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農林水産省

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特集1 花のある暮らし (2)

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世界に誇る日本の花 新しい花はこうやって作られる


日本で商業的に生産・販売されている花き・花木は2万品種。毎年3,000から5,000品種もの新種が日本の花の市場に登場し、その数は世界一を誇ります。こうした新種の育種や生産を、支えている人々の仕事をのぞいてみましょう。
家族で紡ぐバラの命
國枝バラ園
Rose Farm KEIJI
(ローズファームケイジ)

國枝バラ園の3代目・國枝政嗣さん(左)とローズファームケイジ・國枝啓司さん(中)、健一さん(右)
國枝バラ園の3代目・國枝政嗣さん(左)とローズファームケイジ・國枝啓司さん(中)、健一さん(右)

國枝バラ園のハウス内
國枝バラ園のハウス内

ピュールパルファン+
國枝バラ園のオランダ種「ピュールパルファン+」

ローズファームケイジオリジナルのバラ「ジェルソミーナ」
ローズファームケイジオリジナルのバラ「ジェルソミーナ」

ローズファームケイジオリジナルのバラ「小町」
ローズファームケイジオリジナルのバラ「小町」

組織培養:植物には、一つひとつの細胞にまで分解されても、元のように再生できる力が備わっています。組織培養とはその力を活用し、根、茎、葉など一部を無菌培養して、増やすことをいいます。

自然分球:最初に植えた球根の周りに子球が作られて、それが元の球根のように大きくなることで、簡単に手で分けることができたり、また掘り出したときに勝手にバラバラと分かれるものもあります。

鱗片繁殖:鱗片が重なり合ってひとつの球根を形成しているタイプの品種があります。鱗片繁殖とは、この鱗片をひとつずつはがして植えて増やす方法です。

ノッチング法、スクーピング法:分球しにくいタイプの球根を増やす方法で、植える前に球根の基部に切り込みを入れる方法がノッチング法、基部をえぐり取る方法がスクーピング法です。そうすることで子球が育ちやすくなりますが、切り口は腐りやすいので、細心の注意が必要な方法です。

新たな花を咲かせるために

私たちが普段園芸店から苗で買い求めるバラやアジサイ、またチューリップやユリなどの球根植物は、どのように品種改良をして、どのように増やしていくのだろうと、疑問に思ったことはありませんか。

新しい品種を作る場合は、どんな種類の花でも、つくり出したい花をイメージし、雄しべと雌しべを人工的に受粉させて、種を採取します。その種を蒔いて発芽させるわけですが、蒔き方や発芽させるときの用土、水やりや施肥などの管理は品種によっても、育種家の考え方によっても異なります。

狙いどおりの特性を持った花が咲けば、それを繁殖させるわけですが、増やす場合には、種子でしか増やせない植物を除いて、挿し木や接ぎ木、取り木、組織培養などの方法で増やします。

球根の場合も自然分球のほか、鱗片繁殖やノッチング法やスクーピング法と呼ばれる方法で新種を増やすことができます。

オリジナルの「和ばら」にこだわる

切り花として人気が高いバラの育種、生産の現場を訪ねました。足を運んだのは、滋賀県守山市にある「ローズファームケイジ」と、「國枝バラ園」。「ローズファームケイジ」の代表で、育種家の國枝啓司さん(52)は、昭和51年、父である國枝栄一さんが経営する「國枝バラ園」に就農し、以降同園の栽培技術担当者として生産に従事してきました。そのかたわらヨーロッパ研修で学んだ育種技術を活かし、育種家としても活動をしていました。

平成15年、國枝バラ園から独立し、ローズファームケイジを設立。現在は息子の健一さんとともに、オリジナル品種の育種に力を注いでいます。

啓司さんは、芯の強さと繊細さを持ち合わせ、たおやかなシルエットの「和心」を持つバラを求め、品種改良をしているといいます。

「日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2008」でジャパンデザイン特別賞を受けた「mia愛子」はまさにそうした思いを具現化した品種。世界のスプレータイプのバラの育種をリードする我が国においても、オリジナル性に富んだ優良種として高く評価されました。

東京でサラリーマンをしていた息子の健一さん(28)がバラ作りを手伝うようになったのは3年前。

「まず種を作ることが難しい。雄しべと雌しべでは熟す時期が違いますから、それを見計らって受粉させます。

発芽率が低い種もあるし、発芽後、冷蔵庫で休眠処理をさせる期間の見極めも重要です」

新種の作出は交配者の価値観が反映されます。新種として出願してから2年間栽培を続け、試験販売をします。新しい品種として認められるには最短で2年。その間も常に新たな挑戦をし続けるわけです。「父はいいと思われないような品種からも、斬新で美しいバラを作り出しますよ」と健一さんが語れば、啓司さんは「ただ好きでやっているだけ。受粉も難しいし、発芽させるのも難しい。バラは環境の条件が良いと種を残しません。何とか子孫を残さなくては、という環境だと種を残す。自然の摂理です。作っても商品として売れるものの方が少ないけれど、バラから教えられることは多い」といいます。いずれ扱うバラすべてをオリジナルの品種にしたいそうです。

オランダのバラの生産に注力

一方、啓司さんの父が興した國枝バラ園では、啓司さんの兄である國枝武夫さんが跡を継ぎ、切り花の生産、苗の販売に加え、平成12年からオランダのバラ種苗会社LEX+社の日本代理店として、50種以上のオランダのバラを日本で販売しています。こちらはいわばバラの種苗販売者であり、生産者です。オランダからバラは挿し木の枝で海を渡ってきます。植物検疫の関係から、土、または土が付着している植物は輸入できません。そのためバラの苗も輸入できないのです。

今年から加わった息子の政嗣さん(25)は大学卒業後、オランダで1年バラの生産を学び、ドイツで苗づくりを学んできました。

「現地で品種改良されたバラをいかに日本で、その特性を顕著に美しく生産できるかが、難しいところです。毎年オランダに行って、国際市場のニーズを把握するようにしているし、日本の市場に見合った品種の選抜も積極的に行っています。

もちろん、日本国内でも育種家さんの創出した特徴を打ち出したバラを、安定的に供給できるかは、自分たち生産者の腕にかかっています。生産者もただ市場に出荷するだけではダメですね。これからは直接売る花屋さんの声に耳を傾け、消費者の動向も気にしなければと思っています」と話してくれました。

健一さんと政嗣さんとでは作業内容こそ違いますが、バラの育種、生産に携わる若い世代として、日本のバラ業界を牽引していく意気込みが感じられました。