございます。
  また、日頃から農業農村振興政策の推進にご理解、ご協力を賜りまして、この場を借りまして厚くお礼を申し上げます。
  さて、昨年度のこの部会におきましては、「農業農村整備の新たなフロンティア」と題しまして、人口減少、特に農村での人口減少が進み、またその一方で新しい技術が次々と生まれてくるという、こういった新しい時代が到来する中で目指すべき農業・農村像、そして、その実現に向けて農業農村整備事業が果たす役割につきまして、4人のゲストスピーカーからお話を伺い、また意見交換をさせていただきました。
  今日は、議題の一つとして、その概要を取りまとめて、また説明をさせていただきますので、委員の皆様方には、忌憚のないご意見を賜れればと思っております。
  それから、2点目といたしまして、昨年の西日本の豪雨によりますため池の決壊、こういった被災を踏まえまして、今国会におきまして、農業用ため池の管理及び保全に関する法律、ため池新法と呼んでおりますが、これを提案させていただきまして、衆議院、参議院、いずれも全会一致で可決をいたしました。4月26日に公布をして、来る7月1日に施行をする予定にしております。このため池新法につきまして、ご報告をさせていただきたいと思います。
  本日は、渡邉部会長のもとで、委員の皆様に活発なご議論をお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

石井計画調整室長
  ありがとうございました。
  それでは、まず初めに配布資料について確認させていただきます。
  農林水産省では、審議会のペーパーレス化を進めております。本日のこの部会におきましては、紙での資料説明は行わず、タブレットパソコン上の資料で説明をさせていただきます。タブレットパソコンの画面上で皆様にご確認いただきたいのですが、資料一番左から、資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料1-4、そして資料2となっております。会議次第、委員名簿、配布資料一覧、またタブレットパソコンの操作説明資料については、お手元に紙の資料として配布させていただいております。
  また、こちらのA3の資料1-4でございますが、大きいので、タブレットパソコン上にもございますが、皆様のお手元にも紙資料で配布させていただいております。
  資料のほうはよろしいでしょうか。
  審議中にタブレットパソコンの操作で不明な点がございましたら、挙手していただければ、事務局の者が駆けつけて対応させていただきますので、よろしくお願いいたします。
  次に、本部会の公表の方法についてご説明いたします。配布資料は、既に農林水産省のホームページで公表されております。議事録につきましては、内容を皆様にご確認いただいた上で、発言者を明記してホームページで公表することとしておりますので、ご了承をお願いいたします。
  それでは、早速議事に移りたいと思います。
  本日の会議は、17時までを予定しております。
  なお、報道関係者のカメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
  これからの議事進行につきましては、渡邉部会長にお願いしたいと思います。部会長、よろしくお願いいたします。

渡邉部会長
  渡邉でございます。
  皆様、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。
  先ほど太田次長からもご説明がありましたが、この農業農村振興整備部会、今期もいよいよ取りまとめの段階となりました。
  昨年夏に、8月だったと思いますが、今期の取りまとめの課題と検討の方向性をご議論いただいて、それをもとに現地調査、あるいは有識者の方のお話を伺うことなどを進めてまいりました。
  いろいろな状況が大きく変わっている中で、また、活用できる資源や技術が大きく変革され、いわゆる新技術が展開する中で、農業農村整備のこれからの方向性と、あるいは課題、あり方、こういうことを整理しようということで進めてきたかと思います。
  今日は、その今期の取りまとめをしたい、取りまとめに向けての資料を取りまとめたいと考えております。これまでの事情や今日の課題は、もう皆様重々ご承知かと思いますが、時間が限られておりますので効率よく進行させていただき、よい取りまとめができるよう努めたいと思いますので、何とぞご協力よろしくお願いいたします。
  それでは、用意された議事に従いまして進行させていただきます。
  議題の1は、「農業農村整備の新たなフロンティア」です。
  これは、昨年度からこのタイトルで、またこの枠組みのもとで議論をしてきましたが、このタイトルでの取りまとめの原案を事務局で用意していただいておりますので、まず事務局からご説明いただきます。

石井計画調整室長
  それでは説明させていただきます。
  昨年度からご審議いただいております「農業農村整備の新たなフロンティア」について説明いたします。
  資料につきましては、資料1-2、1-3、1-4を使って説明させていただきます。
  まず資料1-2をご覧ください。資料1-2の2ページをお開きください。審議のスケジュールでございます。ページ左上、昨年の8月の部会で審議テーマを「農業農村整備の新たなフロンティア」とし、これまで4回にわたってご審議いただいております。ページ右上にありますけれども、本日の部会におきまして、これまでの審議の取りまとめを行いたいと考えております。
  続いて、4ページをご覧ください。ご審議いただいている「農業農村整備の新たなフロンティア」のポンチ絵でございます。農業・農村を取り巻く動きとしまして、新技術の進展、大規模農家の台頭、新しい農業の展開、さらに農業・農村に対する国民の価値観の変化といったものがございます。一方で、農村は激減する人口、超高齢化、頻発化・激甚化する災害、深刻な鳥獣被害など課題が山積しております。
  このように、農業・農村をめぐる状況は大きく変化しており、いわば新しい時代が到来する中、目指すべき農業・農村の姿はどのようなものか、また、農業農村整備が果たすべき役割は何かということを、農村の多様性を考慮しながらご審議いただいております。
  6ページをご覧ください。これまでの部会で委員の皆様、またゲストスピーカーの方々のご意見を項目ごとに整理したものでございます。ご意見のうち太字の部分は、昨年3月の部会で皆様からいただいたものでございます。今回は、この部分についてレビューさせていただきます。
  まず、新技術の著しい進展についてでございますが、上から5つ目の太字の部分、地域に合ったスマート農業を考えていく必要がある。平地での自動走行トラクターだけでなく、条件不利地域でもスマート農業ができるという点も重要である。
  その次、ICTを活用した水管理について、ICT技術を現場に実装しさえすれば大丈夫だという勘違いが起こらないか心配である。スマート農業に対応するには、ハードウエアの開発とソフトウエアの開発とを両輪として進める必要がある。
  そして最後、農業農村整備においては、既存の課題の解決や技術の向上がないと、IoTを導入しても効果的なものにはならないということでございます。
  続いて、9ページになります。大規模農家の台頭、新しい農業の展開でございます。2点ございまして、山間地でも地域の地理的条件を生かせば、1haでも専業農家でやっていける。高知県北川村のような山間地でも農業が成立し得ることを認識する必要があるということ。
  そして、その次、山間地の北川村のような路線が、むしろ我が国の農業のあるべき姿の一つであり、ほ場整備は北川村のような路線を目指すという考え方が重要であるということです。
  続いて、13ページでございます。課題が山積する農村の中で人が住み続けられる農村づくりについてのご意見でございます。
  こちらについては、まず村に住んで、働いて、生活できる収入が得られなければ、絶対に村に人は集まらない。村に住みたい、住み続けたいと思わせる環境がなければ、村に住んでもらえないということ。
  また、次に農地整備により小さい園地を効率のいい園地にして、省力化、機械化を進めていかないと、園地を次世代につないでいけない、地域が生き残れないということ。
  そして3点目、子育て世代に振り向いてもらうためには、小さいときの教育も必要だということでございます。
  続いて16ページでございます。農村の多様性のうち、中山間の農業についてでございますが、一番下、地域の実態に合った形で、面積は狭いが高生産が期待できる整備方法がある。今までは水田をベースにしていろいろと考えてきたが、樹園地、有機農業の生産団地を耕作放棄地等と絡めながら考えていくことも必要ではないかというご意見でございます。
  最後に18ページでございます。農村に必要な人材についてのご意見です。
  ゲストスピーカーからの主な意見ということで2点ございまして、農村を開くという意味では、都市ではなく、むしろ地方にこそディレクターが必要であるということ。観光をいろいろな視点を持った人が交わる場であると捉え直すことによって、新しい可能性が広がるのではないか。また、観光には受け入れ側とゲストが学び合うという関係性もあり得るといったご意見でございます。
  以上、委員の皆様には貴重なご意見をいただきまして、まことにありがとうございました。
  続いて、資料1-4でございます。こちらは、取りまとめ資料の全体像を示したものでございます。
  今回の取りまとめでは、「農業農村整備の新たなフロンティア」、新たな時代が到来する中での農業農村整備の課題整理を行っていただいております。
  資料の構成としましては、一番上の段、左から、新しい時代の到来として、新技術の著しい進展、大規模農家の台頭、新しい農業の展開などを整理しております。
  次に、上の段の真ん中、農業・農村の多様性、農村の多様な地域資源について整理しております。
  一番右が黄色い枠でございますが、農業・農村を取り巻く政府の動向として、経済財政運営と改革の基本方針や未来投資戦略などを紹介させていただいています。
  続いて、資料の左側になりますが、目指すべき農業・農村の姿として、人口減少下で持続的に発展する農業、そして農村に関しては、多様な主体が住み続けられる農村について整理をしております。
  次に、右のほう、新しい時代が到来する中での農業農村整備の基本的な考え方として6項目挙げさせていただいております。人口減少下の農業・農村の持続性・強靱性の強化、次にSociety5.0の実現に向けた新技術の導入、地域振興施策との連携、右に移りまして、多様な主体の参画・協働の促進、地域資源の価値の実現、そして最後に地球規模の課題への対応でございます。
  最後に、右下の大きな枠になりますが、目指すべき農業・農村の実現に向けた農業農村整備について、以下のような対応が必要ではないかということでございます。こちらについては、青い部分、「人口減少下で持続的に発展する農業」の振興、緑の「多様な主体が住み続けられる農村」の振興、オレンジの農業・農村インフラの持続性・強靱性の強化、この3つに整理させていただいております。詳しくは後ほど説明させていただきます。
  以上が今回の取りまとめ資料の全体像となります。
  続いて、資料1-3をご覧いただきたいと思います。これまでの審議の取りまとめ案でございます。縦長の資料1-1もございますが、記載内容は同じでございます。こちらの資料で説明いたします。
  4ページをご覧ください。初めに、新しい時代の到来について説明いたします。
  まず1点目、新技術の著しい進展について、Society5.0についてご説明いたします。現在、政府を挙げてSociety5.0を進めております。このSociety5.0が実現する社会といたしましては、IoTで全ての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報がビッグデータとして共有され、AIにより必要な情報が必要なときに提供されるようになるとされております。農業分野では、2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践するとの目標が掲げられております。
  5ページをお願いします。スマート農業です。未来投資戦略では、データと先端技術のフル活用による世界トップレベルの「スマート農業の実現」が掲げられております。
  6ページをお願いします。スマート農業技術の研究開発・実用化の状況です。こちらは右の図でございますが、平地の大規模な水稲、中山間地の水稲、露地野菜、果樹のスマート農業技術の開発状況を表したものでございます。青い部分が実用化済み、赤い部分は開発中のものでございます。平地の大規模な水稲は、一貫体系がおおむね実現しつつある一方、その下にある中山間地の水稲、露地野菜などについては、まだまだ研究開発段階のものが多いという状況でございます。今後、地域、品目に対応したスマート農業技術を農業者が導入可能な価格などで提供していく必要があると考えております。
  7ページでございます。農業データ連携基盤(WAGRI)についてでございますが、データ連携・共有・提供機能を有する農業データ連携基盤(WAGRI)が本年度から本格運用されております。このWAGRIによって、さまざまなデータを駆使した農業が可能になることで、農業の生産性、品質の向上、そして農業者の戦略的な経営判断が実現することが期待されております。
  続いて8ページ、大規模農家の台頭、新しい農業の展開でございます。
  まず1点目として、グローバリゼーションの進行です。TPP11、日EU・EPAが発効し、農林水産品の輸出重点品目のほぼ全てで輸出先国の関税が撤廃される中、高品質な我が国農林水産物の一層の輸出拡大、6次産業化等による地域の収益力の強化などによって、強い農林水産業を構築することが求められております。
  こうした中、「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づきまして、農業の国際競争力の強化を図ることが喫緊の課題となっております。
  9ページでございますが、担い手への農地の利用集積の状況です。右上のグラフをご覧いただきたいと思います。担い手への農地の集積状況、農地中間管理機構の導入以降、担い手への農地流動化が進展しております。現在、担い手の利用面積は農地全体の55%となっております。目標としましては、2023年までに全農地の8割が担い手によって利用されるということでございます。この達成に向けて、担い手への農地集積・集約化のさらなる加速化が求められております。
  10ページをご覧ください。大規模農家の台頭です。基幹的農業従事者の減少・高齢化が進行する中、一方で大規模経営体が増加しております。この大規模経営体の増加に伴いまして、農地面積全体に占める大規模な経営体の農地利用面積の割合も上昇しております。
  11ページでございます。新しい農業の展開。右上のグラフ、6次産業化の推移でございますが、6次産業化の市場規模は年々拡大しており、加工、直売とも1兆円を超えております。また、右下のグラフ、農林水産物や食品の輸出額も過去最高を記録しています。
  続いて12ページ、国民の価値観の変化でございます。まず消費行動の変化につきまして、近年、モノを所有することよりも得られる体験、すなわちコトにお金をかけたいというように、モノ消費からコト消費への消費行動の変化が見られております。
  その下が田園回帰でございますが、団塊の世代を中心に、自然環境、農業への関心が高まっています。また、20代、30代の若い世代を中心として、農山漁村地域に移住する予定がある、いずれは移住したいという方々が非常に多いということで、田園回帰に対する国民の意識が高まっていると考えられます。
  13ページでございますが、まず関係人口。農村地域への新しい関わり方として、「関係人口」が注目されております。この関係人口は、移住した定住人口でもなく、観光に来た交流人口でもない、地域の方々と多様に関わる方々のことを指すということでございます。地域によっては、若者を中心にこのような人材が地域に入り始めているということでございまして、今後この関係人口が地域づくりの担い手となることが期待されております。
  その下、都市と農村の交流でございますが、近年、若年層、団塊の世代、さらにはインバウンドが、こういった方々をターゲットとして、インターネットなどのメディアによる情報発信を通じて、グリーンツーリズムや農泊といった滞在型の都市農村交流などの取組が推進されております。
  14ページでございますが、課題が山積する農村でございます。
  中山間地域を初めとする農村では、急激な人口減少、高齢化の進行、激甚化・頻発化する災害、深刻な鳥獣被害等の課題が山積しております。
  まず人口減少について、右上のグラフでございます。我が国の人口は、平成20年をピークに減少傾向にございます。農村では、一貫して人口が減少しておりまして、都市部に比べて20年程度早く高齢化が進行している状況がわかります。また、人口減少は、今後、条件不利の中山間地域ほど進んでいくと見られております。右下のグラフでございますが、2050年までの40年間に山間農業地域で約7割、中間農業地域で約5割の人口が減少すると予測されております。
  続いて15ページでございます。まず農林水産業の就業者の減少について。右上のグラフの左側でございますが、農林水産業の就業者数は年々減少しているということで、平成30年では235万人となっております。また、基幹的農業従事者も減少し、また高齢化も進んでおります。右下のグラフは、農地の減少の状況でありまして、耕地面積はピーク時の昭和36年から50年あまりで164万ha、27%減少しております。
  続いて16ページでございます。土地持ち非農家の不在村地主化についてでございます。まず右上のグラフでございますが、農家の数が減少する一方で、土地持ち非農家は増加しています。農家と土地持ち非農家の比率は、昭和60年では9対1でございましたが、平成27年の数字では6対4となっております。
  続いて17ページ、農業水利施設を巡る状況で、農業水利施設は、戦後の高度経済成長期、またそれ以後に整備されたものが多く、老朽化が進んでおります。右下のグラフでございますが、施設の老朽化に伴って管水路の破裂などの突発事故が増加している状況がおわかりいただけるかと思います。
  続いて18ページでございますが、頻発化・激甚化する災害。近年、集中豪雨の発生が増加傾向でございます。湛水被害などのリスクも高まっています。また、南海トラフ地震の被害想定エリアには、全国の基幹的農業水利施設の3割が存在しているということで、施設の耐震対策など防災・減災対策の必要性が高まっております。
  続いて19ページをお願いします。深刻化する鳥獣被害でありまして、右上のグラフ、野生鳥獣による農産物被害額は減少傾向にございますが、鳥獣被害は被害額として数字に表れる以上に、農業・農村に深刻な影響を与えていると考えられます。一方で、近年、鳥獣被害対策を講じるだけでなく、野生鳥獣の肉を「ジビエ」として積極的に売り出し、農村振興につなげる動きが活発化しております。
  続いて21ページでございます。こちらは農業・農村の多様性についての説明でございます。まず地形条件でございますが、右上に円グラフがございます。関東地方以北は、円グラフの赤い部分、平地農業地域の割合が高く、近畿地方以西は黄色の部分、中間農業地域の割合が高いということです。また、中国地方においては、中間農業地域と並んで緑の山間農業地域の割合も高いということでございまして、地形条件は地域によって様々ということです。
  下が気象条件でございますが、こちらも降水量、また気温も全国でいろんなバリエーションがございます。気象条件も地域によって大きく異なることがおわかりいただけると思います。
  続いて、22ページ、農産物についてでございます。我が国では、地域ごとにそれぞれの地形条件、気候条件、立地条件に適した営農が行われております。全国の市町村別に農業産出額の第1位の品目を見ますと、東北、北陸では米が多い。一方で、北海道、九州は畜産、酪農が多いということです。また、関東、四国は野菜が多いところが見てとれます。このように農産物の生産も全国で多様に行われております。
  続いて23ページ、農村の多様な地域資源についてでございます。我が国の農村は、農地、農業用水のほか美しい農村景観、豊かな生態系、農村固有の伝統文化など、都市と異なる多種多様な有形無形の地域資源を有しております。
  こういった地域資源を適切に保全管理しながら、持続可能な形で最大限活用することによって、農村の魅力が増大するとともに、地域における資源循環、経済循環が活発になると考えられます。
  続いて25ページでございます。農業・農村を取り巻く政府の動向でございます。
  まず経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太方針についてでございます。骨太方針では、人口減少・高齢化などの社会的課題を解決するSociety5.0を実現することとしております。農業分野では、スマート農業の実現などによって競争力強化をさらに進めるということと、ほ場整備と機構との連携の円滑化により、農地の整備と集積・集約化を推進するとともに、土地改良事業による農地の大区画化、汎用化・畑地化などを強化することとしております。
  また、公的ストックの適正化についても、ロボット、AIなどの先端技術の実装を進めて、公共事業のコストを削減することとしております。これは実は1年前、2018年の骨太方針でございまして、先週金曜日、6月21日に2019年の骨太方針が策定されました。この中でも、同じようにスマート農業の推進、土地改良事業の推進などが記載されておりますので、お伝えいたします。
  続いて26ページ、未来投資戦略でございます。未来投資戦略においても、スマート農業の推進が記載されております。また、農業農村整備に関わる具体的な取組として、自動走行農機等の導入・利用に対応した土地改良事業の推進、農業用水利用の効率化に向けたICT技術の活用などが挙げられております。
  27ページでございます。こちらも未来投資戦略でございますが、さらにインフラ管理の高度化に向けた施策も推進するということが記載されております。この未来投資戦略も、2018年に策定されたものでございますが、こちらに対応するものとして、先週金曜日に骨太方針と併せて成長戦略が策定されております。この成長戦略のフォローアップの中にも同様に、スマート農業の推進、土地改良事業の推進などが記載されておりますので、お伝えいたします。
  続いて28ページでございますが、国土強靱化基本計画でございます。まず昨年の12月に、この基本計画の見直しが行われました。国土強靱化基本計画の策定から約5年経ち、その間に災害もあったということで、そこから得られた教訓、社会経済情勢の変化を踏まえ見直したところでございます。その下、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策でございます。度重なる災害を受けまして、昨年秋に実施しました重要インフラの緊急点検の結果を踏まえて、特に緊急に実施すべき施策について、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を昨年12月に策定したところでございます。農林水産省としては、農業水利施設、ため池などを対象に、この緊急対策に取り組んでおります。
  続いて29ページ、国土形成計画、国土利用計画についてでございます。まず国土形成計画について、右上にポンチ絵を付けております。国土形成計画が掲げる「コンパクト+ネットワーク」では、人口減少・高齢化が進む中、特に地方都市において、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業等の生活機能を確保して、高齢者が安心して暮らせるように、地域公共交通と連携してコンパクトなまちづくりを進めることとしております。
  続いて30ページでございます。SDGs(持続可能な開発目標)でございます。このSDGsは「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために、17の国際目標を掲げたものでございます。2015年の国連サミットで全会一致で採択されております。
  31ページ、気候変動への対応です。気候変動の影響により、気温上昇、海面上昇、降水パターンの変化など、さまざまな影響が世界中で現れております。2015年12月に採択されたパリ協定では、2050年までに温室効果ガスの排出を80%削減するという目標が掲げられております。我が国としても、この目標にしっかり取り組む必要があるということでございます。
  次に、33ページでございます。目指すべき農業・農村の姿ということで、まずは農業についてお話ししたいと思います。
  人口減少下で持続的に発展する農業ということで、右のポンチ絵をご覧いただきたいのですが、国民に食料を安定供給し、農業が有する多面的機能を発揮させるためには、農業を持続的に発展させる必要がございます。農家数の減少、農家の高齢化がますます進行していくことが見込まれる中で、農業を持続的に発展させるためには、農業を成長産業化することと6次産業化を推進すること、こういったことによって農業・農村の所得向上を実現する必要があると考えております。併せて、農業を安定的に行うためには、農地・農業用水の維持管理を適切に行う必要があると考えます。
  続いて34ページ、農村については、多様な主体が住み続けられる農村ということでございます。農業を持続的に発展させるためには、地域特性を活かした農業が展開し、農家、非農家を問わず多様な主体が住み続けられるような、強くしなやかで魅力ある農村を構築し、振興することが必要と考えます。このような農村を構築・振興するには、農業農村整備を核として、開かれた農村協働力を発揮させ、地域内外の多様な主体が参画・協働して地域振興施策を推進することによって、農村に住むための基礎的な条件整備、そして農村に住みたくなる条件整備をあわせて推進していく必要があると考えております。こうした農村を振興することによりまして、持続的で強靱な国土の維持・形成にも寄与していくものと考えております。
  続いて36ページでございます。
  新しい時代が到来する中での農業農村整備の基本的な考え方です。基本的な考え方として6つ挙げさせていただいています。
  まず1つ目が、人口減少下における農業・農村の持続性と強靱性の強化でございます。人口減少、高齢化が進行し、災害が頻発化、激甚化することが今後さらに見込まれております。こういった中で、農業・農村の持続性と強靱性を強化することが重要と考えております。農業・農村の持続性、強靱性を強化するには、農村の多様な地域資源を保全・活用しながら、農村の基幹産業である農業の成長産業化を図り、6次産業化の取組を推進し、農業・農村の所得向上を実現することが必要と考えております。
  37ページ、Society5.0の実現に向けた新技術の導入でございます。ICTやAI、ロボットなどの新技術の進展が著しく、農業農村整備においても新技術の現場適用性や経済性を考慮しつつ、研究開発、社会実装を積極的に推進していく必要がございます。新技術の研究開発、社会実装においては、ハードウエアの開発とソフトウエアの開発をともに進めていく必要があることに留意する必要があると考えております。
  続いて38ページ、地域振興施策との連携です。農業農村整備は、農村活性化の最大のツールでありまして、農村を振興する際には、農業農村整備を核として、併せて地域内外の多様な主体と協働で、ジビエ、農泊などの6次産業化の取組や定住対策などの地域振興施策を推進することが効果的と考えております。
  続いて39ページ、多様な主体の参画・協働の促進でございます。まず「開かれた」農村協働力について。農業・農村の構造変化を踏まえ、「地縁的な」農村協働力の充実を図るとともに、集落を越えた地域、行政、関係人口を含む都市住民との社会的関係を導入した「開かれた」農村協働力の拡大を図ることが必要と考えます。また、農村協働力の発揮に不可欠な多様な主体が農村に住み続けるために、担い手に農地を集積する一方で、担い手以外の方が農業に関わり続けられる仕組みを作ることが必要であると考えております。
  続いて40ページ、プラットフォームの構築について説明いたします。農村の振興を図るには、今申し上げたような農村内外の多様な主体の参画・協働を促していく必要がございます。そのためには、地域内外の多様な主体をマッチングする場、すなわちプラットフォームを構築することが有効であると考えております。農村の情報ネットワーク環境を整備することによって、スマート農業を展開するほか、農村の教育、医療など様々な分野に貢献することが考えられます。さらに、サイバー上で多様な主体がマッチングするプラットフォームを農村に構築していくことも貢献できるものと考えております。こうしたサイバー上のプラットフォームだけでなく、従来のフェース・トゥ・フェース型のプラットフォームも依然として有効であると考えております。このようなプラットフォームを活用しながら、地域内外の多様な主体のマッチングを促進していく必要があると思われます。
  続いて41ページ、地域資源の価値の実現でございます。田園回帰など農業・農村に対する国民の価値観が変化しており、「モノ消費からコト消費」へといったように、国民の消費行動も変化しております。さらには、農業・農村に対するインバウンドの需要も急速に高まっております。
  こういった価値観の変化、需要の変化を積極的に取り込んで農村の振興につなげていくためには、農業・農村が有する多様性を活かしながら、特産農産物のブランド化、世界農業遺産など農村が有する優良なコンテンツと連携した農泊の取組など、地域資源が生み出す価値を顕在化して、その価値を最大化していくことが重要でないかと考えております。
  続いて42ページ、地球規模の課題への対応でございます。農業農村整備においては、施策を通じてSDGs、また気候変動対策などの地球規模の課題に積極的に対応していく必要があると考えております。
  続いて44ページでございます。こういった中、目指すべき農業・農村の実現に向けた農業農村整備について説明させていただきます。
  まず1点目が、「人口減少下で持続的に発展する農業」の振興でございます。人口減少、高齢化が進行する中、農業を持続的に発展させるためには、農業の競争力を強化する必要があります。このため、農業農村整備においては、まず農作業の省力化を図るためにスマート農業を積極的に導入するということ。また、農地の大区画化等によって、担い手に農地を集積、集約化しつつ農業の大規模化を図ること。水田の汎用化などによって、高収益作物の導入、輸出などの新しい農業の展開を推進することなどが必要ではないかと考えております。また、農業・農村の所得増大を図るために、農業者や地域内外の多様な主体が参画・協働し、地域振興施策と連携した6次産業化の取組も推進することが必要ではないかということでございます。さらに、農地、農業水利施設の維持管理作業の省力化、安全性向上を図るために新技術を活用しつつ、農地、農業水利施設の適切な管理を行うことも必要ではないかと考えます。
  45ページでございます。この「人口減少下で持続的に発展する農業」の振興に向けた取組として、例えば以下のものが考えられると思います。
  まず1点目が、スマート農業技術を活用した農業の競争力強化でございます。スマート農業技術の積極導入として、人口減少、高齢化が進行し、担い手が減少することが見込まれる中で農業を持続的に発展させるには、担い手の農作業の省力化、営農形態の変化に対応した水管理の高度化などを図る必要があると思います。このため、自動走行農機、ICTによる水管理などのスマート農業の導入が可能となる農業基盤整備を推進する必要があると考えます。併せて、他省庁と連携して、スマート農業のみならず農村におけるICT利活用の推進基盤となる情報ネットワーク環境も整備していく必要があると考えます。
  次に46ページでございます。農地の大区画化、担い手への農地の集積・集約化でございます。農業の競争力を強化するには、農地整備により農地を大区画化することなどによって、大型機械の導入を通じた労働生産性の向上、農業生産コストの低減を図るとともに、担い手に農地を集積・集約化して、農業の大規模化を図ることが必要と考えます。
  47ページ、水田の汎用化・畑地化による高収益作物の導入でございます。水田農業において、米中心の営農体系から野菜などの高収益作物を中心とした営農体系への転換など、農業者の自立的な経営判断に基づく生産を促すため、水田における畑作物の導入と品質向上・収量増を可能とする水田の汎用化や畑地化を推進していく必要があると考えます。
  続いて48ページ、果樹農業の推進でございます。国内果実は高品質で需要が高く、近年は輸出品目として期待されております。一方で、栽培面積や経営体数は減少傾向であり、農地の継承、経営規模の拡大が進んでいないという状況がございます。このため、樹園地の園内道、作業道の設置、自動かん水システムの導入などの農業基盤の整備、そして省力樹形の導入など、新たな農業技術の支援を推進していくことが不可欠であると考えております。果樹農業の推進は、中山間地域の地域振興を図る上で非常に重要であるということで、基盤整備の部局と生産の部局が連携しながら生産の維持・拡大を図ることが必要と考えております。
  49ページ、地域振興と連携した6次産業化の推進に資する基盤整備でございます。農業・農村の持続性、強靱性を強化するには、農村が有する多様な地域資源を保全・活用しながら、農業の成長産業化を図り、特産農産物のブランド化など6次産業化の取組を推進し、農業・農村の所得向上を実現することが必要と考えております。このため、地域内外の多様な主体が参画・協働し、地域振興施策と連携した6次産業化の取組について推進していくことが必要と考えております。
  続いて50ページでございますが、農地や農業水利施設の維持管理作業の省力化、安全性向上のための基盤整備でございます。農地、農業水利施設の維持管理作業の省力化、安全性向上も重要なテーマであります。また、担い手への農地集積・集約化を促進する観点からも、借り手を選ばず誰でも使えるほ場を確保していく必要があります。このため、省力的で安全で使いやすいユーザーフレンドリーな施設整備を進めていく必要があると考えます。
  続いて51ページ、ここからは「多様な主体が住み続けられる農村」の振興についてでございます。多様な主体が農村に住み続けられるようにするためには、農村住民の雇用確保、所得増大と安全で文化的な住みやすい農村環境の整備を通じて、農村に住むための基礎的な条件を整備するということ。さらに、様々な地域資源を活用した魅力ある農村の創造を通じて、農村に住みたくなる条件整備を行うことが必要ではないかと考えております。また、農村には、様々な有形無形の地域資源がございます。その地域資源を適切に保全管理しながら、持続可能な形で最大限に活用し、農業・農村の多様性を活かした農村振興を図ることが必要ではないかと思われます。
  52ページでございます。この「多様な主体が住み続けられる農村」の振興に向けた取組として、例えば以下のような、これから説明するようなものが考えられます。まずICTを活用した地域振興。国内のスマート農業の先進地域では、情報ネットワーク環境を整備して、スマート農業に活用するのみならず、教育、医療などのICT利用による定住条件の整備に活用しております。農村地域において、このような取組を推進していく必要があると考えております。
  続いて53ページ、地域資源の保全、活用です。まず再生可能エネルギーの利用促進ということで、農村は水資源、バイオマス資源等が豊富にございます。小水力、太陽光、バイオマス資源等による再生可能エネルギーを活用する潜在的な余地が大きいと考えます。こうした再生可能エネルギーの地域内利用を促進していくことが重要と考えます。こういった再生可能エネルギーの利用は、気候変動対策などの地球規模の課題にも寄与するということでございます。一方で、再生可能エネルギーには、バイオマス資源の安定供給、また太陽光発電パネルの廃棄処理などの課題が存在することにも留意する必要があると考えております。
  54ページ、特産農産物を活かした労働集約型農業の展開でございます。人口減少、高齢化が著しい中山間地域において、果樹などの特産農産物をブランド化するなど、労働集約型の農業を展開している事例もあります。地域内外の多くの主体が高品質の農産物の生産、加工、流通に携わり、収益を上げております。こういった農業も多様な主体が住み続けられる農村のモデルの一つになると考えております。
  55ページ、地域のつながりを育む場の創出でございます。農地の集積・集約化などによって農業経営の規模が拡大する一方で、土地持ち非農家が増加して、農村住民の農業に対する意識が徐々に薄れてきているということでございます。ページの右は、鹿児島県の事例でございますが、先人が苦労して開発し適切に保全管理してきた農業水利施設、これを農村住民のつながりを育む地域コミュニティーの場として捉え、地域ぐるみで維持管理を行う、そういった取組も見られております。
  続いて56ページ、コンパクト+ネットワークに対応した農地の保全管理、利用についてでございます。今後、人口減少によって人の活動領域が縮小すると見込まれます。こうした中で、農地などの地域資源をどのように保全管理し、利用していくか検討する必要がございます。
  小さな拠点と集落、ネットワーク、いわゆる道路以外の部分は、農地などの地域資源が多くを占めております。農村人口はさらに減少すると見込まれることから、里山との境界に位置する農村外縁の農地は、潜在的な食料自給力を確保するために除草ロボットなどを活用して極力人手をかけない形で保全管理する。一方で、農村外縁の内側にある農地については、スマート農業を活用して農作業の省力化を図りつつ、生産性の高い農業を行う。こういった手法が国土を持続的で強靱なものにする施策の一つとして考えられるのではないかと考えております。
  57ページ、災害に強い安全・安心な農村の構築です。農村における安全・安心な生活確保も重要なテーマとなります。農業水利施設やため池などに関する平時の対応と災害への備えが必要と考えております。
  58ページ、定住条件の整備です。移住者が円滑に移住するためには、雇用の確保のみならず住居の確保が重要ということで、農地整備を実施する際に、非農用地を創設し、U・I・Jターン者のための農家住宅を整備することなどが重要ではないかと思われます。
  59ページ、集落間連携の推進です。中山間地域などにおいては、高齢化、担い手不足によって個々の集落が単独で農業を守っていくことが困難な状況にある集落が多い状況がございます。このために、複数の集落が連携して集落を超えた活動を展開する地域マネジメント組織を設立して、地域の課題に取り組む事例が広がっているということです。
  60ページ、地域振興を担う人材育成・確保でございます。農村地域の人口減少・高齢化によって、地域を支える「人」そのものが少なくなっているということで、地域の農村振興の活動を担う多様な人材を確保し、外部の人材の参画・協働を進めていくことが求められているということでございます。
  61ページ、農業・農村インフラの持続性・強靱性の強化についてでございます。昨年の7月豪雨、北海道の地震を初めとする自然災害によりまして、国民の生活・経済に欠かせない重要なインフラが機能を喪失し、国民の生活、経済活動に大きな影響を及ぼす事態が発生しております。こういった中で、農業・農村を振興するためには、営農、農村生活を支えるインフラの持続性、強靱性を強化することが必要ではないかと思われます。このため、農業水利施設、ため池の管理、保全を含む農業・農村の防災・減災対策等を適正に行いつつ、土地改良区等の体制強化、人材育成・確保などに努めることが必要ではないかと考えております。
  62ページでございますが、農業・農村インフラの持続性・強靱性の強化に向けた取組として、以下のものが考えられると思われます。
  この62ページは、農業水利施設の強靱化でございます。昨年の災害を踏まえて、農業・農村の防災・減災、国土強靱化の取組を推進することが重要であるということで、非常用電源設備の設置、また施設の耐震化などの対策をさらに進めていく必要があるということでございます。
  63ページ、ため池の適切な管理、保全でございます。農業・農村の防災・減災対策を進めるために、ため池の保全管理も重要な課題となっております。先ほどもお話がありましたが、農水省として、こういった中で農業用のため池の管理及び保全に関する法律を制定したところでございまして、今後、農業用ため池の適正な管理、保全が行われる体制を早急に整備する必要があると考えております。
  64ページ、農業水利ストックの統廃合でございます。農業水利施設、またため池などの維持管理を限られた人員で行っていく必要がございます。また、農業水利施設の多くは、老朽化が進んでいるということで、効率的な補修・補強、更新をさらに進めていく必要がございます。そういった意味で、更新整備を行う際に、施設規模等の見直しを行い、必要に応じて施設の統廃合を図ることが重要と考えております。
  65ページ、ストックマネジメントの推進です。こちらについても、施設の長寿命化、そしてライフサイクルコストの低減を図る戦略的な保全管理を推進することが求められております。その際には、新技術の開発、現場への適用ということもテーマになっております。
  続いて66ページでございます。新技術を活用して施設のインフラ管理を高度化していくことが必要ということでございます。
67ページは情報化施工の推進です。従来型施工では、多くの熟練技術者が必要ですが、この情報化施工によって、熟練技術者の不足を補って、現場の生産性向上を図る必要があるということでございます。
  最後に、68ページでございますが、土地改良区の体制強化、地域の人材育成・確保でございます。土地改良区は、農業水利施設の新設・変更、農地の整備等工事を伴う事業、また土地改良事業によって造成された施設の維持管理を行っており、今日に至るまで日本の農業を支える重要な役割を果たしてきています。一方で、いろいろと課題も生じてきているということでございますので、今後もこれまで法律の改正などに取り組んでまいりましたが、引き続き農業・農村の新たな変化に対応し、土地改良制度、利水調整、また農地、農業用水の維持管理手法などについて不断の改善を行っていくことが必要と思われます。
  説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  それでは、これから委員の皆様にご意見を伺っていきたいと思いますが、まず私のほうで少し整理させていただきたいと思います。
  今、資料1-3でご説明いただきましたが、部会の取りまとめとしては、資料1-1がオーソライズされたものとなるということでございます。この議論は、基本的なところの議論であり、今後、食料・農業・農村基本計画が策定され、それを踏まえて次の土地改良長期計画の検討が進められることになると思いますので、そのベースになるものかと思います。
  これから皆様からご意見をいただきますが、今回の取りまとめに直接反映されなくても、今申し上げたような次の展開にも参考になると思いますので、冒頭、太田次長がおっしゃいましたように、忌憚のないご意見をいただけければと思います。
  ですが、割り当てられた時間を考えると、お一人当たりは4分ぐらいとなり、事務局のフィードバックを考えると3分ぐらいでご発言いただけたらありがたいと思います。今申し上げたことを頭に置いていただき、どなたからでも、どこからでもご発言いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  では、渡辺委員から伺います。

渡辺臨時委員
  新潟県土連の渡辺でございます。
  事務局の皆さん、大変よくまとめていただいたと思っております。感謝申し上げます。
  私の感想を申し上げますと、まず資料1-4の「新しい時代が到来する中での農業農村整備の基本的な考え方」は6つの項目で整理をされていますが、最後の「地球規模の課題への対応」が、ほかの課題とレベルが違うと思います。もう少し具体的に、農業農村整備として地球規模のどういう課題にどういうふうにアプローチをするのかが見えたほうがいいと感じました。
  それから、これは資料とは直接関係ありませんが、地域に入りますと、スマート農業の導入も含めて、大規模経営体や担い手を意識した施策が集中しているように感じます。その中で、一部の小規模な農家の方からは、「どうせ自分達は取り残されるんだ」とか、「自分達はもう要らなくなるんだ」という諦め感のような声が聞こえてきております。そういう方々も、実際は農村振興全体を考えた場合には、大変重要な役割を担っていただく方々だと思うので、そういう方々も安心できるようなメッセージを発信していただけるとありがたいなと感じております。
  それから3点目が、52ページに、前回ゲストスピーカーで来られた岩見沢市の事例がございました。その事例については、農水省の仕事だけではなく、様々な省庁の仕事を組み合わせて、いろんなことをされていると思います。一つの事例としてはいいと思いますが、全国で同じようなことはできるかは若干疑問でありますので、見せ方を工夫していただければと感じております。
  私からは以上3点です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  4人ずつぐらい委員の意見を伺ってから事務局にご対応いただきます。
  では、柴田委員、伺います。

柴田臨時委員
  柴田です。
  壮大な取りまとめを非常にありがとうございます。大変参考になります。
  感想めいたところですが、農業に関わらず、最近、持続性、持続的発展という言葉が非常に行き交っております。ということは、あらゆる面で持続不可能になってきているということですが、それで改めて農業における持続性、持続的発展とは一体何なのかということを資料全体を見ながら考えました。ここで言うと、多様な地域資源、インフラの保全が、まず危うくなってきているので、ここをまず持続させるということかと。
  その際には、資源インフラは単にハードだけではなく、ソフトの人材、人のネットワークや関係人口、そういう話になるとは思いますが、その上で対策が全体で取られてきていると思います。渡辺委員と被りますが、大規模化や担い手への集中という方向で、そこにこのスマート農業を絡めて競争力のある農業を作り出していこうと、こういう流れになっているかと思います。ただ、それを突き詰めていくと、例えばここの資料1-3の9ページのところで「大規模農家の台頭、新しい農業の展開」で見ると、どうも日本地図の上での農地集積の状況を見ると、東日本の農業と西日本の農業で、まず大きな差が見えるなということ。それから、先ほどのスマート農業の実装では、平地の農業と中山間地の農業で差が出てきている。それから、担い手に集中していくと、結果として競争力のある農業と競争力のない農業と、ここに差ができてくる。
  したがって、大きく3つの分野で明暗が出てくるとは思いますが、こういうことに応えていく、それを認識しているという書きぶりも必要なのではないかと思います。
  AI、IoTに代表されるスマート農業の力というか期待も、競争力強化をしていこうという農家、経営体にとっては、生産性を上げて収益力を高める手段になると思いますが、一方で、そればかりではなくて鳥獣被害、以前、現地調査しましたときのロボットによる草刈りなど、社会的な課題を解決する手段としてのスマート化、そういう視点も必要だと思うわけです。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、また少し続けて。では長谷川委員に伺います。

長谷川臨時委員
  非常にわかりやすくまとめていただいているという気がします。6ページにスマート農業の実装状況についての表があり、実用化済みのものや開発中のものがあるということが一目でわかって非常にいいのですが、一方で、開発中のものがどれぐらい遅れているのか、遅れていないのか、予定どおり進んでいるのかが、もう少し見えないかということが感想としてあります。
  そう言うのは、例えば政府の対応として骨太の方針や成長戦略の話が盛り込んでありますけれども、例えばこの間まとまった成長戦略、未来投資会議でやっていたもので、KPIの進捗状況も評価しているわけです。
  それで、データを活用したスマート農業については、現時点での評価はありませんが、今回の一連のまとめの中にもたくさん出てくる6次産業化の話は、進捗に遅れがあるというB評価になっているわけです。
  そこの原因や対策を、今から改めてどうこう議論すべきということではありませんが、少なくとも進捗状況がどうかということに触れないまま、ただ単に、例えばスマート農業を推進するとか、6次産業化を推進することを言い続けるだけだと、説得力を持ちにくい部分はあると思います。少し厳しいですが、そういう感想を持ちました。

渡邉部会長
  ありがとうございます。
  もうお一方、伺いましょうか。では、西村委員、伺います。

西村臨時委員
  東京大学の西村です。
  このIoT、ICTに関する話で、人材というところで一言コメントをしたいと思いますが、ゲストスピーカーで津南町で村おこしをしていたという話で、村おこしでもディレクターが必要である、ディレクターのトレーニングが必要であると。それは多分、今回出てきた価値の実現化、価値の発掘についても同じだと思いますが、同時に、これはICT、IoT、ハードを入れてもおそらく使いこなせない。
  今、長谷川委員が触れた6ページ目のところで、進んでいるのは大抵ものづくりのところで、システムだったり、そこから先のソフトが絡んでくるところは、作ってもそれを教育したり、もしくはその間にある普及をする人がいないと、結局、現場に反映できないケースが多くなってくると思いますが、そこをどうするのか。土地改良区のスタッフの教育でそこをカバーするのか、それとも普及員のような特定の人達を考えるのか、インプリメントするための人材をどう作るのかは、ここはもう少し足しておいたほうがいいと感じました。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  それでは、今までの4名の委員の方々のコメント等について、何か事務局で今この場でご対応いただけることがあったらお話しください。

石井計画調整室長
  皆さん、貴重なご意見ありがとうございます。我々がいろいろと資料作りの中で考えたこと、そこで十分にそしゃくできていない部分もご指摘いただいたと考えております。
  渡辺委員からは、気候変動に関するお話をいただきましたが、やはり我々は政府として施策を講じていく以上、こういった地球規模の課題、特に気候変動、SDGsなどについては、しっかり対応していくということをメッセージとして伝えていく必要があるのだろうと考えております。
  あとは、大規模、もしくは担い手以外の方々への対応ということで、今回、多様な主体が住み続ける、住み続けられる農村を一つの農村の目標の姿としておりますが、いろいろな方がそこに住まわれることを念頭に置いておりますので、小規模の農家の方も農村で農業をやって生活できる。そういった環境をしっかり確保する必要があるということを認識しておく必要があるのだろうと考えております。
  柴田委員からいただいたご意見は、非常に重要な話だと思いますが、農業の持続性、持続的発展という観点でいくと、農地、人、技術が不可欠な要素であり、このようなものを持続的に確保していくことが大事なのだろうと考えます。
  そういった意味で、人の持続性ということで言えば、しっかり農村で生活できる所得を確保していくことが大事だと考えております。
  長谷川委員のご意見でございますが、スマート農業についてどのように開発、また社会実装を進めていくかということについては、別途、省としてもまとめたものがございます。ご指摘いただいたところをしっかり踏まえた上で、スマート農業が実効性に裏打ちされているのかどうかということをしっかり把握し、整理した上で、この農業農村振興の中でスマート農業をどのように位置付けていくか検討していきたいと思います。
  西村委員からもいただきましたが、スマート農業について、進んでいる部分と進んでいない部分について、特に進んでいない部分はソフトの部分が非常に重要なものであるということ、ソフトが重要なファクターとして絡んでくるものであるということでございます。そういったところをしっかり峻別しながら、考えていきたいと思います。また、現場でそういったものを実際に使っていく土地改良区、普及員などの、そういった人材をどう育成、確保するかということも、しっかり考えていきたいと思います。
  以上、雑駁ですが、コメントさせていただきます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  多分、コメントされた委員の方はご意見があると思いますが、少し私の方でまとめさせていただきたいと思います。今回、農業農村整備のあり方を議論している段階ですが、そもそも農業・農村のあり方に触れざるを得ないということがあって、事務局が中心になって状況は整理されたと思います。あるべき姿については、この部会だけでは当然手に負えないところがありますので、至らないところも多いと思います。具体的な報告の記述のところで、どうしても修正すべきであると思われるところがあったら、意識的にご発言いただきたいと思います。
  それで、資料1-3の文章が、これが報告のテキストですので、ご発言いただくときに、どこの文言が気になったかを少し頭に入れていただいて、また改めて伺うチャンスもあるように、最後にまとめさせていただきたいと思うので、そのように意識してご発言いただけたらと思いますが、いかがでしょうか、皆さん。
  では、続けて、柴田委員、もう一度。

柴田臨時委員
  違和感があったのは、この大きな資料1-4のところで、上に3つあって、黄色い部分で「農業・農村を取り巻く政府の動向」という、この言い方ですが、政府はあまり農業・農村に関心がない印象を受けるのですが、「に関連する政府の動向」ということではないかと思うのですが。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございます。では、これは改めて検討させていただくことにして、テークノートしていただいたらと思います。
  では、伺っていきます。森委員、伺います。

森臨時委員
  「農業農村整備の新たなフロンティア」についてのご説明は、非常にわかりやすかったです。ありがとうございました。
  渡邉部会長にそうやって、こういうふうに疑問点などを言ってほしいというご指示があったところですが、漠然とした言い方で気になるのですがいいですか。

渡邉部会長
  結構です。もう一度申し上げますが後の議論にもつながりますので、個別具体的な指摘だけではなく、広くご意見も歓迎したいと思いますので、よろしくお願いします。

森臨時委員
  私達が、この審議会でやってきた中で、3年前に都市農業振興基本計画が出されたわけですが、この1-3の資料、そして1-4の1枚で見られる大きな表の中にも、都市農業についての記載が1つもありません。農村整備の中で、都市は農村ではないのかというと、大変な問題提起になってしまいますが、そうではなく、例えば豪雨等の災害が起きている中で、都市の農地の防災の役割、避難場所、それから治水の問題として、整備をしていくことはとても大事だと思います。小さな都市の農地の整備によって、なかなか農業・農村の生産性の高い農業に触れることができない人も、どこにも農地は必要なんだということをわかってもらう大事な役割を果たしていると思います。どこか少しでいいので、都市農業について、その大切さ、それから景観の形成にもなっていますし、その記述が入っていたほうがいいのではないかと思いました。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございます。  とても具体的なご指摘ですよね、どこかに入れるべきだと考えます。ありがとうございます。
  では、続けて松田委員、伺います。

松田臨時委員
  説明を聞いて腑に落ちる展開の整理で、わかりやすいです。事務局のご努力に敬意を表したいと思います。
  その上でなんですけれども、新たなフロンティアをもって農業・農村をどう持っていくのか、農家がわかる段階まで落とし込むことで考えていくと、今現在の課題が将来の課題であるということだけではなく、今現在、課題ではない部分が将来課題になるかもしれないということも考え、だから、こういう取組をすることで、今現在課題ではないことが将来においても課題ではないという部分も文章としてどこかに触れておくことが必要ではないか。
  人口減少でも持続的に発展する農業にしていくためには、大区画化が必要である、あるいはSociety5.0への対応や、IoTなども必要であり、このような取組をすることで大規模経営をしている法人等が事業承継を経て、次世代においても大規模経営し続けていくことができるという帰着部分の文章表現があると、取組の意味がわかりやすい。これから取り組むこの方向で、今、課題ではない部分が将来においても、課題とならないというニュアンスが伝わると、農業者が文章を読んだときにも腑に落ちるような気がします。漠然とした話ですが、人口減少下における持続的な発展する農業の振興の部分のどこかにその文意があると、よりわかりやすいと思います。感想でした。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、西尾委員、柚木委員の順で伺います。では、西尾委員、先に伺います。

西尾臨時委員
  感想を申し述べさせていただいていいでしょうか。
  40ページにあります「プラットフォームの構築」では、当初、サイバー上のプラットフォームのみが論じられていましたが、少し違和感があると思っていたら、現実社会でのフィジカルな社会でのやりとりが加わって、そこに人間が関わるというところが大事だと思いました。ただ、これが並列な表現の仕方で、本当は2つに分かれているものではないのではないかという感想を持ちました。
  このページの話についても、それから56ページの「地域資源の保全、活用」あるいは60ページの人材育成の確保という話でも、人材に帰着するという感想を持ちました。
  それで、56ページにつきましては、個々の所有者の状況がまちまちなので、外縁とか内側とか、そのように分かれるわけではないと思われるのは、皆さんそうだと思いますが、これをどうやってうまくまとまりのある形にまとめていくかというのは大変難しい問題であろうと思います。
  最後のほうに書かれている国土を持続的で強靱なものにすることは、大変重要なことだと思いますし、その前に書かれている潜在的な食料自給力を確保するために保全管理をするという考え方も大変理解できますが、現実には体力がなくなりつつある集落が多数あると思われて、そういった集落にとって絵に描いた餅にならないような具体性のある、また主体的、どこが主体的になるかということもあると思いますが、取組が必要ではないかと感じました。体力のない地域に任せきりにならないような、今後の検討の中で期待したいと思います。
  それから、全体的な話ですけれども、「目指すべき農業・農村の実現に向けた農業農村整備」で、農業農村整備とうたわれていますが、この中には本当に土地改良事業ができるものとできないものがあるのではないかと思われて、そこがどれがどうなのかというような、私のような素人ではわかりにくいという感想を持ったところです。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、柚木委員、伺います。

柚木委員
  ありがとうございます。
  大変盛りだくさんの課題、また状況等をわかりやすくまとめていただいたと思っております。そういう中で、中山間地域の抱える課題等も、詳しく、事例も入れて、とりわけ高知県北川村の取組の紹介によって、よりわかりやすくなったのではないかと思っております。
  そういう中で何点か申し上げたい点でありますが、まず1つは、基盤整備について、やはりハードとソフトの関係、これはより綿密にというか、より連携をとることが必要と思っております。
  先ほどからお話がありますように、今、地域の中では担い手がかなり減少しているということ、それからまた高齢化しているという中で、地域の農業を担う人材の育成・確保は集落営農を含めて大きな課題になっていると思います。今まで以上にソフト面でハードをフォローすることを念頭に置いた取組が必要ではないかというのが1点目でございます。
  もう一つは、資料の中の21ページのところで、「地形条件」で各地域のこういう地形条件の中でいろんな取組がされているというお話があったわけでありますが、これと9ページの農地の集積の状況、この地図がセットで出てくると、それぞれの地域によって農地の使い方、経営の規模がどうなのかということ、同時にそれぞれの地形に合った農業のあり方の一つのメッセージが伝わっていくと感じたところであります。この点は、また今後のテーマとしても、それぞれの地形条件を踏まえた形での農業のあり方、またそれをフォローする基盤整備の進め方、これも高知県北川村村長がおっしゃったように、小さい地形、区画の整備でも中山間地域の労働集約的な農業にとってはメリットがあるというお話があったわけでありますが、そういうことを今後は進めていく必要があるのではないかと思いますし、そのことがまた中山間地域等の活力を増すことにも、力をつけていくことにもなるのではないかと思いました。
  同時に、果樹農業ということで記載されているところで、基盤整備部局と生産部局との連携の必要性が書かれておりますが、これも今後のことで結構ですが、加えて担い手経営対策もセットで、生産と基盤整備、それから担い手経営の対策、この辺を併せて検討を進めていくことが必要ではないかと思っております。
  最後になりますが、50ページで、これは具体的な表現ぶりとしてご検討いただければと思っていますが、(3)のところで「担い手への農地集積・集約化を促進する観点からも、借り手を選ばす誰でも使えるほ場を確保する必要がある。」という表現ですが、借り手を選ばずというか、担い手はかなり選ばれている形になろうかと思います。どちらかというと、これは安全で効率的な農作業が可能になるということなのかと。この「借り手を選ばす」が、意味がよく理解できなかったので、これは質問ということで結構ですが、ここのところは、表現ぶりの意味についてお聞かせいただければと思います。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  また4名の方から意見を伺いまして、ご質問もありましたが、事務局でお答えいただくところがあればご説明ください。

石井計画調整室長
  ありがとうございます。
  まず森委員からいただきました都市農業につきましては、何らかの形で反映できないか、検討させていただきたいと思います。
  続いて松田委員からいただいたお話については、どういう対応、反映が可能か検討させていただきたいと思います。今後の議論の中で配慮していくということになるかもしれません。いずれにしても、検討させていただきたいと思います。
  西尾委員から、プラットフォームの話をいただきましたが、56ページのコンパクト+ネットワークに関係する粗放型の農地管理については、重要性については理解するけれども、実際に現場を考えたときに、どういうふうに実践できるのかというご意見でした。我々も同じ考えでございまして、理念的なところをお示ししたところでございますが、こういったものが具体性を持てるのかどうか、今後さらに検討を進めていく必要があると考えております。
  あと、全体を通しての話だと思いますが、今回お示ししている「目指すべき農業・農村の実現に向けた農業農村整備」が、農業農村整備事業でできるもの、できないものが混在しているように思えてわかりにくいということでありましたが、今回整理させていただきましたのは、農業農村整備でまさにやっていくべきもの、また地域の振興施策と連携して、農村の振興に我々として貢献していくべきものがございます。我々が主体的にやるものと貢献していくものがあると思いますが、その辺が混在していてご理解いただきにくかったのだろうと思います。
  柚木委員から、中山間地域の重要性、地形と農地集積の関係の整理等、いろいろとご指摘をいただいたところでございます。最後に「借り手を選ばずに」ということを記載している50ページについて、ここはユーザーフレンドリーな整備方法を紹介させていただいています。担い手への農地の集積・集約化を促進する観点から、営農しにくい農地はなかなか借りていただけないということで、借り手がどなたであっても営農しやすい農地、それは例えば農地の大規模化や汎用化もそうですし、こういった省力化の面、また安全性の向上面でも農家の方々に使っていただきやすいようなもの、すなわちどのような借り手にも選んでいただける農地に整備する必要があるということで、ここはこのような書きぶりをさせていただいております。さらにご要望があれば、お受けしたいと思っております。
  事務局からは以上でございます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  まだご意見はあるかもしれませんが、続いて委員に伺います。安藤委員、お願いします。

安藤臨時委員
  かなり文量も多くて、これはまとめるのは大変だったと思って伺っておりました。その中で、3点コメントをしたいと思います。
  1つ目は、「農業・農村の多様性」という言葉が資料1-4の真ん中のところにありますが、この話は先ほどの柴田委員、それから柚木委員が指摘されたことと関わりますが、多様性は確かにそのとおりですが、どのように多様なのかを、その多様性を中間地域や山間地域、水田型や畑地型などのように類型化して、地域類型ごとの方向性を、今回は必要ないとは思いますが、基本計画を立てる際には出していくべきかと思います。
  そうすると、各地域のそれぞれの方向が明確になり、それぞれを基に地域での議論ができるようになっていくと思いました。これは皆様の議論を伺いながら私が考えたことになります。
  それからあと2つですけれども、54ページに北川村の事例が掲げられていたかと思いますが、これは非常に参考になる事例かと思います。ただ、言葉尻の指摘になってしまうかもしれませんが、「労働集約型農業」というのは、単位面積当たりの投下労働量を増やすということですから、ある意味で規模拡大は難しいことを意味しているわけですね。逆に言えば、北川村の方々がお話をされたように、1ha規模でやっていけるという農業だということでした。人口減少社会の下では、こうした労働集約型農業の展開を図れば図るほど、農地余りが加速されることになるのではないでしょうか。そうなりますと、片や労働集約型農業を展開して稼ぎながら、同時に農地または農林地を粗放的に管理する計画が、地域レベルでは必要になるのではないかと思うわけです。こうしたことを含めた全体的な土地利用計画の策定が、市町村レベルでは今後必要になってくると考えています。これが2点目になります。
  それから3点目です。56ページのコンパクト+ネットワークは、小さな拠点への集約を図るということだと思いますが、その方向はそれでよいと私は思いますし、社会資本の投資効率からも、当然そうなってくるかと思いますが、実際問題としては、集落の世帯数、農家数が減少する方向にドライブをかけることになるのではないかと考えるわけです。
  農業集落センサスの分析を見ますと、集落における戸数が一定数を下回りますと、地域資源管理の取組割合が下がるという結果が出ています。そうすると、農村集落の戸数を減らさないための施策が必要になってきますが、そのことと、この小さな拠点への集約とは相入れないという点をどう整理するかが難しいように思います。現場の方々からすると矛盾を感じるかもしれないということです。戸数が減少して農業集落の維持が難しいとなると、極端な話になりますが、人が住んでいなくても地域資源管理が可能な方法も考えていく必要があるということになるかと思います。
  ここで問われているのは、これまでどおり村をベースに地域資源管理を考えていくのか、戸数の減少は仕方がないので村がなくても地域資源管理ができる方向を考えていくのかということだと思います。そうした論点を、人口減少社会が進む中で、次の長期計画での検討事項となるかどうかわかりませんが、将来的には検討していく必要があると考える次第です。
  以上、3点が私からの指摘になります。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、続けて伺っていきます。武山委員、伺います。

武山臨時委員
  まず、この度の取りまとめにおきまして、中山間地域でありますとか傾斜地の樹園地といったところにスポットライトが当たって、内なるフロンティアにも今後整備の手を入れていくということが明示されたことは、特に西日本にいる者にとりましては、希望の持てる取りまとめになったのではないかと思っています。
  このような取りまとめは、将来に対しての希望を見せるという重要な役割があると思いますので、そういった意味では非常にいい取りまとめになったのではないかと、個人的には感じております。
  非常に具体的なことを1点だけ指摘させていただきたいと思います。
  資料1-4の、このA3の資料の右下の緑の部分、「多様な主体が住み続けられる農村」の振興で、西尾委員からも、これはどこまでNNでできて、どこまでできないのかというご指摘があったと思いますが、私もこの具体的な取組の例、(1)から(6)までありますけれども、この順番を少し工夫いただくだけでもわかりやすくなると感じております。
  というのが、教科書的な話で大変恐縮ですが、農村整備の4つのレベルがあると我々は学生に教えるわけですけれども、重要な順番でいきますと、安全性、保健性、利便性、快適性と。安全性は当然命に関わることで、保健性は健康で文化的というようなレベル。この4つに分かれてくるという話をして、当然、安全性が一番大事なところに位置付けられてくるわけです。そう考えますと、この具体的な取組の例の中では、(3)と(4)が極めて重要な定住条件を作り出す取組であろうということが言えると思いますので、これが前に出てきて、その上で利便性や快適性を上げていくというストーリーが描ければ、よりわかりやすいのではないかと思いました。
  同じような意味合いで、このA3の資料の左下にある図がございますが、黄色のところが「安全で文化的な住みやすい農村環境の整備」となっていますが、これが左と右が違うだけでも、順番や優先順位が違うということを表現できると思いますし、ともすると、私はもしかすると黄色が一番下で、その上に青の部分、「農村住民の雇用確保、所得増大」があって、さらにその上に「地域資源を活用した魅力ある農村の創造」と、こういう序列でも別にいいのではないかと思えるぐらい、この黄色の部分の重要性は極めて高い。まだこれが実現されていない農村があるからこそ、過疎化が促進されていると言っても過言ではありませんし、もう一つ付け加えれば、この黄色の部分こそ農業農村整備でしか対応し得ない、極めて重要な取組ではないかと思っております。
  先ほどの右下の「多様な主体が住み続けられる農村」の振興、この具体的な取組の例に戻りますが、特にこの(4)です。農地整備に伴って非農用地を創設するということの取組が、最近、下火になってきているところもあるかと思います。
  農業農村整備は、農地だけを整備しているのではなくて、農村空間全体の土地利用の秩序化であり、生活と産業がともに一体化している空間の整備を実現する強力なツールであるということを、もう一度我々は思い出して、すみません、釈迦に説法で大変恐縮ですが、その重要性は、特に中山間地域ではスポットライトが当てられてしかるべきではないかと。
  昨今、農地中間管理機構を通した基盤整備も着手されているところですが、そういった新しい仕組みの中で非農用地をどういうふうに生み出せるのかということも、今後、議論の重要性があるだろうと感じております。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  それでは、まだご発言いただいていない方でご意見を。では、横田委員、伺いましょう。

横田臨時委員
  私が発言しなかったのも、これは十分、私の中ではよくできていると思っていたのであまりありませんでしたが、一応そうは言っても委員でここに来ているのに何も発言しないで帰るのは失礼なので。
  私がここで気になったのは、資料1-4の、1-3でも出てきますが、「新しい時代の到来」に、大規模農家の台頭の「台頭」という言葉が気になって。これは事務局の方にも前にもお話しさせてもらったのですが、それはこの会議でも何回か言わせてもらっていますけれども、私はどちらかというと大規模農家に分類されますが、台頭を辞書で調べると、どんどん勢力を増していて勢いがあってみたいな感じで。それは私からすると、必ずしも正しい表現ではなく、やりたいかやりたくないかみたいな話ではないですが、地域を守るためにもやっていかなければならないという意味でやっているところもありますし、あと、どちらかというと大規模化によって、今までと違う新しい問題に直面している。地域の中では少数派になりつつあり、摩擦が起こっています。例えば農村協働力であるとか、ほかでいろいろ書いてあることでも解決しようという姿勢があるので、台頭という言葉は、別に今ここを直さなければいけないと思っているわけではありませんが、そういうものは、これからどうしていくのだろうというところが、書いてあることでは大体解決できる方向にはなっているとは思いますが、そういう大規模農家は大規模農家で大変であること、少数派になっている人達の意見が聞こえなく、見えなくなりつつある。大規模農家は、きっと大規模でうまくいっているのでしょうみたいな、そう見えてしまうのは残念だという気がしてきます。
  では、それをどうやって解決するのかといったら、一大規模農家、個ではもう対応できないので、土地改良区等、そういう大きいところで解決していかなければいけない。よりそのようなところの重要性が増してくるのだろうと。大規模農家に全部任せればいいのかといったら、当然そういうことではありませんので、何かそういうものが、これからは次のものには少し反映されてくるといいのではないかと感じました。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、染谷委員、伺います。

染谷委員
  今、横田委員から大規模農家についていろいろありましたが、その点について自分からも。
  自分は家族経営でやってきて、家族経営の場合は、何かあったら我慢という言葉が使えました。大規模化して、どんどん大きくなり、従業員が必要になったということで、今はうちでも10人ぐらい雇用していますが、我慢というものはありません。
  要するに、農業はリスクがつきもので、被害を受けたときに共済や農業収入保険がありますが、そういうときに、1年目、2年目は何とか乗り切って、3年続いたらどうなんだといったら、大変なことになります。ですから、よく言うのですが、今、規模拡大できたら、続ける勇気を持つか、辞める勇気を持つか、どちらかだと常に言っています。それだけ厳しいところもあると思います。その辺も踏まえて、自分達はいろいろ頑張っております。
  今回いろいろと出していただいたものは、すごく細かい点まで考えていると思いました。ありがとうございました。今回これを見せていただいて、これは農家にも知ってもらいたいと感じています。農家はものを作るだけでいいのではなく、国は何を考えて食料を確保しようとして、努力しているのかと。そういうことを、農家も知るべきだと感じました。
  それともう一点、農産物を食べるのは消費者、国民ですが、今、消費者はスーパーに行けば何でもそろいます。あって当たり前、なくなったらどうしようと、そんなことは考えていません。こうやって様々な努力があって、今現在の食料が確保されていることを消費者にも知ってもらうべきではないかと思っています。
  基幹的農業従事者は、65歳以上が3分の2です、自分達も含めて。そうすると、10年後は3分の1プラスアルファで、今の食料の生産はできるのか、そういうところも心配しています。その辺も消費者に知ってもらって、農業、食料をどう考えるか、真剣に考えてもらう時代ではないかと感じました。
  少し部会とは離れてしまいましたが、そんな思いでいます。

渡邉部会長
  どうもありがとうございました。
  一通り委員の方からコメントをいただいたと思います。
  事務局、改めて対応すべきことがあったらお話しください。

石井計画調整室長
  ありがとうございます。
  まず安藤委員からいただいたご意見の中で、54ページの北川村の例でございますが、労働集約型は規模拡大が難しい。人口減少になる中で労働集約型だけではなく、地域の中で労働力の配分を考えながらやっていかないといけない、また、全体的な土地利用計画の策定が必要ではないかというご指摘をいただきました。我々も全国津々浦々で、特産農産物を活かした労働集約型農業の展開ができるわけではないと思いますので、これは地域の特性に応じて、こういう農業振興の仕方もあるということをお示ししていくことが必要だと考えております。
  武山委員からいただきましたご意見の中で、順番については参考にさせていただきたいと考えております。よりわかりやすく、すとんと理解していただきやすい順番について、工夫ができればと考えております。
  横田委員からいただいたご意見につきましては、我々が普通に台頭という言葉を使って、それが大規模農家の方にとっては、実は違和感のある言葉であるということをご指摘いただきました。本当にいろいろと勉強になります。
  以前は地域活動として農地、農業水利施設の管理を地域でやっていたことが、大規模化することによって、預けた農家の方々がどんどん農業に関心を失ってしまって、担い手の方に、そういった作業が押しつけられるということです。今回のとりまとめとしては、農業を成長産業化させなければいけないという一方で、それを支えるための農地、農業水利施設がしっかり適切に維持管理されなければならないということを示しております。
  農村協働力がまだ期待できるところは、多面的機能支払などで、基礎的な活動をいろいろと支援しながら地域で取り組んでいただいていますが、そういうことが難しいところで、どのように農地、農業水利施設を管理していくのかは、我々にとっても重要な課題だと考えておりますので、引き続き、研究していきたいと考えております。
  最後に染谷委員からいただいたお話の中で、農家の方々にこういった検討を農水省で行っていること、また委員の皆様にご審議いただいて整理していることを農家の方々にもっと知ってもらいたいということで、ここは我々も国の施策、また土地改良の関係でいけば、土地改良長期計画などを農家の方々まで届くように、情報発信をしっかりやっていかなければならないと思います。引き続き、課題とし、取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  以上、簡単ですが、コメントさせていただきます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  先ほど申し上げた予定の時刻を過ぎていますが、委員の皆様から、改めてどうしても発言したいことがあったら伺いたいと思いますが、よろしいですか。
  時間は過ぎておりますが、私も一言申し上げようと思います。コメントですので、事務局は回答をしていただかなくて結構です。
  今回の取りまとめは、先ほど申し上げましたように、農業農村整備のあり方を考えるのに、農業・農村のあり方そのものに触れざるを得なくなったというか、そこまで立ち入って検討することになって、事務局のご努力も大変でしたし、委員の皆様からも適切なご意見をいただいて、次の議論のベースとなるものがまとめられたのではないかと考えています。
  その中で、それを踏まえて今回の検討ではできなかった、あるいは対象にはなかったと思いますが、この先検討すべきこととして考えていることを1つ申し述べたいと思います。様々な状況を考えて、どのような事業が必要となるかといった「メニュー」の検討が今後の議論の中心となるかのように位置付けられているのではないかと思います。一部そのレシピのようなものは加えられようとはしていますが、今後は、具体的な調理法や、あるいはどういうものをどのように給するのかを具体的に決め、関係する人の関与の仕方を含めて考えていくような、広い意味での事業制度の見直しが必要になってくるのではないかと思います。
  例えば、食べたいものと、食べた方がいいものがありますが、その中でどういうものを選ぶか。例えばチャーハンとラーメンを一緒の食事で食べるのか、昼食と夕食で分けてどちらかから食べるのかや、どちらから料理していくのか、さらにそれを誰が決めていくのかというような仕組みが必要であって、それが大事であると思います。
  これまでは、あまり細かく決めなくても、実際にそういうことを巧みに進める方が現場にもおり、行政におられたと思いますが、そこのプレーヤーが大きく変わっていく中で、こういう判断を誰がしていくかというところも、今後併せて検討していったらいいかと思います。もう既に検討はなされているかもしれませんが、今日の資料でいうと一番最後に、今後も土地改良制度について不断の改善を図っていくことが必要であると書いてありますが、その辺を改めて今回の議論をベースにして検討していただいたらいいのではないかと思います。最後に私の考えを、感想を申し上げさせていただきました。
  私が大分長く話したので予定の時間を大分過ぎていますが、終了時刻を10分程度延長せざるを得ないのですが、よろしいでしょうか。
  申し訳ございません。
  今回の取りまとめについてですが、今日の皆様のご意見で、具体的に今回の取りまとめに反映すべきところは反映するように、事務局で再検討いただくことにし、長期的な視点でいただいたコメントについては、整理を事務局にしていただきたいと思います。今年度の取りまとめについては、今日のご意見を踏まえて文案を事務局で取りまとめていただきますが、その最後のまとめは、部会長に一任していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

  (異議なし)

渡邉部会長
  ありがとうございます。
  では、そのようにさせていただきます。具体的なご指摘については、事務局からそれぞれご発言いただいた方に伺うこともあろうかと思います。
  それから、基本的なこと、あるいは次に向けての議論をすべき点の整理は、これもきちんと事務局で整理いただいて、次期の検討に反映していただくようにしていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、次の議題に移りたいと思います。
  次は報告事項です。「農業用ため池の管理及び保全に関する法律について」、事務局よりご報告いただきます。

宮﨑防災課長
  それでは、資料2をお開きください。
  「農業用ため池の管理及び保全に関する法律の概要」という資料ですが、これは法律制定以降に、都道府県や市町村の担当に説明に回りました。そのときに使用している資料になります。
  1ページ、2ページは、経緯等なので、法律の内容は3ページをお開きください。
  まず目的ですが、農業用ため池を適正に管理及び保全することにより、農業用水の供給機能を確保しつつ、決壊による被害を防止することを目的にしております。
  (2)番で定義ですが、農業用ため池については、農業用水の供給の用に供される貯水施設ということですが、堤体及び取水施設によって構成されるものとしています。ただし、近代的な技術基準に基づいて造られているダムについては対象外にします。
  防災工事ということで、決壊を防止するために施行する工事ということで、「チェック」欄中に1から3番まで、耐震対策、豪雨対策、老朽化対策と、こういったものと、あわせて4番にありますが、使われなくなっているため池があるようですので、これを廃止するものについても防災工事という位置付けにしております。
  それと(3)番の責務ですが、これまでいろいろな事業制度を作って政策誘導という形で通達を出して、ため池対策を進めてきましたが、必ずしもその責務が明らかではないことから、今回は法律の中で、都道府県については後でご説明しますが、特定農業用ため池の指定という行為と、それに基づくデータベースの整備、管理等、そういったものについて責任を持っていただくと。市町村は管理状況の把握と周辺住民の避難対策等と。それと国ですが、ここに支援システムと書いてありますが、これは全国の農業用ため池を一括管理できるようにデータベースを用意しまして、かつ地震のときや豪雨のときに危険なため池を予測するシステムを、農研機構で開発していただいていますので、これは今年度試行していますが、来年度から本格的に全国で展開したいといったもの、あるいはマニュアルの整備といったものを責務として入れています。
  4ページをお開きください。次が農業用ため池の届出ということで、これまで20万個が全国にあると言われていましたが、必ずしも全てのデータがきちっと整備されているものではありません。また、データベースが整備されているものについても、更新が必ずしも適切に行われていなかったということで、所有者はため池を設置または廃止したときは、知事に届け出ていただきます。それと、既存ため池については、施行は7月1日を予定していますが、6カ月以内に所有者、管理者が届け出ていただくこととしています。
  国や地方公共団体が所有するものについては、この届出の対象にしていません。というのは、国有財産法ですとか、地方自治法で管理されていますので、そちらの法律、二重にかかるので、それらは届出の対象にしていません。
  それと、届出事項は下にある所有者、管理者、場所、堤高、貯水量、そういったものを届け出ていただくという内容です。
  5ページ目ですが、届け出ていただいた農業用ため池について、インターネット等で都道府県で公表していただくことにしております。ただし、チェックボックスに入っていますが、国、市町村が所有するため池についても、届出対象にはしていませんが、データベースの対象にはして公表していただくことにしています。
  それと(3)番が管理と勧告ということで、所有者、管理者は適正な管理に努めるという努力規定を入れています。それに併せまして、その下にありますが、管理上必要な措置を講じていないと認めるとき等については、所有者、管理者に対して防災工事の施行ですとか管理者の選任等の勧告を知事がすることができることになっています。管理上必要な措置を講じていない場合というのは、堤体が崩れそうになっていたり、漏水が生じたり、非常に危険な状態になっているため池を想定しています。
  それと、この勧告の対象ですが、例えばため池の管理ですと利水管理や、あるいはため池の周辺に防護柵を設置する安全管理のようなものがありますが、それについては、この勧告の対象にしないことにしています。
  6ページ目は特定農業用ため池の指定です。チェックボックスの中に入れていますが、これは防災重点ため池と従来我々が呼んでいるもので、昨年の11月にこの基準を改め公表し、5月末までに再選定していただくことにしています。
  今回全体が取りまとまりまして、全体の農業用ため池ですが、20万個が16万7,000個ぐらいになっています。そのうち6万4,000個が防災重点ため池です。都道府県と国が持っているため池が2万個ですので、差し引き4万4,000個ぐらいが今度この特定農業用ため池に指定されると考えております。
  この特定農業用ため池に指定されますと、下の(2)番にあります行為制限がありまして、ポンチ絵がありますが、堤体や取水設備、あと貯水池の中で行う行為について、チェックボックスの上のボックスにあるような行為をするときは、知事の許可を受けていただく必要があります。
  ただし、土地改良事業については、事業の計画の中で安全性確認をしていますので、対象外とし、防災工事も対象外にすると。それと非常の場合の応急措置ですとか通常の管理行為ですね、これは対象外にするという内容にしております。
  7ページ目が住民への周知ということです。市町村は避難場所ですとか避難経路等に関する事項について、住民に周知させるよう努めるということで、基本的にはハザードマップを考えております。
  それと、その下に防災工事の施行という項目があります。計画の届出がありまして、工事に着手する30日前までに防災工事計画を都道府県に提出することにしております。届けた後に、今度はチェックボックスの上にありますが、計画内容が十分でないと認めるときは、30日以内に計画の変更を知事は命ずることができることにしております。計画の内容としては、下のチェックボックスにあるような内容を出していただくということです。
  それと8ページ目になりますが、防災工事の命令・代執行を入れてあります。先ほどの第6条の勧告を受けたにも関わらず、防災工事を施行していただけないときには、防災工事の施行を命ずることができるという規定を入れてあります。
  2つ目の2段落目ですが、上記の命令を受けた者が工事を施行しないとき、あるいは十分ではないとき、あるいは防災工事が、ここがポイントなのですが、例えば廃止するようなため池は所有者が代がわりしていて誰だかわからないと、そういったものについては、勧告すべき者が確知できない、そういったときには所有者に代わって県が代執行できるという規定を入れています。それとチェックボックスに入れていますが、必要な経費については所有者、管理者から徴収できる旨の規定を入れています。
  その下に裁定による特定農業用ため池の管理という項目があります。これは市町村が将来ともにその特定農業用ため池がまだまだ水源として重要だと判断したものであって、管理上必要な措置が講じておらず、その後も講じられないことが確実で、所有者が確知できないときには、市町村が管理権を取得するための裁定を申請できるという項目を入れてあります。
  これは市町村の説明会に回ったときも、市町村は全部できないというお話がありますが、そのときにご説明しているのは、ため池の管理では、例えば施設の操作ですとか草刈りの日常管理、あるいは施設の点検、傷んだところの補修と、様々な管理があります。それについて、農家の方や水利組合、土地改良区とよく話し合って役割分担を決めてくださいと。全てを市町村がやっていただく必要は何もなくて、その中心になってまとめていただければいいですという説明をさせていただいています。そういうこともあって、下から2段落目に土地改良区等に管理をお願いすることができるという規定も入れてあります。
  9ページ目ですが、先ほどの届出や様々な規定を入れていますが、そういったものを執行するときに必要があるときは、報告徴収ですとか現地の立入調査を行うことができるという中身を入れてあります。
  それと、その他については補助や援助ということで、ハードやソフト対策について都道府県、あるいは国は支援するといった規定を入れています。チェックボックスにありますが、制度もこれに併せて拡充しております。例えば1、2、3はソフト対策ですが、これらについては定額で助成することにしています。また、ため池の管理で、兵庫県で県土連さんが引き受けて、複数の市町村のため池を巡回指導して点検に回っているといった活動をやっています。そういったものに対しても支援できるというのが4番です。
  あと5番は、通常の防災工事ですが、この中で統廃合のものについては、廃止する場合は定額でできるということと、それと防災工事の中で耐震対策と豪雨対策については、ガイドライン上は農家負担ゼロで設定しております。老朽化対策は、ほかの施設との兼ね合いもあるので応分の負担が若干出ますが、そういった制度にしてあります。
  あと、最後が罰則の内容になってございます。
  以上、少し飛ばして説明しましたが、これが今回制定した法律の内容になります。
  以上です。

渡邉部会長
  ご報告ありがとうございました。
  ただいまのご報告に対して、何かご質問ございますでしょうか。では、安藤委員、どうぞ。

安藤臨時委員
  大変手際よい説明で、よくわかりました。
  私の質問は、代執行するときに、都道府県や市町村が、そこにかかった費用を所有者から徴収することができるとなってはいますが、もし、その費用を徴収できなかった場合にどうされるのでしょうか。あるいは徴収することができないという危険性、リスクもあるので、そのことが代執行に踏み切ることへのブレーキになる可能性があるかもしれません。こうした問題が出るかどうかについての見通しを伺わせていただければというのが1つ目です。
  それから、補助事業の補助率もかなり高く、手厚い支援が行われるようですが、これに加えて市町村に対して地方交付税の措置はあると考えてよろしいのでしょうか。以上の2点です。

渡邉部会長
  では、2点、ご質問でのお答えいただきましょう。

宮﨑防災課長
  1点目は、代執行は負担を取ることができるという話をしていますが、先ほど一番最後のページでご説明したように、撤去する場合や豪雨対策で洪水吐きを大きくしたり地震対策で堤体をしたりするものについては、ガイドラインで農家負担ゼロという形にしています。
  老朽化の場合は、傷んでいるところを直す場合には、地元でよく話し合っていただいて、農業用利用をする以上は、多少なりとも負担はお願いしたいということで入れてあります。
  また、地財措置については今回拡充されまして、団体営事業についても地財措置が適用、ガイドラインの設定になりましたし、あと高い参入率で設定できていますので地方自治体の負担軽減になっているのではないかと、それも含めて県や市町村にご説明を今回しております。

渡邉部会長
  よろしいですか。
  ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
  またご質問があれば、事務局に直接伺っていただきたいと思います。
  では、以上でご報告を受けたということにさせていただきます。ご説明どうもありがとうございました。
  予定した議題は終了しましたが、委員の皆様から何かご発言いただくことがございますでしょうか。よろしいでしょうか。
  それでは、予定の時刻を過ぎてしまいました。進行の悪さをお詫びしたいと思います。
  皆様のご協力、これまでの様々な形でのご貢献によって、取りまとめが最後の段階になったということを、改めて御礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
  それでは、進行を事務局にお返しします。

石井計画調整室長
  ありがとうございます。
  委員の皆様には、これまでの部会でのご審議、まことにありがとうございました。皆様からいただいた貴重なアイデア、ご意見などを踏まえて作成した取りまとめ案について、本日お示しさせていただきましたが、本日いただきましたご意見を踏まえて部会長のもとで最終版に向けて取りまとめを進めていきたいと考えております。
  それでは、以上をもちまして本日の部会を終了させていただきたいと思います。
  委員の皆様、ありがとうございました。お疲れ様でした。

お問合せ先

農村振興局整備部設計課計画調整室

代表:03-3502-8111(内線5514)
ダイヤルイン:03-6744-2201

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