このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

認定農業者制度の運用改善のためのガイドラインについて

  • 印刷

 

本通知の第1、第2、第3の1、2(1)、(2)、(3)、3(1)、(2)には機種依存文字が含まれているため、当該文字は変換して表示しています。
変換前の文字をご確認される場合はこちらをご覧下さい。(PDF:210KB)

15経営第1537号
平成15年6月27日
最終改正:平成20年9月24日 20経営第3505号

各地方農政局長あて
沖縄総合事務局長あて

(農林水産省)経営局長


認定農業者制度については、平成15年3月末日時点で約17万経営体が認定農業者として認定され、経営改善に取り組んでいる状況にあるが、その一方で、平成5年の制度創設以来9年余の運用を重ねてきている中で、関係者から種々の指摘がなされている。
一方、平成14年12月3日に「米政策改革大綱」が省議決定された。これは、米の生産調整システムだけでなく、立ち遅れている水田農業の構造改革を含め、米政策を総合的な政策として再構築する観点からとりまとめられたものである。この中においては、経営・構造政策に関し、集落段階での話合いを通じ、地域ごとに担い手を明確化するとともに、これと併せ、認定農業者制度の見直し・改善を行うこととされたところである。
これらに関連し、今後の認定農業者制度の運用に当たっては、「農業経営基盤強化促進法の施行について」(平成5年8月2日付け5構改B第847号農林水産事務次官依命通知)及び「農業経営基盤強化促進法の運用について」(平成5年8月2日付け5構改B第848号構造改善局長通知)のほか、下記事項に留意することとし、効率的かつ安定的な農業経営の確保・育成が図られるよう、特段の御配慮をお願いする。
なお、都府県知事あてには、別途通知したので併せて、御了知願いたい。
15経営第1537号
平成15年6月27日
各都道府県知事 あて
農林水産省経営局長
認定農業者制度の運用改善のためのガイドラインについて
認定農業者制度については、平成15年3月末日時点で約17万経営体が認定農業者として認定され、経営改善に取り組んでいる状況にあるが、その一方で、平成5年の制度創設以来9年余の運用を重ねてきている中で、関係者から種々の指摘がなされている。
一方、平成14年12月3日に「米政策改革大綱」が省議決定された。これは、米の生産調整システムだけでなく、立ち遅れている水田農業の構造改革を含め、米政策を総合的な政策として再構築する観点からとりまとめられたものである。この中においては、経営・構造政策に関し、集落段階での話合いを通じ、地域ごとに担い手を明確化するとともに、これと併せ、認定農業者制度の見直し・改善を行うこととされたところである。
これらに関連し、今後の認定農業者制度の運用に当たっては、「農業経営基盤強化促進法の施行について」(平成5年8月2日付け5構改B第847号農林水産事務次官依命通知)及び「農業経営基盤強化促進法の運用について」(平成5年8月2日付け5構改B第848号構造改善局長通知)のほか、下記事項に留意することとし、効率的かつ安定的な農業経営の確保・育成が図られるよう、特段の御配慮をお願いする。
なお、貴管下市町村に対しては、貴職からこの旨周知徹底方お願いする。

第1 農業経営基盤強化促進基本方針

農業経営基盤強化促進法(昭和55年法律第65号。以下「基盤強化法」という。)第5条第1項の農業経営基盤の強化の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)については、都道府県知事が、おおむね5年ごとに、その後の10年間につき定めることとされている。
都道府県知事は、今後の基本方針の見直しに当たっては、以下の点に留意されたい。

[1] 目標所得等

効率的かつ安定的な農業経営は、その主たる従事者が他産業並みの労働時間により他産業並みの生涯所得を得られるような農業経営であることにかんがみ、地域において育成すべき効率的かつ安定的な農業経営の目標とすべき年間所得及び年間労働時間(以下「目標所得等」という。)については、中山間地域、農村地域、都市地域といった自然的・経済的・社会的諸条件を勘案して、当該地域における他産業従事者の生涯所得等に即して設定するものとする。その場合、例えば、他産業従事者の生涯所得について「賃金構造基本統計調査報告」及び「就労条件総合調査報告」(いずれも厚生労働省調査)を基に賃金に退職金を加えて算出し、これを他産業従事者の従事年数で割り戻して目標とすべき年間所得を導く等、客観的な算定手法により設定するものとする。

[2] 効率的かつ安定的な農業経営の基本的指標

農業経営の規模等を始めとする効率的かつ安定的な農業経営の基本的指標については、[1]により設定された目標所得等を達成できる水準として設定されているかどうか改めて点検し、必要に応じて見直すものとする。

 

第2 農業経営基盤強化促進基本構想

基盤強化法第6条第1項の農業経営基盤の強化の促進に関する基本的な構想(以下「基本構想」という。)については、市町村が、効率的かつ安定的な農業経営の育成を図るため、都道府県知事が定める基本方針に掲げられた基本的指標等を参酌しつつ、それぞれの地域の実情を踏まえながら、基本方針の期間につき定めることができることとされている。
これは、それぞれの地域の実情を適切に把握し、これを踏まえた地域農業の担い手像を描くことができるのは、最も現場に近い行政主体である市町村であり、その主体的判断を尊重するとの考え方に基づくものである。
一方、農業協同組合の合併により、市町村の区域を越える農業協同組合が設立されてきている。この結果、同一の農業協同組合の組合員であっても、農業経営改善計画の認定の際に基準として適用される、効率的かつ安定的な農業経営の指標や目標所得等が相当程度異なる場合も生じている。
今後、認定農業者制度の運用に当たっては、こうした状況の変化を踏まえ、これに対する十分な配慮を行い、公平性の確保を図っていくことが適切である。
このため、都道府県知事は、基本方針の見直しと併せて行われる基本構想の見直しに際しては、市町村に対し、基本方針で定める目標所得等の算定方法等に係る情報提供を行うとともに、特に以下の点を指導されたい。

[1] 目標所得等

目標所得等は、市町村合併による行政区域の広域化の進展等にかんがみ、地域の実態に十分に即したものとなるよう、例えば、市町村の区域内においても平場地域、中山間地域等の地域条件に配慮して設定するものとする。

[2] 効率的かつ安定的な農業経営の指標

農業経営の規模等を始めとする効率的かつ安定的な農業経営の指標については、[1]により設定された目標所得等を達成できる水準として設定されているかどうか改めて点検し、必要に応じて見直すものとする。
また、都道府県知事は、今後、市町村から基盤強化法第6条第6項の規定による協議を受けたときは、農業協同組合の合併状況等も踏まえつつ、基本構想に定められる効率的かつ安定的な農業経営の指標や目標所得等が、類似した自然的・経済的・社会的諸条件の下にある市町村の間で大幅に乖離したものとならないよう十分配慮するものとする。

 

第3 農業経営改善計画の認定等

1 農業経営改善計画の認定申請

近年、男女共同参画社会の実現に向けた各種取組の推進により、農業経営や農村地域において女性の果たす役割はこれまで以上に重要なものとなってきているとともに、このような取組の地域への浸透に合わせ、単なる補助労働者としてではなく、共同経営者として意思決定に参画する女性も増加している。
また、認定農業者制度についても、農業者個人を対象とする施策というよりも、育成すべき農業経営を地域段階で明確にし、支援を重点化していく制度として地域において定着してきている。
このような状況に対応し、家族農業経営において実質的に共同経営者としての役割を担っている女性農業者や農業後継者についても認定農業者として位置づけ得ることとすれば、これらの者の共同経営者としての地位・責任が明確化され、経営者としての自覚や経営に対する意識の向上とそのことを通じた経営改善への取組の促進が期待される。 また、当該経営や地域における女性農業者の地位向上や農業経営の継承の円滑化に資することも期待され、その結果として、当該経営が効率的かつ安定的な農業経営へと発展する期待も高まると考えられるところである。
このため、
[1] 農業経営改善計画の認定を申請する者(以下「認定申請者」という。)が、すべて、同一の世帯に属する者であるか、又はかつて同一の世帯に属していた者(その者の配偶者を含む。)であること
[2] 家族経営協定等の取決めが締結されており、その中で、当該農業経営から生ずる収益が当該認定申請者のすべてに帰属すること及び当該農業経営に関する基本的事項について当該認定申請者のすべての合意により決定することが、明確化されていること
[3] 当該家族経営協定等の取決めが遵守されていること
のすべてが確認できる場合にあっては、複数の者による農業経営改善計画の認定の共同申請を認めることとする。
なお、認定農業者向けの各種の支援施策等については、それぞれの趣旨・目的に沿って、経営を単位として捉える、経営に従事する者個々を単位として捉える等、その講じられ方に変更はないことを念のため申し添える。

2 農業経営改善計画の認定

(1) 市町村は、

[1] 農業経営改善計画が基本構想に照らし適切なものであること
[2] 農業経営改善計画の達成される見込みが確実であること
[3] 農業経営改善計画が農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであること
というすべての認定基準を満たす場合に、農業経営改善計画の認定を行うものとされている。

(2) (1)の[1]の適用に当たっては、市町村は、農業経営改善計画に記載された改善事項の内容が基本構想に定められた農業経営の規模、生産方式、経営管理の方法等の指標の一部のみが同等の水準に達している場合であっても認定し得るものとする等、弾力的な運用を行うことが可能である旨の解釈を示してきたところである。
これは、例えば、新たに農業経営を開始する場合や基本構想で示されている経営規模を相当程度下回る者が規模拡大を図る場合であっても、その農業者の意欲・能力などからみて、経営発展に向けた取組を継続し、将来的には基本構想で示される指標に到達することが確実であると見込まれる場合もあることによるものである。
しかしながら、市町村によって、農業経営改善計画に記載された改善事項の内容が、基本構想に定める効率的かつ安定的な農業経営の指標等からみて一定の水準を満たすものであれば認定するという弾力的な運用を行っているところがある一方で、画一的に、改善事項の内容がすべての指標等からみて一定の水準を満たすものに限り認定を行うこととしているところもある等、制度運用のバラツキが生じている。
このようなバラツキは、意欲と能力のある農業者の経営改善への意欲を阻害する等、関係者の理解と納得を得た認定農業者制度の運用の観点からは望ましいものではない。
このため、市町村は、制度運用の透明性を高めることを通じ、基本構想への適合性審査の適切性及び公平性の確保を図ることが望ましい。具体的には、農業経営改善計画の認定に当たっては、農業協同組合、農業委員会、農業者、消費者等から構成される組織(以下「第三者組織」という。)から意見を聴取する等客観的な立場からの意見聴取手続を経ることが望ましい。このような意見聴取手続を採用することは、認定農業者の経営改善に向けた取組に対する地域の支援体制の確立に寄与することが期待されるとともに、認定農業者が地域に認められた担い手として支援されることにも繋がるものである。
なお、この第三者組織については、必ずしも新たな組織として発足させる必要はない。例えば、既に設置されている地域担い手育成総合支援協議会(担い手育成総合支援協議会設置要領(平成17年4月1日付け16経営第8837号農林水産省経営局長通知)第1の3の規定に基づき設置されるものをいう。以下「地域担い手協議会」という。)又は地域水田農業推進協議会(水田農業構造改革対策実施要綱(平成16年4月1日付け15生産第7999号農林水産事務次官依命通知)第4の2の規定に基づき設置されるものをいう。)の活用が考えられる。
まだ第三者組織を発足させていない市町村にあっては、こうした既存の組織を活用すること等により、第三者からの意見聴取に努められたい。

(3) (1)の[1]の適用に当たり、農業経営改善計画の経営面積の拡大に関する目標のみを認定の判断基準とするといった運用は、複合化や集約化等によって農業経営の改善を図ろうとする者も認定の対象とする認定農業制度の趣旨に照らし適当でない。 
このため、市町村は、農業経営改善計画の認定に当たって、経営面積の拡大に関する目標のみに着目するのではなく、加工・販売その他の関連・附帯事業に関する目標、生産方式の合理化に関する目標、経営管理の合理化に関する目標、農業従事の態様の改善に関する目標等を含めて総合的に判断し、農業経営改善計画の内容が基本構想に掲げられた目標所得等を達成できると見込まれるときは、これを認定するよう適切に対応されたい。

(4) また、(1)の[2]の適用に当たり、認定申請者の年齢や青色申告の実施の有無といった事項を判断基準の一つとしている市町村も見受けられるところである。 
このような基準の導入については、それぞれの地域の実情に応じ担い手の育成を図るという認定農業者制度の趣旨に照らしても、各市町村の判断に委ねられるべきものである。
しかしながら、このような基準を画一的に適用すると、適切さを欠く場合も生じることとなる。例えば、市町村が運用上設けている年齢上限を超えている者であっても、個々の農業経営改善計画における生産方式の合理化や農業労働力の確保等の取組によっては、当該計画の達成が確実と見込まれる場合もあり得ると考えられるところである。また、農業者の年齢構成が高齢者に偏っている地域においては、認定を受け得る者が非常に限定されることとなり、結果的に、地域農業の担い手確保を阻害する場合も生じると考えられる。
このため、市町村は、年齢上限等独自の判断基準の設定に当たっては、これを画一的に適用すると、地域の農業の担い手の確保・育成の観点からは適切さを欠く場合があり得ることを十分に考慮し、地域の実情を踏まえて制度を運用することが望ましい。
したがって、市町村において、独自の基準を、例えば年齢上限を超える年齢の認定申請者は自動的に認定しないといった画一的な要件として設定している場合には、そうした基準は廃止し、弾力的な運用を行うようされたい。
また、独自の判断基準を設定する市町村にあっては、認定審査の透明性を確保する観点から、当該判断基準を、その庁舎で閲覧に供し、又は市町村広報や市町村ホームページに掲載する等適切な方法により広く公開されたい。

(5) 近年、担い手の減少や耕作放棄地の拡大が進展する中で、専ら農作業の受託を行う者が、地域における土地利用型農業の実質的な担い手として機能している事例も多くなっている。 
このような専ら農作業の受託を行う者については、今後、地域における農業生産の担い手として一層重要な役割を担うことが見込まれる場合もあることから、基本方針や基本構想において、効率的かつ安定的な農業経営の一形態として位置付け、認定農業者制度の積極的な活用を推進することが適当である。 
また、水田・畑作経営所得安定対策においても、「一定規模以上の経営面積を有していること」が対象者の要件の一つとされ、その「一定規模以上」の面積の算定に当たっては、対象者が権原を有する農地基本台帳の現況地目「田」と「畑」の面積のみならず、基幹三作業(水稲にあっては耕起・代かき、田植え及び収穫・脱穀、麦及び大豆にあっては耕起・整地、播種及び収穫、その他の農産物にあってはこれらに準ずる農作業をいう。以下同じ。)のすべてを受託して自ら農作業を行い、収穫物についての販売名義を有し、販売収入を農作業及び販売の受託の対価として充当する場合の当該作業受託(以下「特定作業受託」という。)に係る面積も含むこととされているところである。 
以上のような状況にかんがみ、認定申請者が、基幹三作業のすべてを受託して自ら農作業を行い、収穫物についての販売名義を有し、販売収入を農作業及び販売の受託の対価として充当するときは、認定申請書において、当該特定作業受託に係る面積を「農業経営の規模」として位置付けるとともに、当該認定申請者が行う農作業受託が特定作業受託に該当することを証明する書類を添付することとしているので、市町村においては、認定に当たって適切に対応されたい。

(6) 認定農業者制度は、計画的にその農業経営の改善に取り組もうとする者が、その自発的意思に基づいて農業経営改善計画の認定を受けるものである。このため、地域において現に農業生産の相当部分を担っているものの、農業経営改善計画の認定は受けていない者も存在している。
一方、米政策改革においては、「農業構造の展望」(平成17年3月農林水産省省議決定)で示された望ましい農業構造の姿の実現に向けた構造改革を加速化する観点から、地域水田農業ビジョンの策定と併せ、改めて地域の水田農業の担い手を明確化し、当該担い手への農用地の利用集積の目標、その実現のための方策等について集落段階で合意形成するとともに、その実現に向けて地域の関係者が一体となった取組を推進している。
これまで、集落段階での話合い等を通じて明確化された当該地域の水田農業を担う者が、地域水田農業ビジョンの担い手リストに記載されているところであるが、こうした農業者であっても、まだ認定農業者となっていない者が相当数存在する。
このため、市町村は、当該農業者の現在の経営内容、基本構想で示された効率的かつ安定的な農業経営を目指す意欲と能力、集落段階での合意に基づく当該農業者への農用地の利用集積の目標とその実現のための方策の実効性等を勘案の上、当該農業者に対し、農業経営改善計画の策定指導等の支援を行い、認定農業者としてその育成を図っていくことが望ましい。

(7) その際、これまでも「農業経営基盤強化促進法の施行について」(平成5年8月2日付け5構改B第847号農林水産事務次官依命通知)、「農業経営基盤強化促進法の運用について」(平成5年8月2日付け5構改B第848号構造改善局長通知)等において示してきたとおり、基本構想で定められる効率的かつ安定的な農業経営の経営規模等の指標の水準を現時点で満たす農業経営についても、より一層の経営改善を図ろうとする場合には、基本構想に照らして適切であると判断し、認定農業者として認定することが可能である。むしろ、経営の持続的発展を図るためには、その時々の経営環境に対応して、絶えず経営内容の点検を行い、改善すべき点を明確に意識した上で、計画的な経営改善に努めるよう働きかけていくことが重要である。
このため、このような農業経営に対しても、継続的かつ計画的な経営改善を図ることの重要性等について的確な指導・助言等を行い、農業経営改善計画の策定及び申請を促すことが望ましい。

3 農業経営改善計画の認定の取消し

(1)市町村は、認定農業者の経営改善に向けた取組状況を把握した結果、当該認定農業者が農業経営改善計画に定めるところに従い、その農業経営を改善するためとるべき措置を講じていないと認めるときは、農業経営改善計画の認定を取り消すことができることとされている。
これは、農業経営の改善を計画的に進めることを前提に農業経営改善計画の認定を行い、各般の支援措置の対象としたにもかかわらず、経営改善に向けた努力が行われていないと認められる場合には、認定を取り消すことが適切であるとの趣旨によるものである。
しかしながら、市町村によっては、認定農業者個々の経営改善に向けた取組状況の把握が十分になされておらず、的確な指導・助言、是正措置等が行われていない等の問題が生じているところである。
このことは、認定農業者個々の農業経営改善計画における目標の達成を期すことができなくなるとともに、効率的かつ安定的な農業経営の育成にも支障を来すこととなる。また、今日、認定農業者に対し各種施策を集中化・重点化している中、計画的に経営改善に向けた努力を行っていない者に対しても各種支援施策が集中化・重点化して講じられる結果を招くこととなるため、適当でない。
このため、市町村は、認定農業者の経営改善に向けた取組を促進する観点から、以下の点に留意の上、認定農業者の経営改善の状況を把握することが必要である。
[1] 市町村は、その認定に係るすべての農業経営改善計画について、原則として毎年、少なくとも当該計画の有効期間の中間年(3年目)には必ず、当該計画の「目標を達成するためとるべき措置」に記載された事項が着実に実施されているか否かにつき、当該計画に係る認定農業者からの書類提出、聞き取りその他の適切な方法により把握する。
[2] 市町村は、[1]の把握の結果、その取組努力が不十分であると判断される場合には、地域担い手協議会等と連携しつつ、当該認定農業者に対して、的確な指導・助言その他の支援を行う。
[3] 市町村は、[2]の支援の実施後、例えば1年程度経過しても、なお経営改善に向けた取組状況に改善が見られない場合には、適切に認定の取消しを行う。

(2) なお、認定の取消しに該当する事由としては、例えば、以下のような事例を想定しているところである。
[1] 農業経営改善計画の認定後、相当期間、農産物の販売実績がない場合
[2] 経営改善のためとるべき措置として経営面積の拡大を農業経営改善計画に記載しており、代替地の取得等の見込みがないにもかかわらず、経営面積を縮小している場合
[3] 経営改善のためとるべき措置として土地利用型から施設型等営農類型の転換を農業経営改善計画に記載していながら、農業経営改善計画の認定後相当期間が経過したにもかかわらず、営農類型の転換に向けた具体的な取組がなされていない場合

(3) 認定の取消しに当たっては、十分に事実確認を行うとともに、透明性を確保する観点から、第三者組織の意見も聴取した上で措置することが望ましい。なお、認定の取消しは、行政手続法(平成5年法律第88号)の不利益処分に該当し、同法第3章の規定の適用を受けることに留意する必要がある。

(4) また、市町村は、農業経営改善計画を認定する際においても、認定農業者の経営改善に向けた取組を促進する観点から、当該計画に記載された農業経営を改善するためとるべき措置を講じていないと認められる場合には、認定を取り消すことがあり得る旨を周知することが望ましい。

4 農業経営改善計画の再認定

農業経営改善計画の有効期間の終期を迎える認定農業者が、継続的に経営の発展を図るためには、その時の経営環境に適切に対応しつつ、経営内容を点検し、改善すべき点を明確に意識した上で、新たな経営改善の目標を設定し、計画的に経営改善を図っていくことが重要である。
このため、市町村は、地域担い手協議会等と連携し、認定期間を満了する農業者に対して、認定期間満了日までの間に時間的余裕をもって、認定農業者制度の目的・意義等を再度周知した上で、その経営意向を十分確認しつつ、期間を満了する農業経営改善計画(以下「旧計画」という。)の実践結果の点検を行い、新たな農業経営改善計画(以下「新計画」という。)の認定を受けるよう促すことが望ましい。
その際、市町村は、地域担い手協議会等と連携しつつ、旧計画に記載された経営規模、所得及び労働時間に関する目標の達成状況及び旧計画に記載された「目標を達成するためとるべき措置」の実施状況等について、的確に把握するとともに、その要因を分析し、新計画の実現可能性を総合的に検討した上で、新計画の認定の可否を判断されたい。

5 複数の市町村において農業経営改善計画の認定を受けようとする者に対する対応

近年、経営規模の拡大により、複数の市町村にまたがって広域的に農業経営を営む者が散見されるところであり、こうした者が、複数の市町村において農業経営改善計画の認定を受けようとする場合にも、その認定事務が円滑に行われるようにする必要がある。
このため、認定申請を受けた市町村は、当該市町村のみでは認定の可否を判断し難い場合には、関係市町村又は関係市町村を区域とする都道府県に対し、当該農業経営改善計画の認定の可否を判断するために必要な情報の提供を求めること等により適切に対応されたい。

 

第4 認定農業者制度の適切な運用等に向けた検証等

1 認定農業者制度の適切な運用等に向けた検証

認定農業者制度の運用改善及び支援措置の一層の充実を図る観点から、国、都道府県及び市町村は、認定農業者に関する基本的な情報を共有し、恒常的に、制度運用についての検証を行うことが適切である。
このため、農林水産省としては、「認定農業者、特定農業法人及び特定農業団体並びに農用地利用改善団体の実態に関する調査について」(平成17年2月21日付け16経営第7320号農林水産省経営局長通知)に基づき、都道府県及び市町村の協力の下、全国の認定状況や認定農業者制度の運用状況を把握し、情報を共有化するとともに、経営政策の企画・立案のための基礎資料として活用しているところである。
都道府県及び市町村においても、把握した認定農業者の現状等の情報について国との共有化を図るとともに、恒常的に、制度運用についての検証を行いつつ、適切な制度運用に努めることが望ましい。

2 認定農業者制度の更なる推進

認定農業者制度については、これまでも、担い手育成に関し基軸となる制度としてその推進を図るとともに、これに関連する施策の集中化・重点化を図ってきたところである。また、市町村においても、補助事業等を活用しつつ、認定農業者の確保・育成に努めてきたところである。
この結果、認定農業者制度は、育成すべき農業経営を地域段階で明確にし、支援を重点化していく制度として地域において一定の定着が図られているものの、認定農業者制度の本来の趣旨やこれに対する支援策が毎年充実していることについて、必ずしも農業者まで十分に浸透していない実態も一部で見受けられるところである。特に支援措置の内容について、農業者まで十分に浸透していないことは、認定農業者となって経営改善に取り組むことに対する農業者の意欲低下を招き、ひいては、効率的かつ安定的な農業経営の育成に支障を来すこととなる。
このため、市町村は、認定農業者制度を活用して地域の農業の担い手の確保・育成を図る観点から、担い手育成に係る農政の方向、認定農業者制度の仕組み、認定農業者に対して講じられている各種施策等について説明会を実施する等認定農業者制度の更なる推進に向けた制度の普及及び農業者の啓発に努めることが望ましい。

3 基本構想の未策定市町村における策定の推進

認定農業者制度が発足して以来、基本構想を策定している市町村数は順調に増加しているが、未だに基本構想が策定されていない市町村も見られるところである。
これらの基本構想が策定されていない市町村の区域においては、農業経営の改善に向けて計画的に努力する意欲を有する農業者であっても認定農業者となることができないという状況が生ずることとなる。
このことは、認定農業者制度が、今後担い手を更に明確化し、各般の施策を集中化・重点化していく際の基軸となる制度であることからすれば望ましいものではない。全国、どの市町村で農業経営を行う場合であっても、意欲があれば、農業経営改善計画の認定を受けることが可能な環境を整備することが適切であると考えられる。
このため、基本構想を策定していない市町村にあっては、当該市町村における農業生産や農用地利用の実態、農業者の経営改善に関する意向や取組状況等を十分に勘案した上で、基本構想の策定について、改めて早急に検討することが強く望まれる。
また、基本構想を策定していない市町村がその区域に存する都道府県知事は、当該市町村と自然的・経済的・社会的諸条件が類似している市町村において策定された基本構想に関する情報を提供する等、基本構想を策定していない市町村に対し、基本構想の策定に係る技術的助言を行うことが望ましい。

 

第5 認定農業者等の支援体制の整備について

1 地域担い手協議会の設置の促進

地域担い手協議会は、関係機関・団体が一体となって総合的な指導力を発揮することにより、認定農業者制度や集落営農組織の育成の考え方を地域農業の現場に普及させるとともに、認定農業者の経営改善に関する指導・助言、農業経営改善計画のフォローアップ、認定農業者への発展を志向する者に対する制度の普及、農業経営改善計画の作成支援、集落営農の組織化・法人化の推進等地域の実情に即した担い手の育成・確保に向けた取組を効率的・効果的に行うことが期待されている。 
このため、地域担い手協議会が未設置の地域にあっては、認定農業者等からの経営相談等に適切に対応できるよう、その体制整備を早急に進めるものとする。

2 農業再生委員会の設置

農業再生委員会は、経営が困難となった農業者の有する農地や施設等の優良な経営資源が有効に活用されるよう、都道府県担い手育成総合支援協議会(担い手育成総合支援協議会設置要領(平成17年4月1日付け16経営第8837号農林水産省経営局長通知)第1の2の規定に基づき設置されるものをいう。以下「都道府県担い手協議会」という。)の下に、都道府県、農業団体、金融機関、弁護士・公認会計士等を構成員として設置され、当該農業者の再生又はその経営資源の整理承継に向けた取組に対する支援を行うものである。
このため、農業再生委員会が未設置の都道府県担い手協議会にあっては、経営が困難となった農業者からの相談等に適切に対応できるよう、関係機関・団体と協議の上、その体制整備を早急に進めるものとする。

3 普及組織との連携強化

地域担い手協議会の効率的・効果的な活動のためには、経営改善を進めるために必要な技術や情報を蓄積する普及組織との連携が不可欠である。
また、普及組織においては、認定農業者や集落営農組織を普及活動の重点対象の一つとして取組を進めているところである。
このため、担い手の育成・確保を行うための総合的な支援機関である地域担い手協議会は、農業者に対する個別具体的な技術・経営改善指導を行う普及組織と連携して、認定農業者等の担い手に対して、あらゆる機会を通じて一体的な支援活動を行うよう努めるものとする。

4 地域関係者等に対する認定農業者に関する情報の提供

いくつかの市町村においては、認定農業者制度の運営の透明性を確保するとともに、地域において認定農業者が地域農業の担い手や農地の利用集積の対象者として認知される上で効果的であることから、市町村広報や市町村ホームページに認定農業者の氏名等を掲載すること等により、地域関係者に対する認定農業者の認知度の向上の取組が行われているところである。
こうした取組は、認定農業者自身にとっても、担い手としての自覚や経営発展の意欲の増進につながり、経営改善努力の促進が期待される。
また、認定農業者等の担い手に対して各種の支援策を集中的・重点的に実施する中、認定農業者がこうした支援策を十分に受けるためには、各種支援策を実施する関係機関においても認定農業者の情報を有しておくことが適当である。
このため、市町村は、関係する認定農業者の同意を得た上で、認定農業者に関する情報を地域関係者や関係機関等へ提供するよう努めるとともに、都道府県知事は、管内市町村の取組状況の把握を行い、特徴的な取組事例を管内市町村に提供する等により、市町村による地域関係者に対する認定農業者の認知度の向上のための活動の促進に努められたい。

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader