このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

特集1 東日本大震災 復旧・復興に向けて(4)

  • 印刷

農業の現場では


土地改良区とは
※土地改良区とは
土地改良法に基づき、土地改良事業を実施することを目的として、農業者によって設立される団体で、「水土里(みどり)ネット」という愛称で呼ばれています。規模は数ヘクタールから数市町村にまたがるものまで多岐にわたり、かんがい排水事業やほ場整備事業などを実施するほか、これらの事業によって造成された土地改良施設や国、県などが造成した土地改良施設の維持管理等を行っています。

お話を聞いた名取土地改良区「水土里ネット名取」事業課長の松浦栄喜さん

お話を聞いた名取土地改良区「水土里ネット名取」事業課長の松浦栄喜さん

宮城県仙台地方振興事務所農業農村整備部技術次長の小松力さん

宮城県仙台地方振興事務所農業農村整備部技術次長の小松力さん

同農地整備第二班技術主査の佐藤徹さん

同農地整備第二班技術主査の佐藤徹さん

宮城県名取市
農業農村整備の英知を結集して
将来の営農形態を見すえた復旧に尽力
津波によって流失・冠水等した農地では、がれきの撤去や海水の塩分除去(除塩)作業が大きな課題となっています。
農地の除塩作業を順調に進めている宮城県沿岸部の名取土地改良区(※)を訪ねました。

管内の7割の農地が冠水
東日本大震災では東北から関東に続く沿岸部で、津波によって約2万4,000ヘクタールの農地が流失・冠水等しました。宮城県では、被災した沿岸農地全体の実に6割近くを占める約1万4,300ヘクタールに及ぶ農地が津波の被害を受けました。

今回訪ねた名取土地改良区が管轄する地域は、太平洋に面した仙台平野の南部に位置し、仙台市、名取市、岩沼市の3市にまたがる都市近郊型農業地帯です。北には名取川、南には阿武隈(あぶくま)川が流れるこの一帯では米を中心に栽培しています。

巨大地震によって発生した大津波は管内にある仙台空港を飲み込み、海岸から5km離れた内陸部まで達しました。そして、名取土地改良区管内の7割に相当する農地が冠水したのです。

「一番大きな被害を受けたのは管内の閖上(ゆりあげ)地区です。2,500戸の町が一瞬にして消滅してしまいました」

と話してくれたのは、名取土地改良区事業課長の松浦栄喜さんです。沿岸部の町のがれきが内陸部の農地にまで押し寄せ、農地全体の排水の要である排水機場を破壊、幹線排水路もがれきや土砂で埋まってしまいました。

5月から作付けを開始
その後の名取土地改良区内の復旧作業について、宮城県仙台地方振興事務所農業農村整備部の技術次長である小松力さんが説明してくれました。

「国営造成となる基幹水利施設は国が、農地の再生については宮城県が行うというように分担して進めてきました。名取土地改良区は地域の調整がよくできており、除塩作業の進み具合が特に速く、農地復旧のモデルとなる地域です」

名取土地改良区では被災農家の協力を得ながら、目標値の塩素濃度0.1%に達するまで、水を溜めそれを排水することを繰り返し実施し、除塩作業を進めてきました。

名取土地改良区の津波による被災農地1,072ヘクタールについては、除塩しながら平成24年度産米の作付けを目指しているといいます。2月上旬にはそのうちの6割で除塩が完了、5月から作付けを開始します。

農業の再興を実現させるために
名取土地改良区の事業課長で農業者の松浦さんは、今後の農地復旧について、震災前の田んぼの広さに原形復旧させるのではなく、将来の営農形態も考慮して1ヘクタール規模の区画にするといったほ場整備が必要なのではないかと考えています。

「住む家も作業場も農業機械もすべてを失ってしまった生産者が営農を再開するには、時間も労力もかかります。実質的な営農形態はどうなるか分かりませんが、将来の農業を担う人材を育成しながら、大規模化、集約化を視野に入れて、県を中心にほ場整備事業を推進しているところです」

続けて次のように語りました。

「除塩作業は進んでいるとはいえ、今日現在470名の組合員の避難先や生死が未だに不明のため、ほ場整備事業の周知徹底も困難な状況です。1日も早く、今後の具体的な農業の再興の道筋を示してあげたい。私たちは地域で支え合って生きています。農業で生計を営む暮らしを取り戻せることを支えに、被災地域の農業の再生なくして日本の農業の展望はないという思いで踏ん張っています。どうか皆さん、さらなる大きな力を被災地域へ貸してください」

この言葉には営農仲間を思いやる農業者としての願いが込められていました。

進む除塩作業
除塩の手順
(1)まず堆積した土砂と除塩が必要な深さの作土の塩素濃度を測定し、堆積した土砂を撤去する
(2)弾丸暗渠(あんきょ)(水はけを良くするために、弾丸の形をした器具で土の中に下水管のような穴を作ることで土の中の水を排出する技術)を行って土を耕す
(3)その後、その田んぼに水を入れて2日間置き(湛水)、排水した後に再び塩素濃度を測定し、必要に応じて水を溜めて排水することを繰り返す

弾丸暗渠掘削

弾丸暗渠掘削

弾丸暗渠掘削

湛水完了

湛水完了
  ポンプ操作状況

ポンプ操作状況

写真提供:名取土地改良区

農地被災概況図