affインタビュー CLOSEUP 仕事人 Vol.01
食育推進会議委員/健康大使
服部幸應さん
食育基本法の成立に関わり、食と食文化の大切さを説き続けている服部幸應さんにお話をうかがいました。 |
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![]() はっとり・ゆきお
昭和20年、東京都生まれ。医学博士。立教大学を卒業後、昭和大学医学部博士課程修了。学校法人服部学園理事長、服部栄養専門学校校長。食育をテーマにした講演活動等にも積極的に取り組み、内閣府「食育推進会議」「早寝早起き朝ごはん全国協議会」、厚生労働省、農林水産省、文部科学省、東京都などの健康・食の安全・安心に関する委員を務める。食育関連著書に『食育のすすめ』などがある。 ![]() 食育プログラムの一環として、フランスの国民的イベント「味覚の一週間」日本版を開催 ![]() (左から)笑う食卓シリーズ『服部幸應の食育の本』ローカス『笑う食卓』編集室発行(1,365円)、『食育のすすめ』マガジンハウス発行(1,470円)、『Shokuiku-eating education』『服部幸應 食育ブック』(いずれも非売品) Photo:Eri Iwata |
「食」はもともと「人を良くする」と書きます。 だから「食育」とは「人を良くする教育」なのです。 休みはたった30日だけ
教育者、食育研究家、料理評論家であり、ジャーナリスト、コメンテーターなどなど、いくつもの顔をもつ服部幸應さん。仕事を始めて34年間、そのうちで休みを取ったのはたった30日だけだったという。ご自身が校長を務める服部栄養専門学校の公式サイトに記載されている、服部さんの役職は100を超える。月の半数はメディアに関わり、年間180本の講演をこなす。講演依頼は500本にのぼるというから、驚きである。 それだけ、今、食の在り方が問われ、食の重要性を的確に説ける服部さんの存在が求められているのだろう。 服部さんは、平成17年7月15日に施行された食育基本法を成立に導いた立役者である。服部さんは食育についてこう語った。 食育の3つの柱
「食育には3つの柱があります。1つ目は、どんなものを食べたら安全か危険か、健康になれるか。つまり自分や家族を健康にしてくれる食べ物を選ぶ力、『選食力』を養うということ。 2つ目が、衣・食・住の伝承は家庭から。食卓は家族と共食をするところ。そこで作法が身につくのです。 そして、3つ目が食料問題と環境問題、地球の食を考えるということです。 日本では、食の安全保障という観点からの教育がされていませんでした。自分の国の食料問題を教えてこなかったのです。 日本の食料自給率はどれくらいですかと尋ねても、正確に答えられる人は200人に1人です。 僕は年に4~5回、海外に行くのですが、行った先々で『あなたの国の食料自給率はどれくらいですか』と聞くことにしています。 ほかの国では、低いところでも40数%、高いところでは75%の人が知っていると手を上げます。当たっているかどうかは別として、ちゃんと関心を持っているのです。日本ではそういう教育がされていません。食の安全保障の授業がないのですから。 前年度の食料自給率は8月に新聞で発表されます。僕はみんなに『きちんと見てください』と言っていますが、そういうことさえ学校では教えていなかった。だから、食育を推進するための法律をきちんと制定する必要があったのです」 服部さんは安全保障を考え、食育を推進するキーワードに「サスティナブル」を掲げている。「サスティナブル」とは「持続可能な」という意味だ。 「すべてのものは地球にやさしく、環境に負荷をかけないものであるべきです」と服部さん。それは農林水産業然り、工業製品、また建築や観光然り、将来に向けて安定的に維持・発展ができる社会を目指すことが必要だという。 家庭の食生活が基本
生きるために必要な「食」を通して学ぶことは多い。孤食(個食)では学びがないと服部さんはいう。「だから、食育基本法は食卓基本法なのです。家庭の食卓での食生活が非常に重要なのです」 そうした食育の普及・啓蒙活動の一環として、服部さんは毎年、1年生から6年生までの小学生と、その保護者を対象とした料理コンテスト「ハットリ・キッズ・食育・クッキングコンテスト」を開催している。毎年決められたテーマをもとに、主食・主菜・副菜の計3品のオリジナル料理で競うそうだ。 今年は東日本大震災のため開催は見送られたが、テーマは「家族の幸せは、朝ごはんから」。ちなみに昨年は「脳を活性化させる朝ごはん」。こういったテーマからも、服部さんの食育普及活動の奥行きと、熱い思いが感じられる。 |