特集2 食材まるかじり(1)
日本の冬の郷土食 漬け菜
冷たい水で今年も挑戦 夫婦二人三脚の野沢菜漬け 長野県・野沢温泉村 富井宇内(うない)さん・清子さん
冷たい北風が冬の到来を告げる頃、日本の各地で漬物が作られます。中でも地域特産の青菜を使った漬物は、寒さが増し、新鮮な野菜が不足する季節の貴重な保存食でした。流通が発達した今では、誰もがその独特の風味を楽しめる、豊かな郷土食の1つとなっています。 |
![]() |
![]() 「今年のお菜はよくできた」と喜ぶ宇内さんと清子さん ![]() 冷たい水で、茎の溝に入った泥をていねいにこすり落とす ![]() 洗ったお菜を、横に置いたすのこに積み上げ、水切りをする |
雪になる直前を選んで野沢菜を収穫
長野県の野沢温泉村は、日本3大漬け菜のひとつ「野沢菜漬け」の本場。例年11月の初旬になると、地元の方々がいっせいに「お菜漬け」を始めます。当地では野沢菜のことを「お菜」と呼ぶのです。 |
漬け菜名人清子さんの真骨頂!
|
![]() |
種菜は、「おぼろ月夜」にも歌われた菜の花畑に
野沢菜は約60日で成長するため、漬ける時期から逆算して9月下旬に播種(はしゅ)しますが、その「種」をとるための種菜は、もう少し遅く播(ま)きます。漬物用より若く丈が低い段階で、雪の下に埋もれさせ、雪解けとともに新しい茎を伸ばして花を咲かせるのです。里山一面を黄色に染める菜の花の風景は大正・昭和の文部省唱歌「おぼろ月夜」に歌われました。 |
![]() ![]() Photo:Keita Suzuki |
「お菜洗い」は野沢温泉村の冬の風物詩
野沢温泉村では、野沢菜の収穫時期になると、村内に13か所ある公衆浴場のほとんどが、2日間だけ開放され、自由にお菜洗いをします。温泉のお湯は、温かくて作業しやすく虫ばなれもよいのだとか。開放の日程は地元住民の方々が毎年協議して決定。その2日間は未明から、野沢菜の束を運ぶ人々がひっきりなしに浴場に向かいます。野沢温泉村ならではの冬の風物詩。ぜひ来年は日程を調べて訪ねてみてはいかがでしょう。 |