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農村プロデューサー養成講座 ~令和4年度入門コース第3回レポート~

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関係づくりは心づくり
NowHow(一期一会)で日本の伝統的価値を見つめ直す

 

令和4年度農村プロデューサー養成講座入門コース
- 第3回≪関係人口分野≫レポート -

 
フルフォード先生
 日   時 
2022年6月6日(月曜)19:00~20:30
 講 演 者 
アダム・フルフォード 氏
プロフィール
有限会社フルフォードエンタープライズCEO
イギリス生まれ。1981年に来日。NHK番組「英語でしゃべらナイト」「英語であそぼ」などで言語コンサルタントを務める。農林水産省主催の「美の里づくりコンクール」審査員として日本の農村の魅力とともに、地域が抱える課題に理解を深める。山形県飯豊町中津川地区や福島県郡山市逢瀬地区のコンサルタントを務め、関係人口戦略づくりなどで地方創生をサポートする取組を行う。
 
本日は、関係づくりは心づくりというテーマでお話します。
 

中津川むらづくり協議会との出会い、NowHowへの取組

 
挿絵01_384px私は、イギリスの地方で生まれ、24歳の頃に日本に渡りました。
日本ではNHKの仕事に就き、そのおかげで40年以上前から日本の文化を多面的に勉強してきました。日本の地方文化を世界に発信するにあたり、数年前からCATCH JAPANという番組で動画制作に携わってきました。日本の地域について考えるきっかけとなったもののひとつに、年齢や障がいの有無に関わらない参加型社会づくりをテーマとするユニバーサルキャンプin八丈島への参加が挙げられます。外国人に対してどのような観光の仕組みを作れるかを考えるきっかけにもなりました。
そのような中で、2010年に美の里づくりコンクールの審査委員を引き受けたことが大きな節目になりました。2014年に山形県飯豊町中津川地区が農林水産大臣賞を受賞した後、中津川むらづくり協議会と連携し、外国人観光客を増やすお手伝いをすることになります。
 
挿絵02_480px当時、美の里づくりコンクールで現地調査は何度も行いましたが、私は山間部における日常生活までは把握していませんでした。そこで、当時8件ほどあった農家民宿で女将さんからの話を聞いて、少しずつ勉強していきました。むらづくり協議会の役員からガイダンスを受け、中津川地区がどのような道を歩んでいけば良いのか、一緒に考えました。そこでは地域の課題を英語でまとめていただきました。
● No people
● No leaders
● No capital
これは全国共通のテーマではないでしょうか。
No peopleは、人手不足です。No leadersは、高齢化が進み、リーダーはますます忙しくなり、リーダーシップを発揮できず、新しいことに取り組めないことです。No capitalは、事業を始める資金が足りないということです。
どれも解決には時間がかかる問題だと思いましたが、No peopleに対してできることはないかと考えました。
 
自分のネットワークのメンバーを集め、地域の雪かきなどをテーマにしたイベントを企画しました。私のネットワークには色々な仕事、年齢、人種、国籍の方がいたので、彼らの経験や専門性を借りることにしたのです。
それを貢献型観光としてかたちにすることになりました。NowHowと呼んでいます。今をどのように活かすか、つまりは一期一会を表します。
活動を通じて色々な人との出会いがありましたが、中でも古川柳蔵先生との出会いは大きいです。90歳前後の高齢者からのヒアリングを繰り返し、「44の失われつつある暮らしの価値」をまとめた方です。厳しい生活の中で、持続可能なコミュニティを作るのに何が必要かを示しており、その価値は、外国人にとって非常に新鮮なものだと感じました。
まとめるならば相手を想う精神です。The Way of Youという言い回しを用いていますが、日本版SDGsだと思っています。
 

NowHowと仮村民の展開

 
NowHowでは、農家民宿を活用した企業研修を開催しました。
1日目は地域の方から、その地域について学びます。2日目は外国人を相手に英語で地域を案内します。案内することで、中津川に対する心が変わり、地域への愛着が生まれます。3日目は貢献活動を行います。夏祭りの後片付けに参加することで、人手不足の地域には喜ばれ、参加者である外国人観光客と日本人の研修員は中津川地区に貢献できたことを感じられます。
 
挿絵03_480px学生ボランティアを対象に雪かきを行う異文化体験にも取り組みました。
学生が参加するためには現地までの交通費が課題になります。最初は県からの補助金が全額出ていましたが、持続性のためには自立して交通費を賄わなければなりません。
中津川地区には、自然への感謝を象徴するモニュメントとして草木塔があります。NowHowの活動の一環として焼き物体験を実施した際、ドイツ人の参加者が小さな草木塔の焼き物を制作しました。そこで、これをお土産として活用し、その収入を交通費に充てようと考えました。
 
この頃から、仮村民という言い回しを使い始めるようになりました。単に外から訪れる人ではなく、地域の方と一緒に新しい一歩を踏み出す仲間という意味です。仮村民にはどのようなポテンシャルがあるか模索し始めます。
2020年、日本語が流暢なインド人に中津川で5か月過ごしてもらいました。それまでのNowHowは数日だけの活動でしたので、中津川地区の日常的なリズムまで把握することはできませんでした。
地域への貢献が大切と考え、農家民宿のサポート、年配者の集まりへの参加を通して信頼関係を築き、フリーズドライ食品の試食会やオンライン料理教室を開催しました。
 

地域を自立へ導く集落OS、点と点を結ぶ集落Cloud

 
これらの活動を通して、集落にはどのようなシステムが必要となるのかを整理しました。
挿絵04_480px中津川地区のようなフィールドにワーキングホリデーなどを活用した仮村民を招き、集落活動や商品開発などで地域に貢献してもらい、企業研修なども含めた貢献型観光では案内役を務めます。仮村民は、中津川地区での「未来を考える部会」のような組織にも関わり、一緒に地域を盛り上げます。地域を自立へと導く集落OSという仕組みです。
OSはひとつの点です。点と点を結ぶ集落Cloudが必要だと考えます。伝統的な考えを大切にする人たちが世界規模のネットワークを構築し、「44の失われつつある暮らしの価値」の概念を取り入れ、世界中の底力を引き出すことができるようになることを望んでいます。
 

逢瀬地区での活動へ

 
郡山市逢瀬地区では、外国人目線を活用した「地域課題に向き合うふるさとづくり」事業に関わっています。
 
テーマのひとつは、郡山市で急増しているベトナム人の居場所づくりへの取組です。通常、技能実習生は、中小企業における3~4年間の技能実習活動の後にベトナムへ戻るため、日本との縁はそこで終わってしまいます。
彼らに郡山をホームだと感じてもらうことが、将来郡山での実習を希望するベトナム人の増加につながり、地元の中小企業にもメリットをもたらします。
逢瀬町にはどのようなポテンシャルがあるのか。3人のベトナム人に調査員になってもらうことから始めました。また、調査員としてだけでなく、料理会を開いたり、ベトナムの踊りを披露してもらったりして、子どもも含めた地域の人たちと交流を深めてもらいました。
私が幼少期に感じていたように、子供たちにとっては色々な人と接することがワクワクに繋がると感じています。
 
調査員→案内士→仮村民とステップアップすることが、理想的なキャリアパスだと考えます。今年の取組では、日本の大学でビジネスを学ぶベトナム人に地域を案内できるようになってもらいたいと考えています。
自分にとって大切な逢瀬町を同郷のベトナム人に案内することで、心が変わり愛着が生まれます。
 
子どもたちが逢瀬町を紹介するプレゼン大会や技能実習生感謝祭、MBA Summer Schoolなど、色々なイベントも開催していきたいと考えています。
 

心の金継ぎは日本人が本来持っている力

 
日本の伝統的な文化の中で生活することで、自分の心が変わってきたことを感じています。
これは日本のソフトパワーによる心の進化です。
日本は先祖の存在を大切にする文化を持っています。私も先祖を身近に感じ、良い先祖になりたいと思うようになりました。
挿絵05_384px今は大変な時代になり、現代人は心にダメージを受けています。現代人を救うのは、地域社会の底力です。地方で年配者と多くの時間を過ごすことで、心を癒やすことができると思います。
心の金継ぎと例えていますが、これは日本人が本来持っている力なのだと思っています。
 
フルフォードエンタープライズでは、ふるさと活性化パッケージを開発しており、近いうちに公表する予定にしています。
興味がある方はご連絡いただければと思います。
contact@fulfordent.com
 

お問合せ先

農村振興局農村政策部農村計画課農村政策推進室

代表:03-3502-8111(内線5535)
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