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農林水産省

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affインタビュー 第29回

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坂本廣子 さん

阪神・淡路大震災を経験した料理研究家の坂本廣子さんに、被災時の食の環境や非常時の食生活に対して、日頃、どのような備え、心構えが必要か聞きました。

昔ながらの日本の食生活こそが、実は防災対策の要なのです。
坂本廣子さん
坂本廣子
さかもと・ひろこ/サカモトキッチンスタジオ主宰。相愛大学客員教授、神戸女子短期大学非常勤講師。30年以上にわたる食育実践は、五感で学ぶ体感食育。キッズキッチン協会を設立、実践的食育を提案している。NHK「ひとりでできるもん!」を監修、幼児期からの食育の基礎をつくる。子ども博物館におけるハンズオン活動、防災、介護、米粉の利用普及等の講演活動のほか、公職委員も多数つとめる。「台所育児」「国産米粉でクッキング」など著書多数。

食育子ども体験教室
キッズキッチン協会インストラクターと食育子ども体験教室を開いています


坂本廣子さんの著書
坂本廣子さんの著書
(左から)「地震の時の料理ワザ【電気が復旧するまでの1週間】」柴田書店 998円
「坂本廣子のジュニアクッキング1 サバイバルクッキング」偕成社 1,260円
「もっとひろがる国産米粉クッキング——小麦・卵・牛乳なしでここまでできる」農山漁村文化協会 1,470円
(食文化・料理研究家である長女・佳奈さんとの共著)
(すべて税込価格)
死を招く恐ろしい脱水状態を体験

30年以上前から神戸を拠点に、全国各地で子どもや高齢者のための料理教室を主催してきた坂本廣子さん。自宅は、阪神・淡路大震災で最も被害の大きかった東灘区にあった。

「同じ神戸でも六甲山の岩盤上の地域は被害がなかったのです。JRを挟んで南側はガタガタ。我が家はまさに激震地にありました」

幸い倒壊は免れたが、ライフラインは寸断され、その後、長く続く被災生活が始まる。

「まず食の確保を考えましたが、とりあえず冷蔵庫の中の日もちしないものから食べなきゃと、意外にも、数日は豪勢な食卓でしたよ。家族でよくアウトドアに出かけていたので、電気もガスもない、水も制約があるという生活は体験済み。ふだんに野外生活は体験してよかった!」

電気がこない間は、限られた食材をカセットコンロなどで調理しながら食べていたが、食べ物より何より、最も重要なことは、水の確保だという。

「脱水症状は本当に怖いですよ。被災時は後片付けやさまざまな対応に追われ、喉の渇きも忘れて奔走しています。以前、引っ越しで忙しいとき、夜中に胸がドキドキして目が覚めたら、脈拍が250にもなっている。『いつもとちがう、大変だ』と病院に駆け込んだら、『脱水症状だ』といわれました。こうなったら、慌てて水を飲んでももうダメ。体が受け付けない、吸収してくれないんですね。点滴しか手がない」

もし医療機関が機能せず、点滴も受けられなかったら、死ぬだけだった、と坂本さんはいう。
「病院にも医者にもかかれないとき、家族と自分のからだをどう守るか。具体的に日頃から考えておくことが対処のポイントです」

豆類などの乾物から必須アミノ酸を摂取する

そこで大切なのが、日常的に水の確保を念頭に置いておくことと、乾物などを使った、昔ながらの知恵を取り入れた食生活なのである。

「災害時は大きなストレスがかかります。日頃からミネラル補給を考慮した食品を食卓に用意しておくこと。特に子どものいる家庭は、それを重視してほしい。脳の発達に必須アミノ酸は欠かせません。常に供給していないと、脳は発達しないどころか破壊されてしまうのです。日常が非日常になったとき、子どもの脳は危険にさらされます」

「必須アミノ酸を含んだ豆類を防災食として常に用意してください。手に入れられる食料が少量であっても、その重量の10~20%を豆に置き換えれば、飢餓状態の中でも子どもの脳は発達するといわれていますから、避難袋の中にぜひ煎り豆や煮豆を入れておいて欲しいと思います」

坂本さんは「復興はごはん指数で計ることが大切だ」という。普通に買い物に行けて、ごはんが作れること。何の気なしにそれがごく普通にできるようになって初めて「復興」なのだという。

そして、その復興までの間、「空気疎開」ができる場所の確保を行政にお願いしたいと話す。一時身を寄せられる空気のいい場所、つまり農山漁村である。しかし、見ず知らずの場所に急に疎開することは難しい。

「だからこそ普段から、町と農山漁村との交流や提携を進めておく必要があるのです。都市部の災害時に農山漁村が果たす役割は大きいですよ。農山漁村の役割を意識し、交流の機会を増やしていくことが重要です」

今後は農山漁村との交流にも目を向けていきたいという。