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affインタビュー CLOSE UP 仕事人 Vol.11

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青果物卸売業
大井溥之(おおい ひろゆき)さん

青果物卸売業界トップの取扱高を誇る東京青果株式会社副社長の大井溥之さんに、青果市場の現状を語ってもらいました。
塩屋 俊(しおやとし)さん

おおい・ひろゆき

おおい・ひろゆき
昭和17年、広島県に生まれる。昭和42年、中央大学法学部卒業後、東印東京青果株式会社(現・東京青果株式会社)に入社。平成5年、取締役に就任。平成16年、代表取締役副社長に就任する。

「東一」という屋号を持つ東京青果株式会社のせり場の様子

「東一」という屋号を持つ東京青果株式会社のせり場の様子

ロケハンのときに見つけた野津町田野地域の絶景スポットでの撮影中の様子。この映画のオープニングタイトルバックになった

「東一」のせりがはじまった

東京青果株式会社
http://www.tokyo-seika.co.jp/
Photo:Eri Iwata/Yuriko Nakajima
生産・消費動向の変化
東京都中央卸売市場大田市場内で、青果物やその加工品などの卸売を行っている東京青果株式会社は、青果物の取扱量と取扱総額において全国一の規模を誇る卸売会社である。同社の代表取締役副社長の大井溥之さんは、流通業界における新たな価値の創出やシステムの構築について、シンポジウムや講演会で積極的に提言し、卸売業界の活性化に尽力しているひとりだ。そんな大井さんが、卸売市場の現状や今後の方向性について語ってくれた。

「生産・消費の動向が、流通業界に影響することは言うまでもありません。近年、国内の青果物の生産量は減少傾向にあります。農業就業人口は260万しかいない。しかも専業農家は少なくなっています。生産者が減り、農家の高齢化も顕著です。また高齢化に伴って、生産地の品目も変化しています。

消費の動向も大きく変わりました。まず胃袋が小さくなった。つまり少子高齢化が進み、それが消費の減退を招いているということです。若い年齢層では果物離れも進んでいます。

消費者はおいしくて安いものを志向するようになり、そこに新鮮でなおかつ安全で健康にいいものという条件も加わりました。一方で簡便化を求め、惣菜や弁当といった中食が人気を集めています。こうしてますます青果物を素材で買うことが少なくなりました」

規制緩和の影響を受けて
このような状況下で、青果物卸売業界では、バブル崩壊後の平成3年をピークに、流通量が3分の2に減少したという。それに追い討ちをかけるように、平成16年の卸売市場法の改正によって、それまで一定の割合に決められていた手数料が自由化され、業者間の競争が激化する。

「昔は委託取引でした。産地の皆さんがわれわれに委託し、その代わり一定の手数料をわれわれが受け取ります。販売はせりで行う『委託・せり』が原則でした。

ところが、市場の規制緩和によって、産地との取引は委託でもいいし、買い付けでもいい。販売はせりでなくても、相対(あいたい)取引(7ページ参照)でもいいということになりました。自由な取引ですから、一般企業とまったく同じです。だから競争が激しくなり、倒産する卸売業者も出てきました。

そのうえ、需給構造も転換期にあります。供給過剰から供給過少に移行し、買い手市場から売り手市場に変わってきました。そうなれば価格の均衡点は自ずと上がってきます。それでもわれわれは安定供給・適正価格を貫かなくてはなりません」

農業の新たな時代に向けて新たな価値を創出したい
卸売業の役割は、青果物の需給バランスの安定を図り、適正価格で供給することにある。東京青果では現在、1万件に及ぶ生産団体との取引を持つ強みを生かし、産地と協力した商品開発をさらに進め、情報収集力や発信力の強化に取り組んでいるという。大井さんは時間があれば、全国にいる生産者のもとに足繁く通っている。

「この仕事に就いて何がうれしかったかというと、生産者の喜んでいる顔が見られたことです。一生懸命こちらが売る努力をすれば、たとえ失敗しても、本当に喜んでくれます。直接生産者と話すことが何よりの刺激になります。

特に今、生産者の高齢化や担い手不足の問題も含め、日本の農業のこれからが問われています。それにわれわれが携わることができるということは、極めて意義があることだと思っています。そういう意味で生産者と消費者をつなぐ青果物卸売業というのは、素晴らしい商売だとつくづく思います」

東京都中央卸売市場大田市場正面入り口。深夜からたくさんの輸送トラックが出入りする

東京都中央卸売市場大田市場正面入り口。深夜からたくさんの輸送トラックが出入りする