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農林水産省

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MAFF TOPICS(3)

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MAFF PERSON 農村派遣研修リポートNo.4

酪農の厳しさと現状を頭だけではなく身体でも知ることができた1カ月間
岩手県八幡平市 田村 勝さん
研修生 藤谷洋平さん(生産局 畜産部 牛乳乳製品課)

MAFF PERSONでは、農林水産省と関連機関で働く人と仕事をご紹介します。


農林水産省では、先進的な取り組みをしている全国の生産者のもとに約1カ月にわたり若手職員を派遣、ホームステイをしながら仕事を体験し農林水産業の現状を見聞する、農村派遣研修制度を行っています。日本の農林水産業の未来を担う若者たちの活動をリポートします。

岩手県八幡平市 田村 勝さん 研修生 藤谷洋平さん

家族経営と聞いてもっと小規模なところを想像していた。研修に来て初めて牛舎を見たときには驚いたという

研修生 藤谷洋平さん
作業風景
藁を田に立てて乾燥させる藁立てという作業。牛舎の床に敷いたり、餌として食べさせたりするところもある


餌やり風景
餌を与えるのは藤谷さんの主な仕事。1日20kgもの乾草を牛たちは食べる

作業風景
大学時代は獣医学を修めていたが、これほど毎日家畜と過ごし世話をしたのは初めての経験

搾乳風景
取材に行った日の朝、初めて搾乳の作業の経験をした。ミスをすると乳を無駄にしてしまうとかなり緊張したという
現場の実情が分からないもどかしさ
研修生藤谷洋平さんの派遣先、八幡平市はのどかな田園風景が広がる岩手県北西部に位置する。

受け入れ先の田村勝さん宅を町の人にたずねると「ああ勝ちゃんの家ね」と、道順を説明してくれた。なんでもこの辺の住民の姓はほとんどが「田村」さん、なので名のほうが通りはいいらしい。

田村さんは酪農家の3代目。昭和20年代に祖父が牛2頭を購入して始めた酪農は、父親の代で約40頭、田村さんが手伝うようになってからは約80頭にまで増えた。

研修生の受け入れは今回が初めてではなく、以前にも学生などに酪農を体験させたことがある。

「特別、農林水産省の人って意識では受け入れてないんです。だから藤谷君が初めて来たときも、ああ若者が家に来たねえ、って感覚でした」と、田村さんは自然体で藤谷さんに接している。

藤谷さんのほうは、日頃から所属する牛乳乳製品課の業務をしながら、実際の酪農の現場がどういうものか、いまひとつ把握できてない自分に歯がゆさを感じていた。
実際に体験し見識を深めたい、と考え研修先は酪農を希望した。

生き物相手の厳しさ
研修中の作業内容は基本的には牛に餌を与えたり、排泄物を溝に流して掃除をしたり、刈り取った藁を牛舎に敷くために、田に立てて乾燥させる藁立てなどだ。

ここに来て作業を手伝い始めた当初は、日頃から身体を動かしていないことがたたり筋肉痛になった。酪農は基本的に休日がなく、朝6時頃から夜10時頃まで働かなくてはならない、という実情も最初の一週間で身をもって実感した。その日の天候によって、作業内容が変わる、ということも初めて知ることだった。

また作業の指導をしてくれる田村さんの、生産の効率性を高め、より良い経営を行うための勉強や、努力を惜しまない真摯な姿にも感じ入るものがあったという。

地元の酪農家や農家とも積極的に交流
「酪農作業も大切ですが、なるべくこの地域の人と触れ合って話をし、必要なことは吸収して人間的な成長の糧にしてほしい」と田村さんは藤谷さんに言っている。

地域の人たちも農林水産省から来ていると聞くと、話をしたがり一緒に飲もうと誘いに来ることもあったそうだ。研修先のお子さんの地域の行事などに参加して出会った地元の若い農家、酪農家たちから、現状や不安に思っていることなども聞く機会も得た。

「農政の疑問を藤谷君に聞くこともあったし、逆に彼から聞かれることもあった。国が指導することが、家族経営では難しい場合もある。計算上のデータと実際は違うんだよ。この1カ月で藤谷君もかなり思うことはあったんじゃないかな」と田村さん。

「酪農家のみなさんの意見が私たちまで届きにくいことや、私たち自身も実情に疎いところがあるような気がしました。みなさんと話していて、制度や事業そのものの内容はいいことなのに、こちらの説明不足や意図が酪農の現場には十分に伝わっていない、と感じたこともありました。今後どうしていくべきか考えさせられた部分です」

ここでの経験、考えたことを、生かして仕事もさまざまな角度から見ること、またさらなる問題意識を持って取り組もうと決意を新たにした、という藤谷さんだった。

団らんのひととき
1日の作業が終わって団らんのひと時。家族の一員のように滞在先の家族とも馴染んでいる


Photo:Makihiko Kumekawa