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農林水産省

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MAFF TOPICS(3)

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MAFF PERSON 生産局知的財産課 種苗審査室 審査官

新品種育成者の権利を保護し農業の振興を図る


花や農作物の新品種の育成には膨大な時間と労力、お金がかかります。育成者は品種登録を行うことで、育成者権が与えられ種苗法のもと権利が保護されます。申請された品種が登録要件を満たすか、を審査するのが種苗審査室 審査官です。
栽培状況を確認するときに審査用の花も採取
品種登録の出願数は、花などの観賞用植物が全体の77%を占める。
ほ場に行き花が均一に生育しているかなど、栽培状況を確認し菊の開花時の草丈を計る。審査用の花もこのときに採取。
形状を代表している葉を選び、托葉、葉柄、葉全体の長さ、最大幅などをチェック
形状を代表している葉を選び、托葉、葉柄、葉全体の長さ、最大幅などをチェック。マニュアルに収められている図や葉の写真を参考にしながら調査を進める

花びらを摘み取り模様や特性を調べる
花びらを摘み取り模様や特性を調べる。菊の種類によっては、花びらの枚数を数える、という項目が含まれている

英国の王立園芸協会のカラーチャートを使用
日陰または北側の窓から差し込む明かりで色を確かめる。海外との情報交換もするので、世界的に普及している英国の王立園芸協会のカラーチャートを使用

葉、花などパーツの調査が終わるごとに写真を撮る
葉、花などパーツの調査が終わるごとに写真を撮る。登録のときに一緒に書類に添付する。また今後の調査のための、データベースとしても活用される

調査対象の菊
調査対象の菊。出願品種のほかに、あらかじめ選定した比較対照の品種も調査する
新品種が世に出るお手伝い

品種登録には多数の利点があります。育成者はその種苗を生産、販売することで育種にかかった費用の回収が行えます。また新たな育種のための資金調達にもなり、農業の生産振興にもつながります。

一方生産者は市場評価の高い新品種の作物を作り、出荷することで収益を上げることが望めます。
消費者にとっては新たな色や形の花、さらに味が良くなった野菜や果物を楽しむことができます。

このようにみんなにメリットがある新品種が認識され、世の中に出回るサポートを審査官たちは行っています。
品種登録が出願されると、審査官は育成者のもとに現地調査に出向きます。いったいどんな調査をするのか、その現場にお邪魔してきました。

出願者は広島県にある菊の種苗会社。同行させてもらった沼口憲治審査官は、菊と蘭を担当する経験豊富なベテランです。

短時間で正確に特徴を把握

到着後すぐに種苗会社の担当者と打ち合わせをして、栽培状況を確認するためにほ場へと出発。ほ場での調査事項を手早く確認し、再び会社へと戻りました。

品種登録の審査基準は、植物ごとに項目も数も異なります。菊はなかでも項目が多い植物のひとつです。調査は葉からスタート、菊は葉にも特徴が表れるので、長さから切り込みの深さまで念入りです。沼口審査官の表情も真剣。

花は直径、花柄、花弁の長さや幅も計測し、形状、模様、特性を見てからカラーチャートを使って色のチェックをします。調査はかなり繊細かつ厳密な作業です。

「菊の展覧会で調査することもあるんですよ。会場の片隅でやっていると菊を見に来たお客さんに何やっているのとか、大輪の菊の花びらをむしって、ばらばらにしちゃうもんだから、もったいないことを、とか言われながら黙々と作業をしたこともありました」

限られた時間で正確に判断し記録する作業は、経験が必要ですと沼口審査官。
「現地調査が終了した品種は、既存の品種と区別できるか、品種として均一か、品種名称は適切かなどの審査を行い、それら要件を満たすものが登録されます。審査期間中は仮保護といって一定の保護を受けられます」とこちらの問いに答えながらも、鮮やかな手際で調査は進んで行きました。

聞いちゃいました!ココだけの話
調査は予期せぬ出来事も多い!?

新品種の登録出願は作物により出願者の傾向があります。米・麦は県や国の研究機関、花は種苗会社で次に個人、果樹は個人が圧倒的に多い。

個人の農家や作物によっては、ローカル線や路線バスを何本か乗り継いで、へとへとになりながら現地に着いたとか、公共交通機関がない人里離れた山奥が調査現場だったりすることもあります。

陸だけでなくて救命胴衣を着て養殖場まで船に乗って行き、真冬の海上の吹きさらしで震えながら海藻を調査した審査官もいました。

また植物なので天候には左右されますね。調査に行く時期は、その植物が一番特性を発揮しているときになります。出願者と連絡を密にして花の開花状況を聞き、調査に入る日程をぎりぎりまで調整します。

それでも自然のことなので、暑い日が続いて予想した開花時期より早く咲きそうだ、ということもありえるわけです。急に咲きそうだという連絡が入って、出願者の元に急遽向かうなんてこともあります。

初めての出願者の方で、出荷する状態のつぼみの花が調査の状態と勘違いなさって、行ってみたら花が一輪も咲いていないなんて、笑ってもいられないこともありましたね。
(種苗審査室 沼口憲治審査官談)

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