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連載21 こぐれひでこ の いただきもの絵日記

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ズッキーニ


ズッキーニ
文・イラスト こぐれひでこ


こぐれひでこ
profile
イラストレーター&エッセイスト。『こぐれひでこのおいしい画帳』(東京書籍)、『こぐれひでこのごはん日記』春夏篇・秋冬篇(早川書房)、『私んちにくる?』(扶桑社)、『こぐれの家にようこそ』(早川書房)ほか、著書は30冊を超える。現在は、女性向けの人気情報サイト『カフェグローブ』で、ごはんをテーマにした『こぐれひでこの毎日ごはん』を、また遊び心をテーマにした情報サイト『あそびすと』でも連載中。

『こぐれひでこの毎日ごはん』
http://www.cafeglobe.com/travel/kogure/
初めてズッキーニを見たとき、西洋のきゅうりとはこういうものなのかと思った。皮はきゅうりよりスベスベで、切り口を触る指先にはっきりとした渋みを感じたが、昔のきゅうりにもこんな感覚があったことを思い出し、こんなものなのかな、とそのまま食べたらまずかった。これは日本人がズッキーニという野菜を知らなかった70年代初頭の話だ。ズッキーニはかぼちゃの仲間であり、加熱して食べる野菜であると知ったのは、それからまもなく後のことだった。

なす、ズッキーニ、パプリカ、たまねぎをトマトで煮込んだ南欧料理(フランスではラタトゥイユといい、イタリアではカポナータという)。ズッキーニが私の生活に定着したのはこの料理がきっかけだった。冷やしたそれを白ワインと共に食べるとき、南ヨーロッパを旅しているような気になったものだ。

その後、80年代後半に巻き起こったイタリアンブームの影響も大きかったのだろう、ものすごい速度でズッキーニの知名度は上がっていき、今では庶民的スーパーでもズッキーニを入手するのは簡単なことである。

ズッキーニの何が日本人の心を捕らえたのだろう。かぼちゃの一種だというのに甘くなく、かぼちゃ好きな人にはたまらないというポクポクした食感もないズッキーニ。加熱すると軟らかくなるが、瓜類ほどにトロリとはしない。歯に当たったとき、かすかに感じるグキッという食感が日本人好みだったのだろうか。

確かに、煮ても焼いても蒸しても揚げても、それぞれのおいしさを生み出すズッキーニは、味にそれほどの個性を持っていないので調理の幅は広い。直売所で育ち過ぎたズッキーニを売っていた女性に、調理法を尋ね、私も試したことがある。食べやすい大きさに切ってゴマ油で炒めて醤油で味付けする……、昔ながらの油炒めであるが、なるほど、グキッとした歯ごたえを残しながらズッキーニは素直に日本人向きの食材になりきっていたのである。ズッキーニは簡単に七変化しそうだ、と思い、すり流しを作ってみることにした。

濃厚な昆布だしを作り、日本酒と薄口醤油で味を調える。その中に輪切りしたズッキーニを加え2、3分煮る。あら熱を取ってミキサーにかける。ザルでこして冷やす。小さめのガラス製小鉢にズッキーニのすり流しを入れ山椒粉を振る。グリーンのすり流しが美しい。

まずは一口、すり流しを飲む。フ~おいしい。暑さが吹き飛ぶような清涼感に包まれる。