MAFF TOPICS(4)
affラボ まぐろ研究のいま
将来もまぐろが食卓にのぼるために
affラボでは、暮らしに役立つ農林水産分野の最新研究成果を紹介します。
現在世界的にまぐろ類の消費が増えており、クロマグロや養殖用稚魚の 乱獲による資源の枯渇が問題になっています。将来もおいしいまぐろを 食べられるようにと、さまざまな研究が進んでいます。(独)水産総合研究センター (以下、水研センター)の研究室から一部をご紹介します。 |
![]() ![]() この調査により、稚魚は黒潮近くの表面温度26度から27度の海域に多く生息することがわかった。クロマグロを含むマグロ類の稚魚、体長は13~35ミリ
![]() 試験販売で売り場に掲げられたポスター。このまぐろのトレーサビリティシステムは、市場関係者や仲買人たちも注目している
![]() いままでの数百倍の処理能力を持つという、次世代高速シーケンサーで、クロマグロ全ゲノムを解読する
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Report1
クロマグロの稚魚の多数採集に成功 水研センターは、クロマグロの資源量がどうして増減するのかを探っています。そのためには、どこにどれだけの稚魚がいるかを調査する必要があります。2009年には主要な産卵場所である久米島の周辺海域で、トロール網を使った調査を実施、生後2~3週間と推定される稚魚の多数収集に、世界で初めて成功しました。クロマグロの稚魚はふ化後2週間前後まではプランクトンネットで採集されます。また1~2カ月後のヨコワ(クロマグロの稚魚)になると漁獲できるのですが、その間の成長段階の稚魚は採集が難しく、生態も謎とされていました。 今回の採集の成功は水温、潮流などの環境の影響を受けやすいといわれる、クロマグロの稚魚の生態解明の糸口となります。 養殖用種苗ヨコワの漁獲量は、年ごとに異なります。稚魚のサンプリングは、その量の多少によりヨコワの漁獲量の予測も早めにできるので、クロマグロの資源管理や、養殖用種苗の確保など養殖業者の経営の安定化にもつながることが期待できます。 Report2
天然まぐろのトレーサビリティシステムの開発に着手 食の安全に関心を持つ消費者は年々増加傾向にあります。水研センターは、天然まぐろのトレーサビリティシステム(漁獲されてから消費者に届くまでの履歴)の開発に着手しました。その取り組みとして試験的に、調査船「開発丸」が漁獲したメバチ7本が首都圏のスーパーで販売されました。 販売された刺身のパックには、問い合わせ番号やQRコードが記載してあり、生産履歴、流通加工履歴などの情報が海洋水産システム協会運営のJ-Fish.netを通じ、消費者がパソコンや携帯電話で照会できる仕組みになっています。実施したアンケートでは、90%の人が生産履歴は購入の目安となると答え、トレーサビリティに対する関心の高さも伺えました。近い将来の実用化が楽しみです。 Report3
クロマグロの全ゲノムが明らかになる見込み ゲノムとは細胞核にある遺伝情報が詰め込まれた、染色体を構成するすべてのDNAのことです。 農業、医療、環境、人などさまざまな分野で、ゲノム研究の成果は広く利用されています。 水研センターでは東京大学・九州大学と共同で、「次世代型高速シーケンサー」という分析機器を使って、クロマグロの全ゲノム配列の解読を進めています。 遺伝子情報などの基礎データを把握することで、漁獲された水域もわかるため、資源管理技術の開発研究にとっても有益となります。 またよく成長して病気にも強く、味もよいといった養殖に向いた品種を作ることも可能になります。 このゲノムの解読は、将来の私たちの食卓にも、多くの恩恵をもたらしてくれるといえそうです。 独立行政法人水産総合研究センター http://www.fra.affrc.go.jp/ |