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農林水産省

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明日を担う若い力 チャレンジャーズ 第52回

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有限会社「しいたけブラザーズ」

本物を残し続けることが僕らの使命です

岐阜県加茂郡

有限会社「しいたけブラザーズ」

右)長男の尚人さん、将来的に地元の山で原木が伐採できるよう、クヌギの木の植林にも力を入れている。中)次男の千洋さん、自ら工場の設計も手掛けた白川町にある黒川農場の生産と管理。マスコミ担当で取材の対応もしてくれた。左)三男の泰弘さん、種場のある川辺農場の生産管理と出荷調整、販売管理を担当

有限会社「しいたけブラザーズ」

毎日重い原木を手で移動させているので、まめだらけ

「常にしいたけ菌と会話ができる状態を作ること」が肝心。3兄弟の父親いわく「100万本の原木に触れば、健康状態も分かり会話が出来るようになる」のだとか。毎日重い原木を手で移動させているので、まめだらけ

それぞれの原木に付けてあるタグ

それぞれの原木に付けてあるタグ。206は品種番号。○で囲まれた1は1回目、×2は2回目の収穫を表す

しいたけの原木の組み方は各生産者により異なる、しいたけブラザーズでは三角形に組む。地震で崩れにくく、組んだ下からのぞくとしいたけの傘の状態が容易に見える

しいたけの原木の組み方は各生産者により異なる、しいたけブラザーズでは三角形に組む。地震で崩れにくく、組んだ下からのぞくとしいたけの傘の状態が容易に見える

収穫を終えたほだ木を1カ月間養生させるハウス

収穫を終えたほだ木を1カ月間養生させるハウス。しいたけ菌にとって快適な温度と湿度に保たれる。天井にスプリンクラーがあり、適切な時間に雨に見立てて原木が濡れるように降らせる。原木栽培の安定生産を図るために重要な過程

養生が終わったほだ木は鉄板にぶつけて人工的に刺激を与える

養生が終わったほだ木は鉄板にぶつけて人工的に刺激を与える。ドーンという音、振動、地響きで、夏の終わりの雷に打たれているという錯覚をしいたけ菌に起こさせる。ぶつけたあとは水の中に沈める

水は雷のあとの土砂降りを再現

水は雷のあとの土砂降りを再現。ほだ木は一晩沈められる。ぶつける力の強さ、水温で出したいしいたけの数を調整する。まさに職人の技

白いのはしいたけ菌

白いのはしいたけ菌。菌がまんべんなくまわるように2カ月に1回、上下左右にすべてのほだ木をひっくり返す。ほだ木に使うのは樹齢20年ほどのクヌギとコナラ
無農薬栽培と直販システムの構築
現在、生しいたけは8割が菌床栽培、原木栽培はわずか2割。減り続ける原木栽培に取り組む、若手生産者を岐阜県加茂郡に訪ねた。「しいたけブラザーズ」。マスコミに登場することも多く、原木しいたけ業界一の有名3兄弟、横田尚人(なおひと)さん、千洋(ちひろ)さん、泰弘(やすひろ)さんだ。

意外なことに「3人とも子どものころからしいたけ栽培の手伝いばかりだったので、この仕事だけはやりたくなかった」とか。そんな彼らの心を動かしたのは「原木栽培が本物のきのこ。お父さんは本物のきのこを作りたい」と目先の利益を追求することなく、すべきこと、残すべきことは何かに信念を持つ父親の言葉だった。

最初に岐阜市内で働いていた千洋さんが戻り、遅れること1年、尚人さんが戻ってきて「しいたけブラザーズ」を名乗ることになった。

まず2人が取り組んだのは、無農薬栽培と直販販路の開拓。ところが無農薬栽培は難しく順調とはいかなかった。原木に悪性の雑菌が繁殖し、しいたけが出るという直前に3,000本の原木を廃棄処分する事態に陥ったのだ。この時ばかりは「もうダメかもしれない」と覚悟したそうだ。また当時の出荷先はほぼ100%が市場。菌床栽培や中国産など大量のしいたけが市場に流入し、無農薬で原木栽培といっても低価格で出荷せざるを得ない状況が続いた。菌床栽培と異なり、収穫するまでの期間が長い原木栽培生産者にとって、この低価格は死活問題。直販システムの構築の必要性を感じた2人は、5年以内の直販システムの確立を目標に据えた。そうは言っても五里霧中。地元のスーパーの試食販売がその一歩だった。地道な試食販売を繰り返すうちに、昔ながらの本物の味がすると、「しいたけブラザーズ」のしいたけは徐々に名を知られるようになる。さらに原木しいたけの生産者を探していた東京の高級スーパーや、焼き鳥チェーン店などから引き合いがあり、追い風となった。

平成16年には三男の泰弘さんが就農して、しいたけブラザーズ3人が揃った。

さて、原木しいたけ栽培は想像以上に労力と時間がかかる。所有する原木は20万本。1本10kgの原木を毎日ひとりあたり2,000本、ほだ木を作る作業やしいたけ発生ハウス、ほだ木の休養ハウスなどに移動させるために素手で運ぶ。手のひらの感触が、原木の状態を知る唯一の方法だからあえて素手。菌床栽培が3カ月で収穫できるのに対して、原木栽培ではしいたけ菌が原木全体にまわるのを待つため収穫は1年後以降。しいたけブラザーズでの年間のしいたけ収量は生が50トン、乾燥が700kgに上る。

原木しいたけの生産者が減少の一途をたどっている今、「新しいことではなく、本物を残していくことが僕らにとって大切なことです」と語る千洋さんの言葉には、さまざまな思いが込められていると感じた。

地図

しいたけブラザーズ http://shiitakebrothers.com

Photo:Keita Suzuki


チャレンジャーズでは、農林水産分野で先進的、かつユニークな活動を行っている人々をご紹介します。