お宝!日本の「郷土」食 20[三重県鈴鹿市(すずかし)]
黒墨土(くろぼくど)育ちの天日干し
カラフルスイートな切干し大根
![]() 紅芯大根(こうしんだいこん)、赤サラダ大根、紅時雨(べにしぐれ)、黒大根、カザフ辛味大根、ビタミン緑大根、青首大根の7種類。切干し大根は季節の野菜セットと同梱
![]() 薄切りした大根は専用の網戸にのせて天日干しで乾燥 ![]() 薄口醤油と酢にさっと漬けたカラフル切干し大根。玄米ごはんとも好相性。「うどんや鍋にも入れてます」とけいこさん 近藤けいこ ナチュラルベジタブル 三重県鈴鹿市伊船町2704-2 TEL.0593-71-0414 FAX.0593-71-0514 http://www.keikon.info/ 文・写真/山本洋子 |
日本の保存食、乾物は知恵の塊。旬の恵みを自然の力で乾燥させ、生とは違う味が楽しめ長期保存も可。なかでも、干し大根は冬の太陽と寒風で糖化をおこして甘く、カルシウム、鉄分、ビタミンB1・B2、食物繊維の量が生より豊富。しかも1年中安価な、うれしい素材です。 独特なコクや風味は、煮物や汁の実、酢の物、漬物にも重宝。そのままサキイカのように食べると甘みがじわじわ出て、おやつ代わりにもなります。 宮崎県が大生産地ですが全国各地で作られ、丸のまま、輪切り、細切り、縦割りなどさまざまな干し方と食べ方があります。長野ではおやきの具、函館では「松前漬け」に、新潟では「からし巻」が有名です。宮崎発祥と言われる「はりはり漬け」、熊本・福岡の「五分漬け」など、干し大根を醤油と酢などで漬けるのも定番。あえるだけなので、火を使わずにできる一品です。ぱりぽりした食感は酒の肴にもぴったり。 そんな日本の誇るべき乾物、干し大根ですが、地味だからか、調理に時間がかかるイメージがあってか、使う人が少ないのが残念。 そんな干し大根のジミなイメージをガラリと打ち破ったのが、三重県鈴鹿市の近藤けいこさんが作るカラフル切干し大根です。 「おいしく楽しく安全な野菜」がモットーのけいこさんは、黒墨土で、農薬、化学肥料を使わない野菜作りをしています。 「黒墨土は通気性、保水性がよく、特にこの地域は腐植含有率が高く、植物性堆肥を鋤(す)き込むことでフカフカの土にしています」 大根は13種類以上を栽培し、色と味に特徴がある7品種を選んで切干しに。その出来上がりはコサージュのような美しさ「名づけてセレブな切干し大根です(笑)」とけいこさん。 作り方は至って自然。 「スライサーで薄切りし網戸の上に広げて天日干し。晴天で2日乾燥。生では辛味が強い黒大根も干すと独特の甘みに変わります」 生とは別の味が生まれるのが乾物の面白さ。そのまま食べてみるとやさしい甘さが口中ほっこり。 もどすのが面倒と敬遠される乾物ですが、薄切りでソフト乾燥のため、すぐもどり味は極めて濃厚。 「サラダ、酢の物、塩麹であえたり、ちらし寿司やにぎり寿司にするときれいです」 けいこさんが野菜のセットにこの切干しを入れ始めて4年。珍しさと、皮ごと安心が広まって今や人気商品。大根をたくさん出荷したくても、少人数の家庭ではなかなか食べ切ることができません。乾物ならば、けいこさんにとっても、食べ手にとってもうれしい。ゴミが出ず、火を使わなくてもおいしい。切干し大根は環境にも身体にもやさしい、ムリムダがない賢い保存食品なのです。
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